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クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第067話

Last-modified: 2016-02-20 (土) 02:16:36

第六十七話 『君は不要なのだ』

 
 
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初老の男がかすかに不快そうな顔をしている。まさか自分が出てくるとは思わなかったのだろう

「なぜここにいる、ユウナ・ロマ?」
「世捨て人になるには、あなたはあまりに大きな名前を持っているのですよブルーノ・アズラエル」

月のアルザッヘル基地でユウナが聞けたのは、ロゴス幹部の一人、ブルーノ・アズラエルの生存と所在だった
アイスランドのヘブンズベース戦でロゴスは、
ロード・ジブリール以外のメンバーが捕えられるか殺されるかしていたが、ブルーノは生きていたらしい

「フン……。大西洋連邦の人間が漏らしたのか」
「そう怖い顔をしないでください、ブルーノ・アズラエル
  僕と面会してくれたということは、まったく歓迎していないということでもないのでしょう?」

ブルーノが住んでいたのはプラント首都アプリリウスにある高級マンションだった
周囲にはガードフェンスが張られ、ガードマンが常駐しているようなマンションである
ユウナはどうにかして侵入できないかと思ったが、ジャミルに止められた
堂々と名乗って入った方がいいというのである。ユウナはそれはどうかと思ったが、ブルーノはあっさりと面会してくれた

「アズラエル財閥の総帥ともあろうお方が、プラントで暮らしているとは思いませんでしたよ」

ユウナの言葉には意味がある。ブルーノの息子、ムルタ・アズラエルは反コーディネイター団体ブルーコスモスの盟主として、
みずから前線に立ち、そして戦死したほどのアンチコーディネイターだった
アズラエル財閥もブルーコスモスのスポンサー的な立場にある
そういう関係にあるブルーノ・アズラエルが、なぜコーディネイターの本拠地に身を隠しているのか

案内された高級マンションの中は、意外にシンプルであり、元からあったような家具しか残っていない
前世紀の詩集が収められた書斎だけが、ブルーノの趣味をうかがわせた
使用人もいないようだ

「だからこそだ。私がよもや、プラントにいるとは誰も思うまいよ」

来客室のソファに身を沈めて、ブルーノは吐き捨てる。自分の境遇に腹を立てている様子でもあった
ユウナの隣ではジャミルが、重々しい沈黙の中にいる。ブルーノは、ジャミルをユウナの警護としか考えていないようだ

「もう地球には戻られないおつもりですか、アズラエル?」
「少なくともほとぼりが冷めるまではな。だが、いつかは戻るつもりだ。私は宇宙で死にたくないのでね」
「差し出がましいことだが、お聞きしたいことがある」

いきなり、ジャミルが口を開いた。無礼な、という感じでアズラエルがジャミルを見据える

「ジャミルとか言ったか。君はサングラスをかけたまま発言するのかね?」
「……失礼」

ジャミルはサングラスを取った。思わずユウナははっとする。ジャミルは左目に大きな傷があったのだ
失明はしていないようだが、サングラスはそれを隠すためのものだったのだろう

「……サングラスをかけたまえ。そういうことならば、やむをえまい」
「ご配慮ありがとうございます。では、質問の続きですが、レクイエムとはなんなのですか?」
「どこでそれを聞いた?」

ブルーノが顔をしかめた。

「大統領からです」
「……レクイエムか。完成したのかな。ならばここから逃げ出すことも考えねばならんか」
「完成?」
「レクイエムとは、月面ダイダロス基地にある大量破壊兵器だ。
  ジブリールが対コーディネイター戦争用の切り札として月面に配置したものだな
  月面に配置しているが、偏向基の存在により、地球にもプラントにも月にも照準を向けることができる
  言わば、巨大な誘導ビーム砲だ」
「なに……!」

ジャミルの顔色が変わった。ユウナも生唾を飲み込む。ブルーノの言葉が真実なら、
途方もない兵器であり、まさに戦局を一変しかねないものだ
それこそ、プラントを跡形もなく破壊することさえ可能である

