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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第20話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:59:16

衛星軌道ステーション。
 ヤキン・ドゥーエ戦役で月での拠点を失ったZAFTが、月軌道艦隊の補給拠点として建造した、静止衛星軌道上の大規模ステーションである。
 L1開戦の後、ジオン公国軍は『J・コイズミ』を中心とした強襲艦隊を送り込んでこれを包囲、接収して自軍の拠点としていた。

 アスラン・ザラは、士官用の個室に監禁されていた。
 破格の待遇ではあったが、ジオン本国、プラント本国のいずれからも隔離できる場所と言う事で、選ばれたのである。

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン 〜ジオン公国の光芒〜

 PHASE-20

 数ヶ月前、オーブ上空でのジオン軍とストライクフリーダムの戦いがあった数日後。
 オノゴロの軍刑務所に収容されていたアスランの前に、カガリは現れた。
 
 周囲は看守とカガリのSPが固め、何れも銃口をアスランに向けている
「カガリ、一体どうしてこんな事を」
 アスランは、ようやく顔を見せた友人に、詰め寄るように迫った。しかし、その途端、SPに突き飛ばされる。
 そして、後ろ手に手錠をかけられた。
「アスラン・ザラ。貴様を国際法上の犯罪人としてジオン公国政府に引き渡す」
 険しい態度で、国家元首自らそう宣告した。
「なんだって……!?」
 アスランは、驚愕の表情でカガリを見上げる。
「ジオンと組んだのか!? オーブが? 何故そんなことを!!」
 愚行を、と言うかのように、アスランは立ち上がり。再びカガリに詰め寄る。
「困った事があるなら、ラクスやキラに相談すればいいじゃないか! どうしてジオンなんかと……」
 アスランが声を上げると、カガリはいっそう冷たい目で、アスランを睨んだ。
「連行しろ!」
 カガリは荒く言い、アスランが看守に両脇を固められたのを見て、踵を返した。
「キラも、ラクスもオーブを放ってなんかおかないぞ! ジオンをこの国に入れたら、必ず……」
 カガリの背後に向かって、アスランが必死に呼びかける。だが、カガリが振り返る様子はない。
「既に手遅れですよ、ザラ閣下」
 代わりに、彼女の傍らにいた、褐色肌の女性がそう言った。
「君は……!!」
 レナ・ディノ。拘束前の、アスランの補佐官だった女性だ。

 彼女はカガリの紹介で、アスランの補佐官につけられた。
 アスランがアレックスと言う偽名を使っていたときのディノと言う姓は、元々彼女の家のものを、借りた物だと言う。
 なるほど確かに、身内がいた方がが戸籍の捏造も容易いだろうし、それに彼女がハーフコーディネィターであるところを見れば、
コーディネィターのアスランが隠れ蓑にするのはちょうど良かっただろう。

「既に、オーブはプラントからの攻撃を受けました。両国は交戦状態にあるというのが、我々の認識です」
「なんだって!?」
 アスランは、再び目を向いて驚いた。
「カガリ! 一体どういうことなんだ!? 戦争を始めたのか? オーブの理念は、ウズミの教えはどうしたんだ、カガリ!」
 アスランが叫ぶように問いただす。やがて、カガリは立ち止まったかと思うと、僅かに振り返って、呟くように言った。
「……オーブの理念は、オーブをお前らの食い物にさせるためにあったわけじゃない」
「カガリ、何を言って……!?」
 ジオン側の人間が、やはりジオンのSPを伴って現れた。それは……

