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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第19話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:58:45

 静止軌道上で、2体のMSが対峙していた。

 一体は、TPRF-MS1105F『ジム・クロスウィズ』。
 『ジオニックシリーズ』と呼ばれる第一世代のTPRF形式量産モビルスーツで、ネモ・ヴィステージの後継に当たるナチュラル向けの機体だ。
 もう一体は、TPRF-MS2017F『ニュー・ジン・ソルジャー』。
 その名の通り、外見は、栄光の初代量産モビルスーツ、ZGMF-1017ジンに似ている。
 頭部のみ印象が異なり、印象的だったトサカ型のアンテナはやや小ぶりのロッド型に改められ、
モノアイのほかに、Gタイプと同様の補助カメラ、センサー類の方形状の出っ張りが、モノアイ直上に存在している。
 
 ジンからゲルググシリーズに至る、ZAFT系の主力モビルスーツを総ざらいし、極力現用の部品を用いて、
ゲルググシリーズより一世代分強化されたモビルスーツ。
 高性能だが、装甲以外はほとんどリファインとなり、コスト高となったTPRF-MS2200X、
仮称『ゲルググ・ハイマニューバ』を抑えて、ジオン軍次期主力モビルスーツの座を勝ち取った。
 もっとも、開発の経緯はジム・クロスウィズも同様で、ストライクから、ネモ・ヴィステージ、ウィンダムZeに至る
連合系主力モビルスーツの見直しによって生まれた。ただ、こちらには競作機はなかった。
 ジム・クロスウィズは、旧式化した従来型に変えてズープアップしたオプティマイズド・エールストライカーを、
ニュー・ジン・ソルジャーは、ファトゥムストライカーをそれぞれ背負っている。

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン 〜ジオン公国の光芒〜

 PHASE-19

「はぁぁぁぁっ!!」
 ジム・クロスウィズの方から、仕掛けた。
 ファルシオン・ビームサーベルを抜き、正面、上段から一気にニュー・ジン・ソルジャーに斬りかかる。
 ニュー・ジン・ソルジャーは、振り下ろされる直前で、それを素早くかわした。
「!」
 V字型を描くように、ジム・クロスウィズのファルシオンは、斜めにニュー・ジン・ソルジャーを斬り上げる。
 ニュー・ジン・ソルジャーは、反射的にシールドでそれを受け止める。
 バチバチバチバチッ
 シールドにはビームシールドジェネレーターも内蔵されている。ビームシールドがファルシオンの刀身ビームとぶつかり、激しく火花を散らす。

 ニュー・ジン・ソルジャーは、スラスターを吹かして背後へと一気に下がり、間合いを取ろうとする。
 ジム・クロスウィズもそれを追おうとする。ニュー・ジン・ソルジャーは、その僅かな間にファトゥムストライカーのベースパックに
搭載されたエクストレームラケルタ・ビームサーベルを、その両手に抜き、そして体勢を直しつつ、連結させた。
 再び、ジム・クロスウィズが上段から斬りかかって来る。それをニュー・ジン・ソルジャーがシールドで受け止める。
 ラケルタの刀身ビームが、ジム・クロスウィズの胴を薙ぎにかかる。しかし、直前でファルシオンを引き、アンチビームシールドで受け止めた。
 見た目にはギリギリだが、搭乗者の感覚はそうではない。
「!」
 間合いが離れた瞬間、ニュー・ジン・ソルジャーが、ファトゥムを切り離した。ビーム・ラムが発生し、ジム・クロスウィズにつっこんでくる。
「させるかっ!」
 ジム・クロスウィズは、ビームガンの射撃をシールドで受け止めつつ、腰元のウェポンラックから、
セイバーエッジ・レーザーヒートブーメランを投擲する。ファトゥムとブーメランが絡み合いながら火花を散らし、ファトゥムは軌道を失う。
「甘い」
 一瞬の隙に、ニュー・ジン・ソルジャーが突っ込んできた。ラケルタでジム・クロスウィズを薙ぐ。今度こそ文字通り紙一重、
ジム・クロスウィズのシールドが受け止めた。
「どっちが……」
 ジム・クロスウィズの右腕が、ファルシオンを握ったまま、ニュー・ジン・ソルジャーを殴りつけてくる。
レーザーヒートナックルが、ニュー・ジン・ソルジャーの胸部装甲を焼く。
「終わり!」
 ジム・クロスウィズが、ニュー・ジン・ソルジャーを両断しようと、上段にファルシオンを振り上げた時。
「あ」
 ニュー・ジン・ソルジャーは、瞬時にラケルタの連結を解除すると、一方を放ったまま、ジム・クロスウィズの胸部に突き立てた。

