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《第3話:闇夜の防衛戦》

Last-modified: 2017-09-14 (木) 23:11:35

「敵影発見! 攪乱酷くて数補足できないけど・・・・・・13時方向、距離15に敵の増援だよ!!」
「10時方向から魚雷接近、数9!」
「ト級砲撃! 直撃コース来るぞ!」

 

三日月陰る深夜3時。
曇天で光源に乏しい大海原。一寸先だってまともに視認できない暗闇で、佐世保の命運を賭けた防衛戦が開始されて早6時間、榛名率いる第二艦隊は敵侵攻部隊の第4波襲来を感知した。
現在、単縦陣にて同航戦。左舷は敵雷巡隊に、右舷は敵軽巡隊にと阻まれている格好にあり、このまま前進すれば敵増援に頭を抑えられる状況下にあった。早い話が、包囲寸前の絶体絶命である。
しかし、榛名の顔にはまだ余裕があった。

 

「取舵30、第一戦速で回避! 木曾と瑞鳳はそのまま右舷ハ級群に火力を集中。響さん!」
「了解。響、突撃する」

 

状況だけを見れば確かに劣勢。だが、この程度ならまだまだ余裕で切り抜けられると確信していた。
敵第3波の生き残りも残り僅か、第4波到着前のこの攻防で片付けられるだろう。

 

「Урааааа!!!!」

 

響が吼え、単身最大戦速で左舷側、雷撃戦を仕掛けてきた深海棲艦の群れに突っ込んだ。
苦し紛れに魚雷を撃ってきた化物3体がターゲット。前衛に軽巡ホ級が2、後衛に雷巡チ級が1、そのどれもが手負いだ。左腕に装備した12.7cm連装砲B型改二でホ級に牽制しながら、扇状に放たれた魚雷の隙間を勘と経験頼りにスルリと滑り抜けた響は、あっという間に中央のチ級に肉薄する。

 

「ギ、ギッ!?」
「無駄だね」

 

白い仮面で覆われた頭部と、右腕に装備した盾のようなパーツが特徴的な深海棲艦は甲高い呻き声を発し、後退して更に魚雷をバラまこうとした。
しかし、もう遅い。
艤装に備えられた超重量の錨(いかり)を投擲し、チ級を弾き飛ばし絶命させた響はそのまま速度を落とさず、一息で防御態勢に入っていたホ級の間を抜ける。同時に反転、両脇に備えた61cm四連装酸素魚雷発射管から一発ずつ、無防備な背中めがけて魚雷を射出した。
直後、爆発。

 

「ガ、ア゛ァァァァッーー――・・・・・・・・・・・・」

 

まともに喰らえば戦艦だってただでは済まない一撃に、深海棲艦達は赤々とした爆炎に包まれる。更に、その光を頼りに標準を定めた榛名の35.6cm連装砲が火を噴き、左舷敵雷巡隊は完全に沈黙した。
その間わずか十秒。
速さだけが取り柄の駆逐艦の身でありながら、熟練の早業で格上の巡洋艦クラス3隻を手玉にとった響は、涼しい顔で特別にチューンアップしてもらった愛用の錨を回収しながら木曾達に合流する。当然、右舷ト級群はとっくに全滅していた。
どうやら全員が無傷のまま、第3波の撃退に成功したようだった。

 

「おつかれさま―。大丈夫? 怪我ない?」
「大丈夫だよ。全然」
「瑞鳳、敵増援はどうなっている?」
「あ、ええと・・・・・・うん視えた。こっちに向かってるのは・・・・・・戦艦ル級3、重巡リ級4、軽巡ヘ級6、駆逐ロ級6、駆逐ニ級10――かな、多いなぁ。方位0-3-5に向けて20ノットで進行中」
「松島方面か・・・・・・使えるな。榛名」
「十字砲火でいきましょう。榛名達はこのまま敵陣右翼後方につきます。木曾は信号弾を」
「応」

 

状況はそう悪いものではなかった。
長崎半島周辺を守備する第二艦隊は、開戦当初こそ敵侵攻部隊のあまりの数に泡食ったものの、後方火力支援隊の尽力もあって、迅速かつ安全に殲滅することができたのだ。
その後も第2波、第3波と大部隊が押し寄せてきたものの、長年のチームメイトでもある彼女達は今まで迎撃戦を主体にしてきたという経験もあって、苦もなく戦い続けることができていた。防衛ライン構築にあたり構成員をシャッフルされた第一艦隊と第三艦隊と異なり、人数こそ減ってしまったものの「いつものメンバー」のまま据え置きで運用されることになったのも大きい。
阿吽の呼吸によるコンビネーション攻撃は、彼女らの一番の武器だ。

 
 

「しかし大盤振る舞いだね今夜は。なにか良いことあったのかな」

 

速力と防御力を活かした近接格闘戦を得意とする、特三型駆逐艦二番艦の響。

 

