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ZcrossC.E ◆ycBHgYNLCA 氏_第01話

Last-modified: 2009-10-03 (土) 20:20:36

「――これでビットは使えまい!」

 

放棄された戦艦の中、金色のMSが白いMSに組み付き、壁に押し付けた。白いMS――キュベレイのパイロットが女性であることを考えるとどこか卑猥だが、金色のMS――百式のパイロットであるクワトロ・バジーナにそんなことを考える余裕はない。

 

「ふん。馬鹿め」

 

しかしキュベレイのパイロットであるハマーン・カーンの類まれな力は、そんなクワトロの必死の策すらあっさりと撥ね退けた。彼女のニュータイプとしての力は、ファンネルに、針の穴に糸を通すような精密な動きさえ可能にさせる。
ハマーンと比べて微弱ではあるものの、同じニュータイプであるクワトロは、ハマーンの思椎が背後で弾けたこと、そして、自身の失策を悟った。

 

「くっ?!」

 

ファンネル――ニュータイプの意思によって制御される攻撃端末である。そのファンネルの何基かが、百式の四肢を奪う。コクピットを襲う振動に心を押し潰されそうになりながらも、クワトロは必死にこの状況を打開する手を探した。
幸いにも――情けない話ではあるが――ハマーンとは昔懇ろだった仲だ。しかも、彼女にはやや未練が残っているとみえる。多少ならば時間稼ぎも可能、とクワトロは踏んだ。

 

「ハマーン……!」
「ふん、赤い彗星も地に落ちたものだ」
「何……?!」

 

適当な反応を返しながら、目は何かないかとせわしなく動き回る。果たして、「それ」はクワトロの目に飛び込んできた。時間稼ぎはもうする必要はない。しかし私も死ぬかもしれないな、と、クワトロは不敵に笑んだ。

 

「――これで終わりにするか、続けるか! シャア!!」
「……そんな決定権がお前にあるのか!」

 

叫ぶと共にトリガーを押し込む。百式に残された最後の武装、頭部バルカンが火を吹き、火花を上げていたエネルギーパイプを直撃した。思わず機体ごと振り返ったハマーンは、時間稼ぎをされていた、と直感した。

 

「シャア! 貴様……」
「……!……!」

 

自分はハマーンに応えて何か言ったのかもしれない。しかし、爆発音に遮られ、そして目の前の光と爆風に遮られ、クワトロにはもう何もわからなかった。ただ一つ、思った。あの鋭敏な感覚を持った少年は、どうなったかと。

 
 

「俺の体を、みんなに貸すぞ!」

 

死者の魂を取り込んで、カミーユ・ビダンの感覚はどこまでも肥大化していった。カミーユは余りにも肥大化した自身の力を抑えきれず、自身が取り込んだ死者の魂と、自らの魂の区別がつかなくなっていた。

 

「ここからいなくなれぇ――――っ!!」

 

絶叫と共に、ウェイブライダー形態に変形したZガンダムが突撃する。その先にいたのは、サイコミュのコントロールをカミーユに奪われたジ・オ。パプテマス・シロッコが、必死になって制御を取り戻そうとしていた。
しかし、時既に遅し。鈍い衝撃と共にコクピットハッチを突き破り、ウェイブライダーの機首がシロッコを押し潰した。

 

「や、やったのか……?」

 

しかし、そんなカミーユの予想とは裏腹に、青い光がジ・オのコクピットから広がる。光はやがて、ウェイブライダーをも包み込んだ。

「貴様も一緒に連れて行く……」
「ひ、光が……?」
「カミーユ・ビダン……!」
「広がっていく……」

 
 

 

「我らのこの怒り! 今度こそ、ナチュラル共にぃぃぃぃっ!!」

 

日本刀を模した実剣、斬機刀を振るうジンハイマニューバ況(以降ジンH兇派週)。シールドで受け止めたインパルスは機体のパワーに物を言わせ、一気に遠くへと跳ね飛ばした。

