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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第22話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:00:19

「イザークと共同作戦というのも、久しぶりだな」
 ジオン公国軍、大型MS搭載戦闘艦『ミシェイル』
「貴様、この艦に載るのは初めてになるんじゃないのか?」
 イザークが気が付いたように訊く。
「そうなんだけどな。ま、マリアと基本的には同型だし、乗ってる分にはミネルバともそう大差あるわけじゃないし」
 シンはかすかに笑いながら言う。
 地上での激戦を終え、『マリア』は入渠、オーバーホールが終わったばかり、現在試運転中。
 今回の作戦行動には、本国艦隊旗艦を務めていたミシェイルが、マリアとその任務交換し就く事になった。
 マリア第1小隊として乗り込んでいたシン達は、ミシェイルに間借りすることになった。
 エスコートはジュンイチロー・コイズミ型MS搭載巡洋艦2番艦『ミツマサ・ヨナイ』。
 ネームド・シップである『J・コイズミ』と共に、L1会戦以来の兵だ。さらに同じくL1会戦以来の苦労人である特設MS空母『ベイオウルフ』、バーツ型護衛艦6隻を引き連れる。
 バーツ型の1隻は、雪辱に燃える『マレーネ・ディートリッヒ』だった。
「観測艦からの報告、敵情に異常なし、とのことです!」
 男性の青年、否、まだ少年といって良いチーフオペレーターが、そう報告してきた。階級は少尉、名はジョージ・グラディス。言うまでもなく────
「よし。『トルネードストール作戦』、状況開始!」
 イザークが、そう号令をかけた。

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン 〜ジオン公国の光芒〜

 PHASE-22

 『マレーネ・ディートリッヒ』が必死に持ち帰った戦闘データと記録映像は、最初、ジオン公国軍首脳部を震撼させた。
「プラントの新型は、化け物か!」
「白い悪魔だ……」
 軍歴は長いがMS搭乗経験はない、エザリアシンパの元ZAFTや、旧連合出身の幕僚達は、艦隊を薙ぎMS部隊を蒸発させるケルビックフリーダムの姿に、当初口々にそう言い、唖然を通り越して呆然とした。
 だが、自らMSパイロット、それも歴戦の勇士であるシンとイザークは、間もなく、ケルビックフリーダムを看破した。
「やはり格闘戦向けの機体ではないな」
「ですね、倒そうと思ったら懐に飛び込むしかないな」
 イザークの言葉に、シンが同意する。

「バカな、エールストライカーのゲルググをひと薙ぎしているぞ!」
 旧連合出身の、初老の幕僚が、大型液晶モニターを指しながら言った。
 イザークはやれやれといった顔で頭を抱えたが、シンは不快さを示すこともなく説明する。
「反応はクイックに見えますが、動作自体は決して速くないですよ。見てください。ゲルググに対してビームサーベルのリーチでどうにか届いてる程度だ」
 そう言って、ビデオを巻き戻させる。確かに、ゲルググ・ハウントに入れている第1撃はラケルタの切っ先を間接に押し当てている程度のものだった。
「奇襲と大火力で兵が浮き足立ってしまったのは無理もないが、もし冷静に、もう1歩突っ込んでいれば、撃墜とはいかないまでも多少は損傷を与えられたはずだ」
 イザークも説明する。
「な、なるほど」
 その幕僚は息を呑むようにして、納得の言葉を出した。
「それより厄介なのは、こっちですね」
 シンは、その後に続く、ランチャーストライカー装備のゲルググ・イェーガーによる射撃が、逸れていくシーンを見て、そう言った。
「ああ……」
 先ほどシンに反論された幕僚が、気付いて言う。
「おそらくこれは『ゲシュマイディッヒパンツァー』だ。GAT-X252『フォビドゥン』が搭載していた奴だが、それよりさらに改良されているように見える」
「アグニIIを防ぐって事は、MSやMAの射撃兵器は、ゼロ距離でもない限り無効と考えたほうが良さそうですね。艦砲でも防ぐかも」
「断言は出来んが、あり得るね」
 シンの言葉に、その幕僚も同意して深く頷いた。
「つまり、懐に飛び込んでの斬り合いしかないわけだが、なにせあの大火力だ、しかも乗っているのはキラ・ヤマト。となれば、これに対処できるMSとパイロットは……」
 途中まで忌々しそうに言っていたイザークだが、だんだんとその表情を和らげると、その視線をシンに向けた。
「わかってます。こんなふざけた機体に対向できるのは、エンデューリングジャスティスしかありません」
 敢えて、パイロットは自分、とは言わなかった。
「くっ、新型レジェンドが完成していれば、俺もキラ退治に参加できるものを」
「退治て、鬼ヶ島の鬼じゃないんですから」
 忌々しそうに言うイザークに、シンが妙に落ち着いたツッコミを入れる。
 TPRF-XMS1F。ミーアのドラグーンをさらに改良した物を搭載する為、“新型レジェンド”と呼ばれていたが、性格的にはジャスティス+補助スラスター能力付ドラグーン、つまりいっそデスティニーに近い。
「それで、次の戦略目標ですが……」

