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ザ・グレイトバトルDESTINY_第2話

Last-modified: 2008-04-15 (火) 23:18:43

ザ・グレイトバトルDESTINY
第2話
アストレイ

 
 

シンがアメノミハシラ付近で戦っている時の事―――

 

『ロンド様。ザフトの撃破に成功しました』
「ツクヨミか」

 

己の部下………右肩に三日月の紋章を刻んだ漆黒のM1に乗ったツクヨミの報告を聞き、ロンド―――ロンド=ギナ=サハクは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

『不機嫌そうですが、どうかなさいましたか?』
「当然だ。相手はザフトの新型だと思ってみたらタダの雑魚。新装備の訓練にもならん!!」

 

そう言ってギナは目線を救難ポッドに向ける。
八つ当たりだとばかりに、当然相手に反逆のチャンスを与えないために次々と救難ポッドを落としていく。

 

『ロンド様?』
「このまま敵を逃がせば奴らはこの天の存在を知らせ、対策を練る。そして天を倒すためのMS、もしくは装備を作る。それを防ぐためだ」

 

自分の言った事はおおむね事実だが所詮は下賎な者達。死んでも問題ない者たちばかりだ。
大体自分たちは連合側にいる身。ザフトを落として何が悪い。

 

「だがウズミが生きていて今の私を見たら『虐殺』扱いするだろうな」
『それは………』

 

そう言ってギナは忌々しげに歯軋りをする。
理念だの世界だの叫ぶウズミに、彼以上に現実を見ない理念主義者のカガリ。
その二人の我儘に振り回され、その二人の尻拭いに翻弄される日々。
手柄を横取りされ、汚名をセイラン共々押し付けられる日々。
特にヘリオポリスでMSを作っていたことに対して、カガリが自分に掴みかかった時の事を今も覚えている。
『オーブの理念は何処に行った!?』と叫んでいたが、彼らにしてみたら『レジスタンスに参加していた事実はどうなる』と言いたい。
挙句の果てには“量産型アストレイ”の開発途中の際にウズミがP01のデータをよこせと言い、それを用いて自分の手柄のように“M1”を開発したと言う事実は流石のギナも怒り狂い、ミナが本気で殴らなければテロをやる寸前だったと言う。
だからこそオーブ軍のM1とアメノミハシラ軍のM1はカラーが違うのであり、装備も後々変える予定である。
そんなギナがアスハ家を憎むのは自明の理だった。

 

「だが奴は死んだ。アスハも終わりだ」
『ですがまだウズミの娘が………』
「ツクヨミ、あんな理想しか見ない小娘に何が出来る? 相手の怒りを煽って敵を増やす光景しか目に浮かばんな」

 

ギナの言った事はタダの嫌味では無いから恐ろしい。元々ああいう性格だし、政治なんて学んですらいない。
自分の要求を叫び、それが通るまで梃子でも退かないタイプだ。
大体議会なんざウズミが勝手に決めるからないようなものである。
実はウナトもまた『ユウナの嫁にはあんなのじゃなくて、ツクヨミかアマテラスがいい』と寂しすぎる頭でそう言っていたのを思い出した。
自分もそう思っている、と言うより自分がユウナだったら即座に婚約破棄している。

 

閑話休題。

 

ギナがそんな事を言うと警告音が鳴り響いた。
そして向かってくるMS………M1と同じ白に赤と言う色彩と刀を持つMS………

 

「P02、それとロウ=ギュールか」
『ゴールドフレーム!? ずいぶん形が変わっているじゃないか。なんでもかんでも壊しやがって!』
「我らは連合側だ。ザフトの艦隊を攻撃してなにが悪い?」
『アンタは救難ポッドまで破壊してるじゃねえか!!』
「我らは二機、捕虜など取っていられる余裕なぞあるものか! ここで見逃せば彼らは程なく新たな武器を手に、最悪の場合天をも倒す武器を用いてこちらに襲い掛かってくる! 敵に情けを掛けて味方を殺せとでも言うか! 貴様は!」
『救えるだけ救えばいいじゃねえか!!』
「所詮は大きな流れを知らぬ者か………万人は一握りの価値ある者にその生命を捧げるためだけに存在しているのだ!!」
『何だと!?』
「世を統べる者には人も物も栄誉も自由にする権利がある!! 新たなる世界の構築の為の犠牲など当然の事だ!!」
『ふざけんな!! 自分一人で世界を動かしているつもりかよ!! 世界ってのは、そこに生きてる一人一人が頑張って作り上げるもんだろうが!! そいつらを無視して、何が作れるってんだよ!!』

 