………………。

『SIGNAL・LOST、PLYER1・WIN!』
 コンピュータ音源が、そう宣言する。
 トーマス8、ジオン公国軍統合施設群、モビルスーツ高等訓練所。
 作動による振動まで再現するシミュレーターの中から、コニールは降りてきた。
「あー、やっぱ旧ZAFTのトップエリートには早々かなわないかー」
 コニールはそう言って、自嘲気味に苦笑する。
「いや、こちらもかなり際どかった」
 向かい合うもう一方から降りてきた、レイはそう言った。
「ファトゥムを瞬時に潰されるとは思わなかった」
「ああ、うん、ネモもそうだけど、GAT系の機体は搭乗者支援が多いから、それのおかげ」
 コニールは苦笑気味の笑顔のまま、そう言った。
「しかし、それでもとっさの判断力はたいしたものだよ」
 レイは少し焦ったような表情を見せつつ、言う。
「一騎当千のトップエースにそう言われると、少し照れるな」
 コニールは照れくさそうに顔を紅くしつつ、苦笑しながら言った。
「いや、君ももうその1人だ」
「え?」
 レイの言葉に、コニールはキョトン、とする。
「共同とは言え、インフィニットジャスティスを落としているんだ、アスラン・ザラの乗る。それも量産機で、格闘戦で」
「あの時は頭に血が上ってて、半分何してたか覚えてないんだよね」
 コニールはくすぐったそうに笑いつつ、頬をぽりぽりとかく。
「とりあえず突っ立ってるのもなんだし、冷たいものでも飲まない?」
「あ……そ、そうだな」
 コニールの提案で、2人は自動販売機の設置されている休憩室に向かった。

 お互い缶飲料を買い、タブを起こす。コニールは一度大きく煽る。
「ところで、何でわざわざあたしを誘ったの?」
 コニールは、レイに訊ねた。
「いや、それは、かなりの使い手だと聞いているし……」
 レイは、らしくなく、言葉を濁しがちに言う。
「それでも、ZAFT時代からのパイロットなら、あたしよりいい使い手はたくさんいると思うんだけど」
「そ、そんな事は、ない……多分」
 レイがどもりがちに言う。
 すると、コニールは突然、不愉快そうに表情になり、まくし立てた。
「ああっ、じれったいなーもう! 女の方からきっかけを作ってやってるんだから、気づけよ!」
「え?」
 レイは、文字通り目をまん円くした。
「話はシンから聞いてるんだっての! お前があたしにコナかけたがってるって!」
「コナ……っ、い、いや、確かに、そういうつもりは、あったが……」
 普段クールなレイが、半分取り乱している。元々レイは、こうした感情とは無縁だった、
自分の方から遠ざけてきたのだ。今更女性を口説こうと思っても、精神的にも知識的にも 準備が出来ていなかった。
「けど、君にも他に好きな男がいるかもしれない、し」
「いるよ。と言うか、いた」
 コニールは少し不貞腐れ気味に、腕を組んで。言った。

