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「連合兵戦記」3章 2

Last-modified: 2016-05-21 (土) 21:18:11

都市の郊外に点在する森・・・正確には、再構築戦争後の戦後復興、自然保護政策によって作られた自然公園、その森の2か所で爆発が巻き起こった。

 

次の瞬間、爆音とともにくすんだ鉛色の雲が占領する空に向かって無数の鉄の矢が放たれた。
爆発が起こった場所には、黒い鉄の箱が煙を上げて燻っていた。
その箱は、MLRSと呼ばれていた。
MLRS………元は、西暦末期の超大国 アメリカ合衆国とその同盟国で採用された多連装ロケットシステムの名称で、
CE70年現在では、このタイプの多連装ロケットシステムの総称となっていた。

 

この兵器は、本来迫りくる敵地上軍にロケット弾の豪雨を浴びせることで制圧するための兵装であり、
上空を飛ぶ飛行兵器に対して使用するような兵器ではない・・・・だが、
地面を進軍する地上部隊と余り変わらない高度で匍匐飛行する
ザフト軍飛行部隊には十分に効果が期待できた。

 

これまで地球軍が、ザフト軍による地上攻撃部隊による漸減戦術に手を焼かされてきたことを認識していたハンスは
対策の一つとしてMLRSをこれまでのザフト軍地上攻撃部隊の侵攻パターンを
参考にして予想した進路上に向けて隠蔽配置していた。

 
 

固体燃料の白煙を引いて高空へと打ち上げられたロケットは、
匍匐飛行で都市に迫っていたエレノア襲撃中隊へと墜ちていった。

 
 

「罠か!」
もう遅い、そう言うかの様に空中でロケット弾頭が一斉に破裂し、
内部に封入されていた子弾を撒き散らした。

 

それは、まるで植物の果実が中の種を放出する光景と酷似していた。
だが、その性質は真逆だ。

 

後者は、植物の次代に己の因子を繋ぐ為の行為だが、
前者は、万物の霊長と奢る人類が敵と規定した同族とそれが操る人工物を
破壊する為の行為なのである。

 

「総員散開!」
彼女は、咄嗟に部下に命令を下した。

 

だが、先程まで濃密な編隊を組んでいた彼女の部下達が一斉にそれを開始したことが悲劇を生んだ。

 

「わぁ!」
「く、くるなぁ」
「こんなところで!」
パニックを起こしたディンの腰部に直進を続けたアジャイルが衝突する。
中には、地面に突っ込んで大破する機体もあった。
混乱の中、無数の子弾が驟雨の如く彼らの進路上に容赦なく降り注いだ。

 

「!!」
先頭のディンに乗るエレノアは、己が判断ミスと、
それによって失われる部下の命を、思い、唇を噛んだ。

 
 

直後、視界が紅に染まり、今まで感じたことのない強力な衝撃が、彼女を襲った。
着弾点の大地が耕され、醜い土砂色の花が咲き乱れた。

 
 

赤外線望遠鏡でその光景を目撃していたゲーレン中尉は、喜色満面に叫んだ。

 
 

「やったぞ!」

 

ほぼ同時に部下の兵士達の歓声が陣地を満たした。

 

天高く立ち上る爆炎は、市内にいるハンス大尉率いる本隊からも確認できた。

 

「やってくれたか!」

 

高層ビルの一室に設置した監視カメラの映像を、
ゴライアスの正面モニターを介してハンスは確認していた。

 

彼が敵を巻き込んだと判断したのは、地面に着弾しただけでは、
あそこまでの爆発にはならないからである。

 

そしてそのことは鮮やかな炎の中に揺らめく、舞い上げられた残骸の黒い影が、証明していた。

 

「総員!!撤収、急げ!」

 

MLRSの内の一つの設置地点では、先程までそれらの操作に関わっていた兵員達が撤収作業を開始していた。
彼らも指揮官のハンスもこの一撃で空を飛ぶ敵部隊を全て破壊できた等とは判断していなかった。
ゲリラ戦術は敵にその姿を晒さないことが肝心であることは、常識である。

 

もし圧倒的戦力差がある敵にその姿を見られた場合、ゲリラ戦術を行う側に訪れるのは、死のみであった。

 
 

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