ギナは若干の怒りを覚えていた。どいつもこいつも現実を見ない奇麗事ばかり。
そのくせ自分の策が失敗すると直ぐに相手のせいにする。それだけならいいが、奇麗事を実現させるために違法な手段にまで手を伸ばす。

 

「ツクヨミ、P02の相手は私がする!!」
『判りました』

 

そう叫ぶと同時にギナはロウと対峙する。そしてロウが撃ってきたライフルを盾で軽く受け流すと、鏃のような射出武器を翼のようなデバイスから射出する。
まるで二匹の獣のように襲い掛かり、レッドフレームが怯んだ隙にミラージュコロイドを展開させた。

 

『消えた!?』

 

するとP02は刀を引き抜き、己を探し出す。
だが―――甘い。
後ろから、マガノクイタチがP02を締め上げ、バッテリーを強制放電させる。

 

『ぐわああ!!』

 

コレでP02は問題ない。後はツクヨミがジャンク屋の船を落とすだけ―――

 

『ロンド様!! 敵艦が接近!!』
「何!?」

 

そう言うもののロンドに向かって戦艦が襲い掛かるのには変わらず、スピードは落ちそうに無い。

 

「ツクヨミ!! 敵艦からの攻撃は!?」
『ありません。どうやら武装は未装着かと………ですがシールドやラミネート装甲など、防御能力だけはあるようです』

 

ツクヨミの答えを聞くと、ギナは声を上げる。

 

「小賢しい真似を………!! アレは任せる!!」
『了解しました』

 

そう言ってツクヨミのM1が戦艦に襲い掛かり、一方のP02は通信していた隙を突いて自分を蹴りつける。

 

『スキあり!! 反撃行くぜ!!』

 

そして必殺の武器・ガーベラストレートを振り下ろす。
だが―――

 

「利かぬ!!」

 

ガーベラストレートを左手で受け止め、Gの右腕に装備されている盾を横から叩きつける。
ガーベラストレートは、一瞬その力に耐え……そして折れた。

 

『ガ………ガーベラストレートが、折れた………!?』
「コレで終わりだ!!」

 

その時―――

 

『戦う気力がある限り、負けたとは言えない!!』

 

全周波通信を用いたその声にも聞き覚えがあった。その声の主は、自分たちと同じアストレイの所有者―――

 

「P………03か!! 邪魔をするな!!」
『ロウ・ギュール。お前の信念を貫け! お前の作ったタクティカルアームズ! これを使え!』

 

槍が襲い掛かる瞬間、巨大な剣がP03から離れ、ロウの腕に握られた。

 

『おっしゃあ!』
「虚仮脅しが! P03共々葬ってやるわ!」
『この! もう止めてくれ! ゴールドフレームだって無意味な破壊は望んじゃいないはずだ!!』
「ふざけるな!! 無意味な破壊だと? ならばお前は我らに戦うなと、黙って死ぬ事を認めろとでも言うのか!!」

 

ギナは徐々に怒りを覚え、己の内に秘めた物を次々と吐き出していく。

 

「私たちがアストレイを作ったのはオーブを護るためだ!! 力が無ければ踏みにじられる!! それが何故判らない!!」
『だったら何故こんな事を!!』
「我らは今までオーブの影として戦ってきた!! オーブの敵はこの手で秘密裏に抹殺し、常に身体を血で塗れさせ続けた!! だがアスハは我らに何をした!?」
『何を言って………』
「何もしていないのさ!! 奴らは呑気に平和を享受しているだけだ!! それだけならまだしも手柄は自分たちが掠め取り、失策は我らに押し付ける!!」
『グッ………』
「挙句の果てにザフトと連合、どちらにも与せず理念理念と言うしかない。我らが戦うための力を手にしようとしても理念に逆らうのかと言うばかり!! 挙句の果てには勝てぬ戦いに身を任せ、無用な犠牲まで生んだ!!」
『あれは………連合が無理難題いったからだろ!!』
「その上ウズミは理念とやらを護る為に無責任にもマスドライバーやモルゲンレーテも破壊し、民を飢えさせる結果を生んだ!! 全てアスハが生んだ事だ!!」
『そんな………だがよ………』
「必要なのだ………我らが生き延びるには、泥水を啜ってでも戦うしかない!! 理想だけでは生きて行けぬのだぁ!!」

 

細身のカーベラストレートから大きな広刃のタクティカルアームズ……その取り回しには差異がある。慣れるまでの若干のタイムラグ。
隙はある―――

 

『アンタだって………ウズミさんと………ウズミ=ナラ=アスハと同じ、自分の都合を他人に押し付けているだけだろうが!!』
「!!」

 

