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「ガンダムビルドファイターズ外伝 〜オーサ・ルーサの軌跡〜」 ―分岐点―

Last-modified: 2016-07-10 (日) 09:34:20

 日本から遠いチベットの地でも、今はガンプラブームが、凄い。中国との国交
は便宜上は正常化し、かなり文化水準は、日本とも近くなってきていた。街を歩
けば民族衣装こそ目にはしても、コンビニもゲームセンターも、そしてガンプラ
屋もある。初めて手にしたガンプラは、…「ザクタンク」だった。母親に、誕生
日のプレゼントをと言ってガンタンクをお願いしたら…買ってきたのが”それ”
だったのだ。「ごめんね?お母さんガンプラの事良く解らないから、ごめんね」
と、すまなそうに謝る母親と少し喧嘩をしたのは…良い思い出である。

 

 そんなガンタンクを今、チベットから遠く離れた日本の地で、何故か自分は今
…組み立てていた。世界大会の第一ピリオドまで…もう時間が無い。思い出され
る。チベット自治区の予選大会。代表枠は一名。予選と言っても強豪ぞろい、そ
の中から勝ち抜かねばならず。自分は有り金はたいて「ヒルドルブ」のEXモデ
ルを購入、それに出来る限りの改造を施し精緻な細工を重ねて「ヒルドルブ・ハ
イマーク」として完成させた。”常に敵からマークされる存在”である。対空の
弱さを、新規に搭載したミサイルランチャーとそして可変機構を改造して高速化
…変形する箇所にバネを仕込んで変形迄の速度を上げた”それ”は。自分が想定
した以上の機動性と精度を発揮してくれて。その予選の決勝まで、ほぼ試合時間
1分以内で決着、圧勝しつつ駆け上がった。遠距離からミサイルをばらまき、そ
して噴煙を見通す高精度レーダーと、得意の予測射撃により、ミサイルを回避す
る敵ガンプラを主砲の一撃で、仕留める。どんな装甲だろうがヒルドルブ・ハイ
マークの主砲の前には意味は無い。予選で大破するまで、ヒルドルブの潜在能力
がこうも高い事に、「足なんて飾りだろーが!」つい、それを決め台詞にさえ…
していた。

 
 

 やがて、チベット地区予選の決勝が始まる。初めて到達した大舞台だった。会
場が沸き上がる。アナウンスを聞いた時は感動して…涙さえ流れた。脳裏に浮か
ぶ幼い頃の記憶。それでも貰ったザクタンクを組みつつ、WEBで調べ。チベッ
トの工事現場で動く重機に・・・幼いながらも、何故かそれを重ねていた頃。そ
の後、ただのムサいガンプラオタ(タンク率高し)になった自分は。目の前にあ
るBFベース、第2次ガンプラブームの到来と共に今。チベットを代表する存在
として…世界へ飛び立とうとしているのだ。

 

「Bコーナー、スーマ・ノナース!」

 

 そのアナウンスと共に、歓声と共に。反対側から対戦者がやってくる。笑みが
こぼれた。お互い、工事現場でよく出会う仲だ。スーマも今は、所属する部族に
伝わる戦の衣装に身を包んでいた。それは自分も同じである。よく解る…お互い
に譲れない何かを、手にしたガンプラに込めている事を。

 

「久しぶりだな、・・・また、タンクか?」
「貴様こそ、まだザクキャノンだと?笑わせるな」

 

 奴は、これ見よがしにだ、そのガンプラを手にして、俺に見せていた。自分が
タンクに拘る様に、奴はデザート仕様にこだわりが有って。その中でも「ザクキ
ャノン」には一方ならぬ想いがあるらしかった。その強さは去年、うっかり「ガ
ンダムタンク」で出場した時に…嫌と言うほど味合わされた。奴はザクキャノン
の脚部を改造し、グフ用のフライトユニットを着脱式に改造して装着。ガンダム
のビームライフルではその動きを追いきれず接近を許し、結局ザクキャノンのビ
ッグガンを至近距離から撃ち込まれ屈辱的に、負けた。俺はその時まだ、遊びの
つもりだったが、奴は違っていたのだ。

 

「Please.Set Your Gt Base」

 

 BFベースからのアナウンスが始まる。大会のアナウンスは既に聞こえない。
自分のGTベースをホルダーにセット。それはBFベースに接続され、俺の「ヒ
ルドルブ・ハイマーク」の情報が、ロードされていく。周囲をプラフスキー粒子
が覆いはじめ、そしてコクピットが形成。ベースからのアナウンスが続く。

 

「Please.Set Your GANPLA」

 

 ヒルドルブ・ハイマークを、目の前に形成されたカタパルトへ、置く。スキャ
ンされた直後、命を吹き込まれた様に。それは砲身を微かに上げた。俺は両手を
形成されたコントロールボールに、置く。試合開始をアナウンサーが告げ、会場
の歓声は高まった。BFベースは形成されたディスプレイの向こうに閉じられ、
バトルスタートの表示が、眼前に展開したモニターに、踊る。

 

