Top > アム種_134_064話
HTML convert time to 0.007 sec.


アム種_134_064話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 15:54:57

第六十四話 刹那の幻



「シン!!おい、しっかりしろ!!」



 コックピットからひきずり出したシンは、既に半死半生。

 ひどい出血に顔が染まり、意識さえも失って不規則な荒い呼吸を返してくるのみだった。



 ジェナスはそんなシンをかつぎ、待機するセラのストームバイザーへと載せる。



「ゆっくり、なるべく動かさないようにたのむ」

「ええ」



 セラならば、万が一にもそのようなことはないだろうと思いながらも、一応注意しておく。

 と、バイザー上に横たえたシンがなにやら、うわ言のように呟いているのが耳に入る。



「……ら……テ、ラ……そ…って…って、……れ……」

「シン?」

「行くわ。護衛よろしく」

「あ……ああ!!」



 慌てて、ネオエッジバイザーに飛び乗る。

 先導にジェナス、後方にニルギース。

 大破したインパルスを残し、彼らは機体を発進させた。







「でえええいっ!!」



 セイバーと、ジャスティス。二機のサーベルが交差し、干渉のビームを散らす。



「お前達は、俺たちが討たなくちゃならないんだ!!」



 頭部を狙ってくる相手のフォルティスを、首と身を捻ってかわし、お返しにバルカンをコックピットの真上に叩き込む。

 PS装甲だから決定打にはならないが、かなりの衝撃が襲っているはずだ。



「……ハイネ!!力を貸してくれ!!」



 サーベルを収め、シールド裏にマウントされた武器に手を伸ばす。

 急造の収納機構にロックされたそれは、ハイネの遺品たる、グフの予備ビームソード。

 予備とはいっても、整備にぬかりはなく調整は完璧だ。



 自分の過去の亡霊が、ハイネを殺した。

 その思いが、彼にこの武装を手にさせていた。



「戦争は……戦争だ!!それ以上でも、以下でもない!!」



 続けて、四門のビームを撃ち放つ。



「だが、割り切れないことだってあるんだっ!!」



 ビームソードに、ビームを出力。

 セイバーの膨大な全推力で接近戦を挑む。



「お前ら亡霊にはわからなくとも!!俺たち人間にはっ!!」



 気合いを吐き出すと同時に、例の種が割れるようなイメージが頭をかけめぐる。



「俺は……自分の過去の罪をそのままにしておけるほど、狂っちゃいない!!」



 左手のビームライフルが、撃ち抜かれる。

 直後投げつけられたシールドを、アスランは一刀両断にビームソードで切り捨てた。



──流石、ハイネの愛用の品。手に吸いつくようだ……!!



 骨太だったグフに比べ、可変機のセイバーでは大型のビームソードの出力による関節部への負担が気にかかるが、それを補って余りある。



「いくぞっ!!ジャスティス!!」



 お前たちはもう──あってはならないのだ。







「スティングはステラとアウルを連れてけ!!ここは俺たちで押さえる!!」

『ネオ!?』

「いーからいけ!!どっちみちその状態じゃ二人とも戦えん!!」



 向かってくる白いザクと、黄色のムラサメ。

 いつもの二機を相手にし、分が悪いことがわかっていながらも、ネオはスティングに大破した二機とともに脱出することを命じた。



「ちいいぃっ!!こいつぁ面倒なこった!!」



 いざというときは、施設内部まで入って爆破することも考えておかねば。

 ミサイルの弾幕を避ける軌道を描き、ウインダムを操る。



 ムラサメとザク、二機分のミサイルが一機を襲うのだ。

 その数は容易に避けきれる数ではない。



 だが、ネオは避けきった。



「ナチュラルだからって……なめんじゃねーぞっ!!」



 ムラサメと、ビームライフルを向け合う。



 ネオの放ったビームは、ムラサメのシールドを撃ち。

 ムラサメの射撃は、ウインダムのジェットストライカーへと命中した。



「ちいいぃっ!!」







 羽根から煙を上げて、ふらふらとウインダムが降下していく。

 ただ飛行し続けるのが不可能になったから、というわけでもないらしい。



「あいつ……施設を!!」

『追いましょう!!バルドフェルド隊長!!』



 マゼンタカラーの機体の狙いに気付いたバルドフェルドは、

 同じように気付いたらしいレイの言葉に強く頷く。



「ああ、そのつもりだ!!……ミネルバ!!」

『は、はいっ!!』

「施設に突入する!!シンの収容が終わり次第、ニルギースとジェナスもよこしてくれ!!」

『了解です!!』



 もう、敵は施設に不時着しようというところだった。

 誘爆の危険性があるため、狙い撃つことはできない。



「いくぞっ!!」

『はっ!!』



 キラとフリーダムの激しい空戦を横目に、レイと共にウインダムを追う。

 モニターは、丁度機体から降りた敵パイロットの後姿を自動で拡大した。



「……ん?」



 その後ろ姿に、妙な既視感をバルドフェルドは覚えた。

 黒い連合の制服に、なにやら頭を覆っているヘルメット?らしきもの。

 そこからこぼれ出す長い金髪にも、見覚えなどあるはずもないのに。



 その後ろ姿の身のこなしに、なにか心当たりがあるような気がする、そんな不思議な気分だった。



「……フラガ?」



 口をついて出た言葉にはっとなり、慌てて頭を振る。

 何を言っているのだ、自分は。死んだ男の名を、敵兵に向かって呟くなど。



 通信機のチャンネルが、アークエンジェルのブリッジと直通になっていなかったことを確認し、安堵する。

 気のせいに決まっているのだ。

 現に、今自分は彼の代わりに彼女の側にいるのだから。



 ムラサメを着陸させ、拳銃を確認しながら、バルドフェルドは自分の感傷を愚かしく思った。







『……それではシャトル207便、ポートタルキウスに向け降下します』

「おう、気をつけてな」



 仏頂面で一言も発さない上官に代わり、ディアッカは地球に降りていくシャトルの乗員たちを労い、通信を切った。



「そう、不機嫌になるなよ。イザーク」

「これがならずにおれるか!!こんな大事な時期に、シャトル一機のために護衛など!!」

「仕方ないだろォ、積荷が積荷なんだし。アーモリーワンの一件だってある」



 上官にして親友の怒鳴りつける声をなだめすかし、やれやれとディアッカは溜息をつく。



「それとも何?シホちゃんが地球に降りてっちゃったまんまで、寂しいわけ?」

「ああ?何を言っている?大体だな、いつもいつもアスランのところにばかり議長は補給を……」

「お前だってグフまわしてもらっただろうが……」



 まったく、冗談も通じない。

 そりゃ、長い付き合いだからわかりきっていることではあるが。



「ま、大丈夫だって。アスランやキラたちなら、アレを腐らせることもないだろ」

「そういう問題じゃない!!」

「はいはい」



 そういえば、ポートタルキウス……マルマラ海のアークエンジェルにはミリアリアも乗っているのだろうか?

 イザークの喚きを聞き流しつつ、ディアッカは一人の少女のことを思う。

 振られておきながら、自分も未練がましい男だな、と笑いながら。



「笑うなっ!!大体お前は副官として隊長への……」



 自由の翼が、再び彼らの力とならんことを。



「聞いてるのかっ!!」



 オペレーターの女性隊員が噴き出しそうになっているのに気付き、ようやくディアッカはイザークのほうへと向き直った。


 
 

】【戻る】【