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「連合兵戦記(仮)」2章 1 反撃の序章

Last-modified: 2014-06-07 (土) 13:48:36

「今日は死ぬにはいい日和だ」 ラコタ・インディアンの戦士

 
 

2章 反撃の序章

 
 

月の制圧には、失敗したもののMSを保有するザフト宇宙艦隊は、宇宙で猛威を振るった。

 

そして6月18日 現在、宇宙では、4日前にL4に存在する東アジア共和国領有の資源衛星「新星」にザフト軍が侵攻、
対する地球連合軍は、新星防衛の為に宇宙艦隊を派遣、防戦中であった。
激戦により、L4宙域の周辺部に存在するコロニー群も被害を受けた。
多くのコロニーが住民もろとも破壊され、破壊を免れたコロニーも損傷を受けたことで住民が避難を余儀なくされた。

 

多くの宇宙難民が発生し、それを受け入れた中立地域であった月の月面都市や中立のスペースコロニー群では、
治安悪化や食糧問題などの問題が起こっていた。

 

ザフトの快進撃と逆に地上では、広大な大地、長大な兵站線、コロニーのコンピュータ調整された環境とは、
比べ物にならない厳しくコンピュータでも完璧には予想できない
無秩序な自然環境・・・これらの問題により、地上のザフト軍の侵攻は、次第に鈍化しつつあった。
だが西ヨーロッパは、その大半が、ザフトの手に落ちつつあった。
3日前には、ザフト軍のディン部隊の空爆により、避難民の隊列が地獄の人肉売り場に
変換されるのをハンスも目の当たりにしていた。

 

この状況下でユーラシア連邦は、西ヨーロッパ ベルギー州に存在する首都 ブリュッセルを放棄し、
首都機能を東のモスクワへと移転準備を進めている始末であった。

 

この様な状況下で地球上での反コーディネイター感情は過去最悪の状態となっていた。

 

「パドリオ曹長!俺の隊も出す!このビートルは、ここで待機しろ!ほかの車両もだ!」

 

「了解!女にザフトの木偶人形を潰したことを自慢できないのは残念ですが、俺の分も頼みますよ、大尉」
指揮車のドライバーであるパドリオ・ルシアーノ曹長は親指を立てて陽気に応えた。

 

この指揮車両 通称 ガン・ビートルは、リニアガンタンク等の戦闘車両と異なり、
有線ミサイル2基と12.7mm車載重機のみで正面戦闘に耐えうる装甲は無い。

 
 

だが、この部隊は、待ち伏せ戦法でうまく戦力として活用していた。
彼ら第22機甲兵中隊は、この指揮車のみならず
本来なら正面戦闘に投入しない様な車両まで創意工夫によって戦力化していた。

 

それは、彼らの練度の高さを示していると同時に現在の地球連合軍の危機的状況の証左であった。

 
 

「ああ、人型兵器が図体のでかさよりも繊細さが重視されることを教えてやるさ」
彼は、力強い口調でそう答えると車内に収納されたパワードスーツを着用し始めた。

 

このパワードスーツ ゴライアスは、大西洋連邦が地球連合結成以前、ユーラシア連邦のグティ 
東アジア共和国の雷電に対抗するために開発したパワードスーツである。

 

グディと異なり、市街地戦に重きを置いたゴライアスは、若干の改造でコロニーや宇宙ステーションでの
無重力空間戦にも対応できる機体であった。

 

流れるような動作で瞬く間にハンスはゴライアスを着用した。
その右手には、20mmチェーンガン、左手には、銀色に光る特殊金属製のブレード、
腰には、予備の弾薬と大型グレネード弾が6発・・・・・・
これだけで非パワードスーツ装備の機械化歩兵1個中隊とも戦える装備である。
さらにその背部には、小型化されたブースターパックが装着されている。

 
 

「第22機甲兵中隊の誇りを見せてやる!来い!宇宙人共!」絞り出す様な声でハンス大尉は言った。

 

主戦場から少し離れたこの地で枯れた技術の結晶ともいえるその小人達のささやかな反撃が、
宇宙より欧州の大地に降り立った最新技術の塊である鋼鉄の巨人達に対して行われようとしていた。

 

「大尉!偵察班より通信です!敵に動きありとのこと」
「どうした?」「て、敵部隊の装甲車が市街に侵入を開始、もうすぐ、B-2地区に侵入します」
偵察班の緊張した声がゴライアス内蔵通信機を通じてハンスに伝達される。

 

「こちらに画像を送れるか?」「はい!」
ガン・ビートルのモニターに設置式の監視カメラからの映像が写し出される。

 

これら監視カメラは、軍用のもののみならず、都市内に放棄されていた民生品を改造したものも含まれていた。

 