その言葉に対してギナは一瞬だけ怯み、天も動きを止めてしまう。
結果、ギナにも若干のタイムラグが生まれ、P02の反撃を許してしまう結果になる。
だが攻撃は止まらない。
天の右腕はP02の左腕を落とし―――
レッドフレームの斬撃もまたゴールドフレームの左腕を斬り飛ばした。

 

「ぐっ―――だが!!」

 

即座に射出武器を放とうとした時、P03がこちらに向かって襲い掛かってくる。

 

「な―――!!」
『敵は倒せる時に倒す―――それが傭兵のやり方だ』

 

迫り来るナイフ。既に武器は射出した後、マガクイノタチも間に合わない。
そこへ―――

 

『ギナ様!!』

 

一筋の光明が天とP03の間を走る。P03は軽傷だったがナイフは既に消滅した後。
ギナが頭部を光の発射先に向けると………そこにはビームライフルを手にしたM1がいた。

 

『ギナ様もミナ様も我らアメノミハシラの民にとって必要なお方………倒させるわけには行かない!!』

 

そんな声が響く。自分は姉と違い、他者を道具と見なしてきた。
使えないものは切り捨ててきた。誰かが死んでも鼻で笑ってきた。
だと言うのに………側近とは言え自分を必要だと言う人間がいた。

 

「ふっ………」

 

傑作だった。まさか不要だと思ってきた存在に、自分の命を救われるとは―――

 

「ははははは!! こいつは傑作だ!!」

 

だが自分はP03に攻撃を加えるため、右腕を向ける。するとP03は勝機を失ったことを悟ったのか、タクティカルアームズを手にこの場を去ろうとしていた。

 

『ぐっ!! すまんロウ=ギュール!! お前の悪運と無事を祈る!!』

 

そして逃げ出す。コレで残る敵はP02のみ―――

 

「さて………少しいいことを思いついた。ジャンク屋の戦艦よ」
『………何かしら?』
「我らに補給を頼めるか? そうしたら今回の件は無かった事にしてやってもいいぞ?」

 

そう言って右腕をP02のコクピットに向ける。そうしたら直ぐに返事は来た。

 

『いいわよ』
『プロフェッサー!!』
『………樹里、今回は断れないのよ。断った時点でロウは殺される、誰かに話してもザフトもいたにもかかわらず一応連合側のMSに対して一方的に攻撃を加えたと言われるのがオチだもの』
「判ってくれて何よりだ。ツクヨミ、P02を連れてジャンク屋の船に向かえ。戦うでないぞ」
『了解しました』

 

そう言ってツクヨミのM1がP02を連れてジャンク屋の母艦に着艦した時―――

 

『その金ピカは………ロンドなのか!?』

 

聞き覚えのある、そしてウズミ亡き今ギナが最も忌み嫌っている存在の声が響いた。

 

『お前、オーブ戦で何もせず、どうして宇宙にいるんだ!! しかもザフトと戦っていたそうだな!!』
「誰から聞いた?」
『私が助けたザフト兵からだ!! 貴様、どうして戦えない人間を虐殺するんだ!!』

 

そんな返答が………P02と戦う前、自分が歯軋りしながら言った言葉が現実になった事にギナは頭痛を覚えた。

 

「我らは一応連合側………文句は言わせないぞ」
『他国の争いに「言っておくが理念云々もなしだ」うるさい!! 理念はどうしたと言っている!!』
「そんなもの、当の昔に捨てた。それに今、我らはジャンク屋を使って補給するところなのだ。話は後にしてもらおうか」
『お前!! オーブの理念を捨てただと!? 貴様、オーブの理念は』

 

カガリの言葉が終わる前に通信を切る。オーブが滅んだ今でもそんな事を言うのか。
着信拒否は知っているが通信拒否は出来ないのかな? などと本気で考えてみる。
だがジャンク屋の船に着艦した時、そこへまた通信が入ってくる。今度はどうやら緊急チャンネルを使った模様。

 

『オーブの理念は今の世界に必要なのだ!! 今のままでは世界は滅ぶ!!』

 

ギナはその声に呆けて目を瞬かせる。何処をどうすれば理念が世界を救う事になるのだ。

 

『今や世界は連合とザフトによって二分されている!! このままでは敵が敵を殺しつくすまで永遠に戦いは終わらない!! そうしたら、世界は確実に滅んでしまう!!』
「………」

 

頭が痛くなってくる。だからそれと理念がどう関係しているのだ?

