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ザ・グレイトバトルDESTINY_第1話

Last-modified: 2014-01-09 (木) 18:09:27

オーブが有する宇宙ステーション・アメノミハシラ―――
そこがシンとマユの目的地であった。彼らと自分と同じくオーブから離れる人間達は誰もが不安を抱いていた。
当然だ。誰だって今まで住んでいた国を突然離れる事を余儀なくされて、他の国へ渡る事を恐れない者なんていない。
自分もそうだ。自分の場合は父の遺言に従ってアメノミハシラへ行っているのだが。
尤もシンたちはサハク家の別荘にあったシャトル(Vガンダムに出てきたホワイトアークを思い浮かべてもらえれば幸いです。武器はないけど)を使っており、操縦はオートパイロットになっているが。
シャトルのコクピットにあった書類を手に今シンは情報を仕入れているのだが、当然マユに対する気遣いの方を優先していた。

 

「マユ、眠くないか?」
「………うん。大丈夫」
「お腹空いたのか? だったら何か食べるか?」
「………いらない」

 

シンの言葉に対してマユは力なく答える。そんな会話が続くシンとマユにロアが口を挟む。

 

『シン、もう少しでアメノミハシラだぞ』
(判ってる)

 

現にその様なアナウンスまで流れているのだ。説明されるまでもない。一方でシンはマユに向かって声を上げた。

 

「マユ、もう少しでアメノミハシラだってさ」
「そう………」

 

マユの反応はやはり薄い。シンはマユに向かって声を上げるがその殆どが意味を成さなかった。

 

『まもなくアメノミハシラです。まもなくアメノミハシラです』

 

そんな機械的なアナウンスが聞こえる。
それと同時に、シンの目の前を球体の物体が横切った。
頂点に大砲の様なものをつけた白い球体のボディに下の部分につけられた作業用アーム。モノアイが赤である事もあって西暦時代の書物にあった日の丸を思い浮かべた(ガンダムにあるボールを思い浮かべてもらえればいいです)。

 

「あれは………? 確かポッド………」

 

『ポッド』と言うのは、書類によるとMSが作られる以前に作ったオーブ製の宇宙作業用パワードアーマーだった。
アメノミハシラ建設に使われた他、M1が作られるまでオーブ宇宙軍の主力となったものだ。
連合製のミストラルだったら警戒したがポッドはオーブ製であり、アメノミハシラにいてもおかしくはない。
だが一応余計な混乱は避けたい。

 

「連絡入れておくか」

 

一応通信機を使ってシンはポッドに向かって声を上げた。手元にあるカンペを見ながらだが。

 

「アメノミハシラ軍所属の方ですか? 着陸許可をいただきたいんですが………」

 

しかし、返事は無言。シンは再び無線を使うしかない

 

「あの………?」
『待てシン!! 様子がおかしい!!』

 

ロアがそう言うとポッドは返事とばかりに大砲を放った。
更に追い討ちをかけるかのように通信が繋がった。

 

『アメノミハシラへ逃げようとするか!! オーブの理念を汚す者め!!』
「!!」

 

その物言いにシンとマユは身体を震わせる。更に数は一機だけではない。十機前後のポッドがシン達を囲んでいた。

 

『逃げようとしても無駄だぞ!!』
「クソッ!!」

 

シンは手元にあるスイッチを入れて操縦をマニュアルに変更したが、慣れないシャトルの操縦に悪戦苦闘する。
シンは以前、航空機に乗って敵を落とすシューティングゲームをやった事があったが勝手が違う。
しかし相手はナチュラルなのか、それとも操縦に慣れていないのか攻撃を外しまくる。
しかし状況が変わるわけでもない。

 

『落ちろ!! 理念の敵め!!』
『オーブの崇高なる理念の為に!!』
『理念を破ろうとする者に死を!!』

 

理念、理念、理念。
どいつもこいつも口を開けば理念ばかり。
その崇高な理念が何を生んだ? 何をもたらした?
オーブは連合に勝てない戦いを挑み、家や職に財産を失った者も居る。自分やマユの様に家族を喪った者だっている!!

