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「連合兵戦記(仮)」2章 4

Last-modified: 2014-09-27 (土) 21:28:14

「ざまーみろ!宇宙の化け物ども!」
「やったぜ!」
撃破されたジンの周囲にいた歩兵達は、思わず一斉に歓声を上げた。
モビルスーツの巨体と比べればネズミ程にも等しい彼らは、自分たちがモビルスーツに止めを刺したことに奇跡が起こったのではないかと思う程であった。

 

「全員退避!敵MSが来るぞ!」
連合軍歩兵の一人が叫ぶ。同時に地響きが兵士達の鼓膜に響く。
即座に歩兵隊は、地下鉄入口へと退避する。彼らは、現状のこの都市では地下こそが敵の目と大火力の猛威を逃れることのできる数少ない場所だと認識していた。
地響きを立てて2機のジンは、先行した同型機に追いついた。

 

彼らの正面の道路には、胴体から黒煙を上げて倒れ込んだジンが倒れていた。
一目見ただけでパイロットのカートの生存は絶望的だと理解できるものであった。

 

「カート!先行しすぎるなといったのに・・・」
バルクは撃破された部下のジンを見て顔を歪めた。
胴体コックピットを爆破されては、生きてはいまい・・・自分の過失で部下を失ったという事実を嫌でも認識させられ、バルクは思わず歯噛みした。
そして彼にとってその経験は、最初ではなかった。

 

「何?!カート!よくもナチュラルがああ!」
モニター上で戦友の死を確認したウェルは、心から湧き上がる怒りの儘に重突撃機銃を乱射した。
突発的な暴風さながらの砲弾の連射が周囲の廃墟を薙ぎ倒す。

 

「よせ!ウェル!」バルクがすかさず静止したことでその弾薬の浪費は短時間で終わりを告げた。

 
 

だが、それが周辺の廃墟に齎した結果は破滅的であった。
死体が内部にそのまま放置されていた病院は、汚い落書きが描かれていた白い壁を穴だらけにされ、
老朽化したマンションは、そこに人が居住し、文化的な生活を行ってきていたということを
見る者全員に疑わせるであろう無残な姿に変換されていた。
そこに隣接していた小洒落たピンクとアイボリーホワイトで彩られたカフェは、
至近距離で炸裂した複数の76mm弾の爆風を受けて、無残に破壊され、
その内側に残されていた19世紀の英国貴族が愛用していた様なテーブルや調度品は、粉々に粉砕されていた。

 

数ヵ月前には、子供の笑い声が絶えなかったであろう公園は、76mm弾が中心で炸裂したことで着弾点にクレーターが形成されていた。
周囲に存在していたブランコやキリンを象った滑り台等のカラフルな遊具は、
爆風と衝撃波でひっくり返り、横転し、引き裂かれていた。

 

燃料として周辺住民に切り倒される事無く残されていた樹木は、
散乱していた生ゴミや動物の死体等の可燃物と一緒に炎上していた。

 

中に即席爆弾や弾薬でも存在していたのか白い屋根の公衆トイレは、オレンジの爆風に呑まれた瞬間に爆発を起こして
粉々に砕け散ってしまっていた。
これでは、周囲に潜んでいたであろう連合兵どころか野良犬や小動物等も生きてはいないだろう・・・
思わず、バルクもそう思ってしまう程であった。

 

「弾倉を交換しろウェル。カートのジンの弾倉を回収するんだ。」
「りょ、了解」
ウェルのジンは、撃破されたジンの腰に装着されていた予備弾倉に手を伸ばす。

 

その金属の腕が1連射で戦車を撃破可能な爆発物の詰まった物体に接近した。
そして鈍色の指がその表面に触れようとしたその時、
そこに巻き付けられていたクモの糸の様な白く細長い牴燭瓩、偶然雲間から差した陽光を浴びて光った。

 