ユウナはあわてて口を開いた

「プラントはこのことを知っているのですか、アズラエル?」
「さてな。私も、レクイエムは計画だけでしか知らん。本当に完成したかどうかもあやふやな兵器だ」
「クッ……。とにかくザフトにこのことを知らせないと……」
「ザフトが、レクイエムの実在を信じるのかね? 私ですら完成したかどうか知らないのだよ?
  それに彼らは、ラクスのことで頭が一杯だろう。兵器とは、使われて初めて、その存在を認められるものだ」
「ならば、我々が破壊しましょう」

ジャミルが言う。力強い言葉だった。ユウナはジャミルを見た

「できるのか、ジャミル?」
「ダブルエックスがあります、代表。奇襲をかければなんとか」
「ヤタガラス一隻での戦いになるか。厳しいね。しかも勝ったところで得るものがない
「いえ、正義を示せます」

正義を示す。確かにそうだった。今のユウナに一番足りないものは、民衆からの支持である
今回のことでヤタガラスを動かせば、オーブやプラントの民衆がユウナを見る目を変えるかもしれない

「オーブをあきらめていないのかね、ユウナ・ロマ」
「僕はアスハですから、アズラエル」
「やめておけ。ラクス・クラインに勝てるわけがない。あれは正しく化け物だよ
  ナチュラルがどうあがいても勝てる存在ではない。少々、正しいことをしたからと言って、君はラクスを越えられぬよ」
「ムルタ・アズラエルを亡くしたがゆえのお言葉ですか?」

ブルーノの息子、ムルタ・アズラエルを前大戦で殺したのはアークエンジェルである
ならば、ラクスがムルタを殺したとも言える。ユウナはそのことを言ったのだ

「息子の事とは別だ。世の中にはどうしてもかなわぬこと、どうしようもないことがあるのだよ
  この年になれば、それがぼんやりと見えてくる」
「オーブ奪還を諦めろと? ラクスのやるがままに任せろと?」
「わからんのかね。ラクスに敵対した者は、その瞬間、悪に変わるのだ
  彼女はそれほど恐ろしい力を持っている。君はせっかく生き延びたのだ。命を大事にしたまえ」
「ご忠告ありがとうございます。しかし歩みは止められないのですよ
  僕のために死んだ人がいますから」
「よせ。使命感を振りかざすな。ラクスはそういう想いさえも、やすやすと消してしまう力を持っている」

「お言葉ですが」また、ジャミルが口を開いた「力があるから。それは大した問題ではありません」
「なんだ……?」
「力は無限ではありません。限りがあります。そんな当たり前のことを知らず、
  力を使い続ければ、結局は力に裏切られます」
「……理屈だな。理屈でラクスに勝てれば、苦労はせん。理屈が通じぬ存在だからこそ、ラクスは強いのだ」
「確かに。しかし、ラクス・クラインに危うさがあるのもまた事実です」
「もういい。老人をはげましても、どうにもなるまい」

言って、ブルーノは首を振った。老人と言ったが、それほどの年ではないはずである
しかし彼からは気力が欠けているようにユウナは見えた

「表舞台から姿を消すおつもりですか、アズラエル?」
「そうだ、ユウナ・ロマ。私に望みは無い。ただ静かに暮らすことだけが、望みといえば望みだが」
「アズラエル財閥はどうなさるのですか?」
「解体されるだろう、表向きはな。だが実質的な資産、施設、人材などは我が縁戚の者が引き継ぐ
  商人とはしぶといのだよ。私一人が消えたところで、そうたやすくすべてが終わりはせん
  私は莫大な資産を連れて、隠居するだけだ」
「なんの望みも無いのですか?」
「ユウナ・ロマ。回りくどいぞ、言いたいことがあるのなら、早く言え
  おまえは老人の隠居話を聞きにわざわざここまで来たのではあるまい」

