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アム種_134_044話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 15:48:09

第四十四話 ローエングリン



──イヴァンと出会ったのは、ちょっと前のことだ。

 月のきれいな夜で、あたしは父さんに連れられてレジスタンスの集会に出てたんだ。



 そしたら。

 集会が終わって戻ろうかってときに。

 なにもない空から突然、イヴァンが降ってきたんだ。妙なバイクといっしょに。

 なんかごてごてした宝石みたいなので覆われたノーマルスーツ着てた。

 放ってもおけないからって父さんが連れて帰ったんだけど、目が覚めたら記憶がないって言うし。

 記憶が戻るまでとりあえず居候させることにして、戦闘経験もあるみたいだしレジスタンスの活動を手伝ってもらってたんだ。







『シン・アスカ、インパルス。いきます!!』

『セラ・メイ。発進するわ』



 声とともに、シンのインパルスが発進していく。

 久々の分離状態、三機のパーツとなって。

 シルエットフライヤーは、ソード。ただしエクスカリバーは装備されていない。

 坑道のサイズを通ることができるのは、それしかなかったからだ。

 なにもないよりはましだろう。

 続いて、アークエンジェルからセラが飛び立つ。

 ストームバイザーの下部には、インパルスの予備ライフルが懸架されている。

 つまり今回のインパルスの武装は、ビームブーメランのみのソードシルエットに、

 二丁のビームライフルということになる。



「じゃあやはり、彼もジェナス、キミ達と同じ世界から来た人間なのか」

「ええ。乗ってきたバイク……見ましたけど、バイザーです、あれ」



 パイロットスーツ姿のバルドフェルドが、窓から二機の発進を見送りながら言った。



「もっとも、駆動は燃料のアムエネルギーがない以上バッテリーが使われてましたけど」

「ふむ……しかし不思議だねェ、そのアムエネルギーとやらも。キミ達をこの世界に飛ばして、どうしろと言うのやら」

「さあ……俺にもそれはわかりませんけど」



 記憶を失ってはいたが、その外見、性格。

 そして現れた状況やモトバイザーを所持していたことなどから、先程出会った男がニルギース本人であることに間違いはない。

 だが──ジェナスはキラやアスランも見ている中、疑問のある点をいくつか考えていた。



 まずは、彼がモトバイザーとともにいたこと。

 まあこれは、ジェナスもこの世界でエッジを発見しているし、たまたま同時に同じ場所に落ちてきただけのことだろう。

 次に、アムジャケット。

 セラも同様だが、最終決戦において使用が不可能になっていたはずのそれらが、アムマテリアルのクリスタル状パーツも含め、完全な形でギアを取り戻している。

 少なくともコニールの話を聞く限りでは、ニルギースはその状態でこの世界にやってきた。

 今は町のコニールの家に保管してあるという。



(フルゼアムによって……修復された……?この世界に、来る際に?)



 フルゼアムを使いこなしていたガン・ザルディは、そのアムジャケットをゼアムの力によって自由自在に再構築・変化させていた。そのことを思うと、あながちあり得ない話ではない。



『パイロット各員は搭乗機へ』



 ミリアリアのアナウンスが流れ、一同は待機所を後にする。

 ラドル隊と合同の、ローエングリンゲート突破作戦。もうすぐ、任務がはじまろうとしていた。







 一方。

 セラを連れ坑道へと進入したシンは───……死にそうだった。



「なんだよこりゃ!?真っ暗ぁ!?くっそー!!まじデータだけが頼りかよ!!」

『文句、言わないの。ちゃんと飛びなさい、こっちはあなたの軌道トレースしてるんだから』

「ずりーぞ、セラァっ!!」



 通り抜ければ、砲台のすぐ真下に出られるという、隠された裏道。

 しかしその実態は、あまりに狭く、暗く。

 発進直前にアスランから通信で言われたことや、ブリーフィングでのやりとりを思い出しシンは罵る。



「なーにがお前になら出来ると思っただ!!データ通り飛べって、そういう問題じゃないだろこれ!!

