Top > 〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_外伝 FILE-01
HTML convert time to 0.016 sec.


〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_外伝 FILE-01

Last-modified: 2009-03-24 (火) 19:40:06
 

 アンドリュー・バルトフェルドは、カップのコーヒーを深くすすると、ふぅ、とため息 をついた。

 
 

 プラント・アプリリウス1。軍港に近いカフェテラス。その立地条件もあって、周りの客も軍服姿が多い。
 もっとも、今、プラントのどの飲食店も、客層はそう変わらないだろう。
 平和の歌姫、ラクス・クラインによる『自由の為の世界再々構築』が始められてから、早4年と余月。
 軍事支出増加に伴う増税に次ぐ増税で、一般労働者の所謂手取り賃金は日常生活にも貧窮する水準だ。
 外食する余裕があるような人間は、ラクスに近い者を除けば、軍人しかいない。
 ところが、奇怪なことに、収入の水準は果てしなく低いのに、失業率はゼロに近い。

 

 ───やってることがデュランダルよりも酷いぞ、これじゃ。

 

 『兵隊1人、1銭5厘』ではないが、指名志願制と言う名の実質的な戦時徴兵により、労働人口に事欠く有様なのだ。これなら戦争を止めようとしていただけ、デュランダルの方がマシだ。
 これで今までよくクーデターが起きなかったものだと思う。
 ラクスが、父シーゲル・クラインがその政治的権勢の維持とその継承の為に、その声でコーディネィターを支配する為に調整されたコーディネィターである、そんな説があっても不思議でもなんでもなかった。
 だが、ラクスの神通力も万能ではない。
 ついに爆発するべきときに爆発するべき所で爆発した。

 

 トーマス・シティ。
 偉大なる発明王のファーストネームを頂くこの新設コロニーは、エネルギー生産によって、公式には『デュランダル政権下のダメージがあまりにも大きかった為』低迷しているプラントの経済を立て直す為のものだった。
 だが、そもそも需要側が消費活動を活性化させるどころではない状況にあるうえ、市場原理に疎いラクスとそれに指導された販売公社は、コロニーの建造費回収を盾に販売単価の値下げを頑として拒んでいたのだから、生産効率が上がるはずもない。
 その上、地球と同じ公転軌道をたどるL4・L5のプラント本国、アーモリー・シティに比べて、その目的もあって太陽に近いL1点に設置されたトーマス・シティは、居住環境が悪く、移住希望者が集まらない。そこでこれ幸いにと、潜在的不満分子である旧ザラ派・旧デュランダル派にナチュラル難民と、プラント本国から隔離するとでも言わんばかりに入植させたのだから、爆薬を固めているようなものだった。

 

 そして案の定、C.E.79年1月3日、トーマス・シティは突如『ジオン公国』を標榜し、プラントからの分離独立を宣言したのである。

 
 

機動戦士ガンダムSEED 逆襲のシン 〜ジオン公国の光芒〜
INTER PHASE : FILE-01

 
 

「なに、年寄りみたいなことをやってるのよ、アンディ」

 

 覇気のないバルトフェルドがテラスの椅子にもたれかかっていると、背後から声をかけられた。
 女性の声。
 何事にも例外と言うものは存在する。ラクスの歌声に聞き惚れないコーディネィターがいるように、彼女に傾倒しているナチュラルもいる。
 その1人、プラント国防軍宇宙軍艦隊第2戦隊指揮官・兼・MS搭載大型戦闘艦『アークエンジェル』艦長、マリュー・フラガ──旧姓ラミアス──准将。

 

「いや……また、戦火が拡がると思ってね」

 

 バルトフェルドは、肩を竦めて言う。

 

「仕方ないわ。ラクスさんが理想の世界を作ろうとしているのに、それに同意しない人たちがいる限りは」
「…………そうだ、ね」

 

 バルトフェルドは口では同意したが、態度にはどこか含むところがあった。

 

「本当にどうしたのよ、おかしいわね、体調でも悪いの?」

 

 マリューは、まるで母親が子供を心配するかのような表情で、そう言った。

 

「いや……そうだね、強いて言うなら」

 

 答えながら、バルトフェルドはテーブルの上の伝票を無造作に手に握り、けだるそうに立ち上がった。

 

「僕はプラントの人間でありながら、地球の重力に魂を惹かれ過ぎたのかも知れないね」
「?」

 

 マリューは首を傾げつつ、冴えないバルトフェルドの背中を見送った。

 
 

 メサイア戦役の当時、バルトフェルドは確かにデュランダルに強い不信感を持っていた。
 状況証拠だけとは言えZAFTの容疑が濃厚なラクス暗殺、そしてデスティニー・プラン。
 危険人物だと思った。排除の必要性を確かに感じた。
 だが、その裏付けに、現状の喪失を恐れる保守的な感情があったことに気づいたのは、何もかもが終わり、そして始まってからだった。
 バルトフェルドは独身だったが、血のバレンタイン以降のC.E.72の戦役の頃には、恋人……と言うより内縁の妻とも言える相手、アイシャがいた。
 だが、当時ストライクに乗っていたキラと戦闘に陥り、2座のラゴゥで対峙して墜とされた。
 バルトフェルドは一命を取り留めたが、アイシャは亡くなった。