ユウナは苦笑した。見透かされていたようだ
大西洋連邦でブルーノの生存を聞かされたとき、思い浮かんだことがあるのだ

「失礼しました、ブルーノ・アズラエル。単刀直入に言いますよ、お金を貸してください」
「金を?」
「そうです。セイランの資産はかなりのものですが、それでもオーブ奪還を行うためには足りないのですよ
  それに他にもいろいろと物入りでして」
「返す当てはあるのか?」
「オーブを取り戻したのならば」
「馬鹿を言え。仮にオーブを取り戻せても、戦後のオーブ財政は悲惨なものだろう
  私が生きているうちに返せるとは思えん。それに加えて、ラクスに勝てるわけが無い」
「なぜ、それほどラクスを恐れるのですか? こう言ってはなんですが、ブルーコスモスと深いつながりのあるあなたが、
  ラクスの排斥を考えずただ恐れるのは理解できません」
「私をジブリールの馬鹿と一緒にするな。ラクスをより理解しているだけだ。おまえも馬鹿だ、ユウナ・ロマ」
「しかし。戦う馬鹿と戦わぬ賢者。どちらが尊いのでしょうか」
「決まっている。勝者だよ」
「では私が勝者に近づけば、融資を考えていただけますでしょうか」
「できるものなら、な」
「その返事だけで十分です」

ユウナはうなずいた。対ラクスで勝算がないわけではない
本物、という切り札がある。もしも偽者のペテンが証明されれば、ラクスはオーブを占領する意味を失い、
大義はこちらにやってくるのだ
ただ怖いのは、彼女の理不尽とも言える魅力だろう。これがある限り、どう転ぶかはわからない

アスランに連絡を取らねばならないだろう。レクイエムの攻略を考えてみる
もしも本物が姿を見せる舞台があるとすれば、ここにある
ジブリールの思惑はともかく、こちらもその存在を十分に利用させてもらおうと思った
なにしろジブリールは、今や世界の敵である
それを討つだけで、ユウナ・ロマの名は上がるのだ
それにレクイエムを撃たせるわけにもいかなかった

そんなことを考える。なぜか、外が騒がしいと思った

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思わずガロードは、ぽかんとなった。見上げたものは巨大な化石のレプリカである

「えっと……なになに? 『エヴィデンス01』。通称、『はねクジラ』
  木星で初代コーディネイター、ジョージ・グレンが発見した地球外生命体の化石である
  一説によると極めて高い知能を持っているとも……うお、すげぇ
  この世界ってエイリアンがいるのかよ」

説明文に目を通しながら、ガロードは感嘆した
ここは首都アプリリウス、プラント最高評議会の議事堂前である
戦時中であるためか訪れる人は少なく、警備兵が多い
ガロードは目前にある巨大な化石をじっと見つめた。クジラというだけあって、かなり大きい
しかし異様なのは、それに羽根らしきものがついていることだ
その羽根が本当に自前のものなら、このクジラが地球の外で発見されたというのもうなずける

議事堂前で腕を組む。そんな時だ。携帯からコールがかかってくる

「もしもし?」
『ガロードか?』
「どうしたんだよ、シン。なにかあったのか?」
『ラクスがいたんだ』
「ラクスが?」
『ああ。多分、アプリリウスの議会を乗っ取るつもりだと思う』
「議会・……。って、ここのことか」
『おい、おまえまさか議事堂前にいるのか?』
「おう、そうだぜ。うん?」

不意にガロードは音を聞いた。プラント、人工の空を見上げる
影が二機、接近してくる。思わずガロードは大きく目を見開いた

接近する機影は、見覚えのあるものだ。一つはフリーダム、もう一つはガンダムヴァサーゴCB
警備兵が血相を変えて通信を送っている

『ガロード、どうした?』
「来やがった……」
『え?』
「シン、急げッ! 代表とジャミルを回収するんだよッ! あいつら、またやる気だ!」
『ラクスか!?』
「ラクスがどうかは知らねぇけど、フリーダムとヴァサーゴだよ!」
『二機だけ? それだけか・・・・当たり前だ。戦局はザフト優勢、なら奇襲だけしかできない
  クーデター、議会掌握・・・・。いや、待て。俺ですら予想できたことだ
  こと軍事に関して、偽者は・・・・なら・・・・だがラクスがそれで、いや、まだ・・・・』

急にシンがぶつぶつとつぶやき始める。そうしているうちに、ヴァサーゴとフリーダムが議事堂前に降り立った

「おい、とりあえず切るぞ!」
『わかった。おまえはいったん、輸送船のとこまで戻ってくれ』
「おう!」
携帯を切ると、ガロードは走り、急いでその場から離れようとする。その時だった

