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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第08話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:52:52

ボズゴロフ型潜水MS空母『ニーランゴ』。
 一応カテゴリー的には潜水艦の範疇に入るが、水中ノイズの低減や、潜望鏡深度でのレーダー・リフレクション低減など
まるきり考えていないそのスタイルは、あくまで水中用MSの母艦、もしくは揚陸作戦時の火力支援艦としての運用を行う。
 ────はっきり言って、2世紀は前に作られた、旧日本海軍の伊号四〇〇型にも劣る欠陥潜水艦なのだが。
「目標発見」
 ニーランゴのカメラ潜望鏡に、正面を行く『ブライトン』の姿が捉えられた。
「よし、発進しろ」
 ニーランゴの艦長が言う。
 VLSハッチから水中用モビルスーツが射出される。
 UMF-Y104LD『スニアオーツ』。外観はグーンに似ているが、推進装置をジェットポンプから電磁推進ジェットに変更した点と、
複座型である点が最大の特徴となる。他にもショルダーの装甲など、グーンに比べて耐久力を若干犠牲にしてでも、可能な限り
流線となるように設計されている。つまり、静粛性と、直線最大速度を高めた、隠密作戦用MSだ。
 グロッシーブルーに塗られた4機のスニアオーツは、高速でブライトンを追いかけていく。

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン 〜ジオン公国の光芒〜

 PHASE-08

 スニアオーツの発進は無事に終わったが、それとほぼ同時に、ブライトンの後部デッキから、ジェットハンマーを排した
エィロムス4機が水中に次々と飛び込んできた。
 ジオンは連合の技術をもつ。ZAFTが苦手とした対潜技術もまた然りである。 水中探知装置はレーダーではない。
 水は一定の周波数以上の電波を吸収してしまうからだ。VLF(超長波)帯のみ有効な直進性が期待できるが、通信には有効だが、
レーダー用には有効解像度が高くできずとても実用には耐えない。
 その為、潜水艦が実用兵器となって以来、水中探知は音響である。ニュートロンジャマーは音は遮れない。その為通常、
潜水艦はシンプルな流線を使用し水中ノイズ低減を意識する。ボズゴロフ型の構造は、潜水艦戦のなんたるかを知らない、
ヤキン・ドゥーエ以前のZAFTの頭でっかちが設計した結果だ。
 かつてアークエンジェル型やミネルバ型が、音響探知をできなかった欠点は、単純な方法で解決された。牽引式のソノブイである。
 もっともA.D.時代のようにまるっきり釣りのウキのような形はしておらず、有翼の巡航ミサイルのような形になっていて、
海面に潜り、水面でのキャビテーションノイズから逃れつつ、レシプロ航空機並みの巡航速度でも高精度な探知が可能になっている。
 この時も、ニーランゴの出す水中音を探知、直ちにエィロムス1個小隊を海中に送り込んだ。
 出撃直前に受信した位置情報を頼りに、敵潜水艦を発見する。
「プラントのボズゴロフ型潜水艦と確認、攻撃開始!」
 小隊長が指示する。
「敵水中MS、接近!」
「クソッ、こんなに早く発見されるとはっ」
 ニーランゴの司令塔では、艦長が忌々しそうな顔をする。
「魚雷発射管、対MS用短魚雷装填! 準備出来次第発射!」
 ニーランゴの魚雷発射管から、8基の短魚雷が発射される。
 だが、その魚雷はエィロムスに命中する手前で、次々に爆発させられた。
「何だと!?」
 艦長は驚愕の声を上げる。他の乗組員も、驚愕に目を白黒させている。
 水中用MSには、宇宙用、陸上用のMSとは異なり、CIWSのような装備は出来ない。
 これが従来の定説であった。だが、目の前の水中用MSは、魚雷を射撃装備で“叩き落した”。
 エィロムスには、対空兵装として頭部に24mm多条集束レーザーバルカンを装備している。複数の熱レーザー発振装置から出たレーザー光を、
偏光プリズムミラーで集約させ、一条にまとめて発射する兵器だ。荷電粒子ビームと異なり、初速≒光速なので、命中精度が高い。
欠点として、大口径にしようとするとイニシャルコストが高くつくことと、貫通力は高いが、侵徹弾道学上の破壊力は
粒子ビームや実体弾に劣ることである。
 だが、エィロムスのような水陸両用兵器の場合、もう1つメリットがある。粒子ビームと異なり、純粋に光線であるレーザーは、
水中でほとんど拡散することなく直進する。
 エィロムスの頭部CIWSは、ミサイルより遥かに遅い魚雷の弾頭を正確に叩き、“撃ち落した”。
 そして、エィロムスはその爆発の煙の中を突っ切ると、ニーランゴに向けて直進しつつ、背中のランチャーから4発ずつ、
合計16発の短魚雷を発射した。さらに、姿勢を直立の状態にすると、腕の36mm超伝導コイル・スピアガンを発射した。
 強化合金製の質量武器は、瞬時に魚雷を追い抜くと、決して厚くはない潜水艦の装甲を突き穿った。
 さらにそこへ、短魚雷が命中し、炸裂する。ニーランゴは無数の破口を開けられ、エアータンクの空気を大量に海中に吐き出し、沈んでいく。
 後は水圧で艦体が圧壊するまで、沈み続けるだけだ。
「くそぉぉっ、仇は、取ってくれよぉぉっ」
 すでにニーランゴの司令塔まで浸水が始まっていた。絶望的な状況で、艦長はそう言い残した。
「状況終了、全機、母艦へ撤収する」
 一方、エィロムス隊は、小隊長の言葉に、そろって機体を翻し、ブライトンへと向かった。