 

 ───思えばあの時に、死に損なったのかも知れないねぇ。

 

 人通りがめっきり少なくなりシャッター通りと化した繁華街を歩きながら、バルトフェルドは一人ごちた。
 その後、ヤキン・ドゥーエ戦の後、バルトフェルドは脱走兵としてZAFT・連合両者から追われる身となった。
 その為、カガリの治めるオーブに、偽名を使って隠れ住んだ。
 この時期、元連合士官ながら同じ身の上のマリューと親交を深め、周囲からも良い仲であるかのように見られた。
 バルトフェルドは、その現状を失いたくないと思ってしまったのだ。
 だから、ラクスがアッシュの部隊に襲撃されたとき、うかつにも敵がデュランダル政権下のZAFTであるような発言をしてしまい、無自覚にキラとラクスを焚きつけてしまった。
 考えてみれば、連合のGATシリーズ計画からMSはそれ自体が奪い奪われる代物だった。
 ZAFTの最新鋭機だといっても、連合が犯人であってもおかしくは無かったし、どちらの主流にも与さないテロリストの可能性も充分あった。

 

 あるいは─────────────────────────────。

 

「いや、さすがにそれはないだろう」

 

 己の気持ちを安定させる為に、わざと声に出してそれを否定した。
 そして戦争は、とりあえずデュランダルとの戦争は終わった。
 ラクスは国家元首の資格者であるプラント評議会議長に、キラはZAFT高官として、それぞれ迎えられた。
 だが、バルトフェルドには何が残った?
 マリューは、メサイア戦役の最中に突如舞い戻ってきた、ヤキン・ドゥーエでMIAとなっていた想い人、ムウ・フラガとよりを戻した。
 正式に交際していたわけでもないバルトフェルドは、あっさりと状況に甘んじるしかなかった。
 結局、バルトフェルドが失うまいとしたものは何一つ残らなかった。
 バルトフェルドは、正確に言えばコーディネィターの例外の側だ。ラクスが歌声と耳障りの良い言葉でどんなに取り繕っても、今のプラントの状況が最悪であることには気づいている。
 ただ。
 彼には、叛乱を起してまで守りたいと思うものが無かった。それだけのことだった。

 

   ▽   ▽   ▽

 

――ジオン公国軍第1宇宙攻撃艦隊・MS搭載型巡洋艦『ジュンイチロー・コイズミ』――

#br
 艦長のアーノルド・ノイマン『ジオン公国軍』大尉は、艦長室に1人の客人を招き入れていた。

 

「こうして差し向かうのは、始めてですね。少佐」

 

 自らコーヒーを注ぎながら、ノイマンは言う。

 

「止めてください、俺の方がずっと年下なんです、敬語なんて、良いですよ」

 

 応接用の椅子に腰掛けた相手――シン・アスカ特務少佐はくすぐったそうに困惑し、そう言った。

 

「それは、…………けど、予想されて然るべき事態が、現実になっていたとは」

 

 ノイマンは逆に困惑を見せる。

 

「ヤキン戦役の時、オーブ戦で民間人に多くの犠牲が出たことは、事実として知ってはいた。
 でも、こうして本人を目の前にすることになるとは……覚悟が、できてなかった」

 

 ノイマンはコーヒーカップをシンに差し出しながら、沈痛な面持ちでそう言った。

 

「どうも……あの時はただ憎しみしか湧かなかったけど、その後軍人になって、解りました。
 戦争ってのはそういうもんだって……」

 

 明らかにノイマンを気遣った発言だった。
 だが、ノイマンは逆に表情を険しくする。

 

「それは違う」
「えっ?」

 

 シンは、虚を衝かれたように、キョトン、として顔を上げた。

 

「君主制、民主共和制、社会主義、国のあり方にはいくつか形はあるけど、
 いずれも国体を支えるものは国土と国民だよ。そして、それを守る為に国防軍が存在する。
 軍隊が守るべきものを踏みにじりながらドンパチやって、それが正気の沙汰のわけが無いよ」

 

 ノイマンは連合出身だ。連合は資本主義・共和制国家の集合体であり、軍は基本的に国防軍だ。
 当然、連合士官だったノイマンは、然るべき教育を受けている。

 

「もっとも、オーブ軍は基本的に氏族の私兵だから、その限りじゃないのかもしれないけどな」
「それは…………」

 