 

「ふざけるな!! 理念を護る為に死ねって言うのかよ!!」
『理念を護ろうとしない者は殺されて当然なのだ!!』
『理念さえ残れば国は再建される!! それが何故判らない!!』
「!!」

 

誰かがそう言った瞬間、マユが項垂れる。どうやら彼らの狂気に耐え切れず気絶したようだ。

 

「マユ!!」

 

シンは叫ぶがマユはそれでも起きない。

 

「くそっ!! 何か方法は………」

 

マニュアルを流し読みしていたシンはある一文を見た時、即座に手元にあったブーストスイッチを勢いよく叩いた。

 

「行っけぇぇぇぇ!!」

 

さながらジェットコースターに乗った時以上の凄まじいGに吐きそうになるがシンは耐えるしかない。
あと少しでたどり着く。アメノミハシラまでたどり着くはずだ。
だが―――

 

「え!?」

 

突然動きが止まり、シンの身体が突如前のめりになる。
シンは再び動かそうとしたが、かろうじて前へ進む程度の速度しか出ない。
どうやら警告音が鳴り響いていることから、エンジントラブルでも起こったのだろう。予備が生きているだけでもよかったと思うべきか。
一方、ポッドはまだこちらにやって来る。諦めが悪い。

 

『理念の敵め、世界の敵め、我らの手で裁かれるがいい!!』
「くそっ!!」

 

シンが完全に慌てだしたそんな時、ロアが声をかける。

 

『シン、変身して戦うんだ』
「ロア、生身で戦えるのか? ココはオーブじゃないんだ、地球じゃないんだ!!」
『ロア・アーマーは気密性に優れている。水中でも宇宙でも行動に支障は無い』

 

ロアの声を聞くと、シンは目を瞬かせた。一瞬で最大の懸案事項が解決したのである。

 

「そう、なのか?」
『判ったのなら行くぞ、シン』
「………わかったよ!!」

 

そう言ってシンは射出口へ向かい、そこで両腕を上空で交差させる。

 

「バーナウ!! レッジー・バトー!!」

 

その瞬間、シンの身体に紅い光が纏わりつく。そして―――

 

「ファイター・ロア!!」

 

腕を引きおろした瞬間、シンの体は瞬く間に変化する。紅い鎧を身に纏い、青き髪を逆立たせた戦士となる。
そしてそこから一気に発進し、宇宙に飛び出した。

 

『賊のシャトルから人が!!』
『あまりの恐怖で狂ったのか!?』
『馬鹿が!! 一人出たからって勝てるとでも!!』

 

彼らは好き勝手言うが、シンは宇宙での行動に支障が無い事に驚いた。

 

「うわぁ………」

 

初めての宇宙遊泳にシンは感動すら覚えたが、直ぐに水を差すような声が響いた。

 

『シン、遊んでいる暇は無いぞ』
「わかってる!!」
『唱えろ。バーナウ、コスモ・スウィー』

 

新たなる詠唱にシンは声を荒げて叫ぶ。

 

『バーナウ!! コスモ・スウィー!!』

 

すると今まで泳いでいるだけだったシンの身体に異変が起こる。
まるで昔見た漫画の様に空を自由に飛べるかのような感覚を覚えたのだ。
コレなら宇宙を縦横無尽に駆け巡る事が出来る。

 

「はぁっ!!」

 

シンはそう叫ぶと宇宙を駆けてポッドの大砲を蹴り飛ばした。

 

『なにぃ!?』
「次!!」

 

続いてシンはもう一機のポッドに接近。大砲と頭頂部のジョイントを殴って壊した。
瞬く間にシンはポッドの大砲を壊していく。
そして―――

 

「コレで!! 最後だ!!」

 

蹴り飛ばして最後の大砲を壊す。コレでポッドの武器は格闘だけだ。
コレなら後は逃げるだけ―――
そう思ってシンが背後を向いた時、悪寒がシンの背中を走った。

 