「借金取りにでも追われてるんじゃないか。なんにせよ、オレに勝負を挑む馬鹿は三枚おろしだ」

 

長距離雷撃戦と対空戦を本領とする参謀役の、球磨型重雷装巡洋艦五番艦の木曾。

 

「そうだ。今のうちにお弁当食べる? 私も大盤振る舞いして特製卵焼き、たくさん持ってきたんだから」

 

艦載機を使役して艦隊の「目」となる攻防の要、祥鳳型軽空母二番艦の瑞鳳。

 

「あら、いいですね。榛名はこの前のダシ巻きが気に入ったのですけど、ありますか?」

 

そして圧倒的な砲撃能力と継戦能力を備える、リーダーの金剛型戦艦三番艦の榛名。

 
 

佐世保の遊撃担当であった面々は、この現状では最も安定した戦力となっていた。
これに加え。
急遽参戦が決まった助っ人、未だ戦場に姿を見せない元MS乗りのキラ・ヒビキを含めた5人が、現第二艦隊のフルメンバー。
救援の到着まで、あと約17時間。
長い長い一日はまだ始まったばかりである。

 
 
 

《第3話:闇夜の防衛戦》

 
 
 

九州北西部に位置する佐世保湾から、南西に50km向かった先の海域。
長崎県西方沖の五島列島と長崎半島に挟まれた、約40km四方のエリアが今作戦の戦場だった。
深海棲艦は南西の台湾方面から進軍し、半壊した佐世保鎮守府を完全に撃滅せんと狙ってきている。今までに類を見ない一点突破狙いの強襲である。これを迎撃し、上陸させず11月3日の今夜20時まで耐え凌がなければならない。
ここで注意しなければならないのは、深海棲艦は決してただ本能的・漫然的に暴れるだけの「天災」ではないということだ。
戦争が始まり五年。これまでの戦闘記録から、深海棲艦は高脅威目標に対して、波状攻撃や奇襲を仕掛けたり不利とみれば即時撤退したりといった行動を起こすことが確認されている。つまり連中は、軍事行動を可能とする知識・知能を持った存在だと推察できる。通り一辺倒の突撃だけが脳のイノシシではないのだ。
今まで散々邪魔してくれたこの恨み、晴らさでおくべきかとばかりの猛攻は今日を迎えて更に過激化、戦力も頻度も増す一方だが、これに加えて別働隊や陽動隊の可能性も警戒しなければならない。二階堂提督の腕の見せ所だった。
ただ、これだけ戦力を一極投入しているということは、裏を返せば一網打尽にすることだって夢ではないということ。
ここが踏ん張りどころ、天下の分け目である。

 

「・・・・・・これでホントに、大丈夫なのかなぁ」
「瑞鳳?」
「あ、や・・・・・・ごめん。ちょっと弱気になっちゃったみたい」
「いいのよ。心配なのはみんな一緒ですから」
「・・・・・・、・・・・・・うん」

 

榛名達が黒々とした長浦岳を背に南下して20分たった頃。
松葉色の弓道着の少女、亜麻色のポニーテールが可愛らしい瑞鳳が、思わずといった具合でぼんやり呟いた。続けてばつの悪そうに発せられた言葉は、かすかに不安に揺れて。

 

「みんな強いし、信じてるけど。けどやっぱり・・・・・・アレもいるかもしれないと思うとね」

 

抑えようのない漠然とした不安感。
当然だ。この状況で不安にならない方がおかしい。明るく気丈に振る舞っていても、なにより瑞鳳は航空母艦である身、艦載機を発艦できない闇夜では自衛すらままならない艦なのだ。辛うじて特別に夜間訓練した艦上偵察機は飛ばせるので「なにもできない」というわけではないが、その不安も一入だろう。
加えて、第二艦隊はここまでは思った以上に順調にきているのだ。その事実は他の艦隊を気にする余裕と、逆に「こんなに順調でいいのか」という焦燥感を醸しており、それを感じているのはなにも瑞鳳だけではない。
夜の海は気分を滅入らせるものだ。・・・・・・舞鶴には夜になるとテンションが上がる艦娘がいるらしいが。

 

「大丈夫ですよ」

 

榛名はしいて明るく前向きに応えた。

 

「まだ【Titan】が現れたという報告は来てないわ。大丈夫です。金剛お姉様達も、山城さん達も絶対に」

 

五島列島周辺を守備する第一艦隊――金剛、翔鶴、多摩、雷、電――からも、佐世保湾正面を守備する第三艦隊――山城、鳥海、暁、白露――からも、まだ誰かがやられたという報告も、強敵が現れたという報告もない。軽傷者は何人か出ているが、皆健在の筈だ。
西に機動性に優れた第一を、東に同じく高機動な第二を前衛として展開し、北に火力に優れた第三を後衛として鎮座させるこの鶴翼の陣は、まだ崩れていない。これを維持できている限り自分達は大丈夫。
それに、と榛名は言う。今までは手ひどくやられっぱなしだったが、今回はしっかりバックアップを整えた陸を背にした防衛戦。いつもの孤立無援な沖とは違うのだと。
残りもたかが17時間。遠くインド洋で戦った時のことを思えば、これくらい。
むんっ、と気合いを入れた少女は更に言葉を重ねる。