 シンは言葉に詰まる。
 メサイア戦役までのZAFT軍もまた私兵組織だったが、デュランダル政権下では稚拙ながら国防軍の体をなしていた。
 シンの知っているZAFT軍組織は、少なくともオーブ軍よりは理性的で、シンはその中で軍人として教育された。

 

「話がずれたかな」

 

 ノイマンは手の仕種で、話題を変える、と表現して、そう言った。

 

「問題はキラだ。キラをストライクのパイロットとして連合士官の立場を与えたときに、我々には彼にこの事を教育する義務があった。でも、それをしなかった。
 艦内唯一のコーディネィター・連合初のMSパイロット万歳、ってな感じでね。
 君の家族の死には、彼と直接接することのある先任士官だった俺にも少なからず非がある」

 

 ノイマンはそういうと、謝罪するように目を伏せ、頭を低くした。

 

「そんな、それは大尉の一存ではないでしょう!?」

 

 シンは慌てたように手を振り、声に出した。

 

「ああそうだ。だからこそ悔やまれてならないよ。
 最初にラミアス大尉がアークエンジェルの指揮を採るといった時に、なぜ断固として反対しなかったのかってね。
 マリュー・ラミアスは技術士官だったんだ」

 

 技術士官も当然将校ではあるが、意識としては民間の技術者に通じるところがあり、技能優先で軍人としての資質は二の次であることが多い。
 A.D.時代まで多くの国の軍隊で、技術士官に直接の指揮権が与えられなかったのはこの為である。

 

「アークエンジェルには正規の将校も乗っていた。ナタル・バジルール少尉だ。
 女性だが、固い軍人だった。戦闘に参加することになった時点でバジルール少尉が指揮権を掌握しておくべきだった。
 ラミアス艦長は正直、指揮官の器じゃなかったよ。もっとも、そのことを知った時には、何もかもが遅かったんだけどね」

 

 ノイマンは、脳裏に過去をリフレインさせる。

 

「ヤキン・ドゥーエ戦役で我々が連合を離反したのは、あの時の連合のやり方に軍人として疑問を抱いたからだ。
 だけど、ラクスやキラには、それはかっこいいヒーローの行動のように見えたんだろうな。そんなことで行動できるわけが無いのに。
 大型戦闘艦にどれだけのクルーが乗っていて、俺達将校がそれに責任を持たなきゃいけないのかが、キラ達には見えなかったんだな」
「それは…………俺も、人の事は言えないです」

 

 シンはノイマンから視線を逸らし、床を這わせた。

 

「そうなのか?」

 

 ノイマンは軽く目を円くして、尋ね返した。

 

「俺がZAFTだった頃、連合の基地を破壊した事があったの、知りませんか?」
「あったな。あれはでも、どう見ても連合が悪いだろ」

 

 裏事情を知らないノイマンは、あっさりとそう言う。

 

「いえ、あの時、俺は帰還指示を無視して暴走してたんです。それで、上官に殴られました。
 戦争はヒーローごっこじゃないんだぞ、って」
「なるほどね、良い上官を持ったんだな、君は」

 

 自分とは対照的だ、と言わんばかりに、ノイマンはため息交じりに苦笑して、そう言った。

 

「もっとも、その上官は艦長や議長に逆らって、拘束されて、脱走しちまったんですけどね」

 

 今度はシンの方が皮肉めいた自嘲的な笑みを浮かべ、そう言った。

 

「!? まさか、その上官って……」

 

 ノイマンの表情が引きつる。

 

「コーディネィターの、それもプラント評議会議長の息子のくせして、若いうちから生え際がやばいあの人のことですよ」
「自分のことを棚にあげていけしゃあしゃあと言ってくれたな、あの蝙蝠ハゲ!」

 

 シンの言う『上官』が何者なのか分かり、ノイマンは一瞬、素で毒ついた。

 

「失礼……で、その後、だ。ヤキンの後、さすがに俺達も自分の身が可愛いから、偽名でオーブに潜んだんだけど、それも間違いだった。
 気がついたらラクスの私兵扱いで、やってることはどう見てもテロリスト。それでもそれに従わざるを得ない身分にされてた。
 ラミアス艦長自身はノリノリってオマケ付でね」

 

 ノイマンはそう言って、自嘲した。

 

「そりゃ、誰だって自分の身は可愛いですよ」

 

 シンは当然と言うように言う。
 軍人としての義務と責任を放棄する脱走行為は基本的に重罪だ。まして将校は責任が重い。良くて終身刑、場合によっては死刑だ。
 解っていて出て行くにはかなりの覚悟が要る。

 

「それでも、だよ。
 メサイア戦役が終わってから、どうしてこうなる前に連合なりZAFTなりに突っ走らなかったのか、何度も後悔したよ」
「…………」

 

 わずかに沈黙。

 

「まさか、その罪滅ぼしの為にジオンに?」
「理由のひとつとしてはね。他にもないわけじゃないけど。
 元連合の将校としてプラントでやっていけるかってのもあったし、もちろん、あそこにいたら俺は生涯一操舵手のまま飼い殺しだな、ってのもあった」
「…………」

