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「こっちの情報に無い――新型だと!?」(仮)

Last-modified: 2017-09-27 (水) 12:46:08

「こっちの情報に無い――新型だと!?」

 

 カオスを駆るスティングは、数的優位だけではなく質的にも状況が変わってきたことを
確信した。白いザクの動きも中々だが、両手に馬鹿でかい対艦刀を装備したザクも、
空中からこちらを睥睨するようにビームライフルを構える新型も、並々ならぬ気配を
漂わせている。

 

『スティング、こいつらどうする?』

 

 不安げな声でステラが通信を送ってきた。スティングは黙考する。

 

「藪を突つけばなんとやら、だが」

 

 敵の数も操縦者の腕も、最早武器を奪いながらどうこう出来ると言うレベルではない。
撤退を考えるべきであった。

 

「蛇どころか竜が出てきやがった。ステラ、戦闘ステータスで起動しろ」
『……うん』

 

 まさかバッテリーが足りないと言う冗談は無いよな。思わずデータリンクを介して
カオスとガイア両機の状態を確認する。ステラはちゃんと言いつけを守ったようだ。
奪った武器からの電力供給によって、短時間であれば戦闘ステータスでの稼働が
可能であった。

 

「フェイズシフトオン、全兵装を戦闘出力へ――後600メートル、保てよ」

 

 二機のモビルスーツが戦闘ステータスに移行した。カオスは背面のポッドと共に
全身に深緑の装甲を鎧い、ガイアは漆黒の毛皮を纏う狼狗となった。

 

「ネオの野郎、いい加減な情報を寄越しやがって」

 

 狭いコックピットの中で毒づく。其処までがスティングに許された最大の反抗であった。
長年の間に課され続けた条件付けは、戦闘を前にして他に意識を分散させることを許さない。
 スティングはスティックを押し込んだ。ディスプレイの中で戦場の景色が移ろいで行く。
 カオスとガイアは、プラントの大地を揺るがしながら突撃した。

 
 

『来るぞ、シン、ルナマリア』

 

 VPS装甲を展開して戦闘ステータスへの移行を遂げたカオス、そしてガイアの二機を見て、
レイが僚機の二人に向かってそう告げた。

 

「オウケイ、あたしとシンで前に出るわ。背中を任せたわよ、レイ」

 

 応えるルナマリアは負ける気がしなかった。生活態度や素行に少し問題はあったものの、
訓練所時代にモビルスーツ模擬戦では無敵を誇った三人の連携だ。装備も整った。
射撃が絶望的に苦手なルナマリア機の手には今二振りの太刀が握られている。
 そして更に――

 

『ルナ、ガイアを抑えろ! レイ、始めにカオスを攻撃する!』

 

 ハンガーの上空で奪われた二機を同時に視界に収めながら、インパルスのシンが叫んだ。
コロニーの擬似重力下で自在に飛翔できるフォースシルエットの機動性、地面と空から
攻撃の多角性を得た三機は、柔軟な連携が可能になる。
 漆黒の狼――VPSを展開したガイアが赤いザクに向かって突撃してきた。射撃武器を持って居ない
と判断したのか真っ直ぐ、最速の動きで迫る。ルナマリア機と接近してさえいればインパルスが
味方機を巻き込むことを恐れて援護射撃をしてこないと思ったのだろう。

 

「考えが甘いわね! ――其処ォ!」

 

 エクスカリバーの間合いに入る直前にルナマリアはスティックを操作し、右腕の対艦刀を
横薙ぎに振らせた。まさに獣の反射速度でガイアが跳躍し長大な太刀の一閃を躱す。高エネルギー砲並みの
重量を空振りした結果ザクの巨体が大きく振られた。

 

「甘いって言ってんのよ――!」

 