「いた?」
 過去形。レイは首をかしげる。
「もしかして、戦争で……?」
「いや、生きてるよ。生きてるけど、もう別の相手がいるんだよ。あたしより美人で、お互い気心知れてる」
「ああ……それは……」
 自嘲気味の苦笑で飛ばすコニールより、レイの方が重そうな表情をした。
「ただ、あたし的には正直、どうだったのかなぁ〜。結構本気だったつもりだったけど、今にしてみると、
 無理にでもふんづかまえるほどには本気じゃなかったのかも」
 コニールは懐かしい思い出を思い出すかのように、苦笑しながら言った。
「……君は、この戦争が終わったらどうするんだ? いずれガルナハンに?」
「解らない。またどっかでゲリラでもやるんだろうけど、ガルナハンに戻るかな」
 コニールは腕を組んだまま、少し真剣な表情に戻って、レイの問いに答えた。
「…………もし、この戦争に、勝ってしまったら? その時は?」
「それが一番難しいんだよなぁ……帰りたい気もするし、かといってここの仲間と別れるのも辛いし」
 ため息混じりに、コニールは答えた。
「…………良く考えたら、この質問は無意味だったな」
 レイは低い声で言う。
「え?」
 コニールは、顔をレイの方に向けて、キョトンとした。
「君が何処に行こうと、俺が付いていけば良いだけの話だ」
「! そ、それって……」
 コニールの顔が、ほんのりと赤くなる。
「ミス・コニール・アルメタ。俺と交際して欲しい」
「んー」
 目を細めてコニールは僅かに逡巡する。
「あたし、あんまキレイじゃないよ? いろんな意味で」
「構わない」
 レイは断言した。
「俺だって君の過去はある程度知っている!」
「あ、そうだったけ。一応お前も、ガルナハンの英雄の1人……か」
 レイの力強い言葉に、コニールは視線を上げて、思い出すように言った。
「じゃあ、お互い、なんか不都合が出るまで、ってことで」
 コニールはそう言って、握手を求めるように手を差し出した。
 レイがそれに答えるようにコニールの手を握ると、それをコニールはぐいっと引っ張った。予想外の動きに、レイは前のめりになる。
「!」
 そのまま、レイはコニールに唇を奪われた。

「ほらね、誰も騒ぎゃしないでしょ?」
「ホントだ」
 トーマス1、市街地。
 エネルギー生産用コロニーであるトーマス・シティでは、商業地の規模はそれほど大きくはない。だが、その規模に反して、
商店街は人でごった返し、活気を帯びていた。
 
 シンとアルテイシアは2人で歩いていた。所謂“お忍びでデート”というわけである。
「一般の人は私の素顔、ほとんど知らないからね」
「なるほど、仮面の顔と役割が逆って言うことか」
「そゆコト」
 ジオン本国、トーマス・シティにおいては、アルテイシアの素顔を知るものは、その事情に深いものだけということだ。
 顔の傷は目立つだろうが、長引く戦乱の世で、顔や手に負傷の痕のある人間など、珍しくもない。
 逆にシンの方は、特徴的な紅い目を隠す為、サングラスをかけていた。
 これまた、太陽に近いL1に位置するトーマス・シティでは、太陽の煌きを嫌って、屋外ではサングラスをかけている者は少なくない。
「でも、マジ、こんなことしてて良いのかね?」
 辺りをキョロキョロと見回しながら、シンは言う。
「初期の戦略目標は果たしちゃったし、あっちも動きがない以上、今は戦力の補充と将兵の休息が必要よ」
 アルテイシアは、地の口調でそう言った。
 
 宇宙、地上の双方で甚大な損害を負ったプラントはもちろんだが、ジオンもシンドバッド作戦完遂までに、最終的に
本国防衛の予備戦力の一部まで地上に投入していた。戦力の拡充がなされなければ新たな戦略目標の設定も出来ない。
 ただ、ある意味タイミングとしてはよかった。戦争第1世代のゲルググシリーズ、ネモ・ヴィステージから、第2世代の
ニュー・ジンシリーズ、ジム・クロスウィズへとスムーズに生産が移行できた。
「あたしはともかく、シンはずーっと戦い詰めじゃない。オーブで一緒だったときぐらい?なんだから、少しは羽目を外してよ」
 微かに怒ったような顔と口調で、アルテイシアは言う。
「羽目を外したいとは思わないけど、アルテイシアと一緒にいられるのは嬉しいな」
「〜〜〜〜!!」
 シンが真顔でそう言うと、アルテイシアの顔がか〜っと真っ赤に染まった。
「ばか〜!」
「でも本当なんだから」
 シンは苦笑気味に言い、肩を摺り寄せる。
 アルテイシアはさらに紅潮した。

