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〜刹那・F・セイエイ、天使と合う〜

Last-modified: 2014-03-05 (水) 20:56:10

〜刹那・F・セイエイ、天使と合う〜 Edit



「一体、何がどうなっている……。ここはエクシアの中、なのか?」

 ソファでうたた寝をしていたはずの刹那・F・セイエイ。

 彼がバイザー越しに見下ろす景色はいつものコクピット。違うのはモニターに映し出された
外の様子だ。戦闘の爪痕なのか荒廃した町並み。それ自体は悲惨ではあったが、しかし彼に
とっては特別異様な景色と言う訳ではない。

 刹那に違和感を抱かせる原因。その空に浮いたたくさんの巨大な虫のようなシルエット。
それが地面にビーム様の物を放つと何かが吸い上げられていく。

 刹那はごく自然に吸い上げられているものをズームする。

「な、なんだ……! なんなんだっ、これはっ!」

 何の意志も感じない惚けたような人々の列、それが何かに引かれるかのようにふらふらと
自らそのビームの中へと歩み寄り、『虫』の中へと吸い上げられていく。

 旧世代前期のモノと思われる航空機が盛んに『虫』へと攻撃を仕掛けるがまるで効果が無い。
そして刹那は、その『虫』をガードするかのように戦車を踏みつぶし、戦闘機にビームを射かける
存在に否応無しに気づかされる。

「MS、なのか。50m以上の人型……? UAE、いやこんな物を作るのは人革か!?」 

 人型を微妙に外したようなシルエットの黒い影。ロボットなのか生き物なのか、その細い腕の先、
その一本がGNブレイドよりも長いだろうと思える爪。3体のその黒いモノの群れ。

 無造作にビームを放っては地を抉り、その爪であっさりと高層ビルを叩き切って行く。

「ロックオン、あいつらはなんだ! 応答してくれ、ロックオン・ストラトス! ……やはり、だめか。
どういう状況なんだ、これは」 

 どの陣営だというのか、そもそも敵なのか味方か、それすら判断が付かない。
状況をまるで把握出来ずに焦る刹那。更に追い打ちをかけるように高速飛翔体接近の
アラートがコクピットに響く。

「……。頭で考えても無駄、か。エクシア、ステルスモードへ移行する」

 ズームアップしたモニターへ映し出される航空力学を全く無視したような形状の三機の飛行機
のようなもの。それがマッハを越えるスピードで編隊を組んだまま頭上を飛び去っていった。


 倒壊したビルの影に潜むエクシアである。通常のセンサーならば既に感知は出来ない。
GN粒子をたどるならば話は別だが、此処へ出現した時点で広範囲にかなりの量の散布はした。
だからエクシアを見つけるのは時間がかかる。それまでに状況を整理したい刹那だったが。

「……! なっ、もう見つけたのか!?」

 鈍重に見える人型の黒い影が、物理法則を無視して凄まじい勢いでまっすぐに突進してくる。
ほんの数瞬でステルスモードから通常モードへ機体を復帰させる。一気に機体を飛び上がらせる
と共に胴体をひねる。一瞬前にエクシアの占めていた場所は黒い爪によって引き裂かれ
吹き飛ばされる。その隙にGNブレイドを展開、頭を切り飛ばした。筈だったが……。 

 ガチン! いつの間にか黒い爪に握られたエクシアの背丈を優に超える巨大な剣。
それがGNブレイドの斬撃を、全く意に介さないかのように受け止めていた。

「ちっ! なんてスピード……っ! ――くっ!」

 黒い影はブレイドを受け止めた剣を無造作に払う。エクシアは文字通り吹き飛ばされた。
なんと言ってもエクシアはガンダムである。フラッグだろうがイナクトだろうがどんなMSであっても
今まで単純なパワーで負けたことなど無かった。そして刹那はガンダムマイスターとして操縦技術でも、
敵にあからさまに後れを取る事など無いと自負していた、のだが……。