 

「仮に現れたとしても、勝手は榛名が赦しません! 【Elite】だろうと【Flagship】だろうと【Titan】だろうと、要は先に叩けばいいんです。そして榛名達ならそれが可能です」
「流石は榛名。そうこなくっちゃな」
「現れないに越したことないけどね」

 

みんなが内心の恐怖とも戦っていることは重々承知。それが少し溢れたからって的外れな叱責なんてするわけないし、ここは率先して気持ちを共有して元気づける場面だ。
――たとえ空元気であろうと、【Titan】相手なら苦戦は免れないことを知っていても、皆を励ましてこそのリーダーである。
少しずつ、仲間達の表情から昏さが無くなってきた。
あともう一押しだ。
世話焼きたがりのお姉さん気質であるからこそリーダーに選ばれた榛名は、持ち前の明るさを発揮して叫んだ。

 
 

「そしてなにより! 金剛お姉様は!! 無敵です!!!!」

 
 

「・・・・・・えぇー」
「そこで個人、なのかい・・・・・・」

 

盛大に滑った。

 

「え、ダメですか?」
「駄目だろ。お前達姉妹じゃなきゃ通じないだろ、そのまじないは」
「そうですか・・・・・・」
「そうだよ。・・・・・・あぁしょげるなしょげるな頼むから」

 

金剛四姉妹はこれだから、と木曾は思わず頭を抱える。
基本的にみんな優秀でイイヤツなのだが、長女である英国生まれの帰国子女・金剛に心酔――もとい絶対の信頼を寄せていて、それはまぁいいのだが「他者もきっとそうだろう」とナチュラルに思っちゃうところが玉に瑕。金剛自身は紛れもなく人格者で凄いヤツなのは認めるが、台無しだよと叫びたい気分の木曾だった。

 

「――ふふ、ありがとみんな。元気でちゃった」

 

ただまぁ、それでも一定以上の効果はあったようで、瑞鳳の口元には若干の笑みが戻っていた。
響も木曾もつられて、苦笑じみた微笑みを浮かべる。
どうやらリーダー渾身の自爆によって、少女達の不安も道連れにシリアスな空気は轟沈したようだった。「不本意です。あそこはバッチリ決めたかったです」とは後の榛名の談。

 

「士気を落とすようなことを言って、ごめんなさい。もう大丈夫よ」
「そ、そう・・・・・・。それならよかったです。・・・・・・、・・・・・・さて――」

 

響によしよしと頭を撫でられていた榛名も立ち直り、いつもの和気藹々とした雰囲気が復活した。
もう怖い物はなにもない気分だった。

 
 

「――所定の位置についたわ。面舵60、微速前進。総員砲雷撃戦用意」

 
 

そうしてタイミング良く、第二艦隊は次の戦場に到着する。
おしゃべりの時間は終わり。
榛名の号令に従い、速やかに戦闘モードに切り替えた面々は深海棲艦の連中に鉛玉をブチ込むべく、主砲の照準を合わせていく。その瞳にはギラリと戦意が煌めく。
気分は上々。不安や恐怖に囚われることなく戦いに赴ける心持ちは、戦士にとっては一番に大事にしたいものだ。精神状態が生死に直結していることを身に持って理解している少女達は、先のやりとりに密かに感謝した。

 

「戦車隊発砲まで、残り10秒。同時に突っ込むぞ」
「了解」

 

目の前に広がる暗黒の海。
このわずか2マイル先に計29隻もの深海棲艦が、自分達に背を向け北進している筈だが、ここからでは視認できない。後ろに回り込むべく隠密行動で航行していたのだから、当然偵察機や探照灯は使用できず、事前に計測した結果が正しいことを信じる他ない。
向こうも此方には気づいていないことと、進路と速度に変わりがないことを祈りつつ、戦闘開始の合図を待つ。
艦娘も深海棲艦も、暗視能力までは持ち合わせていない。これは賭けだった。
そして――

 
 

水平線の向こう、8マイル離れた東の地から、遠雷のように重い砲撃音が轟いた。

 
 

一拍置いて、2マイル先の海が文字通り火の海となる。
何十何百と打ち出された徹甲弾や榴散弾、焼夷弾が、木曾の信号弾によって指定されたポイントに雨霰と降り注ぐ。続けて照明弾。暗闇に閉ざされた海上に、辺り一帯を照らす小型の太陽が生まれた。

 

「ビンゴ!!」
「報告!」
「戦艦ル級――1隻小破。重巡リ級――1隻中破、3隻小破。軽巡ヘ級――全滅、駆逐ロ級――2隻撃沈。駆逐ニ級――3隻撃沈!!」

 