「シン!」
 シンはカガリと、事務的な言葉を淡々と交わす。
「シン! どうしてだ! オーブを巻き込むのか、カガリが憎いんじゃなかったのか!? これがお前の、
 オーブに対する復讐なのか? 答えろシン!」
 感情的なアスランの声は、徐々に、ZAFT時代に上官だった頃の、高圧的なものへと、変化していく。
 シンは、哀れな物を見るような目で、アスランを見た。
「俺はもうアスハを憎んじゃいないし、オーブそのものに復讐しようだなんて気はさらさらない。
 全部はアンタ自身がまいた種だよ。もっとも、アンタ達は刈り取るんじゃなくて吹き飛ばすしか出来ないんだったな」
 そう、言い放つ。
 そしてシンは、カガリの方に視線を戻した。
「アスラン・ザラの引渡しを確認した」
「うん」
 躊躇いの様子どころか、毅然とした様子で頷くカガリを見て、アスランは一瞬、言葉を失った。
「連行しろ」
 ジオンのコーディネィターのSPが、がっしりとアスランの脇を固める。
「それと、シン・アスカ……個人的に、謝罪させて欲しい」
 カガリが、シンにそう言った。シンは目を円くする。アスランはそれに輪をかけて驚愕し、一瞬硬直した。

「お父様も私も、どうしようもなく愚かだった。国を焼いて理念など、あるはずもないのに……」
「お気になさらないでください、代表。もう自分は、気にしていません」
 シンは笑みさえ浮かべて、カガリにそう言った。
「カガリ! シン! 頼む、俺と話をしてくれ、俺の話を聞いてくれ……」
 ジオンのSPがアスランを引っ張って行き、それをオーブの看守が銃を構えて護衛する。
 アスランはそのまま2人から引き離されると、囚人移送用のコンテナに放り込まれた。
 オノゴロからカグヤまでの間でも脱走しかねないという、アスランの為に特製された代物である。
 そのままカグヤ島へ運ばれ、シャトルで衛星軌道ステーションへと移送された。

「カガリ……シン……」
 ベッドに腰掛けたまま、アスランは呟く。このステーションに監禁されてからの数ヶ月、そのことばかりを考えていた。
 オーブがジオンと組んだ、何故?
 プラントがオーブを攻撃した、何故?
 信念を捨ててしまったシン、理念を捨ててしまったカガリ。何故、何故、何故?
 
 アスランは平和が欲しかった。その気持ちは純粋なつもりだった。
 だから一度は敵対したキラと戦うことを止め、ラクスに手を貸し、実父を手にかけてまで一度は地上に平和をもたらした。
 自らを兵士として戦わせるデュランダルに懐疑心を抱き、ラクス達が彼の危険思想を暴けば、共闘してそれを討った。
 その後は、ジオンが台頭するまで、順調だった。少なくとも、アスラン自身の元にはそう報告されていた。
 ラクスの治めるプラントと、カガリの治めるオーブはより密接な関係を保ち、お互いに、平和的に発展していけるはずだった。
 何故カガリはジオンと組んだ? オーブの理念を捨ててまで……
 何故シンに謝る? 復讐にとりつかれ戦い続ける人間と何故親しくする。
 わからない、わからない、わからない……
 ふと顔を上げると、小さな窓ガラス越しに、母なる青い大地がうつった。
「地上は……今、どうなってるんだろう?」
 オーブは攻撃を受けたと言っていた。まだ無事だろうか?
 キラは、ラクスはオーブを討つ事を決めたのだろうか?
 そう、思いを馳せていた、その時。

「!?」
 鈍い振動が、ステーション全体を揺すった。
 アラートが鳴り響き、赤い警報灯が点滅する。
「何が起こったんだ!?」
 ズズズ……ズゥゥン……
 アスランが思わず立ち上がった時、今度はより直接的な衝撃と、轟音が響く。一瞬、照明が明滅した。
 ────ステーションが攻撃を受けている。プラント軍か?
 アスランは、ドアの電子ロックが解除された表示になっているのを見た。
 先ほど、電力が瞬断した時に、ロックがリセットされたのだろう。
 チャンスだ。アスランはそう思い、ドアから外に飛び出した。
 案の定、ステーションの中はパニック状態で、アスランが脱走した事を気にかけるものは居なかった。
 移送されて到着した時の記憶を頼りに、ポートの方へ向かう。その付近に、広いホールのような空間があった。
 ────予想が正しければ、そこが……

 ポートへと躍り出た時、再度爆発音が響き、激しい振動が、アスランを壁に叩きつけた。そのまま、転がる。
「!」
 姿勢を立て直すと、そこには、ネイビーブルーのジオン公国軍標準塗装に塗られた、がっしりとした量産MSの姿があった。
 ゲルググ・イェーガー。アスランはそれを確認すると、そのコクピットへと跳んだ。
 ハッチを空けて、シートに潜り込む。コクピットの仕様はZAFT系のものと大差なかった。起動スイッチを入れる。