 空中で姿勢を立て直し、吹き飛ばされた勢いを使って後退する刹那を更に追う黒い影。
戦闘機が散発的に攻撃をしているようだがスピードを殺すどころかダメージを与えているように
さえ見えない。剣を振りかざし、どんどん黒い影が迫る。既に上昇に転じる余裕など無い。

「まさか、あの巨体で追いつ……! 何故だ。エクシアよりも、――速いっ!?」

 黒い影が剣を振り上げたその瞬間、爆炎が上がると切っ先の折れた剣を取り落とす。 
黒い影の頭が向いた先、赤い飛行機のようなものが影に攻撃を仕掛けているのが見える。

 と、何もないはずのエクシアのコクピットの空間、そこに6角形のウインドゥが開く。
その中には刹那より更に年少と思える少年の顔。

『連邦か何かしらねぇが、そんなもんでケルビムとやり合える訳ねぇだろ! 余計な手間増やすん
じゃねぇっ! ……何だ!? そのロボットのおかしなニオイは!? てめーも堕天翅か!?』

「俺はユニオンでは……。堕天使? 匂い? おまえ達はいったい……」

『アポロ、誰と喋っている! 状況を弁えろ! フォーメーションを崩すなっ!』

『お兄様! ゲートが閉じ始めるわ、収穫獣が逃げる!! アポロ、ケルビムはあと回しよ!』

 更に二枚、6角形のウインドゥが開き、金髪の少年と少女が映るが、彼らにはどうやら刹那
の画像は見えていないらしい。

『このニオイ、堕天翅じゃねぇな……。だったら隅の方でおとなくしてやがれ、邪魔だ!! あ?
――――わかった! 聞いたな? シリウス、シルビア! ソーラーで行くぜ、合体だっ!!』

 いきなり仮想スクリーンが三枚とも消え、三機の飛行機のようなものは三角のフォーメーションで
急上昇していく。彼らにケルビムと呼ばれた黒い影も二つ多少慌てたように飛び上がっていく。

『アポロ、頼むわよ!? ――念心!』

『無様な戦いはゆるさんぞ! ――合体!』

『GO! アクエリオーン!!』

 最大望遠でスクリーンに映し出される光景をただ刹那は見ていた。

 3機の戦闘機が変形合体して巨大なロボットになるのを。

『ソぉーラぁーアクエリオンっ! 逃がすかぁ! このヤロウ!!』

 その巨大ロボットはいきなり急上昇を始める。それを追いかけようとする残ったケルビムに
刹那はGNライフルを撃ちかける。ケルビムがエクシアを振り向いた瞬間、少女の声が無線
のスピーカーを通して大声で叫ぶ。

『いい加減、しつっこいって言うのよ! こんのぉおっ! 念力…………っ! アポロっ!』 

『おぉっ! やるじゃねぇか、ボケ姫っ! まとめて潰れろっ!! 無限っパァアアンチっ!!!』

 その巨大ロボは少年の絶叫とともに背中から強烈な光を発すると、一瞬ケルビム2機の動きが鈍る。
刹那の目には右腕が伸びたように見えた。その伸びた腕は蛇のようにうねりながらケルビムを追いかけ、
そして追いついた。2体のケルビムを巻き込み一直線に地面に向い伸びていく腕。

 地面に接触した、と思った瞬間。地上には巨大な光が膨れあがる。

 その瞬間、前動作無しでいきなり目の前のケルビムに突っ込んだエクシアはスレ違い様、
出力最大のGNブレイドで腹部をなぎ払い、ビームサーベルを背中に突き刺す。

 振り向きざま、ライフルを連射する刹那。――動きを止めたケルビムはゆっくりと倒れていく。

「……終わった、のか?」

 いったいなんだというのか。刹那が動きを止めた黒い巨体を調べようと接近を試みたとき
ノイズの乗った無線を傍受するエクシア。

『シリウス! アクエリオンの真下、次元のひずみ検知、神話的バランスにゆがみ、何か来るわ!』

『この反応、神話獣? いや、堕天翅だっ! アポロ、ヤバいぜ、例のケルビムが来る!!』

『堕天翅の乗ったケルビムだと? 不味い! シリウス、一旦分離してマーズに……。う、司令』

 甲高い指揮官と思われる声が絶句すると、野太い男の声が割ってはいる。

『下を気にする必要など無い、そのまま収穫獣を追え。人命よりも戦いを取るような者は
ディーバには要らん! ……今なら間に合う! 行けっ、アクエリオン!!』

 意味の良く判らない通信を聞く刹那の眼前。センサーとモニターにも意味の判らないものが
捕らえられている。何も無い空にいきなり現れる厚みがあるのか無いのかさえ判断出来ない
”訳の判らないもの”。通信が言うとおり時空がひずんだ。と言う表現が一番しっくり来るだろう。