沿岸部にずらりと整列した対深海棲艦用の最新国産主力戦車、その主砲である40口径145mm滑腔砲から吐き出された弾丸の数々が、敵戦力を次々と削り取っていく様が浮かび上がる。
戦果も上々。砲撃開始に先んじて偵察機を飛ばした瑞鳳からの報告に、賭けには勝ったと榛名は膝を打つ。

 

「全艦斉射後、分隊。一気に制圧します!」
「測敵良し!」
「照準良し!」
「――てぇーッ!!!!」

 

畳みかけるように、榛名達もそれぞれの主砲と魚雷を打ち込んだ。
東の八朗岳麓に待機していた戦車隊と、南の榛名達との十字砲火。奇襲を受けた深海棲艦は状況を正確に認識することもできないまま、あっという間にその頭数を半数以下にさせられる。残り、12隻。
ここまで減らせれば充分、むしろ想定以上の戦果だと、木曾は再び信号弾を撃つ。
撃ち方止め。
その要請に従って焼夷弾を最後に戦車砲は途切れ、木曾と響は更に魚雷を射出しながら接近する。この一連の連携こそが、佐世保の防衛がここまで上手くいっている要因であった。
国土防衛の要である戦車隊の後方火力支援によるバックアップ。入院中の二階堂提督が、持てるコネクションと権力をフル活用して九州北西部に揃えた決戦用の布陣。いつもの孤立無援な沖での戦いとは異なり、陸を背にした防衛戦だからこそ採択できたもの。
これにより戦局を有利に進められるからこそ、佐世保守備軍は戦力の差をものともせず敵を撃退できるのだ。
誘い込んで一網打尽、奇襲こそ夜戦の華。古来より防衛側のほうが有利なものだ。
因みに、最新鋭の40口径145mm滑腔砲といっても深海棲艦を撃滅できる程の威力はない。量産できる陸上戦車の主砲としては破格の威力だが、所詮は艦艇でいうところの軽巡の主砲に毛が生えたようなもので、敵の主力である重巡級、空母級、戦艦級を墜とすには少々心許ない。
その分多種多様な弾頭を速射することが可能で、これにより人類の主力である艦娘を援護することこそがコンセプトである。

 

「響、お前は右から回り込め。追い込むぞ!」
「Всё ништяк!!」

 

そうして打ち込まれた焼夷弾と照明弾によって轟々と照らされた目標に向かって、木曾と響は左右に散開。敵の混乱に乗じて挟撃し、釘付けにする算段だ。
しかし敵もさるもの、接近に気づいた個体が素早く戦闘態勢を整え、おぞましい奇声を上げながら反撃してきた。

 

「おおっと!」
「当たらないね」

 

山なりの軌道で降りかかってくる敵砲弾を、タイミングを計って小刻みに機動することで器用に回避。
時には仰け反り、時には屈み。とにかく狙いを絞らせないように動きまわり、急制動・急加速しては着弾位置をずらしていく。人間としての関節をフル活用する。
二人は敵を中心に円を描くようにして対角線上から砲撃を始めた。響は右肩の10cm連装高角砲を、木曾は左肩の25mm三連装機銃を速射しながら、徐々に距離を詰めていく。更には遠方の榛名が二門の41cm連装砲で追撃し、一隻一隻確実に撃破していった。
これで敵残存戦力は、戦艦ル級2、重巡リ級2、駆逐ロ級1、駆逐ニ級4。いずれも小破以上の損傷を負っている。
機動戦に持ち込まれて長引いては厄介だ。一気呵成に、一歩も動かさないまま決める。
だが、物事はそう狙ったようにはいかない。

 

「――ッ!」
「!! おい!?」

 

ここでル級が動く。
両手に一つずつ携えた、巨大な甲羅のようなシールドから五門ずつ突き出された砲口が火を噴き、後衛の榛名と瑞鳳の至近距離に水柱が立ちのぼる。ちょこまかした響達前衛を無視して、鬱陶しい後衛から潰すつもりか。
他の深海棲艦達もそれに倣い、火砲を榛名達に集中させる。
そうはさせじと、響が加速。
鋭角なターンで接近し、焼夷弾の影響で未だ燃え上がる海も、木曾の制止の声すらも無視して突撃。こっちを見ろとばかりに乱射する。
響が得意とする、超至近距離での機動戦で囮となり注意を引きつけるつもりだ。仕方なく、木曾もそれに乗じた。
二人で急接近と急離脱を繰り返し、後衛に対する砲撃を中断させる。
ここまでは少女の計算通りだ。
だが、そう、物事はそう狙ったようにはいかない。

 

「響!!??」
「・・・・・・この!!」

 

