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◆BiueBUQBNg氏_GジェネDS Appendix・序_08

Last-modified: 2014-03-10 (月) 16:15:15
 

 /27th scene

 

「要するにこの作戦は、敵の応戦能力を全て搾り尽くそうというものです」

 

 ガトー率いる工兵部隊が射撃用トーチカと球形陣、そして生命維持に必要な分を除くサイド3中のエネルギー
をかき集められるだけかき集める準備をしている間、コウは作戦発案者としてミネバ・マツナガ・ライデン・シーマ・コッセルを初めとした首脳部相手に作戦の説明を行う事になった。

 

 彼の発案した『スタークラッカー』は兵器ではなく、それらの組み合わせ、ビーム砲撃と実体弾を同時に対象にぶつける、という運用法をいう。資源用の小惑星を小さく砕いて扱いやすくしたり、大きめのスペースデブリをコロニーの壁面が耐えられる程度の大きさにまで粉砕する事を目的とする。それが命名の所以である。ビーム兵器によって対象に口径の小さな穴を開け、コンマ1秒以下の時間をおいて弾丸(場合によっては手榴弾ほどの大きさのものでもいい)をそこに潜り込ませ、爆発させる。これはコウが旧ザクで作業を行っていたときに聞いた話から思いついたアイディアだ。古くからモビルスーツでコロニー維持などの作業を行っている老人によると、中途半端なエネルギー出力で打たれたビーム砲に当たり中核まで通じる穴が穿たれた小惑星はよく見つかるそうで、破砕処理する場合は穴の中に適当な大きさの爆弾を放り込めば済むので楽だという。
 とはいえ、実用化までの道は遼遠であることはコウ自身も認めている。最大の問題はビームを撃った後即座に実弾射撃に切り替えるシフト機能だ。宇宙空間ではありとあらゆるものが移動し続けている。その上、対象と完全に動きを同期させるのは手間がかかる。その為ビームを発射した直後に実体弾を撃ち込まなければならないが、二発続けて同じ箇所に射撃を命中させるのは”ピンホール・ショット”と呼ばれ、物体が宇宙空間と比べ格段に静的な重力下にあっても至難の業だ。調整を行うオペレーティング・システムは近い内に実現されそうな見込みらしいが、それでも切り替えの際に発生するブレまでは対処のしようがない。

 

 が、この度の作戦はそのような繊細なものの正反対だといってもいい。
 敵が一定距離に侵入するや否や突如開始される対空防御、全機が同一人物によって操作されているとしか思えないほど統一的な動作をする迎撃モビルスーツ群。これらのことから、マハー・カーラーは中世期のニホンとアメリカの海軍の巡洋艦で採用されていたイージス・システムに近似した、自動防御システムを搭載しているものと推察される。
 ならば、強力な攻撃を間断なく与え、そいつをパンクさせてやればいい。
 偵察出撃からの帰艦途上、コウが大急ぎで作成し、暗号で司令部へ上申したメモの内容は

 

 〃涎盖,こない程度の距離からの大出力ビーム狙撃
 ∩簡向からのファンネル、ビットモビルスーツ等による実弾射撃

 

 上の2つを同時に行う事によっていずれかの攻撃が相手に打撃を与え、なおかつ敵の燃料切れを期待しようというものである。
 一旦は大規模すぎる割りには確実な効果を期待できないとして否決されかかったが、他に有効な手立てがないことと、第二警備艦隊が遺した映像を分析した結果、戦艦のビーム砲をIフィールドで防ぐ際に若干だが対空砲火が疎らかつ乱れたものになるという結論が出され、採択された。

 

「しかし、自分で立案しておきながら、無茶な作戦だと思うよ。その上、準備が上手くいってるとはね」
「エネルギー公社にどこからか圧力がかかったらしいよ。危険度Eまでのコロニー住人の退避も、現在23%完了しているし、連邦が真面目に仕事するなんて、死ぬまで一回でも見れるなんて思わなかったわなぁ。
 お陰でコロニーや月はおろか,地球までがアップアップさ。全く、どんなお偉いさんが蔭にいるのやら」

 

 ブリーフィングで作戦概要と現状の解説を終えた後、コウとシーマは改めて物事がうまく運んでいることに驚いていた。

 
 

 <answer>

 

 「そうだ、今サイド3と月にある船の全てを、住人の脱出に充ててもらいたい。デパートを半年閉める羽目になる?人命には換え難いだろう。それとも、例の汚職、アレをリークしてもいいのか?」
 「君の所でS56空域に備蓄している燃料があったな、あれを共和国軍に供出しろ。ルウムで助けてやった恩を忘れたのか」  

 

 ―気がついた時は、全てが終わっていた―
 この世に「神」などというものはいるはずがない。いるならば、何故ザビ家の独走によって地球の人口の半半以上が死に至らしめられたのか。何故地球連邦はこの事態から何も学ばなかったのか。何故この状況を静観しているのか。

 

「神がいなければ、全ては許される」

 