 議事進行役の、黒服の青年士官が切り出した。
「議題の“新型”フリーダムの捕捉、可能ならば撃破、ということになりますが、それともう1つ、殿下の方から新たな作戦目標が提案されています」
 議場がざわついた。アルテイシア大公自ら作戦目標の提案? しかもこの火急の事態の最中に……。
 プラントのお寒い状況から比べればマシとは言え、現時点ではジオンも独裁以外の何者でもない。
 国家のトップの野心は、虻蜂取らずの徒労、戦力の浪費に終わる可能性がある。
 幕僚たちの困惑、シンとイザークの戸惑いを他所に、アルテイシアは自ら立ち上がり、説明を始めた。
「この作戦目標は、キラ・ヤマトとの対決に当って、その後方の憂いを取り除く物ですわ」
 そうして、仮面の女大公は、口元で微笑んだ。

 Jun・26・C.E.79。
 L1会戦以来の宇宙での大規模作戦、その目標は────
「レーダーに感、反応パターンは、カルメ型機動戦闘艦と思われます」
 カルメ型はそれ以前から計画されていたとは言え、大戦に入ってから本格的に就役した新型艦だったが、ジオンはそのアウトラインを既に手に入れていた。
「数は!?」
 苛立ったような口調で、イザークが聞き返す。
「1です。ミラージュコロイド展開中。見えてないつもりです」
「げ、もう来たのかよ」
 シンは驚いたような、ウンザリした様な口調で言った。
 単艦で行動するカルメ型、ミラージュコロイドを展開しているという事は、こちらの存在には気付いているはず。
 とすれば、キラの座乗艦、『ラーレ・アンデルセン』に間違いない。
「コンディションレッド発令、状況は131のSだ」
 イザークはジョージにそう怒鳴り気味に言ってから、シンに視線を向けた。
「シン、不本意だが今回は頼んだぞ」
 言葉ではそう言いつつも、まなざしは真摯、神妙な物だった。
「わかりました」
 言いつつ、2人そろって艦橋を飛び出して行った。

「敵艦隊捕捉しました、いかがいたしますか?」
 ラーレ・アンデルセン艦長、ZAFT大統領武装親衛隊ククルス・ヒラガー中佐。
『やるしかないよ』
 ZAFT大統領武装親衛隊・最高司令官元帥、キラ・ヤマトは、モニター越しに、そう呟くように言った。
『仕方ないじゃない? 彼らが平和と自由を脅かすんだったら』
 キラは、幾分憂いを感じさせる表情をしていた。だが、
『例え相手がフレイでも、僕はやるよ』
 表情を引き締めて、そうきっぱりと言った。
「は、御武運を」
 ヒラガー艦長は、そう言って、モニター越しに見えるように小さく敬礼した。キラも返礼する。
 そして、キラはメインコンソールに向き直った。