全ての砲がたった一人、響のみに集中する。
耳鳴りがする程に重なった砲撃音。幾十もの砲弾が、幼い少女を粉々にせんと降り注ぐ。対する響は艤装への負担を度外視して一気にトップスピードへ。
防盾を構えながら45ノットで疾走しつつ弾幕を張り、魚雷で敵集団をばらけさせようとする。はずみで幾つかの敵を撃墜しながらも、粘り強く砲撃圏内から逃れようとした。
しかし、ル級の砲弾が一つ、響の足下に着弾する。
最高の火力と最高の装甲、人類で言うところの戦艦の特徴に見事に合致するル級の一撃は、深海棲艦の中でもトップクラスの破壊力を秘めている。直撃こそ避けられたものの、あまりの衝撃により響の小さく軽い身体は、大きな水柱を伴って空高く吹き飛ばされた。ふわりと、上空30mの高度で滞空する。
ル級が、無造作に無防備の響を狙う。当たれば駆逐艦の響はひとたまりもない。

 

「チィ!」

 

響は咄嗟に、錨を前方下側に投擲、左腕と右肩の砲を後方上側に向けて撃った。
直後にル級の砲撃。

 

「ぐぅうううう!!!!」

 

呻きながら、響は必死に錨と艤装を繋げる鎖を握る。
掌の皮をまるごと持って行かれそうになりながらも鎖をピンと張り詰めさせた、空中で踏ん張りのきかない少女の身体は、錨の重量と運動エネルギーに引っ張られてガクンと降下。同時に放った砲の反動と、木曾の牽制射撃も手伝って、ル級の砲弾は響の黒帽子を道連れに虚空へと消えていった。
続けて、握った鎖をぶん回して、錨を再度投擲。

 

「――Урааааааа!!!!!!」
「!? 無茶だ、退け!! ・・・・・・クソッ!」

 

九死に一生を得た少女は、榛名と木曾の猛攻を受ける敵群に再度突撃する。
衝撃で軋む骨格を無視して投擲した錨はリ級に絡みつき、響は渾身の力で鎖をリリースして落下速度そのまま、『着地』がてらドロップキックをかました。
甲高い悲鳴と水しぶき。更に12.7cm連装砲と10cm連装高角砲を接射、此方に背を向けていたロ級もろとも蜂の巣に。ついで直接手にした錨をフルスイング、しぶとい二級を弾き飛ばした少女は、そこでようやく着水する。
残存、戦艦ル級2隻のみ。
しかしそこまで。
着水し、身を屈めたままの響の頭部にゴリッと、ル級の砲口が押しつけられる。
回避も防御も絶対不可能。誰が見ても「これは死んだな」と確信する状況。直後の未来を予測して、響は俯いた。
いや、正確には全体重を両手の指先に集めるようわずかに重心をずらした。
その様はまるで、クラウチングスタートでもするかのような。

 

「――おォッ、ラァ!!」
「・・・・・・ギィ!?」

 

スパリと湿った音を立てて、ル級の腕が切り落とされた。
振り抜かれた刀身が、炎を映してキラリと瞬く。それは木曾の軍刀。背後から稲妻のように接近した、彼女の最後の切り札であった。青とも黒ともつかない液体をまき散らし、巨大な甲羅が海に没する。
洋風のサーベルで隻腕にされたル級は思わず後退、もう一方の盾を掲げて、右手が煙るほどの速度で迫る追撃の横一閃を防御する。
キンッと、軽快な金属音と共に小さな火花が散った。

 

「・・・・・・?」

 

手応えがあまりにも軽いと、そのル級は違和感を覚えた。更なる斬撃も来ず、一瞬、不自然なまでの静寂が海を支配する。
何か来ると本能的にル級達が身構えた、その時。
榛名の41cm連装砲と35.6cm連装砲が、背後からその胴体を真っ二つにした。
上半身と下半身が泣き別れして、何が起こったのか理解できないまま、彼女らは海底へと還っていった。
敵第4波、全滅。
榛名の砲撃を予期して一目散に離脱した響と木曾は、揃って安堵の溜息をつく。ギリギリではあったが、辛くも綱渡りは成功したのだ。
今回も全員無事である。

 

「Спасибо。助かったよ」
「こんの、馬鹿野郎が!! たまたま間に合ったから良かったものを!!」

 

安心するにはまだ早かった。
余韻もなにもなく、お折檻の時間が始まる。

 

「信じていたからさ。おかげでさっさと終わらせることができた」
「そういう問題じゃねぇ。いくら突撃癖があるっつってもな、それがいくら有効的だろうとな、此方は心臓が止まるかって思いなんだぞ毎回」

 

