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「連合兵戦記」3章 4

Last-modified: 2016-05-21 (土) 23:02:12

右折と同時に、ターニャの視界に飛び込んできた光景は、停車したジープの姿だった。
その荷台には、対空ミサイルランチャーを抱えた兵士が立っていた。
次の瞬間ランチャーが火を噴く。
ディンに向けて高性能爆薬が詰込まれたロケット推進の槍が突進した。

 
 

「当ると思って・・・・・ぐっ!!」ディンは、空中で機体を少し傾け、攻撃を回避する。
ミサイルは、ディンを掠めてビルの一つに着弾した。

 

次の瞬間、ターニャを衝撃が襲った。彼女は、周囲を見渡す。
ディンの左隣には、4門の対空機銃を載せた車両が猛火を彼女の乗機に浴びせていた。

 

スカイデストロイヤー 対空自走砲………この車両は、元々大西洋連邦軍欧州派遣軍第34歩兵師団所属のもので
故障によって爆破放棄される予定だったものを編入したものだった。

 

故障の為移動不能だったが、載せられた対空火器は、弾薬の続く限り使用可能で、砲台として運用可能であった。
周囲を高層建築が聳え立つこの場所では、遮蔽物のない空間では高機動を誇るディンは、籠の中の鳥と大差なかった。

 

高速で豪雨の如く放たれる対空機銃弾が、ディンを撃ち据える。
飛行能力を高めるため、軽量化が施された装甲は、それらの攻撃に無力すぎた。

 

「こんな・・・ところでっ!」
ターニャは、自身が罠に誘い出されたこと、そして自身がまもなく火箭の暴雨の中で散った戦友の後を追うことになることを
理解して悔しさの余り歯噛みした。
直後、対空機銃弾が胸部装甲を貫き、コックピットブロックを吹き飛ばした。
搭乗者を失ったディンは、胴体部から炎と黒煙を吹き上げながらコンクリートの地面に墜落して砕け散った。

 

「やったぜ!」
黒人系の連合士官、第22機甲兵中隊所属のドミンゴ・ルシエンテスは、白い歯をむき出しにして笑った。

 
 

同じ頃、エルマーのディンは、MLRSの設置地点の一つに到着していた。

 

ディンの目の前には、火山の噴煙の様に白煙を上げる四角形の物体とその周囲には、発射時に爆風で跳ね飛ばされたと思しき、
隠蔽用の特殊迷彩塗料を塗布した黒いシートが散乱していた。

 

「対地ロケットだと……馬鹿な!」

 

ろくな誘導装置すら付いていない地上攻撃用の兵器に航空部隊である自分達が攻撃され、
多大な犠牲を払ったという事実を彼は受け入れることが出来ずにいた。

 

追い打ちをかけるかの様に彼に更なる凶報が齎された。

 

直後、モニターに映っていた僚機を示す光点が消えた。
それは市内に突入したターニャのディンのものであった。

 

「そんな、エレノア隊長の次はターニャがやられるなんて…」

 

エルマーは、最初それが、IFF(敵味方識別装置)の故障だと思った。
だが、市内から立ち上る煙は、それがIFFの故障等ではなく事実であるということを雄弁に物語っていた。
「…」

 

エルマーはディンを反転させた。
もはやエレノア襲撃中隊は、壊滅した。

 

戦力的にも生き残ったディン1機でバルク偵察小隊を全滅させたと思われる
市内の地球連合軍部隊を撃破することは不可能である……
バルク偵察小隊に続いて壊滅したエレノア襲撃中隊、最後の生き残りであるエルマー自身がそれを何よりも認識していた。

 

現在の彼に出来ることは、後方より進軍して来るウーアマン中隊を初めとするザフト軍本隊と合流し、
市内に潜伏している地球連合部隊の戦力が油断できないものであると報告すること………ただそれだけである。

 

だが、その現状認識が正しいということと彼自身の人間としての感情は異なっていた。

 
 

「くそおおおおおおおおおおおお」
エルマーは、ディンのコックピットの中で吼えた。

 

エレノア隊長を!皆を殺されて一人だけ逃げるのか…俺はそこまで弱虫の屑なのかよ…

 

戦友の仇を討つことが出来ない無力さとそれを認識し、それを肯定するかのような行動を選択した
自分への嫌悪感の余り、今すぐ死を選びたい心境だった。

 

もし彼がプラントの都市管理機構の下水処理局員としての3年の労働の経験、
ザフト入隊時の訓練、そして先程まで彼の上官として存在していた指揮官 エレノアの存在によって
自制心を学んでいなければ、
彼は、乗機のディンを下界の雑草が繁茂した草色と土色の大地にぶつけていただろう。

 

「エレノア隊長…皆、俺は悔しいが、お前らの仇を討てない、
だが、後ろにいるザフトの仲間がきっと仇を討ってくれる。」
両頬を涙で濡らしつつ、かすれた声で言葉を紡ぐ、彼は懺悔しているかのようだった。

 

背を向けて単機で去っていく、敵機に対して市内の敵は、銃弾一つ撃つこと無く沈黙していた。

 

恐らくNJ下で誘導兵器の信頼性が低下している今、市内から攻撃する手段がないのだろう。
とエルマーは推測した。

 

「見ていろナチュラル共、お前らは必ず我々ザフトが殲滅するぞ…」
彼は、憎しみに燃える目で後方を一瞥した。
次にふと彼が考えたことは、ターニャにとうとう最後まで自分の気持ちを
伝えることが出来なかったということだった。

 
 

都市を背にし、去っていく黒い影、それを地上から覗く者達がいた…彼らは、
市内にいる戦友達へと自らの得た情報を伝えた。

 

「偵察兵より連絡!最後のディンの後退を確認、敵襲撃機部隊は、1機を残して撃破されたようです。」
「了解した。偵察活動を続けてくれと伝えてくれ」

 

有線通信による偵察部隊からの報告を受け取ったパドリオから報告を受けたハンスは、
そういうと通信を切った。
NJ下において有線通信の信頼性は無線通信が使用不能となった今では、距離がある程高まっていた。

 
 

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