議事堂へ、民衆が押し寄せてくる。熱狂である。彼らは口々になにかを叫び、訴えている
なにを訴えているのか。ガロードにはわからない。だが、不吉な予感がした
これ以上ここにいれば、とんでもないことになる
厳しい環境を潜り抜けてきたガロードの直感が、ここから離れろと叫んでいた

ガロードは走り、逃げ出した

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どこへ行っていたのか
ラクスがいきなり顔色を悪くして倒れたので、あわててムウは医者を呼びに行った
シャギアを残していたが、ラクスの頭を冷やそうとジュースを買いに行き、目を離した瞬間、いなくなっていたのだ
少ししてからラクスは見つかったが、ちょっとだけ様子がおかしいような気がした

「ラクス、大丈夫なのか。まだ体の方、きついんじゃないか?」

ムウが聞いてみるが、ラクスは首を振った

「大丈夫ですわ」
「まぁ、顔色はよくなっているな」
「……ムウさん。シン・アスカという人をご存知でしょうか?」
「は?」

思いがけぬ名前を告げられ、ムウはかすかに狼狽した
隣でシャギアが、憮然とした表情をしている

「シン・アスカは、ザフトのエースだ、ラクス。何度も我々の前に立ちふさがった、アカツキのパイロットだな
  最近なら、キラのストライクフリーダムを追い詰めている。強敵だな」
「そうでしたの……」
「それがどうかしたか?」
「いえ……なんでもありませんわ」

ラクスは微笑み、シャギアに笑いかけた
その様子を見て、ムウは呼んできた医者に帰るように告げる。体は大丈夫だろう

それからしばらく、三人はアプリリウス中央公園で待った

徐々に、徐々にであるが、公園に人影が増えてくる
ある者はサラリーマンであったり、ある者は軍人であったり、ある者はパン屋であったりする
それらすべてがさりげない感じで、公園に集まってくる
全員が、クライン派だ。正確に言えばラクスの支持者たちである

やがて彼らは公園を埋め尽くすほど集まった。ラクスはベンチの上に立ち上がり、周囲を見回す
それから帽子を取り、サングラスを外し、髪を下ろした

公園にどよめきが広がる。ムウは熱のようなものを感じた
彼らはラクス・クラインを待ち望んでいたのだ

「わたくしは、ラクス・クラインです」

ラクスが言う。穏やかだが、強い声。そしてよく通る声。群集はしん、とラクスの声に耳をすませていた

「夢を見る。未来を望む。それは全ての命に与えられた生きていくための力です
  なにを得ようと夢と未来を封じられてしまったら、わたくし達はすでに滅びたものとしてただ存在することしかできません
  議長の提唱したデスティニープランは、人々の未来を奪うものです。それを許してはなりません
  それゆえわたくしは、ラクス・クラインとしてプラントに帰ってきました
  全ての命は未来を得るために戦うものです。共に戦いましょう、自由のため。そのためならば、戦っても良いのです」

ラクスの声。しんと静まっていた群衆。ラクスは右手を高々と掲げ、視線の先にそびえ立つ最高評議会議事堂を指差す

「皆さん、参りましょう。これは武器持たぬ戦いです。それゆえなによりも尊き戦いです
  皆さんの手で、世界の未来を築くのです。人々の夢を奪う計画を、許してはなりません!」

厳然と告げる。群衆からどよめきがあがり、やがて一人一人が叫び声をあげ始める
熱狂は伝染し、ラクスに唱和する。熱がムウを包む。ムウも叫び声をあげそうになった

瞬間、シャギアがムウの肘を突く

「我々はMSを取ってくるぞ。ヴァサーゴとフリーダムで議事堂を制圧する」
「わかった」

ラクスは民意を得た。次は議事堂を武力で制圧しなければならない
幸い、プラント内部でMS戦をすることにはならないだろう。ならば、議事堂に早く着けば制圧が完了する

ラクスが民衆の先頭に立ち、胸を張って歩き出す。人々が声をあげ、それに続いていく
それはどんどん膨れ上がり、人はさらに集まっていく

「ラクスだ!」
「ラクス様だ!」
「ラクス様が帰ってきた!」

プラントの人々が彼女の帰還に歓声をあげる。さらに群集がふくれ上がる
すぐにムウは走り出し、近くに止めてあった大型トレーラーの中に隠してあったフリーダムへと乗り込む
シャギアも同じようにヴァサーゴへと乗り込んでいく