 Gunnery
 United
 Nuclear fusion and
 Deuteron
 Advanced
 Maneuver
 System

 ZGMF-X30F/Ps CHERUBIC FREEDOM

「キラ・ヤマト、ケルビックフリーダム、出ます!」
 リニアカタパルトから打ち出され、自由の智天使は、神々しい光の翼を広げた。

「もう一度確認しとくぞ」
 コクピットに収まりながら、シンは通信越しに、小隊メンバーに言う。
「クレハは俺の援護を頼む。特に、奴はドラグーンを持っているから、そいつを抑えてくれ」
『了解しました』
 真剣な表情で、クレハは言う。
「エンスルトは、チャンスがあったら奴を狙撃しろ。効くかどうかわからんが、当ったら御の字だ」
『了ぉー解』
 無茶が好きなナチュラルパイロットは、サムズアップ付でそう答えた。
「コニールはエンスルトの援護。ギャンとか言う新型量産機にまとわり付かせるな」
『わかった』
 コニールは真剣な表情で答える。
「その代わり、奴が無闇矢鱈に撃ちはじめたら、巻き込まれないようにとっとと逃げてくれよ」
『わかったよ』
 逃げろ、と言われるとプライドを刺激されるのか、コニールは少し不貞腐れたような様子を見せつつ、渋々従う。
「よし、じゃあ、行くぞ!」
『了解』
 他の3人の言葉が、揃って返ってきた。
「シン・アスカ、エンデューリングジャスティス、出る!」
 ガイドLEDが格納庫側からデッキ前方に順次点灯していき、リニアカタパルトが作動、エンデューリングジャスティスはミシェイルの右舷カタパルトから射出される。
「クレハ・バレル、ミーア、行きまーす!」
 ミーアがそれに続く。ピンク色に染まったVPSの補助翼を広げ、なびかせる様に飛ぶ。
「エンスルト・ラインハルト、ジム・クロスウィズ、出させてもらいますぜ」
 右腕に巨大なレール・スナイパーライフルを取り付けたジム・クロスウィズが飛び出す。
 かつて連合で試作されたライトニングストライカー、それから増設バッテリーを外し、大容量コンデンサーを仕込み、レールガン弾体を大質量化の上、さらに初速を高速化したものだ。当たれば大型戦闘艦でも一撃で木っ端微塵という代物である。
「コニール・アルメタ、ジム・クロスウィズ、出るっ!」
 最後に、エールストライカーを背負ったコニールのジム・クロスウィズが射出された。
 ほぼ、並行して。
「俺たちの任務は、シンの小隊に他の敵MSを寄せ付けないことだ、先走るな、落とされるだけだ、わかったな!」
『了解!』