 ────しかし、ニーランゴの戦いは無駄ではなかった。
 ニーランゴとエィロムスとの戦闘による雑音により、一時的に牽引ソノブイは使用不可
能になっていた。
 そして、エィロムス隊がイオンスラスターでブライトン後部デッキに上がる頃、すでに、
4機のスニアオーツは、ブライトンの艦底に取り付いていた…………

 Feb・12・C.E.79
 ブライトンはオーブ首長国連邦、オノゴロ島の軍港に入港した。
 桟橋には、代表のカガリ・ユラ・アスハ、首席補佐官のタロウ・マチムラ、さらにレドニル・キサカ幕僚長といったオーブの首脳陣が出迎える。
その末席に、くすんだ青い髪を、膝上まで伸ばした、スレンダーの体つき、褐色に近い浅黒い肌の美女、レナ・セイランも居た。
 タラップから、仮面の美女、ジオン・アルテイシア・ダイクン大公が、背後にSP2人を伴って姿を現し、手で敬礼するように挨拶をする。
 カガリ以下、オーブ首脳陣は、それに返礼した。
 続いて、公国軍広報担当官キャサリン・ブリッツェン准将。相変わらずプッツン行った軍服を着ているが、重要書類の入った
アタッシュケースを抱えている。その姿に、オーブ の男性陣は目を釘付けにされた。それを横目で見たカガリが不快そうに、咳払いする。
 その間にさらにSP2人を挟み、大公直属特務隊司令代理、シン・アスカ特務中佐。シンは笑顔ではないが、かといって
露骨に不快感を表すでもなく、敬礼した後、タラップを降りていく。
 上甲板から双眼鏡を使い、その様子を見ていたレイは、ふむ、と感心したように声を出した。
 以前のシンなら、アスハの前に来れば不快感丸出しだった。
「成長したのか、それとも……」
 双眼鏡を覗き込んだまま、そんなことを呟く。
 その傍らで、クレハがバケツサイズのポップコーンをぱくついていた。
 アルテイシアがタラップをおりきると、カガリがマチムラと共に、その正面に進み出る。
 お互いに手を差し出し、握手を交わした。
「ようこそオーブへ。アルテイシア殿下」
「盛大なお出迎え、いたみいります、アスハ閣下」
 カガリの言葉に、アルテイシアも明るく答える。
「しかし……」
 気難しそうな顔をしていたのは、カガリの隣に居たマチムラだ。
「お国ではその、そうした格好で公式の場に出られるのが普通なのですかな?
 失礼ながら……殿下のマスクや、その……そちらの方の、お召し物など」
 マチムラはアルテイシアの仮面や、キャサリンの軍服を見て、そう言った。
「ブリッツェン准将の制服については、ジオン公国軍大元帥の名で指示した、正式の物です」
「はぁ……」
 アルテイシアの言葉に、マチムラは生返事をしつつ、表情で不快感をあらわにした。
「私の仮面の方は、ヤキン・ドゥーエの戦いで顔を負傷しまして、あまりに見るに堪えないものですから、
 常日頃よりつけております。顔は女の命、この仮面が私の素顔とお思いください」
「そういうことであれば、仕方ありませんな」
 アルテイシアの仮面については、マチムラはある程度納得したようだった。しかし。
 ────この声、どこかで聞き覚えが……
 逆にカガリは、アルテイシアの話し声を聞いて、訝しげに眉間を寄せた。