 

「今の内に、早く!」

 

少年の声に急かされ、アスラン・ザラはコンソールパネルを叩く。すると、目の前の掘削機らしき機械が作動し、彼らの立つ地面に潜り込んでいく。武装の全てと片腕を失ったザク・ウォーリアが、残された右腕を挙げた。

 

「よし! オーケーだ、シン」
「了解です!」

 

インパルスのコクピットの中、シン・アスカは意気込んでフットバーを蹴る。インパルスが飛び上がり、ジンH兇妨かってビームライフルを構えた。
対するジンH兇望茲襪箸海蹐離汽函次対ビームコーティング処理の施された斬機刀を青眼に構え、体勢を立て直すやバーニアを思い切り吹かす。

 

「小僧が、調子に乗るでないわ!」
「小僧で何が悪いんだよ!」

 

ビームライフルを二発、三発と連射するも、宇宙戦用にカスタマイズされた高機動仕様のジンH兇砲賄たらない。シンはインパルスにビームサーベルを抜かせた。

 

「MSの性能に依存していては、俺には勝てんぞ!」
「肝心のMSがそれじゃあ、このインパルスに勝てるかよ!」

 

ビームサーベルと斬機刀がぶつかり合い、せめぎ合う。いくら対ビームコーティング処理が施されているといっても、長時間の鍔迫り合いをすればコーティングが蒸発する。
それを知っているシンは、押して押して押しまくる作戦に出た。それを作戦と呼べるかどうかは実際微妙なところだ。

 

「あとはアンタさえ落とせば、おしまいなんだ……!」
「終わらぬさ……ユニウスセブンは大気圏では燃え尽きない。見ろ、これだけの大きさを残して大気圏に突入すればどうなるか!」
「うるさい! さっさと……落ちろよぉっ!!」

 

またもインパルスが力任せにジンH兇留ο咾鯆呂燹斬機刀を握るその手を無理矢理押さえつけ、ビームサーベルで切断した。更にコクピット辺りを蹴りつけ、大気圏に向かって突き飛ばす。もはやサトーが助からないの明らかだった。
しかし、サトーは満足げに唇を吊り上げる。

 

「ふふふ……やっとだ。やっと、お前達を葬ってやれる。寒かったろう、ユニウスセブンの中は……」

 

その声は、アスランとシンの機体にも届いていた。

 

「俺もすぐそちらに行く……我が愛する家族よ……」

 

大気圏突入の熱に耐えきれず、ジンH兇惑散した。
しかし、シンやアスランも既に重力に引っ張られている。明日は我が身、どころの騒ぎではなかった。特にこの男、アスラン・ザラにとっては。

 

「どうするんです、アスランさん?! その機体じゃ……」
「……やれるだけやってみるさ。俺はまだ死ぬわけにはいかない。諦めるものか!」
「で、でも……」

 

シンは動揺していた。アスランのザクが大気圏に突入するのが困難であることももちろん原因の一つだが、サトーのジンH兇恨み言の一つも言わず、むしろ満足そうに死んでいったことにおぞ気を感じていた。
そして、恐らくは彼も「同じ」だった。大切な家族を失った人間だった。

 

「とにかく、何とかやってみる!君は自分のことに集中していろ!」

 

アスランは必死にコンソールをいじり、姿勢を変え、試行錯誤を繰り返しては減速を試みる。しかし、中破したザクに大気圏に突入するだけの耐久力はなかった。

 

「くそっ、まだだ! まだ諦めないぞ……こんな所で……」

 

アスランの額にじっとりと汗が浮かぶ。インパルスは既に姿勢制御を終え、大気圏への突入を開始していた。

 

「…………駄目なのか…………」

 

やれるだけのことはやった。しかし、どうにもならなかった。受け入れがたい事実ではあるものの、最後まで足掻いたのだ。アスランの体から力が抜け、何もかもどうでもよくなっていくのがアスラン自身よくわかった。

