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『ONE PIECE』VS『SEED』!! 514氏_第05話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 17:31:36

 周囲を囲む山々の裾野にあるその村は、閑散としているというより牧歌的、あるいは風情があるといった言葉が似合う場所であり、ヨーロッパの田舎町を連想させるようなその風景を眺めながら、シンは自分にとって第二の故郷とも言えるフーシャ村を思い出していた。ナミやゾロも特にやることがないので、シンと同じように風景を眺めている。
 今彼らがいるのはシロップ村というところである。
 バギー一味を倒しオレンジタウンを出発した一行は、快適な海の旅を続けていた。やはりナミの航海士としての腕はすばらしく、小船二隻で問題なく進むことができるのはすべて彼女のおかげであるといっても過言ではない。海流と風向きを把握し、天候を予測し、海図を読みながら最短のコースを進んでいく。それは麦わら海賊団の中にあって今まで誰にもなし得なかった偉業なのである。もちろん、他の男どもがどうしようもないと言えばそうなのだが。
 シンも本業である音楽家の評判がよくて少し調子に乗ったり、立ち寄った戦う男ガイモンと珍獣たちが暮らす島でちょっとした冒険をしたりと、ようやく海賊ライフを満喫し始めていた。
 しかし、ここでも毎度おなじみの問題が浮上することとなった。
 すなわち準備の絶対的な不足である。
 船員が少ないというのは、この海賊団自体が結成間もないので仕方がないとしても、船がないというのは致命的である。どんなに航海士が有能であっても、小船ではちょっとした嵐にも耐えることが出来ない。そもそも自分達の海賊旗を掲げこともできないのであれば、それは海賊としての最低条件をクリアしていないようなものだ。

「こんな状態でグランドラインに入ろうなんて無謀ね」
「とりあえず行く先々で少しづつ準備を整えようとは思ってたんだ。ローグタウンに着けば何とかなるだろうし。
まあ、その前に航海そのものがおぼつかなかったんだけど」
「はァ・・・・・・よく無事でいられたもんだわ」
「で? そんなこと言うくらいなんだから、あてはあるんだろ」
「ここから少し南にいけば村があるからひとまずそこへ。しっかりした船が手に入ればベストだけど、それ以外にも食料なんかを手に入れないと」
「珍獣のおっさんにもらった果物だけじゃ限度があるからな」
「お、食い物の話か。俺は肉が食いたい!」
「久々に酒が飲みてえな」
「「お前ら(あんた達)は黙ってろ!!」」

 ナミは最初、バギー戦で見た強さに三人のことを人間離れした何かのように感じていた。実際ルフィとゾロは常人とかけ離れた感覚で物事を見ているのだが、シンだけは常識とある程度の知識を持っているということが分かり、それからは船の運行について二人で話し合うようになった。
 船長が蚊帳の外とはだいぶおかしな事ではあるが、口を出せば話が本筋から確実にそれることになるので、上のように問答無用で排除するのが常となっている。
 それからさらに現在の所持金を考慮した物資の購入計画をたて、目的地であるシロップ村へと舵を取った。

 彼等の目の前に島が見てきたのはそれから丸一日が過ぎた頃である。
 岸に船を寄せて上陸したところでシンは様子を探るような気配を感じた。敵意のようなものは感じられないので特に気にせず放っていると、ゾロも気が付いていたらしい。

「さっきから気になってたんだが、あいつら何だ」

 指差した方を見てみると、人影が四つ倒れた木に隠れながらこちらを覗いていたが、そのうちの三人はすぐさま逃げていってしまった。
 残った一人、ウソップと名乗った男も、言ってることは明らかに嘘だと分かるようなことだが、どうやらシンたちを島から追い払おうとしているようである。
 しかし、ルフィが自分達は海賊だがここを襲いにきたわけじゃなく、船と仲間と食料(肉としか言わなかったが)を手に入れるために来ただけだと言うと、とたんにウソップは友好的になり、村の飯屋まで案内してくれた。
 話を聞いてみれば、村に道化のバギーの海賊旗を掲げた船が近づいてきたので何事かと思ったらしい。ただ、自分達も海賊だと名乗っているのにここまでフレンドリーなのもどうかとシンは思ったが、他の村人に見つかっていたら上陸どころではなかっただろうから幸運といえば幸運なことではある。
 それから薄幸のお嬢様の話を聞いたり、ウソップ海賊団を名乗る子供達が現れたり、そのお嬢様のところに船をもらいに行ってクラハドールという執事とひと悶着を起こしたりなどの出来事があり、両海賊団の船長が不在となって冒頭ののんびりした状況となるのである。子供達によればウソップは何かあるととりあえずいくという海岸にいるだろうとのことだ。おそらくルフィもそこにいるだろう。
 ついでに言うと、ジャンゴと名乗る怪しい催眠術師がさっき現れたのだが、すぐにどこかに行ってしまった。
 また全員でぼんやりしていると、ナミがシンに話しかけてきた。

