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「連合兵戦記」3章 1 廃都炎上

Last-modified: 2016-01-12 (火) 21:00:06

連合兵戦記 第3章 廃都炎上

「全機、市内の敵地上部隊の掃討を開始する。
火力を集中するため密集隊形を維持せよ」

 

搭乗機のコックピットで黒髪褐色の女性は部下に命令した。

 

彼女の乗機を含む6機のモビルスーツ ザフト軍の飛行MS ディンは、地上を這うような低空飛行で都市へと進んでいた。
紫色と黒で塗装された翼の生えた細い胴体、頭部は、仮面の様なカバーが被せられ、
その隙間から覗くセンサーの赤い光は、昆虫の複眼を見る者に想起させた。

 

ディンは、指揮官機以下6機がV字隊形を組んでいた。その後方には、
ザフト軍の攻撃ヘリ アジャイルが同様の編隊を組んでいた。

 

匍匐飛行するディンの肩には部隊のエンブレム・・・・左右にクロスしたフレイルとそれがぶら下げる棘付鉄球を受けて砲がへし折れた戦車がデフォルメされて
描かれていた。

 

「爆発、バルク小隊に撃破機が出たのか?!」

 

中央のディンの搭乗者・・・・中隊指揮官のエレノア・チェンバースは、市内で立ち上る爆炎を見て歯噛みした。
モビルスーツに戦力の大半を依存することで物量に勝る地球連合軍を圧倒することが可能になっているザフトにとって
1機でもモビルスーツは、貴重な存在だった。

 

飛行MS ディン6機 攻撃ヘリコブター アジャイル8機で構成されるエレノア襲撃中隊は、
地面を這う様な匍匐飛行で地球連合軍部隊が潜んでいる放棄された都市へと接近していた。

 

襲撃隊とはザフト軍における航空支援部隊の呼称で、ザフト軍の侵攻時には地上部隊に先立って敵部隊に対して
航空攻撃を行う部隊であった。
航空機の傘を喪失した地球連合部隊にとって彼らは恐怖その物であった。

 
 

6機のディンで構成されるV字の中央、先頭を行くのは、指揮官であるエレノアのディンである。

 

指揮官機である彼女のディンは、重突撃機銃や対空散弾砲を装備した部下の機体と異なり、頭部センサーが大型化されていた。
その両腕には、ディンの主兵装である対空散弾砲の代わりに大口径の銃器が抱えられていた。

 

それは、16世紀のヨーロッパの戦場で使用された火縄銃に似ていた。
多目的ランチャー アークェバス・・・・火縄銃に似た形状のこの装備は、無人偵察ドローンの射出装置であった。

 

元々、砲戦MS、ザウート用に開発された弾着観測機ランチャーを手持ち式に改造した装備で現在、指揮官機を中心に前線部隊にいくつか配備されていた。
彼女等に先立って斥候として出撃したバルク小隊にもこの装備は存在していたが、途中機械故障で放棄せざる得なくなっていたのであった。

 

もしバルク小隊を先行させる代わりにモビルスーツや装甲車両により遠隔操作された無人偵察機を多数投入していれば、
無暗にモビルスーツ部隊を逐次投入する愚を犯すことは無かっただろう。

 

しかしザフト軍 ウーアマン中隊は、安価な無人偵察機を消耗することよりも貴重なモビルスーツ小隊と装甲車を突入させることを選択した。

 

これまでも偵察にモビルスーツ小隊を投入し、それらが地球連合軍部隊を惹きつけ、防衛線を崩したケースがあった為である。

 

コロニー制圧作戦、世界樹攻防戦、地球侵攻作戦・・・これらの戦いでの大戦果が生み出したザフト軍のモビルスーツ中心主義の影響であった。
その犠牲としてザフト軍は、3機のモビルスーツとザフトにとって金塊よりも貴重なMSパイロット3名を失うこととなったのである。

 
 

そしてまた彼らはその犠牲を支払おうとしていた。

 
 

「エレノア隊長、信号弾です。残骸から発射されています!」

 

副官のターニャ・ブレモウナが報告する。
スカンジナヴィア王国出身の両親を持つこの第2世代コーディネイターの少女は、
肩まで伸びた金髪と幼さを残した顔つきで、指揮官のエレノアと整備兵らの人気を二分していた。
そしてこれまで10両の戦車と5両の装甲車破壊し、4機の攻撃ヘリコブターを撃墜しているエースであった。

 

「信号弾だと?」
「警戒装置のつもりか・・・だが、連中に大した対空火器は無いはず・・・」
地上に転がる鉄屑から吐き出される黄色い煙と星の光の様な照明弾が打ち上げられる光景を
頭部センサーより取り込まれ光学補正された正面モニターの画像越しに眺めながらエレノアは呟いた。

 

それは、自分に言い聞かせているかのようであった。

 

「この!」ディンの1機が、対空散弾砲を放棄された装甲車にぶっ放した。
照明弾の煙を上げていたその鉄屑は爆砕した。

 

「弾の無駄だ。やめておけ」

 

ディン部隊の後ろを飛行するアジャイルが煙の柱をローターで蹴散らして通過した。

 

「ナチュラルめ、小癪な・・・」

 

ニュートロンジャマー下では、中性子の運動を阻害する効果の副作用である電波の伝達阻害によりミサイルなどの誘導兵器やレーダーは、大幅な性能低下を余儀なくされ、事実上無力化される。
但し、ごく限られた範囲であれば、レーダーにより敵機を捕捉することが可能であった。

 

地球連合軍は放棄された友軍車両のレーダーと多目的ランチャーを利用し、敵機が付近に接近すると車体側面の信号弾を発射する様仕掛けを施していたのであった。
またこの原理を応用し、オーブや地球連合の国家のいくつかは通信タワーを多数建設することでNJ下でも通信可能なシステムを構築していた。

 
 

無論、エレノア襲撃中隊の隊員たちもそれを警報装置だと判断していた。

 

だが、それを破壊しようとは考えなかった。
なぜなら、これまでと同様制空権を失った地球連合軍は彼らに抵抗する術を持たない的も同然の存在だと
推測していたからである。

 

戦闘機の傘を失った敵の反撃手段は、精々命中率の悪い対空ミサイル位であった。
14機の空飛ぶ騎兵は、都市に向かって進撃する。

 

残骸の頭上を彼らが通過する度、頭上に信号弾の爆発の花が咲き乱れる。

 

「よし、予想通りだな」

 

都市の外周に構築された陣地内で、第22機甲兵中隊所属のゲーレン中尉は、
指揮下の兵士達と共に迫りくる敵部隊とその上空で咲き乱れる信号弾を赤外線双眼鏡で確認していた。

 

地を這うようにして飛ぶ重火器で武装した勇敢なる猛禽の一群は、念入りに仕掛けられた狩人の罠へと接近しつつあった・・・・・
「予想進路出ました!やっぱりあいつらセオリー通りに突っ込んできます。」

 

ゲーレンの地殻に座っていた三つ編みの女性オペレーターが緊張ぎみに報告した。

 

「そうか・・・・花火で歓迎してやるぞ!」

 
 

ゲーレンは部下に指示を出す。有線通信で指示を受けた陣地が行動を開始した・・・・・・

 
 

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