「デスティニープラン導入反対!」
「プラント議長にはラクス様こそがふさわしい!」
「武器を持たぬ戦いを! 平和のために! デュランダル議長の解任を要求する!」

フリーダムとヴァサーゴが、群集の上を飛ぶ。歓声があがる
そういえば、フリーダムは英雄の機体である。ムウはそのことを思い出した
やがて国会議事堂が見えてくる。警備兵たちはあわてふためき、右往左往していた
そこへ、群集を連れたラクスが堂々と歩いていく

フリーダムとヴァサーゴが議事堂前に降り立つ
警備兵たちが銃を構えていたが、そんなものでMSを止められるはずがない
それにラクスはともかく、プラントの民衆を撃つことはできはしないだろう

だがムウは嫌に議事堂が静かだと思った。シャギアに通信を入れる

「おい、プラントのクライン派議員がラクスを出迎えるんじゃなかったのか?」
『そのはずだが……妙だな。静かすぎる』

瞬間、議事堂の横、地下駐車場からのっそりと『なにか』が出てきた
思わずムウは息を呑んだ。出てきたのは、二機のMSである

「レジェンド……サザビーネグザス……」

同時に議事堂、正面の扉が開き、ザフト軍人たちが銃を構えて現れた
その中央で、長髪の男が一歩、二歩と前へと進み出る
ギルバート・デュランダルだ。彼は狼狽する様子もなく、余裕の笑みを浮かべていた
それに威圧されたのか民衆の歩みが止まる。ラクスも足を止めていた

「ラクス・クライン。聞こえるかね?」

拡声器を使っているのだろう。デュランダルの声はMS越しにもよく響く

「デュランダル議長。わたくしはあなたの排斥を求めます
  人には未来が、自由が必要です。デスティニープランなど、導入してはならないのです」
「人々には安全な明日こそが必要なのだ。自由も、夢も、結局は命があってこそのものなのだよ
  あいにくだが、それがわからぬ君に世界を任せるわけにはいかないのでね
  では問おうか。君はこの世界からどうやって戦争を無くすのかね?」
「あなたのような人間を許すべきではないのです、わたくしたちは
  だからわたくしはシーゲル・クラインの娘としてやってきました。道をお開けなさい!」
「フッ。平和のすべもなく、ただ正義を振りかざすのだね、君は
  ちなみに君が頼りにしていたのは、彼らかね?」

デュランダルがザフト兵に目配せをすると、議事堂から拘束された議員たちが出てきた
ザフト兵が一人一人、その議員たちをデュランダルの前に並べていく
ムウはフリーダムの中で歯噛みした。拘束されているのはクライン派の議員たちである
先手を打たれていたようだ

「議長! おやめなさい、彼らを放してください」
「プラントの平和を乱し、法を破る者を許すほど、私は愚かではないのだよ
  ラクス・クライン。君は極めて有能だ。恐ろしいほどにな
  だが、君の存在そのものが平和を乱し、破滅を生む」
「違いますわ。平和を乱しているのはあなたです
  身勝手な正義を振りかざし、多くの人の命と未来を奪う。そのようなことを、許しておくわけにはいきません」
「ラクス。茶番はそこまでにしてもらおうか
  新しい平和な世界に、君は不要なのだ。ザフト兵、犯罪者を逮捕せよ」

デュランダルが号令すると、ザフト兵たちが群集へ殺到する
さすがに民衆を撃つような真似はしていない
すぐさまムウはラクスの方へフリーダムを動かし、その手へ彼女を乗せる

「逃げるぞ、ラクス!」

ムウは叫んだ。瞬間、頭をざらっとした感触が襲う
なにかと思って、議事堂前を見た。デュランダルが、サザビーに乗り込もうとし、レジェンドがこちらにやってきていた