響の反論をピシャリとシャットアウトして、木曾は正しく怒る。
今回ばかりは、怒鳴らざるをえなかった。
そう。別に響が囮になって危険な橋を渡らなくたって、この戦闘は無事に勝利することはできたのだ。
榛名も瑞鳳も、あんな砲撃に当たるほどノロマではなく、当初の予定通りに付かず離れずの砲撃戦をしていればそのまま終わらせられた戦いだった。
それを仲間が攻撃されたからってムキになって自らを危険に晒すなど、言語道断。確かに予定よりも早く戦い終わったが、それより安全な戦法を採択するほうが何百何千倍と重要だ。最近はなりを潜めていた後先考えない無茶無謀な突撃戦法を目の当たりにして、それをなんとも思っていなさげな少女の態度を目の当たりにして、木曾はなんとも言えない気分になる。
木曾はこの目前の、しゅんとしていつもより小さく見える駆逐艦のコイツは、なんで突撃癖があるのだろうと思った。通常の砲雷撃戦でも並の駆逐艦よりずっと強いのに、どうも接近戦に拘っている節があるように感じるのだ。
それはいい。冷静であり、かつ軽巡級程度が相手ならまったく危なげなく処理できることは知っている。
だが、特に仲間が危機に陥ると暴走しがちだ。それはまるで特攻のようで、戦い方が乱暴になる。それでいて敵は確実に仕留めて、なにがなんでも生還するのだから、生きたいのか死にたいのかも判らない。
時たま「突撃隊長様」と揶揄することはあるが、なにも特攻しろとは言ってない。今後も絶対言わない。
実際、響が空に投げ出された時は心臓が凍るような思いだったのだ。もうあんなのはゴメンだと木曾は頭を振る。

 

「とにかく。あんま心配させてくれるな。突撃も結構だが、誰かに頼まれた時だけにしろ。もっと仲間を信じろ」
「っあぅ・・・・・・、ごめん」

 

木曾はデコピンして、この話はここまでだとマントを翻し水上を滑る。もっと何か言いたげなようだったが、榛名と瑞鳳と合流しなければならない。遠くで二人が手を振っているのが見えた。
響はあんまり痛くないおでこを擦りながら、その後に続く。

 

(・・・・・・そういえば、なんで私は接近戦に拘るんだろうな)

 

そして密かに自問する。
自分で自分のことが解らないのはいつものことだが、木曾からのお叱りを受けてふと、響は己の根源に疑問を持った。
接近戦には自信がある。
艦娘の戦法は独自の艤装と素質により決定づけられるもので、艤装は人それぞれの特徴があり形も装備もバラエティ豊かだ。その点、特三型駆逐艦は艤装に防盾と錨が標準搭載されていて、持ち前の身軽さとスピードも相まって接近戦向けと言える。
自分には素養と適正がある。
姉妹の暁・雷・電も同様で、今は呉鎮守府にいる師匠からは格闘戦の手ほどきも受けたこともある。
だが師匠は、接近戦は護身用、最後の手段だと言っていた気がする。姉妹も師匠も、サーベルを持つ木曾だって、積極的に仕掛けることはしないのだ。
思い返せば、自分ぐらいなものなのだ。日常的に積極的に接近戦を仕掛ける艦娘は。
むしろ、このやり方に拘りを見出している。

 

(あいでんてぃてぃーってヤツなのかな、これは)

 

それは困った性質だなと、響は他人事のように分析した。
『本当の理由』を知っていながら、それを知らん振りをして。
確かに今回は無茶無謀だった。それは認めよう。自分自身、もうあんなのはゴメンだ。でも身体が勝手に動いてしまうのだ。これを制御するのはなかなか骨だなと思う。
もっともこの突撃癖はもう周知のもので、提督も榛名もそれを前提とした戦術を組むことは多々ある。敵が少数で駆逐級、軽巡級であれば殲滅してこいと送り出されるのが主だ。そういえば戦艦級相手に立ち回ったのは久しぶりだったなと、今になって身震いがした。
本当にアレは、死ぬ一歩手前だ。それが二回連続で。
とりあえず当面は、木曾の言うとおり控えようと思った響だった。

 

「――なんですって!?」
「わっ! なに、どうしたんだい」

 

考え込んでいるうちに合流していたのだろう、気づけば目前にいた榛名が、珍しく大きな声で瑞鳳に食い掛かっていた。
全員無事に敵第4波を撃退したというのに、榛名は誰の目でみても明らかに焦っていた。信じられないという一心で、沈鬱な面持ちの瑞鳳の肩を掴む。
まさか、もう第5波が来たのか。だが、それにしては様子がおかしかった。
鳩が豆鉄砲をくらったような顔の木曾と響は、なにごとだと戸惑うばかりだ。

 

「・・・・・・うん、間違いない。このスピード――どうしよう榛名。このままじゃ・・・・・・」
「なんだ。なにがあった」
「それは――」

 

瞬間。

 
 

一条の閃光が、煌々とまっすぐに。榛名達の頭上の空気を灼いた。

 
 

遅れて、ヴァシュウッ! と、特徴的な擦過音が耳を打つ。
それは、聞き慣れた実体弾とは異なる音。それは、最近になって聞くようになった音。
それが意味するものは。

 

「・・・・・・【Titan】」
「おいでなすったか・・・・・・!」

 