「ウェル!トラップだ。離れろ!触るんじゃない!」それを見たバルクは思わず、部下に向かってどなった。
次の瞬間、76mm弾が詰まった予備弾倉が爆ぜた。
オレンジの爆風がジンの右腕を呑み込んだ。衝撃波でウェルのジンが酔っ払いの様によろめいた。
ウェルのジンは、即座に体勢を立て直した。
だが、爆風で右腕のマニュピレーターが破損していた。
武器を保持するのは、難しいであろうことは一目でも理解できた。

 
 

「ワイヤートラップか・・・」
バルクは、予備弾倉に爆薬が仕掛けられており、それに触れようとすれば、
張り巡らされたワイヤーによって爆薬が作動する様になっていたことを理解した。
だが、それはいささか手遅れであった。

 

「ウェル、右マニュピレーターの状態は?」
「重突撃機銃の保持自体は辛うじて可能です・・・しかし射撃は無理です!」
「わかった。左腕で重突撃機銃を持て。弾倉の換装は不可能だから今度こそ無駄弾は使うな」
バルクは、犧E戮海臭瓩箸いΣ媾蠅魘調して言った。
「それで隊長、これからどうするんですか?」
「本隊と合流することが先決だ。この都市の中央区を迂回して郊外に抜けるぞ」
「砲台はどうするんで?あれは本隊の脅威になります。」
「我々だけで破壊するのは、困難だ。郊外に出た時に信号弾で航空支援を要請する。今度こそ確実に叩いてくれるさ」
「だといいですがね」
「ウェル、お前は後ろをカバーしろ。先頭は俺が警戒する。いくぞ!」
「了解!」

 

2体の鋼鉄の魔神は、再び歩みを始めた。彼らの周囲を廃墟が取り囲んでいた。

 
 

こんなはずじゃない・・・・偵察バルク小隊2番機のパイロットであるウェル・オルソンは、ジンのコックピットで呟いた。

 

遺伝子操作の結果であるその端整な顔は、戦場の恐怖に直面したことで短期間のうちにやつれ、脂汗が幾つもあった。
つい数時間前まで彼と話していた同僚、カートは、彼らが劣っていると考え、上官や両親、
マスコミを隔てた先で演説する政治家から繰り返し教えられてきた相手の手によって殺害されていた。

 

「どうしてナチュラルは・・・俺の努力を無駄にするんだよ・!」苦々しい口調で彼はその言葉を絞り出すように言った。

 

ウェルは、マイウススリーの宇宙港区画に隣接する住宅地区で宇宙船整備技師の父と港湾作業員の母の間に生まれた。
彼は、6歳の頃に大好きな母親からある重要な任務を与えられた。
それは、母が庭に植えたサフランを仕事で忙しい彼女に代わって育てることだった。
彼は、その任務を忠実に実行した。水をやり、図書館から本を借り、隣で同じく園芸に励んでいた女性に何をすればいいか聞いた。

 

彼にとって幸いなことに環境が調整されたスペースコロニーであるプラントでは、降雨時樹も1日の気温変化も秒単位で専門の機関によって調節されており、
古代より農業従事者や園芸に関わっていた者達を苦しめてきた干ばつや豪雨とは無縁であった為、全ては順調に進んでいった。
同様の存在である気持ち悪い害虫もコロニーでは、考慮の必要すらなかった。

 

最初に薄紫色の花が咲いた時、よくやり遂げたと父に褒められ、宇宙船整備で鍛えられた大きな腕で頭を撫でられたことと母から褒められたことは、今でも鮮明に覚えていた。

 

その2年後、彼は、任務に失敗した。理事国軍で構成されるプラント駐留軍の兵士がコロニー内生態系を乱す危険のある違法栽培植物の撤去の名目で現れたことによって・・・・
この当時、プラントでは、脆弱なコロニー内生態系を安全状態に保つとの名目で食用可能な植物の栽培を違法化する法令が理事国の行政官らによって可決されていた。
この食用可能植物の定義は拡大していき、一時期には西暦の歴史時代に非常食に用いられた松やタンポポ、蘇鉄、蜜が取れる薔薇等の一部観葉植物さえ含まれるほどであった。

 

