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アム種_134_094話

Last-modified: 2017-07-30 (日) 11:14:06

アム種 第九十四話 ラン・ビギニング

アムエネルギー。そしてそれをより完全な形で発現させた、ゼアムという技術。
即ちゼアムとはアムエネルギー本来の力。

ゼアムによって、自分たちはこの世界にやってきた。──おそらくは。いや、そうとしか考えられない。

「俺は……ゼアムに踊らされてるのか?」

耳に残るのは、消失していきながらも嘲笑を置いていったディグラーズの声。
あれもすべて、アムエネルギーによるものならば。

アムエネルギー……ゼアムとは一体、なんなのだ。
自分は、どうすればいい。ジェナスは闇の中、一人思案する。
数え切れぬほど、考えが浮かんでは漆黒の中に消えていく。
一体何時間、そうしていたことだろう。
ずっと、ずっと。同じポーズでひとつのことに思考を傾け続ける。

「……俺は」

そして出た結論は、たったひとつだけ。

──行くのだ。全てを知る人間のもとに。

「……」

ジェナスは立ち上がり、閉じこもっていた部屋の扉を開いた。

「ガン・ザルディ」

全てを、知る者。
その可能性をもつ、唯一の存在。
それは今まで単にジェナスにとって止めねばならぬ相手、野望を阻止せねばならぬ相手でしかなかった。

だが、奴ならば知っている。
最初のアムドライバーであるあの男ならば、あるいは。
ゼアムを強烈に欲していたが故。

聞きに行くのだ、あの男に。
アムエネルギー。ゼアムとはなんなのか、抽象ではなく具体的な答えを聞き出しに。

部屋を出たジェナスの耳に、ブリーフィングの召集をかけるミリアリアの声が響いてきた。
それに従うように、自然ジェナスの足も皆の待つブリーフィングルームへと向いた。

 ****

MBF−02。その機体は、ストライクルージュと呼ばれていた。

「これ……カガリが?」

代表首長、カガリ・ユラ・アスハの愛機──とはいっても、政務に専念している彼女が実際に乗って動かすことなどこの二年で皆無であったが。
オーブ軍の象徴として、その色、姿は全軍に知られている。

「ああ。もうとっくに型落ちだし、PS装甲も外されて完全に式典用になってるけど。好きなように使ってくれてかまわないから持っていけってさ」

オーブ軍にとっては代表首長の愛機。
そうでなくともストライクルージュはあのヤキン・ドゥーエの戦いを戦い抜いた機体だ。
その機体がアークエンジェルの格納庫に座している。──決戦艦隊とともにあるということは、即ち。

彼女が彼らに、全てを委ねたということ。彼女の意志が彼らと共にあるということだ。
大義と信任。その二つはなによりも兵たちの士気を強固なものとする。

PS装甲でなく発泡金属の桜色は、カガリから艦隊の兵たち全てに向けられた期待が込められた、メッセージそのものということだ。

地上に残った彼女たちの思いが、キラとサイの見下ろす機体に託されているのだ。

「フン。気に入らんな」
「イザ……ジュール艦長」
「色が違っても……俺はストライクタイプの機体はどうも気に入らん」

大して不機嫌でもなさそうな様子で、イザークが隣りに立っていた。

「時間だ。パイロットはブリーフィングルームに集合。クサナギのほうでもそろそろ始まる頃合だ、戻れ」

 ****

「まずは、確保せねばならんポイントが三つ。レクイエムと呼ばれる月面の巨大砲、相手の守りの要であるメサイア。そして──プラント本国、アプリリウス」

シンの横で、ジェナスは真剣にイザークの説明を聞いていた。
ほんのつい先ほどまで、部屋に閉じこもっていた人間とは思えないほど、表情を引き締めて。

「……もう、いいのか?」

つい、脇を小突いて小声で問いかける。

「ああ。もう大丈夫だ」

直後、アスランの咳払いに背筋を正す。
片目を閉じて、私語を慎めと睨みつけてくるその視線が怖い。

「特にアプリリウスには“クレイモア”と呼ばれ、アムエネルギーに反応して爆発する物質を利用した起爆装置が多数、設置されていると考えられる」
「つまりは、プラントそのものが人質と同じ。ここを押さえなければ我々は身動きがとれない」