「そういえばさ、さっきルフィがあのキャプテンのこと知ってるみたいなこと言ってたじゃない。ってことはあいつの父親って赤髪海賊団のメンバーってことかしら」
「そうじゃないのか。ルフィからそれ以外の海賊の話なんか聞いたことないし」
「赤髪海賊団!?」
「それってあの『赤髪のシャンクス』の・・・?」
「キャプテンのお父さんってそんなにすごい人だったんだ!」

 赤髪の名に子供達がいっせいに声を上げる。
 こんな辺鄙なところにまでその名声を轟かせていることに、シンは改めてかの大海賊の凄さを思い知り、そしてふと前にルフィから聞いたある話を思い出した。
 なんでも赤髪海賊団には船長であるシャンクス以外にもう一人赤髪がいるそうだ。シャンクスはいつも麦わら帽子をかぶっていたからそいつが船長と間違われることが多かったらしい、とルフィが言っていたのを覚えている。他にいろいろな話を聞いたのだが、なぜだかそれだけが心に残りずっと奇妙に感じていたのだ。

 はてなぜだろう、と柄にもなく考え込んでいると、ウソップがこちらに走ってきていることに気づいて、そちらに目を向けた。しかし、彼はこちらに気づきもせずに走り去ってしまい、一緒にいるはずのルフィの姿も見えない。
 なにやら尋常ではない様子を感じ取ったので、全員で先ほどまでウソップがいたであろう海岸へ向うことになった。
 案内されたのは海岸というより崖で海岸はその真下である。ちょうど海を一望でき、一人で考え事をするにはたしかにぴったりの場所である。
 ここで何かあったのだろうかと辺りを見渡してみると、なぜか海岸のところでルフィが大の字になっていびきをかいていた。叩き起こして事情を聞くと、

「えーっ!!」
「カヤさんが殺される!?」
「村も襲われるって本当なの!? 麦わらの兄ちゃん!!」

 とのことらしい。しかも首謀者は屋敷で会った執事だと言う。
 知恵の働く悪者が地方の有力者に取り入るというのはよくあるが、不慮の事故を装って遺産を相続となれば時間はかかるものの確実性は遥かに高い。カヤという少女にも信頼されているようだったし、仲間に催眠術師までいるとなればある程度の融通も利くかもしれない。お膳立てはすべて整っていることになる。後はことを実行に移すのみということだ。

「よかったじゃない、先に情報が入ってさ。逃げればすむもの。敵もマヌケよね」

 そのナミの言葉に子供達は慌てて村に走っていく。
 たしかにこういった陰謀は情報の秘匿が大前提であり、それが事前に漏れればどれだけ緻密であろうと、いや緻密であればあるほど徹底的に崩壊する。その点で言えば、今回のことはもはや失敗しているといってもいいのであろう。
 しかし、

「どうした、シン。さっきから浮かねぇ顔して。心配事でもあんのか」
「俺の生まれた島にある昔話でさ、今とほとんど同じ様な状況になるやつがあるんだけどさ・・・・・・」
「それがどうしたのよ」
「あいつっていっつも海賊がきったて嘘ついてるんだろ? 信じてもらえんのかなァ・・・」

 シンの言わんとすることを理解しゾロとナミが顔色を曇らせた。
 狼少年は日ごろの行いゆえ羊を守ることができなかったのである。あれはたしかイソップ童話だったか。よく似た名前がいっそう暗示的で、シンは背筋に冷たいものを感じ、それを隠すために、肉屋がどうのと大声を出したルフィを殴りつけた。

 そしてそれから数時間後、シンたちとウソップの五人は先ほどと同じ海岸にいた。空には星と大きな三日月が煌々と光り夜空を照らしているが、それに反してウソップの顔は暗い。
 結局、シンの予想通り、ウソップの言葉は村の誰にも、カヤからすらも信じてもらえず、彼は村から追い出されてしまったのだ。
 このままではあの昔話の二の舞である。悲劇は免れない。
 しかし、