 

「……カガリ……」

 

しかし、希望の手は差し伸べられた。

 

《まだ諦めるな……》
「……?」

 

スピーカーを通さずに聞こえた声は、とても優しかった。

 

《こっちだ……》

 

声に導かれるように機体を動かし、赤く染まった空を飛ぶ。その先には、一機のMAがあった。

 

「これは……?」
《乗るんだ。無事に地球に降りられる》

 

トリコロールカラーのMAの背に乗り、アスランはようやく安堵の息を吐いた。不思議なことに、アスランには「これで安心だ」という確信があった。そう思うと体から一気に力が抜け、大気圏突入の最中でありながら、アスランは気を失った。

 
 

「アスランさん? アスランさん!」

 

アスランが目を覚ましたのは、ミネルバの格納庫の中だった。外側から強制開放されたコクピットハッチの向こうから、心配そうな顔がいくつも覗いている。

 

「あ、ああ……済まない。大丈夫だ」
「ったく、大気圏突入時におネンネとは器がデカいな。念のため医務室に行ってもらうぜ。歩けるか?」
「ああ、心配ない。ありがとう」

 

ザクのハッチを開けたと思しき男が、ったく、と苦笑いし、アスランも釣られて笑った。すると男は急に真顔になる。またもアスランは釣られて真顔になったが、なぜ急に真顔になったのかがわからなかった。

 

「お前さんのザクが乗ってきたMA、ありゃ何だ?」
「……分からない。大気圏に入るほんの少し前に見つけて、藁にも縋るような思いで乗ってきたんだ」
「……そうか、悪かったな。医務室行ってくれていいぞ」

 

「声」のことを言わなかったのは、信用してもらえないと思ったのと、自分自身あの時の出来事が半信半疑だったからだ。
男に医務室の場所を聞いて、アスランは格納庫を歩き出す。歩き出して改めて、重力を感じることに安心感じていた。歩いていくと、やがて「あの」MAが収容されているスペースにさしかかる。

 

「あ、アスランさん。大丈夫ですか?」

 

シン・アスカだ。メカニックが寄ってたかってコクピットを探しているところを見物しているらしい。彼の隣には、先ほど一緒に出撃した二人のパイロットがいた。

 

「聞きましたよ。気を失っちゃったんですって?」
「失礼だぞ、ルナマリア」

 

ショートカットの赤毛の頭頂部から伸びる「アホ毛」。可愛らしい顔立ちの下の女性らしさを強調する肢体。ザフト・レッド、ルナマリア・ホーク。
緩いウェーブのかかった長い金髪。下手をすればそこらの女性よりよほど見目麗しい容姿を持つシン、ルナマリアと同じく赤服を着るレイ・ザ・バレル。

 

「今コクピット見つけたみたいで、こじ開けようとしているところらしいです」
「そうか……礼を言わなきゃな」
「アスランさん、中の人と何か話しました?」
「いや……」

 

シンとアスランが出撃前より親密に話しているのを見て、ルナマリアが小首を傾げた。

 

「いつの間に?」

 

しかし、彼女の疑問に答える者はいなかった。MAのコクピットハッチがこじ開けられ、パイロットが現れたからだ。アスランのザクのコクピットハッチをこじ開けた男が進み出る。

 

「よーし、お前さん、自分がわかるか?」

 

現れたパイロットはややふらついている。白いパイロットスーツはザフトのものではないが、地球連合の物でも、オーブの物でもなかった。

 

「……ここは……?」
「ここはザフトの戦艦だ。お前さん、名前は?」
「……う……」

 

ヘルメット越しに頭を抑えるパイロットに、アスランのコクピットハッチをこじ開けた男は質問を諦めようとしたが、パイロットは頭を抑えながらも何とか名乗った。

 

「……カミーユ……」
「ん?」
「……カミーユ・ビダン……」