 部下の返答を確認してから、なぜか左肩の装甲に標準塗装と同じネイビーブルーの四角いステッカーを貼った、ニュー・ジン・バンシーが右舷カタパルトの発艦待機位置につく。
「イザーク・ジュール、ニュー・ジン・バンシー、出るっ!」
 エンデューリングジャスティスを追い、イザークはエールストライカー装備のニュー・ジン・バンシーを飛ばした。
 正面に無数の、スラスターの輝点。その先頭でひときわ神々しく輝く、光の翼。
「ん?」
 そのコクピットに収まるキラも、ジオンの艦艇からMSが飛び立ち、こちらに向かってくるのが見えた。
「…………やっぱり、向こうはこっちが接近するのが見えてるんだ」
 理由はわからないが、と、さすがにキラは気付いた。
「艦長、気をつけて。ミラージュコロイドはアテにならないかもしれないよ」
『了解しました。難儀なことですな』
 やがて、お互いの姿が、スラスターの輝点だけではなく確認できるようになった、まさにその瞬間。
「!」
 イザークは、光の翼の前に、光の球が発生したことに気付いた。
「散開しろ! アスカ隊、本隊から離れろ、急げ!」
 イザークは叫び、自らも急機動で横に逸れる。
 空間を、ビームの奔流が薙いだ。
「シホ! 無事か!?」
『私は無事ですが……』
 高機動力のおかげで密集陣形への直撃は避けたものの、それでも何機かがフルバーストに巻き込まれて、消滅した。
「聞きしに勝る怪物ぶりだな……」
 イザークは呆れたように言う。
 だが、ふと気付けば、光の翼を広げるMSに、4機のMSが一列に突っ込んで行くのが見えた。
「クレイジーはこっちも同じか!」
 不敵に笑いながら言い、自らも機体を飛ばさせる。
「シホ、ついて来いっ!」
『了解ですっ』
 一方、先制のフルバーストを芯から外されたケルビックフリーダムだが、キラにはまだ、微塵も焦りの様子はない。
 固定装備に加え、さらにビームライフルも抜き、さらにフルバーストで敵を凪ごうとした。
 しかし、その時、キラの目に、否、誰にも信じられないような光景が見えた。
 護衛艦マレーネ・ディートリッヒが、MSの後を追いかけるように突っ込んできたのだ。

 キラが呆気に取られた一瞬の隙に、艦首の240mm超銃身型重金属イオンビーム・リボルバーカノンを乱射する。
 何機かのギャン・カビナンターが薙ぎ払われた。ミサイルまでばら撒くように発射してくる。
 そして、キラ自身に出来た隙は、彼にとって別の災厄を呼び寄せた。
「!?」
 正面から打ち下ろされてくるそれを、腕に装備されたビームシールドで受け止める。
 バチィッ
「! しまった!」
 キラは、以前と同じ過ちをしたことに気が付いた。ジオン軍が多用するレーザーヒートソード、実体剣はビームシールドでは受け止められない。
 ビームシールド・ジェネレーターがスパークと共に沈黙した。
 そして、目の前に現れたのは、キラにとっては親しみさえ感じさせる、紅いモビルスーツ。
「……ジャスティス?」
 ヒュッ。
 振るわれるレーザーヒートソードを、ケルビックフリーダムは最小の動きでかわす。
「アスラン!? アスランなの!?」
 キラは、攻撃してくるエンデューリングジャスティスに向かって、必死に呼びかける。
『何、寝ぼけたこと言ってるんだ、アンタは!』
 シンが怒鳴り返してくる。
「シ……ン…………?」
 その間も、エンデューリングジャスティスはケルビックフリーダムに向かって斬撃を次々に繰り出す。
 だが、ケルビックフリーダムはその鈍重そうな外観と裏腹に、紙一重でそれをかわしていく。
 ギリギリなのではない。キラは意図して最小限の動きでかわしているのだ。『エンゲージ』の効果だった。
 一瞬、エンデューリングジャスティスに大振りな動きが出来た瞬間、ケルビックフリーダムは、スラスターを吹かして下がる。
 エンデューリングジャスティスのコクピットに、ロックオンアラート。
 上に飛び上がるように避ける。アポリュオン複相複元砲が、一瞬前までエンデューリングジャスティスのいた空間を薙ぎ払う。
「この、化け物が……っ!」
 シンは毒つく。その途端、さらに複数のロックオンアラート、だがすぐにクリアの表示が出る。
 エンデューリングジャスティスを取り囲もうとしたクリュティエドラグーンに、スタードラグーンが絡み付いていた。
 キラは反射的に見上げた。もう1機、MSがいる。その姿はフリーダムに似ている、いや、それが背後に広げる、まるで女性の長髪のようなピンク色の補助翼は────
「ラクス、……?」

 キラは見とれたが、それもほんの一瞬のこと。
 ビュッ、 シャッ!
 シンの、エンデューリングジャスティスの斬撃を、反射的にかわす。
「シン……っ」
「キラ・ヤマト……っ」
 究極の2本の剣は、ついにぶつかり合った。

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