 

 シンは、歪んだ笑み交じりの苦い表情をする。

 

「おかげでいまやヤキンの時のラミアス艦長より星は多いし、小ぶりとは言え艦長様ってワケだ」
「大方、公には叛乱軍扱いですけどね」

 

 シンが苦い顔で言う。

 

「上等だよ」

 

 ノイマンは言い切った。

 

「俺には俺の復讐がある。そのためには叛乱でも残飯漁りでもするさ。君がそうなようにな」
「……解りますか?」

 

 シンはジトリと汗をかき、そう言った。

 

「解るさ。あのピンク髪に人生メチャクチャにされたのは、君だけじゃない。だから……
 それが終わるまで、俺は生かしといてくれないか?」

 

 ノイマンは自嘲的に笑い、肩を竦め気味にそう言った。

 

「そんな、俺は大尉をどうにかしようなんて、思ってませんよ!」

 

 シンは驚いたような表情で、慌ててそう言った。

 

「第一、話聞く限りじゃ、大尉だって被害者みたいなもんじゃないですか」
「君から見たら立派に加害者だと思うけどな。まぁ、いいか」

 

 それまで自嘲気味に軽口をたたくようだったノイマンの表情が一気に引き締まり、険しくなった。

 

「その代わり、アークエンジェルとエターナルは絶対に沈める。クルーには悪いが、いざとなったらこいつでカミカゼしてでも沈める。元乗員として、ケジメってモンをつけさせて貰う」

 

 ストライクフリーダムとインフィニットジャスティス、そのMS2機とあわせて伝説の一翼を担っている2隻を沈める。ノイマンはそう断言した。

 

「大尉……」
「首魁の1人がそんな顔するんじゃない。力による復讐、結構じゃないか。報復ってのは国家と軍隊の一番原始的な存在意義のひとつだろ。それを否定しながら自分たちは好き勝手に剣を振るう連中が相手だ。せいぜい楽しいお祭にしてやろうぜ」
「はい」

 

 シンは力強くというわけでもないが、表情を引き締めて、はっきりとそう言った。

 

「シン……いや、アスカ少佐。お話できて良かった」

 

 立ち上がるシンに、ノイマンは表情と姿勢を正して、敬礼する。

 

「自分もです、大尉」

 

 シンもそう言って、直立不動の姿勢で返礼をする。

 
 

「発艦リンケージアップ、システム正常、クルーの皆さん、補給感謝します。
 シン・アスカ、インパルスII、出ます!」

 

 J・コイズミ型の後部に、艦の前後方向に対して斜めに装備された発着艦デッキに、ファルコンシルエット装備のインパルスIIが乗る。ガイドLEDが点灯し、リニアカタパルトがインパルスIIを射出した。
 『ジュンイチロー・コイズミ』に指揮官旗を翻すイザーク・ジュール特務少佐に呼ばれてやってきていたシンは、自ら連絡用の補給艇を護衛しながら、離れていく。
 その姿を、艦長室の防弾耐圧ガラスの窓越しに、ノイマンは見送っていた。
 そして、呟く。

 

「良いかキラ、お前がどんなに討ちたくないといっても、お前が討つ相手はお前とラクスが自分で量産しているんだ。
 お前らが武器と地位を捨てて出家でもしない限り、どう取り繕おうが、俺たちの先にも後にも、いくらだって出てくるぞ。それから……」

 

 そこまで言ったノイマンの表情に、あからさまな敵意が浮かぶ。

 

「ラミアス艦長、大人としての責任を果たそうともしなかった貴女には、その目障りな“脚付き”ごと、断固として退場していただきます。
 ……覚悟しやがれ」

 

   ▽   ▽   ▽

 

「クシュッ」

 

 プラント・アプリリウス1。
 軍オフィスの通路を2人連れで歩いていたマリュー・フラガは、女性らしい小さなくしゃみをした。

 

「どうした? マリュー。風邪か?」

 

 その2人連れの相手、夫にしてナチュラル最強のMSパイロット、ムウ・ラ・フラガ准将が、マリューを気遣って、訊ねる。

 

「ううん。きっと誰かが噂でもしてるんでしょ」

 

 軽い感じで苦笑して、マリューはそう答える。

 

「あてがあるのか?」

 

 冗談交じりに、おどけたような笑顔でムウは訊ねる。

 

「アンディじゃないかしら」
「バルトフェルドの旦那? また、なんで」

 

 マリューの答えに、ムウはキョトン、として、聞き返す。

 

「軍港のカフェテラスで会ったのよ。声をかけたんだけど、やたら元気なさそうにしていたの」
「へぇ、あの“砂漠の虎”がね……」

 

 意外そうに、ムウは言った。

 
 