深海棲艦にはランクがある。
通常のものよりも強い個体を【Elite】、群を統括する個体を【Flagship】と呼称する。更に上位種に【姫】や【鬼】が存在するが、長らくこの【Elite】と【Flagship】の二種が、あらゆる海域に複数生息する、あまりにも厄介な強敵として提督達を悩ませたものだ。
そして。
例の隕石が落ちてから出没するようになった、佐世保がここまで追い込まれることになった一番の原因。
10mまで膨れ上がった巨体で、荷電粒子砲や高誘導高速ミサイルを自在に操る、新たなる強敵。未知の機械を取り込んで異常進化を遂げたコイツこそが、二階堂提督が暫定的に【Titan】と名付けた新種の深海棲艦だった。
コイツの為にいったいどれほどの犠牲があったか、考えるだけで腸が煮えくりかえるようだった。

 

「6時方向、距離10。・・・・・・すごいスピードでこっちに来てるよ」
「弾が足りないよ」
「速度も射程もヤツのほうが上だ。コンテナに戻る前に追いつかれる」
「でも、ここで待ち受けることもできないわ。第五戦速で後退します。木曾は信号弾を」

 

今のままでは到底勝ち目がない。
弾薬がない砲塔はただの鉄屑だ。
続けざまの戦闘、予想よりもずっと速い敵の襲撃、このまま戦艦よりも硬い巨人などできるはずもない。
そう即座に判断した榛名は東に舵をとる。目指すは8マイル離れた八朗岳麓だ。

 

「囮もなにも使わず皆でただ逃げる。そうだな」
「ええ。逆襲はその後です」

 

先ほど火力支援をしてくれた隊を頼るほかなかった。途中で追いつかれるだろうが、そこからは戦車隊の善戦に期待するしかない。まずは補給しなければ。

 

「行きます!」

 

佐世保にとっては四度目の、榛名達にとって二日ぶり三度目となる【Titan】との戦いは、撤退戦から始まった。

 
 
 

 
 
 

【Titan】は過去に三度、佐世保近海に現れた。
そして、その度に多大なる犠牲を払ってきた屈辱があった。
佐世保にとって一度目の戦闘は、隕石落下二日後の昼前。突如強襲してきた巨人に翻弄されるまま大損害を被りながらも、とにかく有りっ丈の火力を集中させてなんとか倒した、らしい。
らしい、というのは、榛名達は当時他海域に出撃していた為だ。人伝に聞いた話だが、その榛名達が参加できなかったその戦いで多くの艦娘が大破に追い込まれ、他鎮守府への搬送を余儀なくされたという。
二度目は、哨戒中だった第三艦隊との遭遇戦だった。救援として榛名達が駆けつけた時には既に壊滅状態となっており、その後もまだ9人いた第二艦隊も4人だけになってしまった。その時は駆逐艦――速力に優れる彼女らが囮となって巨人を釘付けにしてくれたおかげで、なんとか撃退することができた。
この戦いで、対【Titan】では駆逐艦の速力は不可欠だということが判明した。

 
 

驚異的な機動性で三次元運動をする巨人に追随し、確実に大火力を当てる為の『一瞬』を創り出すことこそが攻略の鍵だったのだ。

 
 

彼女達のスピードでなければ、ヤツとの交戦距離に突入することすらままならない。
三度目は二日前、榛名達と行方不明だった第一艦隊が合流する際に会敵した。既に中破していた夕立と白露、そして響が中心になって動きを封じ、金剛と榛名の一斉射で決着をつけた。その折りに大活躍した夕立が大破、戦線を離脱する。
こうまで圧倒されながらも死者を出さなかったのは、奇跡というほかないだろう。
そしてこれが佐世保にとっての四度目、榛名達にとっては三度目の戦いとなる。

 

「くそ。なんて射程だよ」
「10mあるんだもん、私達よりずっと遠くまで視れるはずよ。・・・・・・羨ましいなぁ」
「ただでさえお前は小柄だもんな」
「ほ、ほっといてよぅ」

 

小柄な軽空母こと瑞鳳の最大速度である33ノットに準じた第五戦速(30ノット=約55km/h)で蛇行して、荷電粒子ビームを避けつつ愚痴を言い合う。
艦艇に準じた能力を持つ艦娘や深海棲艦といえども、通常の艦艇に明確に劣っているものがある。それは全高の低さに起因する、索敵能力の低さだ。
艦娘も深海棲艦も大体人間サイズ、つまり視認できる水平線は3マイル未満だし、電探も4〜5マイル程度に制限される。必然的に交戦距離は3マイル前後となり、これにもう慣れきっていたのだが、10mの巨人が相手となると話は違ってくる。Titanなら目視で6マイルは見通せるだろう。
文字通りスケールが違う。索敵とは、高いところになければ性能を発揮できないものなのだ。
こちらからは見えないが、敵はもう自分達を完全に射程内に収めている。
夜目が利かない筈なのに、驚くべき精度だ。
今が夜でなければと、瑞鳳は歯がみした。
アウトレンジ攻撃は空母の華にして専売特許。それを踏みにじられた気分だった。

 

