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「連合兵戦記」3章 3

Last-modified: 2016-05-21 (土) 21:21:58

黒煙に覆われた高熱で燻る大気を引き裂き、有翼の機械人形が2体黒煙の中から飛び出す。

 

小隊にまでその数を減らされながらもエレノア襲撃中隊は、侵攻を続けていた。
ディンは半数以下の2機に撃ち減らされ、攻撃ヘリのアジャイルは1機残らず全滅していた。

 

ロケット弾とその破片の直撃を受けたディンは、薄い装甲が災いし、文字通り粉々に破壊された。
部隊指揮官のエレノアの機体もその中には含まれていた。

 

「なんなの!あの攻撃は、敵の新兵器?!」

 

乗機の破損個所を確認しつつ、ターニャは敵の姿を求めた。
彼女のディンは、頭部カバーを喪失し、左肩部と右脚部が破損していたが、
幸いなことに飛行能力を維持していた。

 

また武装も主兵装の対空散弾銃が使用可能だった。

 

「ターニャ無事か?」その時通信が入った。

 

「畜生!エレノア隊長も、シャノンも、ピーターソンも、ウィルも、ヘリ部隊の奴らも皆やられちまった!」

 

通信の相手は、3番機のパイロットのエルマー・アダムスだった。

 

「そんな!エレノア隊長が!…やられるなんて」
中隊指揮官を務めていたエレノア・チェンバースは、部隊内外からみても優れた指揮官だった。
モビルスーツの操縦技量、部下への接し方、魅力的な容姿…そのどれもがターニャの憧れであった。

 

そんな人物が卑劣なトラップで撃墜された等、彼女にとっては信じがたいことだった。

 
 

…だが、現実は彼女の思いとは真逆であった。
これまでの戦いで常に隣にいた指揮官機の頼もしい機影はそこにはなかった。

 

「…」
彼女は遠ざかりつつある、後方を映すモニターを拡大した。
背部センサーから取り込まれた映像であるそれは、
中隊の機体の残骸が焼け火箸の様に黒煙を吹き上げて激しく炎上している様が映されていた。

 

そして高温に曝される残骸の中には、指揮官機の装備していたアークェバスの残骸も転がっていた。
黒く焦げたそれは、火葬場から出されたばかりの遺骨を想起させた。

 

「………よくも隊長と皆を!許さない!」
白い頬を一筋の涙が流れた。

 
 

「ターニャ!敵だ!俺達の右側にいる!」
エルマーが、そういうと同時に彼女のディンの正面モニターに画像が表示された。
NJの影響で画質の荒い画像、そこには市街地へと逃亡する車両の姿が映し出されていた。
ターニャのディンは、それを見逃さなかった。

 

「あいつか!」
「俺は攻撃してきた敵の兵器を探る!」
この時点で彼らは、戦友たちを一撃のもとに屠った兵器の正体に全く気付いて無かった。
その為、それがまた使用される可能性を彼らは考慮していたのであった。
「わかったわ」
ターニャもそれに応える。

 

傷ついた天翔ける機械人形は、二手に別れ、行動を開始した。
それぞれの任務を果たすべく…

 
 

接近してくる機影を双眼鏡越しに確認した連合兵はジープの荷台で叫んだ。
「よし!作戦通りだ」
口元に笑みを浮かべ、ドライバーの連合士官が言う。
その連合士官は、浅黒い肌とドレッドヘアが特徴的で、もし連合士官の衣服を着用していなければ、
大西洋連邦のストリートで楽器を振り回して奇声じみた声を上げているロックミュージシャンと間違えそうだった。
直後、彼らを乗せたジープの真横で着弾の土煙が幾つも上がった。

 

それは、ディンの主兵装である対空散弾銃から放たれた散弾によるものであった。
土埃を舞い上げてジープは荒野の如くささくれだった道路を疾駆した。
その背後をターニャのディンは影の様に張り付いた。

 

「糞!烏野郎!」
後部座席に座る連合兵は、自動小銃を乱射したが、
モビルスーツの装甲の前では無意味の等しい行為だった。

 

対するターニャのディンも中々攻撃を仕掛けることが出来なかった。
万全の状態ならば、鷹が兎を仕留めるかの如く容易く撃破できる標的・・・だが、損傷を受けた現状の機体では、限界があった。
一歩間違えば地面と衝突する。
ディンの主兵装である対空散弾銃は、腕で保持する必要があり、その為に姿勢を空中で変える必要があったためである。
これは、飛行MS ディンの欠点の1つとも言えた。
距離を取って撃とうにも照準センサーが先程の攻撃で損傷しており、更に一定以上に高度を上げることも不可能であった。

 

また操縦者であるターニャは、撃墜スコアの上では十分エースと呼んで差支えなかったが、射撃の技量は平均レベルだった。
またジープの様な小目標に戦車や装甲車に対してやるようなバースト射撃を行うのは、
弾薬の浪費であるとターニャは、認識していたのである。

 

やがて市内に林立する高層建築へとジープは逃げ込んだ。
ターニャのディンもそれを追う。ジープは右折した。

 

「次で仕留める」
獲物をしとめるべく、ターニャはディンを右折させる。彼女は勝利を確信していた。
広い平野と違い、障害物がある市内ではこちらもそうだが、ジープも速度を緩めざるを得ない、
そこを仕留めることは簡単であると判断していたのだ。

 
 

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