「そうそう、似合ってるよ、その服」
「う〜、ありがとう」
 恥ずかしそうに唸りつつも、そう言った。
 アルテイシアは紅いサマーセーターに、タイトのミニスカートを履いている。
「でもさ、あ、話戻るけど」
「なに?」
 シンが真面目な表情になって聞き返すと、アルテイシアはキョトン、として聞き返した。
「俺はいいけど、アルテイシアの方こそ、留守にしちゃって良いわけ?」
「大丈夫、情報収集は専門の人間がやってるんだし、何かあれば連絡入れてくるわ」
 アルテイシアは、くすくすと笑いながらそう言った。
「ケータイ1本で呼び出される大公殿下か」
「時代よ、時代」
 連れだって歩く。
 衣料店に入る。女性向の方ではない。
「シンってば、ほっとくと着たきり雀になっちゃうんだから」
「別に良いのに……」
 めんどくさそうに言いつつも、シンは良いように着せ替え人形にされる。
 
 再び、街を歩く。
「しかし、すげぇ人通りだな。トーマスの市街地なんてさほど大きいわけでもないのに……とても戦時中とは思えない」
「逆よ」
 シンがあたりの様子をキョロキョロと見回しながら言うと、アルテイシアがあっさりと答えた。
「戦時中って言うのは、経済成長状態であることが多いのよ。国が雇用を保証してくれるわけだからね。本土攻撃受けちゃうと別だけど」
「デュランダル議長がいた頃のプラントも、そう言えばそうだったなぁ」
 シンは、懐かしそうに言う。しかし、すぐに何かに気付いたように、アルテイシアに視線を戻した。
「でも、それじゃ何で今のプラントは、経済的に冷めきってるわけ?」
 プラントは増税に次ぐ増税で、市民生活は圧迫され、経済活動は停滞していた。トーマス・シティがジオン公国として
独立できた背景には、そんな事情もあったのである。
「先が見えないからよ。戦争目的が曖昧すぎて」
 険しい表情で、アルテイシアは言った。シンの表情も険しくなる。
「労働力は次々に兵士として取られ、人材の供給は不安定だし、そんな戦争を5年以上も続けてる国に、
 誰も投資なんかしたがらないわ。しかも、鶴の一声で資産が没収されかねないお国柄よ?」
「それじゃ、ラクスがプラントのトップにいる限りは……」
「改善されないでしょうね。それこそ、ラクスがいつぞやの偽ラクスとでもすりかわらない限り」
いくらか喧嘩腰の口調で言うアルテイシア。シンの気はさらに重くなった。シンにとって、プラントは第2の故郷だ。
 そこに住む人々が苦しんでいるというなら、気持ちは重くなる。
「アスハ代表にはああ言ったけど」
 シンの暗い表情を見たアルテイシアは、シンの左腕を抱きしめるようにしながら、不敵に笑って、言う。
「シンをそんな顔にさせられてるなんて思うと、真面目に勝ちを狙いに行きたくなるわね」
「おいおい、本気かよ」
 シンは呆れたように言った。
「6:4ぐらい、6が本気」
「半分以上かよ」
 シンはそう言って、ため息をついた。

 Jun・17・C.E.79。
 ジオン公国とプラント、両者がお互いに一朝一夕には埋められない戦力の空白を負ったことで、
戦線は膠着状態となり、戦争は一時的な休止状態になっていた。
 しかし、あくまで一時的なものである。この間も、両者は生産施設をフル回転させ、新しいモビルスーツや軍艦を送り出していた。

 戦火が再び宇宙(そら)を燃やすまで、さほどの時間はかからなかった────

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