 ルナマリアは全く慌てることなく、反動を利用して左腕の刃を縦に振るった。
ガイアを動かす者の反応は人知を超越した速度を誇っているが、速いという事が分かっているのなら、
ルナマリアが動きを先読みして二撃目を当てるのはそう難しい事ではない。
 獣の体を人の技が捉えた。宙で身をよじってビーム部分の直撃は躱したが、エクスカリバーの先端が
ガイアの胴体をえぐった。衝撃で黒い装甲が剥がれ落ち、本来の灰色を取り戻して地に落ちる。

 

「降伏する? ――って、そんなわけないわよね」

 
 

 手負いの獣には気をつけろ、コロニーには犬より大きな動物は居ないからルナマリアは獣という
物を見たことが無かったが、そんなありふれた文句を思い出した。
 低く身を構えたガイアが、関節のモーターを全力稼働させて突進してくる。

 

「装甲の分軽くなったって言うつもり? 舐めるんじゃないわよ!」

 

 斬撃の間合いに立ち入ったガイアを両断すべくザクが再び双剣を振るう。一撃目が回避されることも、
攻撃の間を狙って接近を図って来ることも、ルナマリアの予測どおりだった、しかし――

 

「――! 何ですって!?」

 

 ガイアは右前脚を犠牲にして対艦刀の一撃を逸らすと、ザクの目の前で跳躍。必殺の一撃を躱され
平衡を崩したザクの肩口を蹴って再び跳び上がった。

 

「――あたしを、踏み台にした!?」

 

 ルナマリアの驚愕は、自分ひとりが出し抜かれたと言うだけの物ではなかった。崩された鉄壁の
陣形、ガイアが跳躍して向かった先に居るのは――
 倒れそうになるザクをフルマニュアルで支えながらルナマリアは叫ぶ。

 

「レイ! ガイアに抜かれたわ! 気をつけて!」

 

 ルナマリアの心臓が凍った。不味い、カオスを追い詰めるべく掩護射撃を繰り返している白いザクは、
このままではほんの一瞬ガイアへの対応が遅れてダメージを受ける。
 自分のミスが仲間を致命的な危機に晒す、そんなルナマリアの危惧を再び救ったのは横合いから
投擲された戦斧だった。モニターの端に片腕の機体が投げつけた姿勢のまま映っている。
先ほどルナマリアを助けてくれた緑のザクだった。レイのザクがガイアに向き直る。

 

「――有り難う! お礼どころかキスだってしてあげるわ!」

 

 聞こえているか分からないが、ルナマリアは本気で感謝しつつザクを突撃させた。

 
 

 外部からは気付かれないはずのプラントの鳴動を、虚空の闇から観察する者達が居た。
薄暗く照明の落とされた艦橋で小さく点っていたカウントダウンがゼロを示した。

 

「もう始まっている……かな」
『帰って来ますかな? 彼らは』

 

 条約無視のミラージュコロイドによってプラント全ての目をごまかしている戦艦、
その艦橋で銀色の仮面をかぶった男が呟き、艦長席に腰を降ろす男が返事した。

 

「よーし、盛大にお迎えしてあげようか。艦長、面舵三十、機関最大。
ミラージュコロイド解除と同時に前方のナスカ級を落とすぞ」

 

 これから女を口説きに向かうような落ち着いた口調で仮面の男が命令を発すると、
艦長イアン=リーは断固たる口調でネオに告げた。

 

「ロアノーク大佐、貴方はファントムペインの隊長ではありますが、この艦の艦長は
私であります。艦の行動にまで口を出されては、指揮系統が混乱いたしますな」

 

 歴戦の宇宙軍人として毅然とした態度で上官に向かって諫言すると、仮面の大佐
ネオ=ロアノークは苦笑して謝罪した。

 

「いや、これは失礼した。つい彼らに向かってのつもりでね」
「……ご理解いただければ結構です」

 

 理解しなければ真空の宇宙に裸で放り出すといった迫力であった。ネオは俄然この
艦長を信用する気になる。笑みを収め、硬い軍人の口調で再度命令を下した。

 