 多くの重度記憶障害の患者の症例同様、現在のムウにとって『ネオ・ロアノーク』としての記憶は希薄だ。
 ムウにとってはアンドリュー・バルトフェルドとは今でも『砂漠の虎』と呼ばれた猛将であり、『ヤキン・ドゥーエ戦役以前のZAFTにしては』固い軍人、というのが印象だった。
 ただ、エクステンデッドの3人のことは良く覚えている。特にステラ・ルーシェの印象は強烈だった。
 自らもそれに荷担していたとは言え、ロード・ジブリールの権勢欲に弄ばれた挙句、実の家族のようだった3人を喪った事は、ムウとしての記憶の回復が忘れさせてくれるほど軽いものではなかったのだ。だからこそ、今のムウは、所謂ラクス信者の1人だった。ラクスの言う平和と自由を確立し、二度とあの3人のような存在を出してはならない。そう、決意していた。

 

「知らない顔というわけじゃないし、なんと言ってもエターナルの艦長だからな。この最中にそれは、心配だ」

 

 今までの零細テロ集団、あるいはろくに装甲車両も持たない地上の抵抗組織が相手ではない。
 プラントのそれをはるかに凌駕する高性能量産型モビルスーツに加え、宇宙軍艦、それもミネルバ型という弩級艦を建造する能力のある集団だ。一筋縄ではいかない。
 アークエンジェルやエターナルにも、いつお呼びがかかるかわからない。
 もっともそれでも、ムウもマリューも、最終的なプラント──というより、ラクスの勝利を微塵も疑ってはいなかったが。

 

「まぁ、戦闘になれば私情で能力が落ちる人じゃないと思うけどね」

 

 マリューは言った。
 旧ZAFT時代のバルトフェルドは、恋人であるアイシャを自隊につけるという公私混同とも取れる行動をしていたが、同時にアイシャは充分優秀といえる兵士でもあった。

 

「それなら良いんだが……それよりアークエンジェルは大丈夫なのか? ヤキン以来のクルーが何人か抜けてるんだろ?」
「100%万全、とはいえないけど、大丈夫でしょう」

 

 楽観的に、マリューはそう言った。

 

「それに、優秀な直掩機がついてるわ。そうでしょう、ムウ?」

 

 惚気半分、しかし残り半分は確実に真剣に、マリューはそう言った。

 

「やれやれ」

 

 ムウの方も、困惑気にしつつも、満更でもないといった様子だ。

 

「そりゃ保障するが……」
「けど、何よ?」

 

 苦い顔をするムウに、マリューは問い返した。

 

「いや、あの機体、稼働時間の泣き所が無くなったのは有難いんだが、以前にも増して重い機体になっちまってな」

 

 あの機体、とは、ムウの乗機としてアークエンジェルに配備されたモビルスーツ、ZGMF-X01A『アカツキ』の事だ。
 ペットネームが示すとおり、オーブ軍、というかアスハ家私有機ORB-01『アカツキ』のデッドコピーなのだが、パワーソースをパワーエクステンダーから核エンジンに換え、泣き所だった行動時間の制約を解消している。
 ただし、ただでさえバッテリーよりはるかに重い核分裂炉エンジンコンポーネントを乗せた上、その為のNJCまで搭載しているのだから、当然重くなる。その分スラスターなどもその最適化も含めて能力の向上が図られているが、全備重量で100tを越す機体はお世辞にも軽快とは言い難かった。

 

「っても、斬り込み役には不向きだが、アークエンジェルの直掩としてなら、これ以上の機体は無いな。
 だから、安心して良いぜ」
「そう」

 

 ムウが勿体つけるように笑顔で言うと、マリューも微笑んだ。
 しかしこのレプリカ・アカツキ、実は版権元であるはずのオーブにはその存在は知らされていない。
 ラクスも、ムウやマリューも含めたその周囲も、カガリがラクスのやることにケチをつけるはずが無いという『確信』という名の思い込みによって半ば正当化されていた。
 もっとも、製造を担当したモルゲンレーテはいまやその実体というべき部分はプラントが所有している。だからこそ製作できた。
 よもやその為にカガリ率いるオーブがジオンに接近し、プラントに叛旗を翻そうとするなどとは、この時点で予想していた人間は、プラントどころかもう一方のジオンにさえ皆無だったのである。

 

   ▽   ▽   ▽

 

「今ぁ、帰ったわよぉ」

 

 へべれけの酔っ払い女が、プラント国防軍官舎のある家の玄関先で響く。

 

「おかえりなさい、お姉ちゃん……て、どうしたの!?」

 

 メイリン・ホークは、自宅の玄関先ででろんでろんに酔っ払い、あまつさえなお安バーボンのボトルを抱えた姉――ルナマリアの姿を見て、素っ頓狂な声を出した。

 

「あによ、あたしがお酒飲んじゃいけないって決まりでもあんの?」

 