 3人兄弟の次男がそういったという。それに影響されて、兄弟の父親が私生児として産ませた4番目が父親を殺し、結果として長男はその罪を被せられて投獄。次男は裁判の途中発狂。私生児は自殺。三男はいずこかへと旅立った。
そういう小説を、昔読んだ。解説によると、作者は三男が皇帝を殺そうとする話の前段としてこの小説を書いたそうだが、手をつける前に死んだという。私としては、その話のほうが気になったのだが。
 ともあれ、神がいないとしても、何者かが天罰を加え、否が応でも教訓を骨まで刻み付けてやらねばならない。
 そう思っていた。
 しかし、私があの時あそこで感じたものを『神』と呼ばずして、一体何と呼べばいい?それも、我々が折角代行してやろうとした神罰を無に帰すことで、その存在を露にするとは。
 目が覚めたとき、サザビーの脱出ポットは海に浮かんでいた。大気圏に突入したらしい。万が一に備えて耐熱処理もパラシュートも装備してはあったが、燃え尽きも跳ね返されもしない絶妙な角度で突入するとは思わなかった。
 悪い冗談だ。ハッチを開けて澄み切った青空と深い藍色を湛えた海、水平線に見え隠れする島らしい影を見て、美しい、ただそれだけを思った。
 これら全てを、自分の手で、破壊しようとしていたのに。
 海流によって島まで運ばれた後、しばらくの間、草を噛み湧き水を啜り魚を齧って露命を繋いだ。無精ひげと伸びきった髪のせいで誰も私だと分からなくなった頃にやっと貨物船が近くを通った。もしあそこであの船を見つけていなければ、今もあそこでああしていただろう。
 それからスラム街で日雇いの生活に身を沈めた。その内に分かったことがある。地球で暮らしていれば、宇宙にいる時には理解できなかったアースノイドの物の見方や考え方が、自然と自分自身のものになってしまうということだ。
ならば再び宇宙に上がればどうなるか。それを確認するため、再び宇宙に上がった。即座にスペースノイドに戻る自分がいた。
 何のことはない、人は全て同じだ。こういう考えが出来るようになったのも、アムロと正々堂々、お互い最高のモビルスーツに乗った挙句、負けたからだろう。自分がもっと強ければララァは死なずに済んだのではないか?その疑問に答えを見出した。私は、いつだって出来るだけのことは、してきたのだ。そして人間というのは、大抵がそうだ。
 そのことに気付くと、色々とこだわって来たことが妙にくだらなくなった。とはいえ過去の自分を否定する気にもなれない。人はそうやって前に進むものだ。だから私は、大衆の一人となり、その進歩に力を尽くそうと思った。

 

 故にラウ・ル・クルーゼよ、ザフトの産んだ鬼子よ。お前には世界を憎む資格が十分にあることは認めよう。が、その世界の方も、黙って破壊されるほどヤワなものではないことを、経験者として、教えてやる。

 

 </answer>

 
 

 /28th scene

 

 トリエは出撃前の仮眠に入っている。リリー・マルレーンの士官クラブで、作戦に参加する将校の面々もまた、出撃前最後の寛ぎの時間を楽しんでいた。コウはカウンターの隅に座り、置いてあったモビルスーツのカタログに目を落としている。飲酒は,大目に見られてはいるが、建前では許可されていない。そして、サイド3に引っ越してきて以来、彼に可能な暇つぶしといえば、モビルスーツいじり、飲酒、あとはトリエの面倒を見ることのみであった。
 ガトーがそこにやってきた。手には何か箱のようなものをぶら下げている。

 

「少しは飲んだほうが気分が解れていいぞ。アルコール分解アンプルもある」

 

 コウは体勢を変えず、横目でガトーを見る。

 

「そんなことだからジオンは負けたんだ」
「モビルスーツのキル・レシオでは1:2.7だ」

 

 その数値には心当たりがあったため、コウはカタログを閉じ、しばし目をつぶった後

 

「…一杯だけくれ」

 

 と返事をした。ガトーは手際よく箱を持ったままカウンターの裏に回り、なにやらゴソゴソしていたかと思うと、グラスをカウンター越しに差し出した。

 

「テキサスコロニー謹製のバーボンだ。やっと商品として出荷できるそうだぞ」
「……ン」

 

 無言のままグラスを取り上げ、少し揺らし氷がぶつかり合う音を立て、一口だけ流し入れる。

 

「どうした?いつもいつもつまらない奴だとは思っていたが、今日は例になく無口だな。それにンってなんだ、トリエル君の影響でも受けたのか?」
「……お前が俺のことをどう思っているかよくわかったよ。別に分からなくてもよかったけど」
「えらく刺々しいな」
「……まだ胃腸の具合が悪い」
「あの件はすまなかった。シーマがどうしてもと言うものでな」

 

 いつの間にか隣に座っていたガトーがストレートでチビチビと飲みつつ答える。彼としても、少女を泣かせるような奴はどんな理由があれ軍人失格だと思い、シーマの思いつきにも別に反対はしなかったのだが。

 

「これが終わったら、もうこんなことには関り合いにならなくて済むのかな」
「弱気なことを言うな。貴様だって、自分の意思で士官学校に願書を出したんだろう」
「ああ、敵を殺すのが仕事で、自分も殺されるかもしれない。十分すぎるほどに覚悟してた、つもりだったんだが」
「何か転機になるようなことでもあったのか?」