『シン、敵はまだ残ってるぞ』
「なんだって!?」

 

その声と同時にポッドの背後から二機のM1がやって来た。
警告なしでビームライフルを放ち、シンは即座に飛びのいて避ける。
以前ファイター・ロアとして戦ったものの、前回と違って今回は場面が宇宙。
宇宙戦はあまり………というより今回が宇宙戦の初陣である。
そんな中―――

 

『オーブの理念を破ろうとする者に死を!!』
「!!」

 

一機のM1がビームライフルをシンに向ける。そして光がこちらに迫る―――
そんな時、一筋の紅い光がこちらに向かって来て、自分の代わりにビームの直撃を受けた。

 

「!?」
『あれは!!』

 

シンが呆然とし、ロアが驚愕の声を上げる。紅い光から現れたのは、一体のMSらしき存在だった。
装甲は直撃を受けたにもかかわらず無傷。
胸部には緑の色彩とBFの文字を持つ五角形の水晶、脚部や腕部は何処かファイター状態の自分を思わせる意匠だった。
頭部は………ロアの言う『ガンダム』よりも何処か人に近い。

 

『姿形が変わっても俺にはわかる………久し振りだな………カイザー』

 

ロアが何処か懐かしそうな声で言うと、シンは驚愕を浮かべる。

 

「ロア、お前、こいつを知ってるのか!?」
『シン、唱えるんだ。バーナウ・レッジー・バトー』

 

ロアは呑気にもそんな事を言う。しかし、今の自分にはコレに………カイザーに頼るしか手は無い。いつマユの乗るシャトルに狙いを変えられるかわかったものじゃない。

 

「上等だ!! バーナウ!! レッジーバトー!!」

 
 

『フュージョン・カイザー!!』

 
 

「フュゥゥゥゥゥゥゥジョン!! カイッ!! ザァァァァァァァァッ!!」

 
 

その叫びと同時にシンの身体も紅い光に包まれ、光が失せた時にはコクピットの中らしき場所にいた。

 

『シン、こいつを操るんだ』
「操る!? 一体どうやって!?」

 

シンがそう問いただそうとした瞬間、突然頭の中に何かが流れ込んできた。
操縦方法も、カイザーが持っている武器の名前も―――

 

「え!? 判る? こいつの武器も操縦も!?」
『シン、いけるな? くれぐれもOGエンジンの暴走だけは止めてくれ。今ですら10%がせいぜいなんだからな』
「オーバーゲートエンジン? 何かわからないけど判ったよ!! マユを護る為にやってやる!! ああ、やってやらぁ!!」

 

ヤケクソ気味に吼えるシン。そしてカイザーはM1と対峙した。

 
 

ザ・グレイトバトルDESTINY
第1話
出会い

 
 

シンはカイザーを操作し、背中にあったビームライフルのような物をM1に向ける。

 

「オーバービームライフル!!」

 

シンがそう叫ぶとビームライフルらしきものはM1を狙う。M1もまた、ビームライフルをカイザーに向けて放った。
M1のライフルはカイザーの右肩に当たったが大事には至らず。
一方、カイザーの放ったライフルはM1の左肩を射抜き、左肩を消滅させた。宇宙にはM1の左腕が虚しく漂う。

 

『なに!? オーブの理念を信じた我ら渾身の一撃だぞ!? なのに何故通じない!! 何故理念を抱く我らがこのような損害を受けるのだ!?』

 

敵はそう叫ぶ。しかし、ロアは冷静に状況を分析していた。

 

『カイザーの装甲は厚く、あのガンダムの装甲は脆い。コレではバルカンでも落とせるかも知れんな』

 

ロアが呑気にそう言う。まあ、M1の装甲自体が脆いのはシン自身も知っているが。
何せ生身の自分でも吹き飛ばせるくらいだし。

 

『こうなれば………コード・カミカゼ!!』

 

今度はもう一機のM1がビームサーベルを構えて突撃する。シンはそれを避けようとしたが、もう一機の………先程腕を吹き飛ばしたM1がそれを阻んだ。

 