 Generation
 Unsubdued
 Nuclear fusion power source
 Drive
 Assault
 Module
 COMPLEX

 ZGMF-1200F GELGOOG

 薄暗いホール……MSハンガーの中で、モノアイが点灯する。
 コンディションチェック、異常なし。邀撃に備えて整備してあったのか。
「行くぞっ!」
 アスランはゲルググ・イェーガーのバーニアを吹かすと、MS出入口のシャッターを突き破り、ステーションの外へと出た。

 Jun・21・C.E.79。
 衛星軌道ステーションに配備される、ニュー・ジンシリーズを積載した、小型のコロニー間カーゴが、
ジオン本国、トーマス・シティから向かってきていた。
 間もなく、ステーションとのドッキング作業に入る、その時────

数条のビームと実体弾が、カーゴを貫いた。
 たちまちカーゴは爆炎に包まれ、船体は崩壊していく。
「ミラージュコロイドかっ!?」
 ステーションの指揮官達が叫んだとおり、ミラージュコロイドの粒子を払いながら、
 カルメ型MS搭載機動戦闘艦『ラーレ・アンデルセン』が姿を現した。
 一方、ステーション防衛の任務に当っていた、バーツ型護衛艦『マレーネ・ディートリッヒ』とサジ型巡洋警備艇6隻は、
直ちに戦闘機動に移行し、ラーレ・アンデルセンに艦首を向ける。
 ステーションからも、間もなく用途を終えるはずだったゲルググシリーズが、邀撃の為に飛び立った。

 サジ型はモビルアーマーをさらに大型化し、コロニー間巡航能力を持たせたような代物で、
そもそもはプラントの市警備隊が使用していたものを接収した物だ。使い勝手が良い為『サジ型』として固定し増備を続けた。
 バーツ型はサジ型の艇体を延長し、動力をミズノ式炉化し、長期行動の能力を高めた物である。共に、MS運用能力は持たない。
 警備艦隊がラーレ・アンデルセンを捉えかけた瞬間、強力なビーム砲が、艦隊を薙いだ。
「な…………」
 サジ型警備艇が3隻、一瞬でデブリと金属ガスに変えられた。戦艦の備砲をも超える火力。
だが、それはラーレ・アンデルセンから放たれた物ではなかった。
「モビルスーツ!? だが、こんな火力は……っ」

 
 居た。ラーレ・アンデルセンの前に立つ、青と白のMS。

 輝くミラージュコロイドの翼を、神々しく広げ、しかしその存在を隠すわけではなく、堂々と立つ。

『MS隊、突撃せよ!』
 味方のMSが、青と白の敵新型MSに向かって、突撃を敢行する。たとえパイロットがキラ・ヤマトだとしても、
ジオンの核融合MSは、無力ではないはずだ。
 だが、それを嘲笑うかのように、新型MSはフルバーストを敢行した。
 胸に装備された、MGX-10000『アポリュオン』複相復元ビーム砲。見た目は2門のビーム砲だが、ループ磁力線を用いて、
砲の直前の空間をコンデンサーに見立て、荷電粒子を合流させ、艦砲並みの大破壊力を実現する。
 もちろん、2門の独立した砲として、掃射をかけることも出来る。
 さらに、腰部や肩部に装備されたMIF-F80『ヒュドラ』複相高荷電ビーム砲6門、M181TE『ドラウプニルII』長射程4連装ビームガン2門、
さらにEQFU-6X『クリュティエドラグーン』8機、それにMA-M2021『アステロイド』ビームライフル2基。