 その丸い虚無から姿を現す黒い巨体。両手に巨大な剣、そして各所に施された装飾。

「アイツは、さっきのヤツとは違うか……。指揮官機?」

 姿を現した。と思った瞬間、既にエクシアの目の前まで移動していた。モニタ−はともかく
センサーさえもその動きを捕らえ切れて居ない。黒い機体が剣を構えるに至ってようやく
ワーニングとアラートの警報音に包まれるコクピット。

 辛うじて巨大な剣を受け止めたエクシアはまたも吹き飛ばされる。その勢いを使って今度は
上昇に転じるが、黒い巨体は重量がないかのように苦もなく追いかけてくる。

「くっ、やはり、当たらないか……!」

 まるで弾道を読み切るかのようにライフルの弾をかいくぐり、その上で距離は更に詰まる。
黒い影は踊るかのように両手の剣を振るう。

「なんなんだ! エクシアがパワーでもスピードでも負けるなど……!」

【翅無しの分際で天翅を騙るか……。恥を知る、と言う事はないようだな。……所詮は翅無しか】

 どこから聞こえたのかわからない若い男性の声が狭いコクピット内に響く。

 巨大な剣を受け止めた、筈だったエクシアの右手。ブレイドもろとも5つに切断されて下へと
落ちて行くのが見える。最低5回の斬檄を受けたはずであったが。

「何も、何も見えなかっただと……。ヤツはいったい――っ! 右かっ!!」

 GNドライブ全開の急激な機動。Gで刹那の視界は赤く染まり呼吸が止まる。だが、左足と
引き替えにエクシアは機体の両断を逃れる。残る左手でビームサーベルを展開するエクシア。

【翅無しよ、今のを避けるとは見事だ。太陽の翼とまでは言わないが多少は楽しめそうだな】

「意味のわからない事をっ!!」

 またも急激な機動で、今度はあえて一息に距離を詰めたエクシア。

「天使とは何の事だ! 俺はソレスタルビーイングの、――ガンダムマイスターだっ!!」

 頭を切り飛ばされるのと引き替えにビームサーベルでケルビムの胸をなぎ払う。
だが、その捨て身の攻撃も、ケルビムの胸の装甲に辛うじて傷を付けるにとどまってしまった。

【この私に傷を? ……哀れな。そうか、そこまで天翅にあこがれるか。翅無しよ】

 またしても何もないコクピット内の空間。今度は若い銀髪男性の姿がいきなり現れる。
モニターに映っている訳でもなくホログラムでもない。長髪の若い男の上半身。

【貴様はなんだ? 只の翅無しとは違う波動を感じる。只の人間とも思えん……。何者だ?】

 口は開いていないがこの男が喋っている。その事だけは何故か刹那にはわかった。

「お前こそ何者だ! 天使とはなん……。――うぐぅ、くっ……」 

【この私を見ても気押されんか……。乗り物なぞどうでも良いが、貴様は危険だな】

 ごく普通に、何も抵抗出来ずにいきなり首を絞められる刹那。パイロットスーツを着ている事
などまるで無視するかのように男の握力を感じる。既に銃を取り出す事も出来ない。

 ――こ、このままでは……。

 何も出来ずに視界が狭まって行く刹那の目の前、一枚の羽根が舞うのが見える。

《トーマ様。収穫獣、神話獣の帰還が終わりました。太陽の翼が間もなくそちらへと向かいます。
意味なく擦り傷を増やすのも如何なものかと……。わたしがお手伝いを致します。ご帰還を……》