 アスランも、ハイネも!!自分でやりたくなかっただけじゃないのか、あいつらー!!」

「シン!!前!!」

「くっそおーっ!!やってやるさ、あのハゲ!!畜生ーーっ!!」



 悲鳴にも似た彼の叫びが、暗い坑道内に怨嗟となって空しく響く。

 吐いた毒がこっそり、セラによって録音されていたということを、彼は知らない。

口は、災いのもと。







『『全砲門開け!!目標、敵陽電子砲台!!てえぇーっ!!』』



 二人の女艦長の号令が、戦闘開始の合図であった。

 幾筋ものビームと砲弾とが飛んでいき、同時に次々と機体が発進していく。



『アスラン・ザラ、セイバー、出る!!』

『キラ・ヤマト、ストライクノワール、行きます!!』

『アンドリュー・バルドフェルド、出るぞっ!!』

『いくぜ!!get!!ride!!』



 バルドフェルドのみ、今回はラドル隊のバクゥ部隊の指揮を執るため、基地にて貸与されたバクゥハウンドに搭乗している。

 他はミネルバもアークエンジェルも、いつもとかわらぬ機体、編成だ。



『ハイネ・ヴェステンフルス、グフ、行くぜ!!』

『ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!!』

『レイ・ザ・バレル、発進する!!』



 今回は、積極的に攻める。ただし、出すぎず。

 攻めて、相手を誘い出す。

 案の定というべきか艦の放った砲撃はすべて、出撃した敵MAの部隊によって受け止められ、有効打はまったくなく。それすら予定のうちだ。



 四本足にダガー系の上半身をもつ、異形のMA……ゲルズ・ゲー。

 それが5機。

 アスランやルナマリアの援護をうけつつキラのノワールや、ジェナスのエッジバイザー。

 それにハイネのグフが接近戦を挑んでいく。砲撃や射撃では決定打を与えられないからだ。

 バルドフェルド率いるバクゥ部隊も、その陸上での機動力を生かし駆け抜ける。

目的は、あくまで誘い出した相手の、足止め。

 MA部隊に続くようにして集結してきつつある敵MS部隊の様子に、ハイネはコックピットの中で頷いた。







 データ上のマップに記された、終着点が近付いてくる。



「ここか!?……よし!!セラ、抜けるぞ!!」

『了解!!』

「いっけえっ!!」



 コアスプレンダー両翼のミサイルを撃ち放ち、出口を塞いでいた廃材の瓦礫を吹き飛ばす。

 漏れ挿し込んできた光の中へと、シンは突き抜けた。



 眼下には、数機のダガーによる守備隊と、戦闘機。

 そして、発射を間近に控えていると思しき、撃破目標たる砲台。



『シン!!ライフルを切り離すわよ!!』

「おお!!」



 インパルスに合体、セラの投下したビームライフルを受け取ると

 上空からの彼女の牽制射撃の援護を受けつつ、とびあがる。

 すれちがった戦闘機は羽根にセラの射撃を受け、パイロットが脱出していった。

 既にライフルの照準は、砲台に向けていた。







「キラ!!」

「うん!!」



 シンが坑道を突破し、攻撃を開始した──……その朗報は一射目のローエングリンを辛うじてかわし、敵部隊を引き付け続けるミネルバ、アークエンジェルの両艦の部隊に届き、一気に攻勢へと転じた彼らは、ぐいぐいと敵を押し込んでいく。

 同時に、頷きあったキラとアスランは敵MAの懐に飛び込む。

 二人の脳裏を、植物の種子が弾けるようなイメージが駆け抜けていった。



「でええええぇぇいっ!!」



 懐から更に四本足をかいくぐり、機体下部に潜り込んで裏側からビーム砲を押し当てる。

 さすがに機体下部までは陽電子リフレクターは装備されておらず、機体は二条の太いビームに貫かれる。爆発に巻き込まれる前に変形したセイバーが離脱した。これで一機。



「はああああぁっ!!」



 僚機の撃破にたじろいださらにもう一機を、ストライクノワールのワイヤーアンカーが絡めとる。

 二本の対艦刀をもって両腕を斬り捨てると、PS装甲のパワーすらオフにし、その分の出力すら回し、機体の持つ渾身の出力でキラはMAを振り回し、岩盤へと叩きつける。

 コックピットと思しき場所に剣の実剣部をつき立てると、二機目もそれっきりだった。



 三機目はレイのミサイルを防ぎ、爆風で視界を失ったところを正面からハイネがリフレクター解除の隙をついて一刀両断。

 バクゥ部隊の四方八方からの攻撃に晒された四機目はルナマリアに即頭部を撃ち抜かれ、バルドフェルドのバクゥハウンドのビームファングを突き立てられて断末魔をあげている。



 最後の機体はジェナスが足場を崩したところで体勢を乱し、ひっくりかえったところでメインのバーニアを流れ弾のミサイルにより破壊され、そのまま起き上がれずコックピットを開いてあえなく白旗、御用となった。



 砲台のほうから、爆発の煙があがった。


 
 

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