「了解しました。――機関最大、取り舵二十。主砲照準、左舷下方のナスカ級に
合わせろ、ミサイルを前方の艦に発射すると同時にミラージュコロイド解除」

 

 自分の提案した動きを完全に変更して二隻を同時に相手取ろうとするイアンを見て、
ネオは仮面から除く唇を笑みの形にゆがめた。必要と有らば上官にも向かって諌め、
その意見を跳ね除けるならばより一層の戦果を挙げてみせる。

 
 

「プロだね、なんとも頼もしいことだ」
「――は、それが仕事ですので。主砲は思い切り目立つように撃てよ! 先発した
モビルスーツ隊の仕事がやり易いようにな!」

 

 イアンが完全に艦橋を掌握している事を感じ、自分の仕事が此処には無い事を悟った。

 

「それじゃあ、俺は出ようか。艦長、後は任せたよ」
「――ロアノーク大佐、一体どちらへ?」

 

 緩やかに方向を転換しつつある船体の艦橋で、イアン艦長が振り返って聞いた。

 

「なに、艦長の仕事が船の舵取りなら、大佐の仕事が子守りだって事さ。
メビウスで向こうを掻き回して来るから、発進のタイミングを取ってくれ」
「了解しました……御武運を」

 

 イアンはモビルアーマーに乗って出陣しようという上官を揺るぎ無く見送った。
ネオは主砲発射を告げるイアンの声を聞きながら、艦橋を後にする。

 

 戦艦ガーディ=ルーが、ミラージュコロイドの衣を脱ぎ捨てると同時に船尾から
噴煙を曳く対艦ミサイルを発射しつつ、主砲を最大出力で放った。
 一隻のナスカ級戦艦がCIWSの弾幕を形成しながらもミサイルの群れに全身を
噛み砕かれ、もう一隻は反応する間も無く主機関を高速の荷電粒子に貫かれる。
共に爆散には至らないまでも、戦闘力を完全に奪われてデブリの予備軍に成り果てた。
 艦橋の人員が歓声を挙げる暇も無く、イアンの命令が飛んだ。

 
 

 パイロットスーツに着替え、自分の機体に乗り込んで発進の機会を待とうと
したところで、手元にあった端末に第二艦橋のオペレイターが映った。

 

「ロアノーク大佐、艦長は『いつでもどうぞ』との事です」

 

 スーツのジッパーを三重に閉めながら、思わず笑みが隠せない。

 

「了解した、艦長には大人のお守りもご苦労だ、と言っておいてくれ」

 

 自分で前線に出ようなどと言う上官が居ては気苦労も絶えないだろうに、
無理や無茶を仕事の一言で済ましてこなす男に、見えないだろうが敬礼を送った。

 

「さーて、それじゃあ早めに行かないと艦長の気が散るだろうからね」

 

 カタパルトデッキに入り、用意された自分の機体"メビウス"の操縦席に収まる。
進路はすでにオールグリーンのマークが灯っていた。早く子守りを終わらせないとな。
 首筋に何か違和感を感じて、ネオはパイロットスーツ越しに後頭部を撫でる。

 

「――? 風邪かな――?」

 

 直に首を振って余計な考えを振りほどくと、通信回線越しにデッキに向かって呼びかけた。

 

「ネオ=ロアノーク、"メビウス"――出る!」

 

 爆発的なGがネオの体をシートに押し付けた。
 カタパルト――電磁力の弓が戦闘機を加速させ、真空の闇へと放り出す。
 一瞬の浮遊感を感じると直にスラスターを全開にし、ネオは戦場の宇宙へと
メビウスの機体を飛翔させた。

 

「待っていろよ! ファントムペインの諸君!」

 

 機体を加速させるGを全身に心地よく感じながら、ネオは爆煙とビームが嵐の如く荒れ狂う
宇宙へとメビウスを突入させた。

 
 

ミネルバの(仮) 新人スレ旧まとめ 戦艦ガーディ=ルー(仮)

 

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