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「連合兵戦記」6章 1 猛攻

Last-modified: 2016-11-15 (火) 20:40:49

「自動小銃が欲しい!三八じゃだめだ。自動小銃があったら、メリケン野郎に負けるもんか」
ガダルカナル戦のある日本兵 最期の言葉

 

連合兵戦記 第6章 猛攻

 

グゥルに乗ったノーマのシグーは、途中までは地を這う様な低空飛行で、
市内が見えてきてからは少し高度を上昇させて、敵部隊の潜伏する放棄された都市に接近した。

 

都市から少し離れた場所には後退してきたウーアマン中隊の姿が確認できた。

 

先程まで激しい戦闘が繰り広げられていた市内は、銃声一つしない静寂を保っていた。
だが、市内の建築物に開いた大穴や各所からあがる黒煙は、
そこが先程まで戦場であったことを雄弁に見る者に教えていた。

 

また内部には、孤立しているザフト部隊がいたが、
それらを地球連合軍は殲滅することなく、放置しているようであった。

 

並みの部隊なら孤立している部隊を運用可能な戦力の全力をもって
叩き潰すところだろうが、ノーマ達ザフト軍と戦っているこの部隊の指揮官は、
孤立させた敵部隊の戦力を殲滅せず、最小限の戦力で監視、包囲することに留めて
敵の支援砲撃や空爆を防ぐための盾として利用していた。

 

相手の指揮官の有能さに彼女は思わず舌を巻いた。
「…」
ノーマはシグーを市内へと向かわせた。

 

「酷いものね…」
搭乗者たる金髪の美少女は、自機の正面モニターに映る光景を一瞥して言った。

 

旧世紀に第二次世界大戦を引き起こし、ヨーロッパ全土を地獄に変えたナチス・ドイツの独裁者 アドルフ・ヒトラーと
その腹心の部下で公私ともに交流のあった建築家 軍需大臣 アルベルト・シュペーアは、古代ギリシャ・ローマ建築の様に第三帝国が滅亡した遥か未来に廃墟となった後
も建造物が美しい姿を留めていられるように、廃墟価値理論というものを考え、
それをナチス政権の建設計画での建築物設計に適用した。

 

今のノーマには、それが痛いほど理解できた。
ギリシャの古代文明の栄華を残すパルテノン神殿やジャングルに呑み込まれても尚、美しさを保つ
カンボジアのアンコール・ワットが、ロシア正教の伝説にある、死してなお芳香を放ち、不朽を保つ聖人の遺体とするならば、
眼の前の放棄された都市は、雑菌と外気に蝕まれ、悪臭を放つ醜い腐乱死体と形容出来た。

 

目の前の廃墟が、恐らく身体的、精神衛生的にも人の居住には適さないであろうことは明白であった。

 

ノーマが都市内に展開する地球連合部隊が大規模ではないと推測したのも、都市のインフラが大量の人員の生活に耐えうる状態ではないことを知っていたからである。
墓標の如く聳え立つ灰色の高層建築の中へとグゥルに乗ったノーマのシグーが侵入を図った。

 

「(どこに敵がいるの…)」
「!!」

 

彼女が周囲に視線を巡らせようとした次の瞬間、ミサイルアラートがコックピットに響き渡った。

 
 

「たった1機で突っ込んでくるとは大した自信の持ち主だ!大歓迎してやれ!ミサイル班、引き寄せてから撃て」

 

ゲーレンの部隊は、ノーマのシグーの直進ルート上の廃墟に展開していた。
この部隊は、ウーアマン中隊が市内に突入する少し前、航空攻撃を仕掛ける為に先行して低空を進撃していた
ディン6機を有する対地攻撃部隊エレノア襲撃中隊を、ディン1機を除く全機撃墜という大戦果を挙げていた。

 

指揮官であるゲーレンはたった1機で向かって来るそのシグーを指揮下の部隊の火力を出来る限り叩き付けて撃破するつもりであった。
「全ミサイル斑ミサイル発射!」

 

指揮官を務めるゲーレン中尉の声が有線通信機を通じて、各所に潜伏していたミサイル斑に伝達された。

 

そしてミサイル斑は、命令を実行した。

 

彼らの部隊は、ミサイルの多くを航空兵力対策に温存していた。
その為ミサイルは、ウーアマン中隊との戦闘後も半数以上が発射可能であった。

 

廃墟の各地に隠蔽配置されていたミサイル陣地から一斉に、
正面から向かって来るたった1機のシグーに向けて数十発のミサイルが発射された。

 

その中には、対空用ではなく、装甲車両用のミサイルもあった。
白煙を上げて蛇の群れの如くシグーに向かうミサイル群…一見すると1機のモビルスーツを標的にしているものとしては過剰に見える。
しかしこれはゲーレン中尉とその部下が、航空兵力の脅威を正しく認識していたからである。

 

