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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第24話

Last-modified: 2012-11-21 (水) 00:13:51

「シン・アスカ、エンデューリングジャスティス、出るっ」
 『ベイオウルフ』の、文字通りとってつけたようなリニアカタパルトから、エンデューリングジャスティスは飛び立つ。
 無残な姿で事切れていたキラのそれは、シンの脳裏に焼きつきかけていたが、戦いはまだ終わっていない。否、ようやく本来の作戦目標に入ろうとしていた。
「クレハ・バレル、ミーア、いっきまーす!!」
 『ミシェイル』の右舷カタパルトから、クレハの駆るミーアが射出された。

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン 〜ジオン公国の光芒〜

 PHASE-24

『おい、シン、大丈夫か?』
 ミシェイルから発艦してきたコニールのジム・クロスウィズが、エンデューリングジャスティスの横に並び、コニールが訊ねてくる。
 小隊を組み替え、再びコニールを自身のウィングマンとしている。エンスルトはミーアの露払い役、スナイパー装備を外してエールストライカーに変更している。
「あの程度で気が滅入るほど柔じゃない」
『それが心配なんだっつーの』
 コニールは呆れたように言った。直情型のシンの事だから、あんなモノを見たら逆上して、大暴れして自機を壊しかねない。
 もっともコニールは、それを直接見たわけではなかったが。
「大丈夫だよ……ああ、大丈夫だ」
 シンは、自分に言い聞かせるように言った。
 『トルネードストール作戦』における戦略目標。それは、ズバリ、プラントの“領土”、アーモリー・シティである。
 プラント本国の12の都市から、地球、それにジオン本国トーマス・シティとを挟んで反対側のL4宙域に浮かぶアーモリー・シティは、工業生産コロニー、中でも軍需工業の中核となっていた。
 しかし、ジオン独立宣言・L1会戦以降、アーモリー・シティは、プラント本国との連絡が上手く行かなくなっていた。その最短経路にジオン本国が横たわっているのだから当然である。
 もっとも安全な航路は、L3点を経由する地球公転軌道航路だが、いくらなんでも遠回りに過ぎる。
 幸いにしてジオンはこれまで輸送航路破壊には積極的ではなかった為、L2点経由の航路を用いて、両者は連絡していた。
 地上戦での敗北に対する報復として、真っ先に静止衛星軌道ステーションを狙ったのもそのためだ。24時間に1回、L2点に接近するジオンの拠点があったのではたまったものではない。
 もっともこれに対してすぐジオンも行動に出る。月面の自由都市コペルニクスに対し補給拠点としての機能の提供を要請、これに断られると、武力を持ってコペルニクスを制圧した。
 コペルニクスは、元々ジオンとの間に中立協定は無かった。加えて、以前には『アークエンジェル』を寄港させ、あろうことかその搭載モビルスーツを内部で活動させた過去があった。その為プラント自身と、親プラント国家の中でも極端な国以外、この行為を批難する勢力は皆無だった。
 ────閑話休題。
 アーモリー・シティは現在もプラントの重要拠点だったが、ジオン公国軍がプラント国防軍に充分対抗可能な規模の宇宙艦隊を就役させた今、プラント本国の防衛の為、アーモリー・シティの防衛には充分な戦力を割けなくなっている。────この、ジオン側の読みは、果たして当たっていた。
 艦艇は、弩級艦であるソロネ型(改アークエンジェル型)、ヴィクトリアス型(改エターナル型)はなく、ジオンでは巡洋艦と呼ぶサイズの、ナスカ型、さらにはすっかりロートルと化したローラシア型が数隻、配備されているだけだった。
 ただ、モビルスーツは、その生産を引き受けていたとあって、ギャン・カビナンターが多く配備されている。
 ニュー・ジンシリーズ、ジム・クロスウィズは、ギャン・カビナンターが想定した性能よりもさらに1世代進んでいたが、それでも従来のように、ワンサイドゲームが期待できるほどの性能差ではない。
 ランチャーストライカー装備を装備するニュー・ジン・ソルジャーのペアの支援射撃を受けながら、ニュー・ジン・バンシー、ニュー・ジン・ソルジャー各1機で構成された、エールストライカーのペアが飛び込んでくる。ギャン・カビナンターが1機ずつ、それに向かってくる。
 ビームシールドがニュー・ジンシリーズのファルシオンを受け止め、あるいはギャン・カビナンターのMA-848HDビームサーベルをニュー・ジンシリーズのシールドが受け止める。
ニュー・ジン・バンシーの脇腹に装備される重金属イオンビーム・リボルバーカノンが火を吹く。ギャン・カビナンターのアドバンスドスクリーミングニンバスがそれを散らす。
だが、反射的にギャン・カビナンターが退きかけたところへ、ファルシオンが突き立てられる。ギャン・カビナンターがスクリーミングニンバスの出力を上げ、ニュー・ジン・ソルジャーのシールドの、ビームシールドジェネレーターを焼き切る。反射的にシールドが下がったところを、ギャン・カビナンターが上段から切り裂く。
