Top > クロスSEED第02話
HTML convert time to 0.003 sec.


クロスSEED第02話

Last-modified: 2007-11-09 (金) 23:14:34

第二話「亡霊」

「ザフトとどこかのMSが戦闘?このオーブの近くで!?」
 士官からの伝令を聞いた青年の言葉に、会議室は沈黙した。
 そして一拍間を置いて、それがどよめきに変わる。
「連合からの圧力か?」「いや、或いはザフトに対オーブ宣戦布告させたいテロリストによる攪乱ではないか」「ならばザフトの自作自演の線も」
 混沌の波はあっという間に広がり、会議室は言葉の無法地帯と化した。
 と。
「皆様、静粛に!」 崩壊した規律を一喝する声。その主に、視線が集中する。
 視線の先にいるのは、随分と髪の薄くなった中年の男。
 ウナト・エマ・セイラン。
 オーブを束ねる五大氏族の一つ、セイラン家の当主にしてこの会議の事実上の長である。
「さて」
 ウナトはもったいぶるように立ち上がり、
「ザフトの艦と戦闘していたMSはどこの所属なのか。それがわかるような要素は無いのか?」
 己の顎を撫でながら問うウナトに、士官は告げた。
「一機は不明です。もう一機は最初期のGAT-Xシリーズの……」
 その言葉に、再び会議室はどよめいた。
 最初期GAT-Xシリーズ。かつてオーブが協力し、連合が作りあげ、ザフトが強奪したMSたち。
 言葉を変えれば、どの陣営が使用していてもおかしくない機体である。
「ふむ」
 ざわめく出席者と、うろたえる青年、息子であるユウナを後目に、ウナトはしばし熟考に入った。

「敵対心剥き出しでの歓迎、ご苦労様ね」
「所詮オーブなんてこんなもんだよ」
 嫌みをこめるルナマリアに、吐き捨てるようにシンが答える。
 オーブ首長・カガリ・ユラ・アスハを乗せたザフト艦・ミネルバがオーブに入港したのは、あの襲撃の翌日である。
 ミネルバクルーであるシンやルナマリアが艦の外に出ようとすると、まるで敵を見るかのような視線を浴びせられた。
「仕方ないと言えば仕方ないかもしれないけどね。昨日の襲撃、ザフトの自作自演って話もあるらしいし」
「……は?」
 ため息をつきながら言うルナマリアに、シンは信じられぬものを見たかのような視線を向ける。
「だって、ドクロが額に乗ってるMSはインパルスや頭部がガイア、アビス、カオスによく似てるし、もう一つは前大戦でザフトが使ってたイージスMA形態にミラージュコロイドを装備したようなMAだったし」
 先日の襲撃の際、ミネルバは完全な奇襲をかけられた。
 黒いMSにはその機動力で。赤いMAにはレーダーに映らぬ特殊兵装・ミラージュコロイドで。
 確かにMA側は、前大戦でザフトが使用した可変MS・イージスに、同じくザフトが運用していたブリッツの特徴を掛け合わせたような機体であった。
「でも」
 険しい表情で、シンが一人ごちる。
 確かに、イージスとブリッツはザフトが運用していた。
 だが、元は連合とオーブの共同開発で作られた機体である。ザフトはそれを強奪して運用しただけなのだ。
「作るだけなら連合だってオーブだって」
 苦虫を噛み潰したような表情で、シンは呟いた。

 薄暗い倉庫に、二つの影。
 僅かな月の光に照らされ、影の一つは隻眼の男だとわかる。
 その光景をキンケドゥ・ナウが見たなら、貴族主義の亡霊と呼んだかもしれない。
 或いはキラ・ヤマトが見たなら、そのまま亡霊と呼んだだろう。
「ラクス・クライン。それがこの世界のカリスマか」
「そう、プラントの誇る平和の歌姫。ただし、それは表向きの顔。裏では戦力増強を欠かさない、腹黒い女さ」
「ふふふ。真にカリスマを持たぬ人間は不安なのだよ。いつ自分の寝首をかかれるかわからないからな。もっとも」
 隻眼の男がそう言って、
「もっとも、少々潔癖すぎるベラ様の戦力を作るにはちょうど良いが」
 にやりと笑った。
「"ベラ様"ね。ザビーネがそこまで言うカリスマなら、一度はお会いしたいものだよ」
 もう一つの影が、肩をすくめて答える。
「貴様も会えるさ。もっとも、貴様がベラ様に忠誠を誓うなら、だがな。そういうものだろう?トール・ケーニヒ」
 言って、隻眼の男、ザビーネ・シャルはくくくと笑った。
 闇の中で、トールの眼光だけが光っていた。