「ヒルドルブ・ハイマーク、…出るぜ!」

 

 スティックを前に押してやると。それによりカタパルトが起動。火花を散らし
ながら、それは、正に我々の戦場に相応しい「荒野」へと、射出されて行った。

 
 

「あの時に気づくべきだったんだ。ヤバい雰囲気だって事に・・・」

 

 何とかガンダンクの上部を組み終り、動きその他をチェック。スミ入れまで間
に合うかどうか、予断を許さない状況だった。傍らを見る。ヒルドルブ・ハイマ
ークの残骸がある。変形機構にバネを仕込んだは良いが、それが仇でメインシャ
フトが折れていた。他にも機体各部に穴が開いていて。使えるパーツが有れば使
うつもりだったが、そんな時間は到底…無さそうだった。ともかく、今は「決
戦!ア・バオア・クー」を生き残ったガンタンク!それを目指し、組む。プラフ
スキー粒子については未だ解らない事が多いが…今までの経緯を見ると、劇中の
エピソード、その再現度が高い方が、より強さも強度も増す。だがその為には相
応の手間が必要なのだ・・・ため息が出る。第一ピリオドを・・・こんなもので
戦わねばならないとは。

 
 

 チベット地区予選、決勝の試合は、最初から砲撃戦になった。スーマの「ザク
キャノン・ストライク」は、前回対戦した時とは違い、背中にロケットブースタ
ーを装備し、そしてガンダムのシールドを二枚重ねで抱えていた。最初に敵を発
見したのは俺のヒルドルブ・ハイマークである。高性能なレーダーは十分な機能
を発揮し、敵が崖の裏に隠れる所を発見した。カメラの倍率を上げ、レーダーを
信じ、その岸壁に向けて、主砲を撃つ。

 

 爆音と共に放たれたヒルドルブ・ハイマークの砲弾は、風切音と共に岸壁へと
着弾し、それを貫通した、様に見えた。レーダーを注視する。直撃は期待してい
ないが…もし”かすめて”もいたら、儲けものだ。残骸が散乱したのが見えたが、
しかし、その場からザクキャノンが現れる事は無かった。不意に、嫌な予感がし
た。レーダーの照射範囲を周囲に向ける。左に向けたのが失敗だった、右に向け
直した時、そっちの方向からスーマのザクキャノン・ストライクが、通常の3倍
の速度で突撃してくるのが解った・・・”ダミーバルーン”だ、索敵した際に、
それに引っかかったのだ!

 
 

「教えてやるよオーサ・・・、所詮タンクは脇役だって事をな!」

 

 ともかく接近を許せば事だ。俺はヒルドルブ・ハイマークを直ぐに後退させ、
後退しつつ主砲をスーマのザクキャノンに向け、放った。流石に後退しつつでは
砲身が揺れる、命中は期待していないが、ともかく相手の進路を変えられれば良
い。砲弾は一旦着地したザクキャノンの左の地面を吹き飛ばすが、もちろん直撃
とは行かなかった。それでも風圧は奴の持つガンダムシールドを煽り、奴は幾ら
か態勢を崩し、その場に停止した。奴の周囲をマークし、ミサイルランチャーを
放つ。射出されたミサイルを避ける様に動いたザクキャノンは、ちょうどヒルド
ルブ・ハイマークの砲身の前に居た。主砲のチャージが間に有った。放たれた主
砲は奴の持つシールドを貫通し…破壊した。しかし、スーマのザクキャノンはシ
ールドを放棄していたから、ダメージとしては腕一本を吹き飛ばすにとどまった。

 

 その後は、お互い距離を取っての打ち合いになる。相手の方が、次弾装填まで
の時間が短い。だがザクキャノンはキャノン側の手を吹き飛ばされていて、砲身
を安定させる事が出来ずにいた。敵の命中率が悪い間に、ヒルドルブ・ハイマー
クの予測射撃は的確にダメージを与えて行く。快感だ…、なぶり殺しである。後
は接近さえ許さなければ良い。ザクキャノンが横に跳び、岩陰に隠れた。勝ちを
意識してしまった、それへ向けて無防備に、主砲を撃ってしまった。

 

 立ち込める煙の中から、ザクキャノン・ストライクが背後のブースターを全開
にして…突撃してくる。さっきの手だ、奴は隠れるつもりは無かった、こちらの
砲撃を予測し、そこにダミーバルーンを置いたのだ。気付かないうちに接近し過
ぎた、次弾装填が間に合わない。直前で、ザクキャノン・ストライクが背後のブ
ースターを放ち、飛んだ。つい主砲の照準機で追い掛けたが。それは可能な射角
を超えて、ヒルドルブ・ハイマークの直上へと、飛び込んできた。

 
 

「終わりだな・・・、オーサよぉ!?」

 