「アスハ代表、この後のスケジュールはどうなっていますか?」
 アルテイシアに訊ねられ、カガリははっと、我に帰る。
「ああ、ええ、長旅でお疲れのところ申し訳ないのだが、すぐに交渉に入りたい」
「事態は切迫しているという事ですね?」
「そういうことになるな……」
 聞き返すアルテイシアに、カガリは、歯切れ悪くそう答えた。
「?」
 シンは訝しげに首を捻る。何故オーブの事態が逼迫している? オーブはプラントと実質的に協調、MSの技術も秀逸で、
ひとまずジオンの攻撃を避けられたのなら、むしろ交渉を引き延ばして時間を稼ぐべきのはず。
 アルテイシア達ジオン首脳陣と、カガリ達オーブ首脳陣は、観光シャトル用のホバークラフトで、オノゴロ島から、
オーブ首都のあるヤラファス島に向かう。
 首都オロファト、代表官邸の大会議室に、テーブルを挟んで双方の首脳陣は向かい合っ
た。
「早速だが、本題に入らせていただきたい」
 カガリが切り出した。
「そちらの要求であるアスラン・ザラの身柄引き渡しに加え、我々は貴方の国家としての承認、それに食料などの支援の用意がある」
 カガリの提案に、シンは目を円くしてしまった。アルテイシアの方を伺おうとすると、同じ表情をしたキャサリンと顔が合ってしまう。
 だが、アルテイシアの表情は──口元でしかうかがえないが──涼しい物だった。
「その代価に、貴国は何を求められるのですか?」
 アルテイシアが訊ねると、良い難そうなカガリに代わって、マチムラが書類を読み上げるように言う。
「包括的防衛協定の締結、主力兵器……モビルスーツの供与……ですな」
「おいちょっと、待てよ!」
 思わず立ち上がりかけながら、シンは、乱暴な口調で問いただしてしまう。
「オーブにはプラント並みのMS技術があるはずだろうが! モルゲンレーテに!!」
 シンの言葉に、誰もが困惑の表情を浮かべる。
「アスカ中佐、まずいです」
 キャサリンが、シンを諌めにかかる。
 だが、ただ1人、アルテイシアは落ち着いたものだった。
「…………モルゲンレーテは、もう存在しない」
 歯切れの悪い、低い声で、カガリは言った。
「は?」
「なんですって?」
 あっけに取られるシン、思わずカガリを振り返って、目を円くして聞き返してしまうキャサリン。どよめく、オーブの首脳陣たち。
「いや、登記上は存在している。だが実体はない。ペーパーカンパニーだ」
 カガリが、補足するように言う。
「ど、どうしてそんなことになってるんだよ……」
 シンは、驚愕し唖然として立ち尽くしつつ、何かドロドロした嫌な予感を覚えた。
 モルゲンレーテは、かつて国営企業だった。メサイア戦役の後、戦後復興とブレイク・ザ・ワールドの余波により、
オーブの財政が悪化の一途をたどった為、モルゲンレーテの 経営状況も悪化した。そのため、C.E.74年4月に、民営・株式会社化し、
105%の増資を行った。新たな債権者は、主に、戦禍によるインフレを恐れた海外の投資家だった。
 それでも、以前議決権ベースで45%内外の株式を、オーブ政府及び有力氏族が保有していて、日本風に言うなら親方日の丸な