 23歳になった今でもアホ毛を立てている、赤毛の酔っ払いは、絡むようにメイリンを指差してそう言った。

 

「いや、悪くない……けど、いきなりだったから」

 

 メイリンは、あっけに取られたような表情で、そう言った。

 

「これが酔っ払わずにいられますか、ってんだぁ!!」

 

 自棄酒気味なのか、ルナマリアはぶっきらぼうにそういうと、その場で大の字に寝転んでしまった。
 それでもなお、ボトルは手放していない。

 

「疲れた、寝る」
「ってお姉ちゃん、いくらなんでも、こんなところで寝たら身体に悪いよ!」

 

 メイリンはそう言って、完全に論理回路の吹っ飛んだルナマリアを抱え上げて、背負う。

 

「でも、なんだか安心しちゃったかな。昔のお姉ちゃんに戻ったみたい」

 

 メイリンは安堵の顔になりつつ、背中のルナマリアにそう言った。

 
 

 メサイア戦役後、プラント国防軍に所属してからのルナマリアは、それまでとまったく別人のような、常に淡々と、かつ毅然とした振る舞いをする様になった。
 もちろん、家族など近い相手に対しても、である。その様相たるや、軍の中では『カミソリ女』と呼ばれている程だった。
 メイリンはそんな姉を心配していた。同時に、その変貌振りに恐れさえしていた。
 だから、ここへ来て突然ではあるが、タガをはずしたルナマリアを見て、メイリンは安堵したのである。
 だが、当のルナマリアが抱く感情は、それとはおおよそ反対のものだった。

 

「………………てた」
「えっ?」

 

 メイリンの背中で、酔い潰れかけた姉がボソボソと、何か呟いた。
 聞き取れなかったメイリンは、反射的に聞き返す。

 

「……シンが……生きてたのよ…………」
「!」

 

 メイリンの表情が、硬直する。
 その背中で、酔っ払いの顔は、ぐずぐずに泣き崩れていた。

 

「あの馬鹿……どこに行ってたか知らないけど……生きてたのよ」
「でもお姉ちゃん、シンは」
「昔通りのシンじゃない」

 

 メイリンの言葉をさえぎって、泣き顔のルナマリアは言う。

 

「不器用で、戦う事でしか自分を主張できない、不器用なシン。昔のままよ……」
「うん、だけど」
「解ってる、今度こそシンは殺される」

 

 シンは敵、と言うメイリンの言葉に先んじて、ルナマリアはそう言った。

 

「…………」

 

 しばらく逡巡した後、メイリンは言う。

 

「大丈夫だよ、だってキラさんとラクス様だもの。シンを殺したりしないよ」
「…………」

 

 ルナマリアは、しばらく間をおいた後、

 

「あたしがさせない……あたしがシンを助けるの。戦うのを止めさせる……
 それがあたしが出来る、あの時かばってあげられなかった、その償い…………」
「お姉ちゃん?」

 

 メイリンは、背負ったままの背中のルナマリアを軽く振り返る。
 姉は泣きはらした顔のまま、寝息を立てていた。

 

   ▽   ▽   ▽

 

「ハックション」

 

 ジオン公国首都・トーマス1の大公宮廷。
 その名に反して、どっからどう見ても飾り気のない鉄筋コンクリート製のオフィスビル然としたその建物の中。
 ジオン・アルテイシア・ダイクン大公の寝室で、同衾していたシンはクシャミをした。

 

「どうしたの? 夏風邪?」

 

 下着姿の、頭部前面・右上部の痛々しい傷跡がそれに“元”をつけてしまう美女は、心配気な表情で、シンに訊ねる。
 ジオンの“本土”たるトーマス・シティは、地球やプラントよりも太陽に近い公転軌道を周る。
 その為、コロニー内の気候は太陽の活動の変化にモロに影響される。
 コロニー自体に対策がしてあるものの、太陽の活動が活発になると、気休めよりはマシと言った程度にしかならない。
 その影響の典型のひとつが、気候調整システムの想定値を越えてコロニー内が真夏日になると言うものだ。
 もっともそれでも、今のトーマス・シティは、比較論的に楽園とも言える存在だったのだが。
 だからトーマス・シティで風邪を引くと言えば、それは夏風邪になる。

 

「いや、誰かが噂してるんだろ」

 

 鼻を指で擦りながら、やはり半裸姿のシンはそう言った。

 

「浮気はバレない程度にしてよね」

 

 アルテイシアは、苦笑しながらそう言った。

 

「そういう冗談は止めてくれよ」

 

 シンは険しい口調で言った。

 

「ごめん」

 

 アルテイシアは、目元でにやけながらも、眉を下げて即座にそう言った。

 

「今の俺には、復讐を取ってしまったら、アルテイシアしか残らないんだ」
「うん、解ってる。ごめんね」

 