 ジオン側がやや圧しつつも、プラント側の抵抗も激しい。
 ミシェイルは突出し、その火力で敵MSを牽制、味方の支援を行っていた。
 一方。
 アーモリー1からは、ギャン・カビナンターを月軌道艦隊やプラント本国へ運ぼうとしていたカーゴが、ローラシア型2隻のエスコートを受け、宇宙港ゲートから脱出を試みていた。
 大口径のイオンビームが、先頭のローラシア型『キルヒホッフ』を貫く。爆炎に包まれた。ジュンイチロー・コイズミ型『ミツマサ・ヨナイ』が、バーツ型護衛艦2隻を率いて襲撃する。バーツ型の艦首のリボルバーカノンが火を吹き、カーゴはたちまちのうちに蜂の巣になって火炎に包まれた。殿のローラシア型『フランクリン』がゲートを出て、ジオン遊撃艦隊にその艦首を向ける──より早く、M・ヨナイのイオンビーム主砲がフランクリンを貫いていた。
 J・コイズミ型は緩い楔形の艦体に、戦闘機キャノピー型(ガラス面は広くないが)の艦橋、そして旋回砲塔3基を持ち、そのうち1基は下方後部に装備している。死角が少ない。
 ナスカ型『パラケルスス』が遊撃部隊に迫る。だがその狙いが定まる前に、M・ヨナイは旋回砲塔を向ける。4門の105cmイオンビーム砲が火を吹く。パラケルススは一発も撃つことなく、貫かれて火達磨になった。
 艦艇対艦艇では分が悪いと悟ったか、アーモリー1のMSゲートが開き、数十機のドム・ハイマニューバが湧いて来た。
 だが、その途端、閃光が走り、ドム・ハイマニューバの群れは、長く引く閃光に切断され、あるいは礫のような閃光に撃ち抜かれ、破壊されていく。
 M・ヨナイの相対的上、前方に陣取った、ミーアのフルバースト。従前のフリーダム系のそれは“1発、1発”だが、ミーアのそれは一定の連続的なものだ。ドム・ハイマニューバが薙ぎ払われる。
「うぉぉぉっ」
「どっせーいっ!」
 残ったドム・ハイマニューバを、エンデューリングジャスティスが、さらにジム・クロスウィズが両断した。
 フルバーストを続けるミーアに、ギャン・カビナンターが回り込むように襲い掛かってくる。
「くっ」
 そのうち1機を、エンスルトのジム・クロスウィズが受け止めた。ビームサーベルを、シールドで受け止める。もう1機のギャン・カビナンターが、横からジム・クロスウィズを薙ごうとする。──刹那、無数のビームとレーザーがそのギャン・カビナンターを貫く。
スタードラグーン。
 直接、ミーアにギャン・カビナンターが襲い掛かる。1機目の上段からの斬撃を、クレハはシールドで受け止める。フリーダム系の発展型だが、ミーアは物理シールドを装備している。
「!」
 もう1機のギャン・カビナンターが横から薙いで来る。それを、ショルダーの、アンチビームバックラーで受け止める。
「くっ!」
 一瞬、不利な体勢にクレハは表情をゆがめた。だが本当に一瞬だった。腰のデュランダル・レーザーカッターが目の前のギャン・カビナンターを貫き、その能力を奪う。クレハはミストルティン・ビームサーベルを抜き、もう1機のギャン・カビナンターを袈裟斬りにする。
「やれやれ、どっちがエスコートかわからんぜ、これじゃあ」
 エンスルトは、2機……ドラグーンも含めると実質3機のギャン・カビナンターを同時に仕留めたミーアを見て、ぼやくように言った。
 拮抗していた戦況は、ミシェイル搭載の一騎当千のメンバーが加わったことにより、一気にジオン側に傾いた。
「はぁぁぁっ」
 イザークは1体のギャン・カビナンターをファルシオンで貫くと、そのまま押し切って、もう1体のギャン・カビナンターに押し当てる。
 スクリーミングニンバス同士がバチバチと弾け、無理やり押し付けられた2機は、揃って破裂するように爆散した。
「ジュール隊、アーモリー1に突入するぞ!」
『了解!』
 シホを始め、小隊員の返事が返ってくる。イザークのニュー・ジン・バンシーを先頭に、僅かに遅れてシホのニュー・ジン・ソルジャー、そしてランチャーストライカーを装備したニュー・ジン・ソルジャー2機がそれに続く。
 イザークが宇宙港のゲートに飛び込もうとした時、中から猛スピードでナスカ型1隻が飛び出してきた。『モンテーニュ』。
「ミツマサ・ヨナイ! 奴を逃がすな!」
 イザークは通信に向かって怒鳴る。
『了解!』
 ジュール隊のランチャーストライカー機2機もアグニIIを必死に射撃するが、高速のナスカ型は、機動力でそれを振り払いながら、すぐに有効射程外に抜けていく。モビルスーツでの追撃は覚束ない。
 M・ヨナイは全速でモンテーニュを追い、主砲を射撃する。だが両者共に高速機動中でなかなか命中しない。やがて速力で劣るM・ヨナイは、モンテーニュに振り切られてしまった。
「この、腰抜けがぁ〜!!!!」
 久しぶりのイザーク節が炸裂した。
 モンテーニュが去っていくと、突然、それまで頑強だったプラント軍部隊は、その抵抗が弱くなり始めた。降伏してしまう者も多く出始めた。
「やはりあれが、指揮官だったか……」
 イザークは外からの報告を受けつつ、小隊を伴ってゲート内に進入していく。
 エア・ロックを閉鎖し、内部に進入しようとした途端。
 ピ────ッ!!
 警報と共に、サブコンソールのモニターに警告表示が踊る。