 これらが一斉に、ゲルググシリーズの群れに降り注いだのである。
 その半数が、蒸発した。撃墜されたのではない。一瞬で蒸発したのだ。

「だが、これだけの重火力機、間合いを詰めてしまえば、格闘戦などっ」
 火線から逃れたエールストライカー装備のゲルググ・ハウント1機は、同様の3機のゲルググ・イェーガーを引き連れ、
回り込むようにして一気に詰める。
 だが、新型MSは、間合いに入った瞬間、ビームサーベルを抜くと、造作もないようにゲルググ・ハウントの四肢を切断した。
「なっ!?」
 軽く捻るように動く。続くゲルググ・イェーガー3機の斬撃を簡単に避けた。
 MIF-801『エクストレームラケルタ』、奇しくもジオンと同名となったその新型サーベ ルを振り、1機を同じように四肢をもぎ取る。
 肩のヒュドラ・ビーム砲で1機の両腕と、スラスターをもぎ取る。そして残りの1機は、クリュティエドラグーンでその四肢をもいだ。
「!」
 ロックオンアラート。
「もらったぁぁっ!」
 ランチャーストライカー使用のゲルググ・イェーガー2機が、新型MSの相対的上方から、アグニIIを構える。

 アグニIIは射撃されたが、新型MSを逸れていく。ミラージュコロイドの光の翼が、千切れただけだった。
「なっ」
 ゲルググ・イェーガーの隙をつくように、2機の、別の新型MSが姿を現した。モノアイ、量産ベースの機体。
 ZGMF-314A、『ギャン・カビナンター』。
 動力源は核分裂エンジンだが、これをコスト度外視で量産機に採用し、ゲルググシリーズやネモ・ヴィステージと対等以上の運動性を確保した。
 何れもイージーウィザードを装備し、ビームサーベルを構え、砲戦型のゲルググ・イェーガーがグラディウスを抜いたところで、
それを嘲笑うかのように、貫き、斬り裂いた。

 新型MSのコクピットでは、目元を覆う特殊なヘルメットのパイロットスーツを着たパイロットが、そのシートに収まっていた。
 延髄の神経から、直接コンピュータを操作する新インターフェイス、『エンゲージ』と『スキャナ』。
 武装選択やドラグーンの操作など、これまでコンソールを手で操作して行っていた作業を不要とし、
さらに乗員の動作パターンから高度な操縦補助まで行える。
 ただし、これを使用するには、不確定要素の限りなく小さい、洗練された神経の持ち主でなくてはならない。
 つまり、“完成された”スーパーコーディネィターにしか扱えないのだ。
 クレハ・バレルがプラントのMSに乗り、ジオンの拠点を襲う要素は、今のところ、皆無といっていいほど存在しない。
 したがって、このパイロットは────

「まだ、抵抗するって言うの? やめて欲しいな」
 1機のMSが、ステーションから飛び出してきたのを見て、そこに照準を合わせる。
 フルバースト。

「キラ、ラクス────!!」

飛び出してきたゲルググ・イェーガーのパイロットは、縋るようにその名を叫んだのを最後に、ゲルググ・イェーガーごと一片残らず蒸発した。

 軌道ステーションは爆炎に包まれる。プラント時代のものをそのまま使っていたチャンネル管型原子炉から
水蒸気を吹出しながら、衛星軌道を外れ、突入コースを取り始めた。
ユニウス7よりも遥かに小さい上、突入しながら受けたダメージで崩壊して行った為、地上にはいくつかの部品の、
グラム単位の極小さな燃え残りが人口非密集地帯に落下したに留まる。

『敵艦隊、逃走します』
 ギャン・カビナンターに乗る、部下が言う。
 マレーネ・ディートリッヒと、サジ型1隻にまで減った警備艦隊は、ラーレ・アンデルセンに背を向けて、
ジオン本国の方向へ向かって急速に離れていく。
「逃げる敵は追う必要はないよ」
『いいんですか? こちらの姿を……』
「ジーク、これは命令だよ」
 部下の反論に、不愉快そうに、しかし呟くような口調で言う。
「いいじゃない。僕と“フリーダム”は誰にも負けないって、証明してあげるよ」
 そう言って、ニヤリと笑った。
『そうですな』
 ジークも、送信の向こう側で、楽しそうに言う。

 ZGMF-X30F/Ps『ケルビックフリーダム』────

 智天使の名を持つ炎の剣は、この日、ついに振るわれた。

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