ノーマのシグーを包み込むように迫るミサイル、全弾を受ければ、シグーと言えど、
先程匍匐飛行中にMLRSのロケット弾の雨を受けたエレノア襲撃中隊の所属機の二の舞になるであろうことは間違いなかった。

 

「!」
ノーマは、自機が確実に回避出来ないミサイルのみを重突撃機銃で撃墜する。
ノーマのシグーは、ビルが森林の木々の様に林立する市内に突入した。

 
 

「なんだと!」
ゲーレンは思わず叫んだ。彼の予想では、グゥルに乗ったままでの市内への突入は、危険だと判断してグゥルを放棄して地上に着地するか、
ミサイルを迎撃後、高度を上げると考えていたのである。

 

そしてシグーのパイロットが前者の選択を取った場合は、少し後方にいる機甲歩兵部隊に援護要請を出し、
先程撃破してきたザフトの部隊やモビルスーツと同様に市内でじっくり料理してやるつもりだった。

 

逆に後者の選択、高度を上げる方を選択した場合は、貴重な航空機用の対空ミサイルやビルに仕掛けられている無人ミサイル陣地の集中攻撃で叩く、
というのが彼の作戦だったのである。

 

「早すぎる!」
「なんて奴だ!」
ミサイル斑の兵士が、驚愕の余り叫んだ。

 

ビルの合間から次々とミサイルが、ノーマのシグーに向けて放たれる。

 

グゥルに乗ったシグーは、ビルの間という航空兵器の動きが制限される状況でも機体の動きを傾けたり、
シールドガトリングの弾幕でミサイルを撃墜するといった方法で突破する。
少しでも操作を間違えれば、周囲の廃墟に衝突して大破することは間違い無かった。

 

「撤収!ここに残っててもいい的だ。」
一部の陣地は、人員が恐怖の余り逃亡した。

 

「貴様らは逃げろ!早くしろ!」
第21号陣地と呼称されていたその陣地の班長を務める下士官は、
同じ陣地にいる部下、その年齢と容貌は、兵士というよりも学生に近い…を、銃を振りかざして追い出すと自分だけで陣地内のランチャーを操作した。
彼が覗くミサイルランチャーの赤外線誘導装置のモニターの向こうには、両腕の火器を熱で真っ赤に染めた鋼鉄の悪魔が戦友に暴威を振るっていた。

 

「消えなさい!」
グゥルの下部に搭載された対地ミサイルが発射され、ノーマのシグーの下に存在していたミサイル陣地の1つに着弾した。
対地ミサイルのサーモバリック弾頭が炸裂し、オレンジ色の灼熱の炎が中にいた人員を瞬間的に黒焦げの炭化物に変換した。
火柱の様な弾頭の爆発を背後に、ノーマのシグーは更に激しい攻撃を叩き付ける。

 

「そこ!」ノーマがトリガーを引く。
シグーが、ミサイルの発射された方向に向け、シールドガトリングを連射した。
ガトリング掃射を受け、廃墟に潜伏していたミサイル陣地が3つ破壊された。

 

ノーマのシグーは、右手の重突撃機銃と左腕のシールドガトリング、両腕にマウントされた火器で、
順調に廃墟に設営されたミサイル陣地を撃破していった。

 

「撤収!ここに残っててもいい的だ。」
一部の陣地は、人員が恐怖の余り逃亡した。
「貴様らは逃げろ!早くしろ!」
第21号陣地と呼称されていたその陣地の班長を務める下士官は、同じ陣地にいる部下、その年齢と容貌は、兵士というよりも学生に近い…を、銃を振りかざして追い出すと自分だけで陣地内のランチャーを操作した。
彼がのぞくミサイルランチャーの赤外線誘導装置のモニターの向こうには、両腕の火器を熱で真っ赤に染めた鋼鉄の悪魔が戦友に暴威を振るっていた。
「食らえ!宇宙の化け物!」
陣地から対戦車ミサイルが発射されたのと同時に、シグーから放たれた砲弾数発が直撃した。

 

「わずかな間に…しかも傷一つつけられないだと!」
巧妙に市内に設営されていたミサイル陣地は、その殆どが壊滅していた。

 

残されていたのは、指揮官であるゲーレンの陣地のみだった…

 

「化け物かよ!」
自らのいる建物へと向かって来るシグーを見据え、彼は、肩に背負う対戦車ミサイルのトリガーに指をかけた。
「遅い!」
それよりも早く、シグーの右腕の重突撃機銃が火を噴いた。重突撃機銃より発射された76mm弾が大気を引き裂く轟音が、彼が知覚した最後の音であった。
ゲーレンが指揮所としていたビルの12階のフロアの一つに着弾した76mm弾は、そこにいた人間達を纏めて吹き飛ばした。
辛うじて残っていた窓ガラスは、粉々に砕け、オレンジの爆光の中で、さながら夜の星の様に束の間の間、煌いた。
そこにいた者達は、死体すら残らなかった。

 

僅かに焦げたタンパク質が、建造物にこびり付いていたのみであった。

 
 

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