 “Dangerous environment. Situation :Toxic gas.”

 イザークの目が、驚愕に見開かれた。
「毒ガス、だと!?」

 エアロックの内扉が開き、シン達の小隊はモビルスーツに乗ったまま、アーモリー2の中に進入する。
 警報。『状況毒ガス』の表示。
「イザーク……だめだ、アーモリー2も同じ状況だ」
『多分、アーモリー・シティ全体がそうだろう……』
 シンの声に、イザークの絶望的な声が返ってくる。
 スラスターを吹かし、内部へと進む。
『う、わっ……』
 コニールの声。
 工廠、市街地、官舎街。その全てに、死体、死体、死体…………
 被害者は皆一様に喉をかきむしり、おう吐するような姿勢で倒れている。神経性ガスが使われた証拠だ。
『ひどい……』
 ミーアが公園の前に立った。年端も行かない、メサイア戦役以降の生まれであろう幼児、そして、その母親達と思しき若い女性、皆、無残な姿で倒れている。
 クレハは、その光景を目の当たりにして、哀しげに呟き、瞳を潤ませた。
 戦いの中で人が傷つき、死んで行くことも、ようやく割り切れるようになったばかりのクレハに、この光景はまだ、刺激が強かった。
『何で……こんなこと……』
『ここは、プラントのコロニーじゃなかったのかよ! どうしてこんなことになってるんだよ!?』
 コニールも納得できないというように、困惑と怒りの混じった声を上げる。
「これは……」
 シンもまた、怒りに震えながら、呟く。
「これはもう、戦いでもなんでもねぇ……っ!!」
 虐殺だ。それも自国民に対する。
「なんで、なんでこんなことっ……っ」
 シンの中で、何かが膨れ上がっていき、そして、破裂した。
「うわぁあぁあぁぁぁぁっ、あぁあぁぁぁぁぁっ!!」
 シンは叫んだ。
 家族を失った、あの時のように、怒りのままに、激しく咆哮を上げた。

「悪い予感が、現実のものとなってしまいました」
 トーマス1。大公宮廷、執務室。
 訪れたエザリアは、開口一番、アルテイシアにそう言った。
「使用された毒ガスは、有機リン酸系神経ガス……俗称、タブン、です」
 エザリアが言う。
「ええ、報告で受け取っています」
 アルテイシアは、そう返した。
「? エザリア市長、その事実に、さらに何か問題でも?」
 顔を曇らせているエザリアに、アルテイシアも深刻そうに口元をゆがめつつ、訊ねた。
「彼らはどういう意図で、この行為に至ったのか、ということです」
「と、いいますと?」
 エザリアの言葉の意味が解らず、アルテイシアは首をかしげるように訊き返した。
「タブンは、神経ガスとしては、もちろん兵器として有用なほどの猛毒ですが、同様の神経ガスであるサリンやソマン程ではありません。我が方の占領を前提とした行使なら、除染の難しいVXやソマンの方が適しています」
 実際、除染作業は既に進んでいる。地上降下能力のあるミシェイルには、ストライカーパックのインターフェイスを利用した、モビルスーツ用除染システムが、少数だが搭載されている。同様の装備や、化学戦工兵を搭載したカーゴが到着すれば、さらに効率よく除染活動は進むだろう。
「つまり……」
 アルテイシアもその事実に気付いた。エザリアは深刻そうな表情で頷く。