企業であることに変わりはなかったはずである。
「代表」
 アルテイシアの毅然とした声が、場に緊張を引き戻した。
「我々と防衛協定を結ぶ、つまり同盟を組むということですが、そうなれば、代表が前代表の頃から固持してきました、
 オーブの理念、これを曲げる事になりますが?」
 実際には3隻同盟としてパトリック・ザラ政権下のプラントと戦ったり、デュランダル“討伐”に向かったラクスやキラ達に
オーブ軍の身分を発行したのだから、すでに理念もへったくれもないのだが、アルテイシアはあえて訊ねる。
「今のオーブに、理念などあるものか」
 呟くように、低い声で、カガリは答えた。
「いや、その前に、この国は今、本当に独立主権国家なのか? プラントの保護国の間違いじゃないのか!?」
 カガリは、感情的な表情を見せながら、声を張り上げた。
「代表は、この国をプラントから解放する為にお立ちになられた、というわけですね?」
 アルテイシアは、カガリに訊ねる。
「そうだ。お父様の理念は守れなくても……少なくとも、まともな独立国家に戻したい」
 カガリは、アルテイシアを見据え、静かな口調で、しかしはっきりと言った。
「代表、誠に遺憾ではありますが、私達は最終的に、プラントに勝てるとは思っていません」
「なんだって?」
 ハッキリと言うアルテイシアに、カガリは驚いたように聞き返した。他のオーブの首脳陣からは、どよめきが漏れる。
 一方、ジオンの首脳陣は、誰もが覚悟を決めたような、神妙な顔つきになった。キャサリンさえ、である。
「我々は14あったプラントの1都市を支配しているにすぎません。プラントの全てを叩く能力は持っていません」
「ならば、何故、無謀と知って起ったのだ?」
 カガリは問い返す。
「起たずには居られなかったのです。戦争は一部のイデオロギストの為のオモチャではないということを、
 世界に知らしめる必要があったのです。切り捨てられる弱者が居るのだと」
「…………」
「ヤキン・ドゥーエから後の戦争は、異常です。本来の目的を逸している」
「…………」
 カガリには、何も言えなかった。それを助長した張本人の1人だからだ。
「だから、勝てないと解っていても、戦うのです」
 アルテイシアの言葉に、カガリは辺りを見回した。マチムラ、そして、レナと視線を交わし、頷きあう。
「…………オーブの判断は覆らない」
「よろしいのですね?」
「ああ……」
 アルテイシアが聞き返すと、カガリは即答した。
 アルテイシアは立ち上がり、カガリに向かって手を差し出す。カガリも立ち上がり、アルテイシアと握手を交わした。

 クレハはブライトンの上甲板に居た。ポップコーンは食べ終わり、空の紙バケツは足元に置いてある。
 ウミネコかカモメか、海鳥が飛び交うのを見つめていた。
「!?」
 クレハの瞳、その焦点が、海鳥の群れのさらにその先へと伸びる。
「来る……良くない物が、降りてくる……!」
 クレハはそう呟くと、紙バケツを拾い、小走りに艦内へと降りて行った。

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