「俺はこの海岸で海賊達を迎え撃ち、この一件をウソにする! それがウソつきとして、俺の通すべき筋ってもんだ!! ・・・・・・腕に銃弾ぶち込まれようともよ、ホウキもって追いかけ回されようともよ、ここは俺が育った村だ。俺はこの村が大好きだ、みんなを守りたい・・・! こんなわけもわからねぇうちに、みんなを殺されてたまるかよ・・・・・・!!」

 ウソップと狼少年では決定的に違うところがあった。
 狼少年は黙ってみることしか出来なかった。一人で狼に勝てるわけがないからだ。しかし、ウソップは戦うという。到底敵うわけがない敵を相手に。 
 言いながら悔し涙を流す男泣きにシンは思わず震えた。本当にこの世界には凄い奴らがたくさんいる。自分がやりたくても出来なかったことを彼等はさも当然のことにやろうとするのだ。この男の力になりたいとシンは思った。
 仲間達を見てみると、どうやら考えていることは一緒のようだ。

「とんだお人よしだぜ、子分まで突き放して一人出陣とは・・・!」
「一人で逃げることだってできたのに、たいした奴だよ、お前」
「よし、俺たちも加勢する」
「言っとくけど、宝は全部私のものよ」

 もう一つ違うのは一緒に戦うと申し出るお節介がいることだ。もちろん、同情なんかで動くような連中ではないので、彼の勇気があったればこそである。
 この後、ウソップが村へ入る唯一のルートと言う坂道に全員で陣取って油を大量に敷き詰めたり(ウソップ発案)、落とし穴を掘ったり(シン発案)などのトラップの設置をしていたのだが、作業も終わり、そろそろ太陽も昇ろうという時間になって、

「俺たちって違うところから上陸しなかったか?」

 というシンの今更な一言により、急遽二手に分かれることとなった。
 トラップも多く仕掛けたし残るほうの人数は少なくていいだろう、という判断によりシンとナミがこの場に残ることになったのだが、ルフィたちが森の中に消えたのとほぼ同時に海賊達の雄叫びもまた北の方角から響いてきた。

 早速来たかとシンは急いで駆け出すが、油にとられ足をとられたナミに服をつかまれ一緒に転び、しかもナミが彼を足場に一人脱出するものだから、油まみれの坂道を滑り落ちてそのまま落とし穴にホールインワンとなる。

「わるいっ! 宝が危ないの! 何とか這い上がって!」

 なんとも白々しいセリフが聞こえてくるが、まるでコメディーのような状況にもはや怒りを通り越して諦めと乾いた笑いが出てくるばかりである。昔の彼なら激怒するだろうが、一年もルフィと一緒にいたせいで理不尽に慣れてしまったのだろう。彼の技の実験に無理やり付き合わされたことに比べれば、この程度はなんでもない。
 そしておそらく、この落とし穴もルフィが掘ったものである。なぜなら掘り終わった後、深さが数メートル以上ある穴の中から何の問題も無く脱出できるのはゴム人間であるルフィをおいて他にいないからである。
 シンはその結論にもう一度苦笑いを浮かべて、それから穴の側面をよじ登り始めた。幸いにも彼は常にナイフを2本携帯しており、それを突き刺しながら登れば、素手よりも早く簡単に登ることが可能である。
 そうやってシンは軽快に登っていくのだが、問題はその先にある坂道のほうだ。無事に登りきっても、油に足をとられればまた落とし穴にまっさかさまとなってしまう。シンも実際にそれを数回繰り返したすえ、地面にナ
イフをつき差しながら匍匐前進するという方法で、全身油まみれになりながらようやくトラップ地帯から脱出した。
 なんだかすでにいろいろな意味でぐったりなのだが、こんなところで立ち止まっていられない。気持ちを切り替えてもう一つの上陸ポイントに向う。
 シンとしてはルフィとゾロの強さを信頼しているので彼らが苦戦しているということはほとんど考えておらず、どちらかと言えば自分の出番がなくなるのではないかという心配のほうが大きく、予想以上の時間のロスに結構焦っていたりするのだ。
 方角は北だとウソップも言っていたし、地形にそって進めば間違いない。道なりに進むのも鬱陶しくなってきたシンはそう考えると、繁みの中を突っ切った。幸いそれほど木が密集しているわけでもないので走りにくいと言うことは無く、すぐに目的地らしきところが見えてきた。ちょうど坂道をはさんだ向こう側にナミとウソップが座っているのが見える。二人とも別の何かに気が取られているようでこちらに気づきもしないが。
 せめてかっこよく登場するべくトオッ、とシンは掛け声とともに飛び出す。