プラントを盾にされてしまえば、こちらはうかつに攻撃できなくなる。

「そこで、だ。まずオーブ軍の一部をプラントに直接差し向ける」

スクリーン上のマップに、オーブ軍を表しているであろうポインタがいくつか表示され、プラントの位置まで矢印が伸びる。
完全に表示されきるまで、イザークは言葉を切って待っていた。

「ただし、これはあくまで陽動。本命は──ジェナス。それにニルギース」
「はい」
「ん……」

更に二つの光点が現れ、同時にアスランが二人へと向く。

「オーブ軍が陽動をかける間に、二人にはプラントに潜入してもらう。そしてジェナスのスーツの能力で、起爆装置を無効化してくれ」

突入にはブレイズウィザードを改造したガス推進装置に、バイザーごと搭載して。
ジェナスが突入の肝であり、ニルギースはその護衛役というわけだ。

「無効化って、そんなことできるのか?」

だが、それにしてもさも当然のように言う。
アスランたちは何か聞いているのだろうかと、シンはジェナスに問うた。
ジェナスもまた、問題ないとばかりに頷いた。

「ゼアムジャケットは……出力次第で周囲のアムエネルギーを吸収・無効化できる。アムエネルギーに反応して起爆するクレイモアなら、それで無効化できるはずだ」
「ふうん。すごいな」
「クレイモアの無効化確認後、残りの部隊も行動を開始する」

画面上の光点と矢印とが、一挙に増えていく。

それぞれ、月面とそこから少しはなれた、メサイヤとに主に二箇所に分かれて。

「エターナルを旗艦とした部隊は、メサイヤに向かう。アークエンジェルとミネルバはレクイエム攻略部隊のほうにまわってもらう」
「MS隊の指揮はシン。お前がとれ」
「は、はいっ!!……え?」

突然名前を呼ばれ、シンは慌てて返事をした。
が、すぐにその違和感に気付く。

何故、自分なのだ?アスランや、キラは?
彼らも所属はアークエンジェルだから、こちら側ではないのか?

彼の疑問は、とうに二人には予想済みのことだったのであろう。
キラも、アスランも。
交互に顔を見比べられて、口元に笑みを浮かべる。

「俺とキラはエターナル組だ。ミーティアの訓練済みなのは俺たちだけだからな、少数精鋭で一気に制圧する」
「戦力的に温存していられる状況でもないし。レクイエムのほうは任せるよ、シン。ルナマリア、レイ」
「セラやラグナたちもな」

小競り合いや、ちょっとした戦闘ならともかく。
決戦ともいうべきこの戦いに、頼るべき上官たちがいない。

任せたぞなんて笑いかけられても、それはプレッシャーそのものだった。

「そんな!!俺じゃ!!」
「頼むわよー、リーダー」
「ルナっ!?」

けれど、仲間たちは。

「俺に依存はないぞ、しっかりやってくれるならな」
「レイまで!!」

そんな彼を信じていた。

「シン。指揮ならもう何度かやってるだろう。そう緊張するな」
「ですけど……っ」
「大丈夫だ。俺たちが保障する」
 
なにも、無理なことをやれと言っているんじゃない。
お前ならやれると思った、だから任せるんだ。
もう既にシンも、立派なエースのひとりなのだから。
キラやアスラン、イザークが口々に言う言葉に戸惑い、シンは狼狽し。

「不安なら持って行け、俺からの保証書代わりだ」

アスランから突き出された“フェイス”の徽章を、ぼんやりと受け取る。
そしてそれをしばらく見つめ、黙りこくったあとで──……。
 
もう一度その場一同をぐるりと見回して、ことごとくに向けられる、しっかりやれという視線に気付かされ。

一度閉じた目をしっかりと開き、ようやくシンは、頷いた。

 
 

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