 シンは真剣な表情のまま、アルテイシアの肩に手をかける。
 アルテイシアも今度は神妙な面持ちになり、謝った。
 そしてそのまま、どちらからともなく、抱きしめあってキスを交わした。

 

「この戦争が終わったら、私達は戦犯として裁かれるわね」

 

 キスが離れると、アルテイシアはそう言った。

 

「望むところさ。キラへの復讐が叶ったのならもう心残りはないし、叶わないのなら生きていたってしょうがない」

 

 その内容からすれば意外なほど、落ち着いた穏やかな口調で、シンはそう言った。

 

「でも、キラとラクスのことだから、死刑はないかもよ?」
「それなら、あっちが俺を殺したいと思うまで、何度でも挑んでやるよ」

 

 アルテイシアの問いかけに、シンはそう答える。

 

「私とシン、どっちか片方だけだったら、どうしようか?」
「俺が生き残れば、キラへの復讐の理由が増えるだけさ。終わったのなら、後を追う」
「そう、それなら、私が生き残ったときは、すぐに後を追ってあげるわ。キラの目の前でね」

 

 アルテイシアは、強かそうな笑みで、そう言った。

 

「本気?」

 

 その必要はないとでも言いたげに、シンは言う。

 

「私の目的もキラを倒すことよ。
 キラを倒せる可能性を持った唯一の人間がいなくなってしまったのなら、私自身も生きている意味はないわ」
「それもそう、か」

 

 アルテイシアとは対照的に、シンは穏やかな表情で、そう言った。

 

「でも、万が一にも勝っちゃったら、その時はどうしよっか?」

 

 悪戯っぽい表情になって、アルテイシアは訊ねる。

 

「万が一、程度にはあるわけか? 勝てる可能性」
「積極的に試合放棄してやるつもりはないから。
 このままラクスが地上への態度を変えなきゃ、万が一よりは高い可能性で、ありえるかもよ」
「そうかぁ……そうしたら、その後のことはアルテイシアに任せるよ。俺は君の駒で良い」

 

 シンは至極自然な表情と口調で、そう言った。

 

「それじゃ困るわ」

 

 しかし、アルテイシアは不満そうに口を尖らせて、そう言った。

 

「なんでさ」

 

 シンは、面食らったように聞き返す。

 

「私はシンの理想の国を作りたいの。たとえこのトーマスの中だけだとしてもね」
「そうか……」

 

 呟くように言って、シンは逡巡する。

 

「普通の国、かな」
「普通?」

 

 シンの言葉に、アルテイシアは反芻するようにして聞き返す。

 

「安全で、活気があって、当たり前のことが当たり前にある国」
「なるほど、ある意味、理想郷ね」

 

 シンの答えに、アルテイシアはクスッと笑う。

 

「理想郷、なんて言えるほど大げさなものなのかな」
「今のこの世の中じゃね」

 

 小首をかしげるシンに、アルテイシアはそう返した。

 

「そうかも、知れないな」

 

 シンはアルテイシアの肩を抱き寄せつつ、そう、呟いた。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 シン・アスカはなぜ戦い続けるのか。

 

 それは、ある人物のこの最近の最重要テーゼになりかけていた。
 その人物とは、ZAFT大統領武装親衛隊最高司令官、キラ・ヤマト元帥のことである。
 経緯はアスランに聞いた。だが、それでも、いやそれだからこそ、キラには戦い続けるシンが理解できなかった。
 プラント・アプリリウス1。
 武装親衛隊本部。最高司令官執務室……ではなく、士官食堂。

 

「彼は自分のような存在を作り出すのがいやで、そう言った世界を変えるために戦っていたんだって、アスランは言ってたんだけど、でも、それなら何で今、ラクスの敵になるんだろう。
 ラクスは平和で自由な世界を作り出そうとしているのに……」

 

 質実剛健とした国防軍のそれとは異なり小洒落たカフェテリア風のそこで、キラは相談相手にその悩みを打ち明けていた。

 

「気持ちはわかるが、そういう相談は、真っ先にラクスとしたら良いんじゃないかな?」

 

 その相談相手――アンドリュー・バルトフェルドは、苦笑交じりにそう言った。

 

「もちろん、そうしたよ」

 

 キラはため息混じりに答える。

 

『彼は、本当は弱い人間なのです。
 だから、デュランダルやアルテイシア公の様に、耳障りの良い道を示す人間に、従ってしまうのです』

 

 それがラクスの答えだったと、キラはバルトフェルドに説明する。

 

「でも、僕にはそれだけだとは思えないんだ」
「何故、そう思うんだい?」

 

 バルトフェルドは、穏やかな口調で問い返す。

 

「だって、それなら、何で常にラクスの敵なの?
 ラクスの言葉だって、彼には決して悪いものじゃないはずじゃないか。
 なのに、彼はいつもラクスの敵だよ」

 

 キラは、それで混乱しかけている、と仕種で示しながら、そう言った。

 