「え!?」
『何!?』

 

シンとロアも今回のM1の行動に呆気に取られた。M1がカイザーに直撃する間際、声を上げて叫んだ。

 

『ハウメアの元で会いましょう一尉!! オーブの理念の為に!! ウズミ=ナラ=アスハ様、ばんざぁぁぁぁぁぁぁい!!』

 

その声を最後にカイザーはM1の攻撃―――特攻を受け、爆発した。コレには流石のカイザーもダメージを受けたようである。
シンは知らないが、オーブのMSや航空機には自爆機能がついているのである。それも連合製のそれに比べてかなり強力な奴が。
機密保持のためというのもあるが、最大の理由はこのような特攻を行うためだ。
事実オーブ戦で艦隊に対しての特攻作戦も提案されたが、それはコトー=サハクやウナト=エマ=セイランらによって却下させられた。

 

『三尉に続けぇぇぇぇぇぇ!!』
『おおおおおおおお!!!』

 

続けてポッドがこちらに向かってくる。そして直撃、爆発。

 

『理念の為に!!』
『アスハ家万歳!!』
『理念を汚すものに裁きあれ!!』

 

そんな声が響く。

 

『なんだ………特攻、だと!?』

 

まるで旧時代の戦争にあった捨て身の攻撃だ。塵も積もればなんとやら、カイザーも流石に無傷ではいられない。

 

『止めだ!! キェェェェェェェイ!!』

 

そんな声が響く。M1の特攻に対し、シンはとっさにビームライフルではなくバルカンを放った。
それしか手は無かった。バルカンはM1を射抜き、頭部や腕を吹き飛ばす。
今回はトダカたちの助けも無い。ならば自分で戦うしかなかった。

 

『まだだ………オーブの、理念を………』

 

そんな声が聞こえる。オーブの理念、理念。こいつらはそれしか言えないのか。
そんな中、M1は自分を無視してある方向へ向かっていた。
その方向を見た瞬間、シンは呆然となった。
その方向にはシャトルが―――マユがいたからだ。
あの戦いが始まって以降、シャトルは前へ、アメノミハシラへ向かっていた。
ココからの距離は離れている。今からだと間に合いそうに無い。

 

「や、やめろぉぉぉぉぉ!!」

 

シンが叫ぶ。その瞬間、シンの中で何かが弾けとんだ。
「俺………マユを護ったんだよな………」
『そうだ』
「………M1を、落としたんだよな………」
『そうだ』

 

シンが淡々と呟くが、ロアもまた淡々としか答えない。
そしてシンは、決定的な台詞を呟いた。

 

「………人を………殺したんだよな………」
『………そうだ』

 

今度のロアの返事は暫く間をおいた物だったが、それでも事実である事には変わりなかった。
その時シンは口元を押さえ、中身を吐き出した。そして一通り吐いた後で精神的な限界に達したのか今度こそ気絶した。

 
 

一方―――アメノミハシラ所属艦・イズモにて

 

「ロンド様、アメノミハシラからP00(プロトダブルゼロ)が突如起動、出撃したと報告がありました」
「P00が?」

 

P00と言うのは、アルフがオーブに亡命した際に持ち込んだカイザーにサハク家が着けたコードの事である。
とは言えヘリオポリスで作られた三機のアストレイとは関係なく(コードはアスハの眼を誤魔化すためにつけたもの)、大体今まで起動しようにもうんともすんとも言わなかった(戦闘記録だけは見ることが出来た)機体が勝手に動くと言う事態にロンドは小さく首をひねった。

 

「で、P00の居場所は?」
「アメノミハシラ付近です。周囲に故障したシャトルもあります、回収しますか?」
「ああ」

 

そう言ってロンドは部下達に回収を命じる。M1……… アスハの物と違い黒と赤で塗装された物(内一体は日輪を模したマークを右肩に描いていた)を使ってP00とシャトルを回収させた。
一方、ロンドは以前P00の起動実験に失敗した際アルフが言った言葉を思い出していた。