 すると、

「キャット・ザ・・・・・・」
「お?」

 目の前に猫の扮装をした男がジャンプしてきた。
 もちろんシンには見覚えの無い顔であり、この場において自分が知らないということはキャプテン・クロの仲間の海賊、すなわち敵である。とりあえずそれだけを把握すると、ぽかんこちらを見ているデブの顔を両手でつかみ、走ってきた速度と体重を乗せた膝蹴りをお見舞いしてやった。

「ぐわッ!」

 下を見るとゾロの近くにこれまた猫のような格好のヤセッポチがいる。まだ自分には気付いていないようだからこいつもやっちまおう、とさらに空中でデブを蹴って方向を修正し、超鋭角度のとび蹴りでヤセを踏み潰す。

「ぶへッ!」

 そしてシンは何事もなかったように着地をきめた。
 一瞬で現クロネコ海賊団最強コンビが倒されたことに周りは驚きを通り越して唖然となるが、シンの実力を理解している二人はすぐに立ち直る。

「おせェぞ。何してやがッた」
「そうよ、アンタ! 今まで大変だったんだからね!」
「お前のせいだろうがッ! 聞いてくれよ、ゾロ。あの女、自分からトラップにかかったくせに、踏み台にした俺を助けもせずにさっさと行っちまったんだぜ」
「しょうがないじゃない。事故だったんだから。それに二人とも落ちるより一人でも助かったほうがいいでしょ」
「お前は宝が大事だっただけだろうがッ」
「うるさいわいねェ。男が細かいこと気にしてんじゃないわよ」
「この野郎・・・!」
「無駄だ。あの女が自分の非を認めるわけがねェ」

 謝罪の一言くらいはもらおうとシンはナミに詰め寄ったが、ゾロの言うことのほうが正しい。もともとそんなに怒ってたわけじゃないしな、とシンは自分で自分に言い聞かせる。この光景をミネルヴァのクルー、特に艦長やパイロット仲間が見たら感涙にむせび泣くに違いない。
 和んでばかりもいられない。ウソップが緊張感たっぷりの声で叫んだと思ったら、ニャーバンブラザーズが立ち上がり、こちらをにらみつけている。

「お前ら、よくもバカにしてくれたな・・・!」
「俺たちをなめたこと後悔させてやる!」
「へェ、まだやるってのか。さっさと来い。時間の無駄だ」
「やけに自信満々だな。苦戦してたんじゃないのか」
「一対一なら一刀流でも十分だ。お前が刀取ってくるなら俺だけで終わらせてやってもいいぜ?」
「「ほざけッ!!」」

 突撃してくる二人。しかし、数歩もしないうちに歩みを止め、顔面蒼白になってガタガタと震え始めた。奥ではジャンゴや他の海賊達も同じような状態である。

 振り返る必要は無い。彼等の様子やなにより背中に突き刺さるような鋭いプレッシャーが知らせている。どうやら痺れを切らせてのご登場のようだ。

「もうとうに夜は明けきってるのになかなか計画がすすまねェと思ったら・・・・・・何だこのザマはァ!!」

 キャプテン・クロの怒号が響く。
 そして――

「加勢に行きたきゃ行けばいい。ただし、この坂道を生きて通ることができたらな・・・!」

 状況はこちらに分が悪いと言えるだろう。病弱な少女と子供の四人組では、いくら地の利があっても本職の海賊から逃げ切ることは難しい。
 さらに目の前に立ちはだかるのは専用武器『猫の手』を装着した『百計のクロ』と催眠により大幅に戦闘力を増大させたニャーバンブラザーズの二人である。

「・・・・・・くそ。これじゃ立場が逆転だ」

 ウソップの口から思わず弱音が出てしまうのも無理はない。大量の出血により上手く動けなくなってしまったことも、彼の心情をより深刻にしているのかもしれない。

「ウソップ」

 しかし、そんなウソップの名をルフィがいつもと変わらない調子で呼んだ。シンがいない間に少し暴れたので体は十分温まっている。ゾロも手から離れていた二刀をナミが取ってくれたので本領発揮はここから。
 自分達のほうから助力を申し出た以上、相手がなんであろうと戦い、勝つ義務がある。シンはそのことを伝えるために短く吼えた。

「「「任せとけ」」」

 期せずして声が三つ、力強く重なった。

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