「追っかけてくるのは、あの一体だけみたい。やっぱり【Titan】は単独行動なんだわ」
「ならば打つ手はありますね。複数体ならどうしたものかと思ったのですが・・・・・・火力の限りフルボッコです。お姉様直伝のフルバースト、今こそお披露目です!」
「・・・・・・時々金剛さんが提督に怒られてたのって、まさかそういう?」

 

だが、今は自分のできることをできる限りやらなければ。
恐怖に押しつぶされそうな心を雑談で誤魔化しながら、瑞鳳は索敵と警戒に専念する。さっき泣き言を漏らしてしまったからこそ、全力で突破口を見出そうとよくよく目を凝らす。
偵察機のキャノピーを通じて飛び込んでくる視界には、鎧のような装甲やパイプ、謎のシリンダーを取り込んだ巨人の姿が確認できた。右手には大型のライフルが握られており、そこからビームが次々と射出される。差し詰め、ビームライフルといったところか。
左肩にはミサイルポッド、背部には青白い炎を吐き出す推進ユニットを背負っていて、一目で今までの深海棲艦の装備とは趣が違うことがわかる。まるで、人類が造った機械をそのまま身につけているようだ。

 

「砲撃、来ます! カウント5。・・・・・・3、2、1、今!!」
「くぉ・・・・・・!」
「心臓に悪いね、これは・・・・・・」

 

瑞鳳が叫び、艦娘達は大きく進路を変えてビームを回避する。
超高熱のビームは海面に着弾すると同時に、小規模の水蒸気爆発を引き起こす。必要最低限の機動で回避、とはいかなかった。
急制動・急加速によって着弾位置をずらす常套手段も使えない。実弾相手なら、この遠距離なら、山なりに頭上から落ちてくる砲弾の座標さえ避ければよかった。しかし、縦軸さえ合っていれば直進する光の矢は容赦なく背中から貫くだろう。どんなに遠距離であろうと、なにがなんでも横軸をずらさなければ回避できないのだ。
砲撃音を聞いてからでは間に合わない、いつもよりずっと体力を使う回避動作。
特徴的な擦過音がただ通り過ぎるのを祈るしかない。御札が欲しいと切実に思う。

 

「ミサイルも来るよ! 数は10!」
「対空用意!!」

 

そうして逃走劇を始めて、5分が経った。
実弾砲と魚雷による戦闘とはまるで勝手も次元も違う、ビームとミサイルによる猛攻に追い立てられた第二艦隊は、当初の予定からは相当外れた航路を進み、ついに追いつかれてしまった。
最大にして唯一の誤算は、巨人の速度が予想よりもずっと速かったことに尽きる。
背部推進機関によって戦車砲さえも機敏に避ける巨体は、孤立無援となった第二艦隊の前に壁となって立ちはだかる。

 

「この・・・・・・!」

 

木曾が毒づいて、左肩の25mm三連装機銃を向けた。しかし、ミサイル迎撃に酷使されたそれは既にすっからかんの鉄屑である。
それでも、構えずにはいられなかった。まともに戦うことも許されずに敗北するなど、認められるものではなかった。

 

「ッ、みんなは! 榛名が!! 護ります!!!!」
「・・・・・・諦めるにはまだ早いさ!」

 

まだ弾薬に余裕があった榛名と響が腹をくくり、火力の有りっ丈を巨人の右腕に向けて放つ。ビームライフルさえ封じればまだ活路はある。今までもそうやって倒してきたのだ。
この至近距離ならば避けられまい。
しかし。

 

「学習しているとでも言うの・・・・・・!?」
「まだだ!!」

 

【Titan】は左腕を突き出し、ライフルを庇った。
今まで、防御行動なんて取らなかったというのに!
代わりに左腕はズタズタに引き裂かれ使い物にならなくなったがそんなもの、こちらにとっては何も嬉しくない。弾を無駄に使ってしまったショックのほうが断然大きかった。
当然そんなことで挫けちゃいられない。今度こそと二人は散開し狙いを定めるが、今度は【Titan】が背部推進機関を噴かして跳躍、巨体に見合わない俊敏さで上空へ回避するとともにライフルを榛名に向ける。

 

「――!!」

 

――避けられない!
榛名は直感する。いつも当たって欲しくない事ばかり当てる戦士としての直感は、お前はここで死ぬと耳元で囁いてきた。上空の巨大な砲口を見上げ、一拍思考が停止する。
音が遠くなる。後悔の念だけが押し寄せる。
瑞鳳が、夜であるにも関わらす弓に矢を番え、艦載機を出そうとした。
木曾が、思わず足を止めてしまった榛名を庇うべく走り出した。
響が、なんとかして狙いを逸らそうと錨を投擲した。
榛名は、そんなみんなを見て自失から醒め、最期まで抗おうと砲撃しようとした。
そして。
そのとき――

 
 

一筋の光条が天から降り注ぎ――

 
 

今にも発射されそうだった【Titan】のビームライフルに直撃し、小爆発を起こした。

 
 

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