 

『カイザーの操者はロアに選ばれた者のみ』

 

その言葉が真実ならば―――

 

「P00……… カイザーに乗っているのはロアに選ばれた者、と言うわけか」
「ロンド様、回収が終わりました」
「ああ。私も行く」

 

そう言ってロンドもまた格納庫へと向かう。
するとP00とシャトルを回収する指揮に当たっていたM1のパイロットがこちらに向かってきた。

 

「ロンド様。シャトルに乗っていた者とP00に乗っていた者の救助を終了しました」
「そうか。アマテラスよ、二人は医務室へ連れて行け」
「はい」

 

そう言って女性―――アマテラスは主であるロンドに礼をして救護班を率いてこの場を後にする。

 

「思わぬ拾い物だな………後でギナやツクヨミにも見せよう」

 

今はザフト掃討任務に当たっている自分の弟とアマテラスの姉に向かってそんな声を上げた。

 
 

人殺し、人殺し………。お前はオーブの理念を汚す人殺しだ………。

 

シンは夢の中でそんな事を言われた。
光が差さない闇の中、シンはオーブのパイロットスーツ(と言ってもシンには判っていない)を着た骸骨がシンに白骨となった手を伸ばす。
シンは逃げようにも足元は血の海で滑りやすく、シンも何度も転んで身体を血に染め上げる。
起き上がろうと手を地面につけたとき、シンは思わず眼を見開いた。
自分の目の前には―――

 
 

クビダケニナリ、ソレダケデハアキタラズ、カオノミギハンブンマデモクダケチッタ、ハハガイタ―――
ゼンシンヲウチヌカレ、ジョウハンシントカハンシンガアリエナイカクドデマガッテイル、チチガイタ―――
ヒダリウデガヒキチギラレ、セイキヲヤドシテイナイウツロナメヲシタ、イモウトガイタ―――

 
 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

シンが叫ぶと、不意に世界は変わる。
そこは見知らぬ部屋であり、カイザーのコクピットではない。誰が運んだのか知らないが、今シンはベッドの上で横になっていた。
思わず手を見ると、そこには肌色の自分の手しかない。
赤い液体は微塵も付着していなかった。
シンはそれを見ると盛大な息を吐く。
それは安堵の息ではないことはシンですら気付いていなかったが。

 

「そうだ!! マユは………」

 

自分が寝ていた場所から降りる。しかし、どうも身体の調子が悪く、思わず前のめりに―――

 

ボフッ

 

そんな音が聞こえた。
まるでエアバッグに頭から突っ込んだような感覚。もしくは高級ホテルのベッドに身体を沈めたような感触。
要するに何かやわらかいものがシンの頭部を直撃したのだ。
更にそのせいもあってバランスを崩す。

 

「うわっ!!」
「きゃっ!!」

 

シンが再び起き上がろうとしたとき、彼の手にあったものは先程見た夢のような赤い血―――ではない。
シンが手にしていたのは、黒いパイロットスーツを身に纏った長い黒髪を靡かせた清楚な雰囲気を漂わせる女性―――の胸だった。
しかも自分が押し倒しているようにしか見えない。

 

「う、うわわわわわ!!」

 

シンは思わず飛びのく。身体の不調なんか何処かに吹き飛んだ。
一方の女性もこう言うことに慣れてない(慣れてたらそれはそれで困る)のか顔を紅くして自分の身体を抱きしめる。
するとそこへ―――

 

「ほう。お目覚め早々我が軍のエースパイロットの一人であるアマテラスの胸を揉みしだくか………P00に選ばれただけあって只者ではないと思っていたが………まさかここまでやるとは思っても見なかった。私の予想なんぞ遥かに上回るぞ」

 

そう言って姿を現したのは妖艶な雰囲気を纏った一人の美女だった。
着ているのは地上で見た軍服でも、アマテラスと呼ばれた女性が身に纏っているパイロットスーツでもない。
質素だが豪華にも見える黒を基調とした服装。

 