両親と泣きじゃくる彼の眼の前で、兵士達によって菜園は容赦なく軍靴で踏みにじられ、そこに咲いていたサフランは、一本残らず引き抜かれ、透明のゴミ袋に土と一緒に詰め込まれていった。
この時、作業の為にやってきた兵士の一人が言った一言「いい加減、ガキを黙らせてくれませんかね。遺伝子操作で俺らよりもいい職について、遥かに賢いアンタらなら簡単でしょう」は、
ウェルを自分がコーディネイターであることを初めて、そして否応なく意識させた。

 

以来彼は、それまで単にかっこいいと思っていた駐留軍の装甲車を威圧的に感じるようになり、プラントを占領者の如く闊歩する駐留軍兵士に嫌悪感を抱いた。
これは、彼だけでなくプラント市民の多くが持っていた感情であった。

 

プラントを防衛し、治安を維持するという大義の名の元に駐留していた理事国軍は、その目的とは裏腹に旧式化した正規軍の装備を使用しており、
他のコロニーの軍事・警備部隊に比べて重武装化されていた。
このことは、刑務所の中の囚人と変わらない。と主張したザフトの関係者や独立論者の主張を補強することとなった。

 

理事国の代表は、コーディネイターが住民の大半を占める為、ブルーコスモスのテロを受ける危険があること、
またプラントが理事国にとって宇宙に存在する最大の工業地帯であることとコストカットの為だと反論していた。
だが、毎日町で軍服を着た兵士と装甲車を目撃し、
外の宇宙空間を航行する完全武装の艦艇が水族館の肉食鮫の如く我が物顔で遊弋する姿を見せつけられている
プラントの市民にとっては言い訳にしか聞こえなかったのである。

 
 

その6年後、プラントの基準で成人に達した彼は、父親と同様に宇宙港を仕事の場に選んだ。
彼は、宇宙港でのパワードスーツによる物資の搬出入作業に従事した。

 

この時期、同僚から勧められ、ザフトの前身であるプラント住民の政治団体 黄道同盟に入党した。
一般党員として後のプラント最高評議会議員としてコンピュータにその適性を見いだされ、選出される幹部達の演説する姿に熱狂し、
秘密裏に行われる軍事訓練に汗を流した。
数年後、彼の所属する組織は、ついに占領者を追放した。

 

その1年後、プラント理事国は、地球連合を結成、独立を果たしたばかりのプラントに宣戦布告し、
1度目と同様にプラントを守護する鋼鉄の巨人達に蹴散らされ、逃げ帰った。

 

だが、この時、食糧生産実験が行われ、猝ね茲離廛薀鵐箸離僖黻騰瓩鳩伝したユニウスセブンが核攻撃を受け、崩壊した。
砂時計が縊れから桃色の炎を吹き上げて砕け散っていく光景を、宇宙港のモニターから目撃したウェルは、
多くの同志同胞と共に無実の同胞を襲った悲劇に涙し、この悲劇を生み出して尚も自作自演だと声明を発表した猗槊瑤淵淵船絅薀覘瓩坊稘椶靴拭

 

その数か月後、彼は、以前に適性検査を合格していた、プラントの守護者であり、コーディネイターの技術の結晶であるモビルスーツの訓練を修了した。
5月21日 大洋州連合領 カーペンタリアに降下した。
彼に与えられた任務は、ザウート部隊と共に、軌道上から分割降下した基地施設の資材を組み立てる設営部隊として
子供が積み木で城を組み立てる様に基地施設を1日でも早く設営することであった。
この作戦で彼が一番覚えているのは、大洋州連合軍とザフト軍により、
基地設営後に開かれた歓迎会の時に食べたステーキが美味かったことであった。

 

その後も彼は、作戦に参加したが、占領地での幾つかの小戦闘を除くと最前線での戦闘に参加したのは、
この戦いだけであった。

 

最初の戦いで同僚が死ぬなんて・・・・・何としても生き延びてやる・・・
ウェルは、そう心に誓うと右横のサブモニターを確認した。

 

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