「我々は懸命に戦ったが、ジオン軍が毒ガスを行使したため継戦できなかった」

 
 

「なんて……非道なことをするのですね、ジオンは」
 アプリリウス1、大統領官邸、執務室。
 撤退中のパラケルススより、その報告を受け取ったラクスは、沈痛そうな面持ちで、哀しげに目を伏せた。
 モニターの向こうの、アーモリー1・軍司令部指揮官、ラオ・ミン少将も、帽子を深くかぶり、顔を伏せがちにしていた。
「くそ、こんなこと……ストライクフリーダムがあれば、絶対許さないのに」
 ラクスの傍らに立つキラは、拳を握り、歯を食いしばるようにして、無念の表情を浮かべる。
「ラクス、もう、彼らを許してはおけないよ」
「キラ、お気持ちはわかります。もう少し、もうほんのしばらくだけ辛抱してください」
 ラクスは、キラを上目遣いに見上げ、彼の震える拳を両手でそっと包み、言う。
「間もなく、“ZGMF-X30F”、ケルビックフリーダムが“完成”しますわ」
「そうだったね」
 キラは言い、口元で微笑む。
「その時こそ、彼らと雌雄を決することになるでしょう」
「戦うよ、覚悟は出来ている。彼らを、討つ。例え、相手がシンでも」
 キラは力強く、そう言った。

 マイウス2。
 シーゲル式核融合炉の暴走事故により、一度は死の都と化したコロニー。
 現在は除染されているが、もはや、誰もここに居を構えたいと思うものはいない。
 打ち捨てられた、廃墟コロニーと化していた。
「なるほど、取引には絶好の場所って訳だ」
 ZAFT大統領武装親衛隊第1挺団所属、ヘルベルト・ラインハルト准将は、そう呟いた。
 対する相手は、仏頂面で黙ったまま、手を伸ばした。
「急かすなって、わかってるさ。これが“兄貴”からの報告書だ」
 ヘルベルトは、高密度ディスクの入った対衝撃ケースを取り出すと、向かい合っている相手に渡した。相手はそれを受け取ると、一度、中を開いてディスクを確認し、深く頷いて、それを懐にしまった。
『そこまでよ!』
 途端に響く、女性の──ルナマリアの声。
「しまった、見つかったか!」
 ヘルベルトは毒つく。コロニーの作られた空から、彼らを見下ろしてくる存在、紅いMS、アンビテン。見下ろされる2人は身構える。
「ここは俺が抑える、アンタは行くんだ!」
 ヘルベルトはそう言い、傍らに駐機してあった、自らのモビルスーツへと駆ける。アクト・ドム。ドムシリーズをベースに、密輸部品でようやく完成した核融合炉──シーゲルII式炉を搭載したモビルスーツ。
 アクト・ドムのモノアイが輝く。
「やろうっていうの……?」
 ルナマリアは、バーニアを吹かして飛び上がってきたアクト・ドムを睨みつけると、低い声でそう呟いた。
 アクト・ドムは、ハイブリッドガンを構え、アンビテンを狙って撃つ。
 アンビテンは急降下でそれをかわす。
「くそっ!」
 ヘルベルトは毒つきながら、もう一度トリガーを絞る。
 地面スレスレでアンビテンはロールを打ち、その射撃をもかわした。
 アンビテンは、その両手にエクストレームラケルタを握る。
 ヘルベルトは3度目の射撃を行った後、ようやくハイブリッドガンを放り投げ、接近戦の構えを取った。
 だが、間に合わない。
 ズシャッ……
 アンビテンの2本のラケルタが、アクト・ドムをクロスに斬り裂いた。
 アクト・ドムは熱風を撒き散らしながら、スクラップへと変わる。ヘルベルトの反応はない。
 ドドドドドドド…………
 爆音がした。アンビテンを振り返らせる。
 ジオン公国軍が標準的に製造している、サジ型巡洋警備艇。熱核パルスエンジンを全開にして、マイウス2から飛び去っていく。
 アンビテンのMA形態なら、まだ追いつけるかもしれない。
 だが、ルナマリアはそれをしなかった。
「シン…………今度こそ、あなたを守るから」
 ルナマリアは呟き、プラント軍の警備艦隊を振り切って飛んでいくサジ型を、見送った。

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