映像は、NJによる電波障害の影響で乱れが生じており、陽炎の様に朧げであったが、
確かにジン3機とその足元に展開する緑色の軍服を着用したザフト兵と装輪式の装甲車を映し出していた。
やがて歩兵隊は、装甲車に乗り込み、市街地へと向かっていった。
「斥候のつもりか・・・歩兵とモビルスーツを分離するとは・・愚かな奴らだ」その映像を見ながらハンスが言う。

 
 

ザフト軍は、これまでの快進撃の影響でモビルスーツ中心主義に陥りつつあった。
その影響で後方の開発局では、何でもなるべく、モビルスーツで代用するという考えにより、モビルスーツのバリエーションや
新型の設計開発がすすめられると共に前線では、モビルスーツと他の兵科の連携がおざなりになるといった事態が発生していた。

 

モビルスーツが無敵の兵器ではなく、他兵科との連携によってその力を戦場で発揮出来るのだという当然の認識をザフト軍の兵士の多くも持っていたものの、
NJによる電波障害下での無敵ともいえるモビルスーツの戦果という魔力が彼らからそれを忘れさせつつあったのである。

 

これには、モビルスーツや戦闘車両に随伴できる歩兵程、歩兵を確保出来ないという事情も関係していた。
コロニー国家であるプラントは、大人口を抱える地球連合軍と異なり、歩兵部隊に十分な人口を回せず、一部では、親プラント国家の兵員に依存する程であった。

 

今回の例では、本来なら正面戦力であるジンを先頭にして市街地への偵察を行い、ジンでは、偵察出来ない場所、
建物内や地下鉄道網、下水道等を歩兵に偵察させたり、進路上に存在するモビルスーツの脅威となる対戦車歩兵の排除と仕掛け爆弾や地雷等のトラップの発見除去を
装甲車と歩兵が行うべきであるにも関わらず、

 

この部隊は、ジン3機と装甲車と歩兵部隊を分離し、装甲車と歩兵部隊のみで都市部への斥候として単独で送り込んだのである。
装輪式装甲車も歩兵も正面戦力としては、それ程のものではない・・・これでは、敵の戦力を図るための捨て駒と大差ない運用である。

 

「これでは、古代スパルタの補助兵と変わらんな・・」思わず、ハンスは彼らに同情していた。
だが彼も彼の部下も敵を見逃すほど、愚かでもお人よしでもなかった。

 
 

市内に待ち伏せる敵のこと等、知る由も無く装甲車と歩兵部隊で構成されるザフト軍部隊は、市街地へと侵入した。

 

このザフト軍装甲車は、左右6輪のタイヤにより、移動する装輪式装甲車で、車体上部に13mm銃座を装備していた。

 

「ひでえ風景だぜ・・・」銃座を握る金髪のザフト兵は、緑色の瞳で目の前の惨状・・・・ガラスが残らず割れ、一部が崩れた高層ビルディング、くすんだ廃墟群、
交通事故を起こしたまま放置された電気自動車を眺めて言った。
その直後、車体が揺れた。
「それにしてもよく揺れやがる」

 

装輪式は、本来なら市街地の道路などでの運用が理想的であったが、エープリルフール・クライシス以降、
都市のインフラはメンテナンスが施される事無く放置されていた為、瀕死の老人の様な状態であった。
そしてそれは、道路も例外ではなく、事故車と瓦礫、爆撃の穴で飾られていた。

 

そしてこの状況は、万全の状態での道路での運用が理想的な装甲車にとってはお世辞にも快適と言える環境ではなかった。

 

「畜生!ナチュラル共、逃げる前に道路直してから逃げろよな・・」
装甲車を運転するザフト兵は、事故を起こさない様に注意しながら愚痴った。

 

もし横転でもすれば、いい物笑いの種だ。
不意に装甲車が、ワイヤーに引っ掛った。

 

「ちっ」装甲車は、慌てて停車する。
直後、近くに巧妙に瓦礫に隠されていた対戦車ロケットランチャーが発射された。

 

発射された弾頭が車体側面にめり込み、車両は動きを止めた・・・・弾頭の信管が作動、爆発が装甲車を吹き飛ばした。
その周囲に展開していた歩兵部隊は、難燃繊維の軍服を着用していようが防弾対策が施されたボディスーツに身を守られていようが関係なく、
炎と衝撃と破片で打ちのめされ、即死した。

 

装甲車の銃座に付いていた兵士は、上半身のみの姿で、天高く舞い上げられ、近くの商店の看板に激突した。
看板に叩き付けられた身体の断面から零れ落ちた内臓が、看板の文字を赤黒い血で染めた。

 
 

本来、モビルスーツ部隊を支援するはずだった彼らは、その本分を活かすことが出来ず、全滅したのであった。

 
 

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