「ち、違います!! 偶然です事故ですわざとじゃありません!!」
「だが気持ちよかったのだろう? ラッキー、とも思ったのだろう?」
「それはもちろん………って何言わせるんですか!!」
「このラッキースケベ。近くで眠っている妹さんにあわせる顔が無いとは思わんのか?」
「ラッキースケベってなんですかぁ!!」

 

目の前の人物の反論に対してシンは顔を紅くさせる。一方、ロアはロアでシンに向かって小さな声を上げる。

 

『………気にするな。それがお前の運命だ』
「そんな運命いらねえよーーーーーー!!」

 

思わずロアの突っ込みに声を上げるシン。するとアマテラスも目の前にいる人間も自分の奇行に目を瞬かせた。

 
 

で、シンが落ち着き(妖艶な人物が飽きたとも言う)、マユが目覚めたのを見てアマテラスは声を上げる。

 

「じ、自己紹介が遅れました。私はアマテラス。アメノミハシラ軍のMSパイロットです」
「自分はシン=アスカです」
「マユ………」

 

そう言った後、最後の一人が声を上げた。

 

「私はこのイズモの主、ロンド=サハクだ。以後よろしく」

 

その言葉を聞き、シンは眼を見張った。
シンの父、アルフ=アスカの主が確かロンド=サハクだったのだ。
そして、アメノミハシラには自分の力があると聞いた。今となっては“それ”がカイザーだと言う事ははっきりとわかっている。

 

「あなたが………」
「うむ。そしてお前がP00のパイロットか」

 

そう言ってロンドは小さく息を吐く。
そしてロンドはアマテラスにマユを連れて部屋を出るよう促すと、目つきを鋭くさせシンに向かって声を上げる。

 

「実はな、P00………君の言うカイザーはアメノミハシラ軍の中でも重要機密物だ。民間人が無断で使用する事は許されていない」

 

その事を聞くと、シンは声を荒げた。

 

「あの時はああするしか方法が無かったんです!!」
「それがどうした? お前の罪が重いことには変わりない。拘束や監禁程度では済まないぞ」
「まさか、刑務所行き………ということですか?」

 

シンが冗談で言うとロンドは目つきを鋭くさせるのみ。それがロンドが本気であると言うサインだった。

 

「まあ、お前がアメノミハシラ軍に入る、と言うのなら話は別だ」
「え?」
「我らには敵が多い。今は連合の配下として動いているが、近い内に連合からもオーブからも国として独立するつもりだ。その為の戦力が欲しい」

 

そう言ってロンドはシンに眼を向ける。

 

「独立する………ですって?」
「そうだ。お前はアマテラスやツクヨミにソキウス達はおろか私達ですら動かす事の出来なかったP00に選ばれた。代わりなどいない」
「………」
「私の元に来い、シン=アスカ! 妹を護りたいのならば私に力を貸せ」

 

有無を言わさない口調。シンは息を呑むしかない。
罪を帳消しにする代わりにオーブの、ロンドの軍に入れと言うのだ。
シンは自分の進路の選択を迫られていた。そして―――

 

「判った。マユを護れるのならば、俺は神だろうと悪魔だろうと魂を売ってやる!!」
『俺はどっちなんだシン?』

 

かつて自分はマユを護る為にロアと契約を結んだ。今回はその相手がロンドであるだけだ。

 

「いいだろう。我がアメノミハシラ軍はキミを歓迎する!!」

 

ロンドがそう言うと同時にシンを連れてブリッジへ向かう。

 

「ロンド様」

 

そう言ったのは顔色の悪い、眼がうつろな兵士だった。しかも三つ子なのか背後に似た顔が二人もいる。

 

「サーティン、どうした?」
「ツクヨミから通信。天が危険な状態にあるとの事です」
「何だと? ザフトに苦戦しているのか?」

 

ロンドの声に対して、サーティンと呼ばれた男は首を横に振った。

 

「いいえ。ザフトは退けました。現在、天と戦っているのは………」

 
 

「オーブ軍です」

 

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