【わかった、やってくれ。――命拾いしたな、翅無しよ。次にまみえる機会を得るまで、せめて
その無粋な乗り物を何とかしておくが良い。今度こそ乗り物ごと二つに切り捨ててくれよう】

 来たときと同じようにいきなり姿を消す黒い機体。それを確認したところで刹那の意識も費えた。



 ソファの上、息苦しさに目を覚ます刹那。

「ぐ、ゲホっ……。夢、だと言うのか。ゲハっ……。今のは」

 息苦しさを感じる、まだ絞められた感触の残る首に手をやる。夢だというなら誰かが部屋に
侵入して首を絞めたというのか。

 ふとテーブルに目をやる。そこには大きめの、夢の男の髪と同じ白銀に輝く羽根が一枚。

「――っ! 誰だっ!!」

 クッションの下の銃を手に取ると気配の先、虚空へと構える。

「私は敵ではない。口で言ったところで信じてはくれまいが、事実だ」

 無造作な髪に向こう傷、黒い服を着た男性がいつの間にか銃口のほんの30cm前に立つ。
と、いきなり何のためらいもなく、すぅっと刹那の銃をなでる。

「動作原理は我々の世界と同じ様だな。ならばキミの銃はもう役に立たない。撃ってみるが良い」

 カチッ! 確かに撃鉄は降りた。だが、ポンっ! と気の抜けた音がすると銃口に造花が咲く。

「チェンバーに一発入れておくとは周到だ。普段から誰かに狙われているのかね?」

 テーブルの上、男が手を滑らせると装弾数分の銃の弾丸が綺麗に並んで行く。

「私は地球再生機構ディーバ。その司令、不動だ。先ほどは助かった。――礼を言いに来た
だけのつもりだったのだが、一つやる事が増えたようだな。……君の名は?」

 コンバットナイフが隠してある方向を刹那が意識した瞬間、不動は全てを知っているかのように
ナイフをつまみ上げていた。

「――――。刹那・F・セイエイだ、あんたはいったい……」

「君に対して害意は無い。わかってもらいたいが、どうしたものかな」

 不動の手の中、ナイフは何事もなく小さなブーケに変わり、テーブルの弾丸の隣に置かれる。

「あんたに勝てない事はわかった。――何をしに此所に来た……!」

「礼に来たとはさっきも言ったが? ――そう、そしてもう一つ」 

 不動と名乗った男はテーブルの上の羽根を拾い上げる。

「キミには不要。そしてこの世界にあってはならない物だ。私が貰っていくが、良いかね?」

「もう良い。……何でも好きにしてくれ」 

 銃を放り出すとソファに座り込む刹那。

「刹那クンと言ったな、甘い物は好きかね?」

 この男もさっきの銀髪の男同様、とらえどころがない。

「意味が……、わからない。――いや、キライではないが」

「よろしい、では物々交換と行こう。生憎今はコレしか持ち合わせがないのだが、只で私だけが
貰うと言うのはやはり悪い」

 右手をあげる男の手元を見る。パチン。と指が鳴った。刹那と不動の目が合う。

「……テーブルだ。そんな物で悪いがね。――キミの理想の世界が平和である事を願っている」

 綺麗に並んでいた筈の銃弾が弾数分のキャンディに変わっている。慌てて銃を確かめる。
造花は消え去り、弾も全弾装填されていた。テーブルの上には当然のように鞘に収まったナイフ。

「……? ――っ! フドウ、何処だ! …………。考えても仕方ない、のか?」

 どうせ今日の朝早く、スメラギからの戦術が来る。どうにも成らない事を考えるより寝た方が
良いだろう。水を飲み干しながらそう考えると、キャンディの包みを一つ開ける。匂いは普通。
ソファに寝転がると口に放り込む。不動が言ったほど甘くはなかった。

「世の中甘くはない、か。――何の寓話だ。……全く」

 それだけ呟くと、刹那はいつもの浅い眠りへと戻っていった。

fin

 
 

 
 
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  • 最近のスパロボやってたらパトレイバーの世界にはダイ・ガードもありそうな気がしてきたw

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