 全速でバックするも、ザクキャノンの砲口は既にヒルドルブ・ハイマークを捉
えていた。撃ち込まれ、直撃こそ免れたものの、前面直上装甲、ちょうど薄い所
を撃ち抜かれ、前輪部の駆動力を失う。動きが鈍った、慌てて機体を横に向ける。
そこへ、ザクキャノンストライクの砲撃が立て続く。側面装甲版は頑丈だったが、
それでもキャノンだ、至近距離からでは2発も耐えられず、一発は貫通してあわ
や、頭部センサーユニット群を破壊されるところだった。ヒルドルブ・ハイマー
クの機動性はMSにも匹敵するが、それでも超えると言う訳には行かない。更な
る接近を許す・・・、前の雪辱を、また味合わされるのか?脳裏を横切った悪夢
を、俺は振り払った。

 

「まだだ、まだ終わらんぞ!!」
「貴様など、この一発あれば十分だ!」

 

 動きの鈍ったヒルドルブ・ハイマークに、ザクキャノンストライクが飛び乗っ
てくる。主砲は追従出来ない。屈辱的に、奴は左足でヒルドルブ・ハイマークの
センサーユニットを足蹴にしつつ、着地した。スーマの高笑いが聞こえた、キャ
ノンをセンサーユニットに向ける。俺は咆哮しつつ、スロットの5番を開いた。

 

 ヒルドルブ・ハイマークが、近接格闘形態へと変形する。仕込んだバネの力は
凄まじく、その巨体に見合わぬ速度で、要するに足蹴にしたザクキャノンごと、
それを跳ね上げた。ザクキャノンは溜まらずに跳ね飛ばされたが、俺はそれで追
撃を止めなかった。近接格闘形態から、更に主砲をパージする。ヒルドルブ・ハ
イマークの、展開された上半身の腕を前に伸ばしつつ、機体をザクキャノンへ向
け、加速させた。

 

 「なんだ、ぁああ!?」

 

 墜落しそうだったザクキャノンストライクは、一度、ヒルドルブ・ハイマーク
の上部装甲に当たり、跳ね上げられた。それをヒルドルブの”両手”で抑え込む。
短くなったとはいえ、主砲はまだ生きていた。ザクキャノン・ストライクのコク
ピット付近を、それはうまい具合に照準していた。

 

「貴様など、この一発有れば十分だな・・・!」

 

 そして、ヒルドルブ・ハイマークの主砲は火を噴いて。ザクキャノン・ストラ
イクの上半身は、そのまま吹き飛んだ。

 
 

 …ようやく、ガンタンクの全身が何とか、組み上がる。予選決勝での、歓声と
興奮を思い出している場合では無く、時間はもう、ない。後はスミ入れで、どれ
だけ”表現”出来るか。バッグの中にはまだ、”お守り”として持ってきた「ザ
クタンク」がある。ふと、祈るような気持ちでそれに目を落としつつ。設備も心
もとない控室で、自分はスミ入れを始めた。開始まで、後、一時間も無かった。

 
 

 ガンプラバトル世界大会、第一ピリオド。俺のガンタンクは宇宙空間で、それ
でもグフカスタム高機動仕様、そしてジムクェイルを撃破しては見せた、が。S
Dのキャプテンガンダムに遠距離から撃ち抜かれ…大破。第一ピリオドを制する
事は、出来なかった。試合終了後、気を落とす俺の周りに、ネットのSNS「砂
漠友の会」の”仲間”が集まる。

 

「・・・まあ、気を落とすなよ。次が、あるさ」
「そうそう。ロワイヤルならチーム戦が出来る、砂漠にじんどりゃ、俺らに叶う
奴らはいねーよ?」

 

 ねぎらいの言葉は嬉しかったが、とは言っても。”連中”も流石に今回は、デ
ザート仕様に拘りは無く。ティエレン・タオツーやらヴァイエイトやら、微妙に
砂漠とは関係の薄い機体を選択していた。ともかくヒルドルブ・ハイマークが大
破してしまい、ガンタンクも撃破された今。今から次の機体を用意するのは勝算
として無理があった。バックから取り出し、その箱を開ける。残った機体はこの、
「ザクタンク」だけだった。

 
 

・・・選手村に置かれたBFベースでの、テストバトルでは。それはむしろ、ガ
ンタンク以上の戦いをして見せて、くれた。もしかしたら・・・これで次は勝て
るかもしれない?或いはヒルドルブが直るまで?淡い期待に、消えつつあった闘
志は、再び俺の中で、燃え上がっていった。

 
 

 第2ピリオド、「ロワイヤル」が始まる。砂漠に陣を張った「砂漠友の会」の
前に、一輪のバイクに乗ったガンダムタイプが接近してきた。優勝候補の一角、
リカルド・フェリーニ!?だが、ここは砂漠だ、俺達の庭である・・・。奴を崩
せれば大きな障害は一つ消え、このバトルを取れる!

 

 俺達は、俺はザクタンクを駆り、走り出していた。

 
 

「ガンダムビルドファイターズ外伝 〜オーサ・ルーサの軌跡〜」終

 
 

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  • いい感じにBF!渋い…… -- 2014-02-24 (月) 09:16:47
  • あのザクタンクの人にこんな物語が・・・熱いな。 -- 2016-07-10 (日) 09:34:20

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