 

 歴戦の勇士が些細なことが原因で戦場を離れることがよくあると、経験豊富なガトーは知っていた。

 

「ジェネシスの戦闘でな。あの、センチュリオがやたらたくさん湧いて出てきた」
「ああ」
「一機、中々倒せなかったんで無理してデンドロのメガビーム砲を腹にねじ込んで、直接低出力で砲撃して破壊した。
 操縦していたレギオンが腹から真っ二つになって、顔にかかってたバイザーが外れて、トリエと同じ顔で俺を見ていたんだ。
 ……なあ、ドズル・ザビは地球にコロニーを落としたあと、自分は何億人ものミネバ様を殺したって嘆いたんだろ?」
「その通りだ」
「俺もそれと同じだ。トリエのことは、大好きだよ。妹がいたらこんな感じだろう、って思う。たまに、新婚のような気分にもなる。でもトリエのことを可愛いと思えば思うほど、あの時殺したレギオンのあの目がちらついて、踏み込めなくなるんだ」
「……そうか」

 

 コウの首の裏にいい蹴りが一発入った。全身が痺れる感覚に襲われ、グラスを取り落とす。机の上で痙攣する。
蹴ったのはシーマだ。

 

「女々しいねえ!兵隊なら敵を倒すのは当然だろ、そんなことに捕らわれて、すぐ側で泣いてる女の子を無視するなんて、あんたそれでも男か!」

 

 余りの事にガトーは呆気に取られた顔でシーマを見ている。コウは、それもそうだ、と少し思いつつ、いきなり延髄切りは酷いんじゃないかな?と息の出来ない喉から声を絞り出そうと必死だった。

 
 

 /29th scene

 

 サートゥルヌスの犯行声明が出る前にシャアの警告に従ってガトーが行った『最低限の備え』には、2つある。
一つは、各所に保管、あるいは放置されていた新旧問わず全ての戦闘可能モビルスーツの徴発及び最低限の戦闘能力と信頼性を確保できる程度の整備。もう一つは、マハー・カーラーを迎撃するための防衛線の設営である。
 一年戦争が終結した後、連邦はアステロイド・ベルトや火星に逃亡した残党勢力のサイド3との合流を阻むため、『絶対防衛圏』の名の下にサイド3を蓋うように資源用の小惑星を配置した。監視所、モビルスーツ格納庫なども設置された本格的な防衛線である。ギレン・ザビを黒幕とした半年間にも及ぶ紛争の中で放置されていたのを復旧するだけの、割合に楽な作業であった。ガトーにとっては連邦がジオンに押し付けた屈辱以外の何者でもないが、それがサイド3の護りとなる。連邦を利用してやるのだ、と作業開始前にガトーは訓示し、部下と己を納得させるよう試みた。

 

 コウのメモを司令部が具体化した作戦案では、まずかき集められたモビルスーツ・モビルアーマー・戦闘機などをマハー・カーラーの対空射撃が有効にならない程度の距離に、大量に、囲い込むように配置する。マハー・カーラーはサイド3を目指す軌道に乗っているからその動きに同期させなければならない上、モビルドールによる迎撃を防ぐためにまずマハー・カーラーの遠方に配置して少しづつ前進させ、大出力バスター砲の命中とほぼ同時に射撃地点に到達し、射撃を開始させるという複雑な動作を遠隔操作で行わなければならない。そのためサイド3のニュータイプ研究所の協力を得て、全機体のビットモビルスーツ化を前もって完了させておいた。その操作にはジオン共和国軍に所属する数少ない強化人間であるゼロ・ムラサメとレイラ・レイモンドがあたる。二人がそれぞれマハー・カーラーの北極点と南極点(便宜的に与えられた名称であり厳密な物ではない)を見下ろす位置で待機し、司令部からの指示に従って攻撃を開始する。
 バスター砲の砲手であるコウが騎乗したフルアーマー百式改は、上で述べた防衛線に置かれた、元来は狙撃砲台として運用されるべく構想されていた小惑星より狙撃を行う。この小惑星は巧みに配置され光学的な視認が難しい上に、周囲の小惑星には妨害電波発生装置が設置されている。更に有線通信、有線動力回路が配備され、このような任務には絶好の環境だ。その際、百式の護衛としてトリエの騎乗するトライアが、丁度百式の盾になる位置に配置される。トライアはその名の通り、トリエルの姉妹であるレギオンが騎乗すべく設計されたセンチュリオ・シリーズの試作機で、ほぼ同等の性能・武装を備えている。その中にはムーンレイスより強奪された、人工物を破壊するナノ・マシンを撒き散らす月光蝶を改良したフィールド・インペリウム、逆に稼動して自機・味方機の破損を逐次修復するレルム・Dがあり、盾役にはうってつけなのだ。とはいえ大変危険な任務であることには変わりはない。
それ故ガトーとシーマは、援軍に以上の任務を押し付けるつもりでいたコウに、トリエの機嫌を直すよう強要
したのである。

 
 

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