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〜エピローグ 人間〜

Last-modified: 2014-08-12 (火) 22:09:38

ゴミ溜の宇宙(うみ)で
〜エピローグ 人間〜

 

「お帰りなさい、早かったね。――おもての様子は?」
「ただいま。――世は全て事も無し。当たり前だよ。……誰も、何も知らんのだからな」
 スカンジナビア王国首都。やや古いアパートの一室に30前後の男女の姿。
「デイビットから連絡があるとは驚いたが、内容はもっと驚きだ。まさかユニウスセブンを落とすとは」
「みんな絶対にやらないと思ってるから効果が高い……。簡単にシミュレーションしてみたの。
軌道を大きく変えないなら、何処に墜ちても赤道直下の海岸線はかなりの被害が出ると思うよ?」

 

「ヤツが知ってるくらいだ、ザフトが何とかするんだろうさ。――それより今日の飯は?」
「今日は冷蔵庫棚卸しフェアで、冷凍食品オンパレードよ。……そう言う顔しないでよ、確かに
料理はあなたの方が上手いんだけどさ。今日は作るの面倒とかじゃ無くて、ちゃんと理由が……」
 ――わかってるさ。男は、だが食事の心配をしている訳では無く、女にもそれはわかった。

 

「キミの計算結果は被害甚大、かぁ。参ったね、取引先は6割以上オーブだぜ。せっかく順調に
回り始めたところだっつーのに、失業も考えておかなきゃならんとは」
 大西洋連邦から逃げてきた元軍人の二人。彼らを逃がした諜報畑の人間から約一年ぶりに
連絡があった。曰く、ユニウスセブンが落ちてくるので、地勢的にも情勢的にも当面そこを離れるな。
 二人で窓から見上げた空は、当然のように何事も無くただそこにあった。
「食料を買い込んでおかなくちゃ。エイプリル・フール・クライシスの時は実家に食べるものだけは
あったから、それで家族みんな助かったの」
 女はその為に先ずは冷蔵庫を開けようと思い立って、今日のメニューになったのだ。
「パンは冷凍庫で良いか。……あとはレトルトと乾き物、缶詰に飲料水。どれくらい猶予が
あるもんか。備蓄は二週間分くらいで良いのかな。……それとアルコール、か」
「最初にアルコール。……かな」
 ――キミにとっては命に関わる大問題だものな。大まじめな女の顔に、男は苦笑するしか無い。

 

「前にも聞いたことあるよね? コーディネーターとナチュラル。お互いがお互いを認めることが
どうして命がけになってしまうのかって……」
 女は解凍した冷凍食品を皿に盛りつける。意外にこういう部分の才能には長けていて、
男は食べるまで冷凍だと気づかない時さえあった。
「もはや認める気さえ無くなった、と。そういう事なんだろ? ――エイプリル・フール・クライシス
の時、あれ程の大災害になる予定では無かった、というのは俺はホントだと思うぜ。知り合いの
コーディネーターはデイビットだけだが、頭は良いのにバカ。そういう感じだろ、ヤツも」

 

 男は、テーブルの上にワインが並んだのを見てコルク抜きを探しながら続ける。
「ただ今回は脅しじゃ無い。地上のコーディネーターも含めてのテロリズム、皆殺しだ。既に話など
するだけ無駄だから黙って死ね。こういうつもりだろ」
「そんなの。ブルーコスモスに戦争の口実を与えるだけで意味が無いんじゃ……?」
「むしろ連中はそれで良いのかもな。お互いに絶滅するまで殺し合えってな。人間に対して完全に
絶望したらそんなもんなのかも知れん。――飯を食ったら早速、メチルアルコールでも買いに行くか」
「ちょっとちょっと! なんでメチル? そんなの飲んだらいくら私でも死んじゃうよ!」
「非常用燃料のつもりだったんだが、飲むつもりで居たのか? なら、エチルにしようか」
 この二人に出来る事など何も無い。その日が来るまで、ただ空を眺めるしか無いのだ。
=終わり=

 
 

【最終話 『変わらないもの』】 【戻】

 
 

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