「多少は考えられるようになったんだな」
「うん……」

 

 バルトフェルドの不躾な呟きに、しかしキラは、神妙な面持ちで、頷いた。

 

「だが根本が間違っているね」

 

 キラの態度を意外に感じたバルトフェルドだったが、続けてキラにそう言った。

 

「え?」

 

 一瞬、意図が判断できず、キラは不安そうな表情で、バルトフェルドに訊ね返した。

 

「彼がラクスを敵視しているのは事実だろう。
 だが大元にあるのはね、キラ、お前に対する憎しみなんだよ」
「それは……」
「そのあたりの経緯も、アスランから聞いてないわけじゃないんだろ?」

 

 キラが言い澱んだことで、バルトフェルドはキラが何も聞かされていないという状態ではないことに気がつき、問いただした。

 

「オーブでの戦闘のことでしょ? でも、あの時はあれより仕方なかったじゃない」
「そうだ、仕方なかった。でもそれで家族を失った方は到底納得なんかできるもんじゃないよ」

 

 バルトフェルドはキラの言葉に同意はしつつ、感情論を展開する。

 

「解ってるよ。僕を憎み続けるんならそれでもいいよ。
 でも、失われた過去にいつまでもこだわり続けたってしょうがないじゃないか!
 それより、未来の為に戦うべきだよ」

 

 半ばラクスの受け売りである理論を、キラは展開する。

 

 ───それはそれで正しいよ、キラ。
  だが、過去を切り捨てる事はその人間の存在意義を否定することになるときもあるんだよ。
  何を守るべきなのか、それを決めていいのは、 奪った側の人間じゃなくて、奪われた側の人間なんじゃないのかい?
  僕も、1歩踏み違えていたらシン・アスカと同じ側の人間になっていたかもしれないな―――

 

 バルトフェルドは声に出さず、心の中でキラにそう問いかけた。

 

「とにかく、シン・アスカは過去を切り捨てる事ができない人間なんだ。
 お前が戦い続ける限り、あいつは敵だ。そう、思った方が良い」

 

 端的に言えば「諦めろ」と、バルトフェルドはそう言った。

 

「僕だって戦いたくて、戦ってるわけじゃないよ……」

 

 消沈したように、キラは言う。

 

「でも、今は戦い続けるしかない」

 

 バルトフェルドは、あっさりとした口調でそう言った。

 

「そう、だけど…………」
「それでも彼が気になるって言うんなら、彼を殺すんだね」
「ええっ!?」

 

 煮え切らない口調のキラに向かって、バルトフェルドは爆弾を落とした。

 

「彼がラクスの敵であることに納得が出来ないんだったら、それしかないじゃないか。
 戦争やってる、お前には力がある。だったら彼を殺せばいい」
「そんな! だって!」

 

 不殺を、少なくとも自分自身の中ではそれを貫いているキラにとって、それは受け入れがたい物だった。
 ブーステッドマンやエクステンデッドと違って、シンは理性を持たない存在ではない。
 少なくともキラはそう認識していた。

 

「自分で手を下すのが辛いなら、暗殺を命じたって良い。今の君には、部下をそう使う権限もあるんだからね」

 

 バルトフェルドは、あまりに剣呑な事実を、あっさりとキラに告げた。

 

「でも……そんなのって……やっぱり、やりたくないよ」

 

 さすがに、暗殺という言葉にいたって、キラはかなりの抵抗を感じていた。

 

「ま、別に強制するつもりはないよ。君は君のやりたいようにすれば良いさ。ただ、戦う覚悟だけは決めとけ。
 彼は────そう、彼は、お前やラクスを殺すことに何の躊躇いもない。
 覚悟がないなら、お前が死ぬぞ、キラ」
「う、うん……」
 困惑気にしつつも、キラは深く頷いた。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 その映像を見て、プラント初代終身大統領、ラクス・クラインは深くため息をついた。

 

「残念、ですわね」
「心中、お察しします。
 しかしこのままですと、ヤマト元帥は戦場で危険な状況に置かれるかと」

 

 机を挟んでラクスの前に立つ男――ハインリッヒ・ラインハルト大統領首席補佐官が、静かにそして重い口調でそう言った。

 

 キラ・ヤマト。
 平和の歌姫、ラクス・クラインを守る最強の剣。
 同時に、お互いもっとも信頼しあえるパートナー。
 恋仲でもあり、将来の婚姻の相手として各々もっとも近い相手。

 

 キラの喪失は、ジオンとの戦いが始まったこの最中では致命的とは言わないまでも一朝一夕に回復し得ないダメージになりかねない。

 
 

「『最適化プロジェクト』を、前倒しして推し進める必要がありますわね、キラの為にも……」

 
 

 ラクスは沈痛な面持ちで言ってから、執務机の上の電話機の受話器を上げた。

 
 

 【戻る】 【次】