 

『とにかく今のままでは世界が危ないんだ!! どうしてオーブの理念を捨てるんだ!!』

 

もう聞く気はしない。部下の話では話の通じない者(例・訪問販売やストーカー、宗教の勧誘など)は無視するのが一番だと聞いたことがある。

 

(オーブの理念とやらを捨てなかった結果があの自爆だ………それを判っているのか?)
『ゴールドフレームのパイロットさん、聞こえるかしら?』

 

するとギナの耳に某キックの女王、もしくは先の小娘と似たような声が響く。

 

「なんだ?」
『補給は終わったわ。あなたの部下の分もね』

 

成る程。確かにバッテリーは満タンになっている。右腕の武装は壊れているもののアメノミハシラへ戻れば何とかなる。
だが、それには先ず目の前の敵を倒す事が先決だ。

 

「判った。天、出るぞ!!」
『ツクヨミ、M1アストレイ、出るわよ!!』

 

そう言って天とツクヨミのM1がジャンク屋の船を出る。しかし―――

 

『ロンド!! 判ってくれたのか!?』

 

あの小娘のうれしそうな声が響く。何処をどうすれば『ジャンク屋の船から出る=オーブの理念に共鳴する』になるのだ。だったらジャンク屋は船から出た時点で皆そうなってしまう。

 

「ツクヨミ。あの小娘に現実を教えてやれ」
『判りました』

 

そう言って彼女はビームライフルをM1の一機に向け、ためらい無くコクピットを打ち抜く。
量産型アストレイのテストパイロットを務め、ロンド達と共にビクトリア戦を戦ってきた経験があるため、オーブ戦が初陣のアスハ派などよりも腕は確かだった。
そして打ち抜かれたM1は爆発を起こして粉微塵になる。

 

『ロンド!!』
「今のお前は連合に属していない。よって我らの敵だ」

 

天がP02から受け取ったビームライフルをカガリに向ける。

 

『お前………!!』
「踊りは終わりだ!!」

 

そう言って引き金を引く。光明がカガリのM1を襲い―――

 

『カガリ様!!』

 

別のM1がカガリを庇い撃ち貫かれた。そして爆発。

 

『うわぁぁぁぁ!!』

 

カガリが泣き叫ぶ。何も言わず、ただ泣き叫ぶだけ。
それでオーブの獅子の娘か? それで理念を守ると言うのか?
ギナはビームライフルをカガリのM1に向けて次々と放つ。
しかし、また別のM1が貫かれる。そして爆音。

 

『ロンド!! ジャンク屋とグルになってのだまし討ちといい、動けないカガリ様に攻撃をしようというのか!! 卑怯だぞ!!』
『オーブの理念を破るだけじゃ飽き足らず、その様な汚い手段まで使う気か!!』
『恥を知れ!! 理念の敵め!!』
『やはりサハク家は五大首族から外すべきなのだ!!』

 

いいだろう。ならば貴様達の目の前でカガリを殺してやる。
ロンドはミラージュコロイドを展開し、カガリの元へ向かう。
そして、カガリの背後に近づいた瞬間、マガクイノタチで彼女の乗っているM1の首元にマガクイノタチを突きつけた。
そしてカガリ機とM1の群れが引き離される。即座にM1がカガリの元へ向かおうとしたが、次々と爆発する。
どうやらツクヨミ機がM1の背後目掛けてにビームライフルをコクピットに放ったのだろう。

 

『ひ、卑怯だぞロンド!!』
「別に私はお前を人質にとっていない。奴らが勝手にツクヨミに後ろを見せただけだ」
『ツクヨミ!? オーブ宇宙軍が誇るエースパイロットじゃないか!!』

 

カガリはそんな事を言う。と言うより、月の紋章を見た時点で気づくものだろう。

 

『そんな………なんで………』
「あの紋章を見た時に気付くと思っていたのだがな」
『ツクヨミ!! 今のお前が見たらアマテラスは悲しむぞ!! カグツチだって同じだ!!』
「言い忘れたがアマテラスも我ら側だ。カグツチもな」
『嘘だ!! 嘘だ嘘だ嘘だ!!』

 

カガリがそんな事を言う。どうやらこの小娘は理念を護っている自分たちにあの三人がつくものだと思っていたようである。
現在カグツチはアメノミハシラの防衛任務、アマテラスはイズモと共に行動しているため不在だが。

 

『何でロンドもあの三人も理念を捨てるんだ!! 何でオーブの理念を護らないのか!? 理念さえあればオーブは蘇る事が出来るんだぞ!! 理念を破ったら、その時こそオーブは滅ぶんだ!!』

 

だが、今のカガリを見ていると不愉快になる。意外にも今まで以上の怒りを感じていた。

 

「いい加減現実を見ろ小娘」
『ロンド!! お前から説得してくれ!! 理念があればオーブは………』
「………もういい。ツクヨミ」

 

殺せ。
暗にそう言ったが、ツクヨミはツクヨミでその言葉を理解したようだった。
M1を全滅させたツクヨミが、カガリの命を奪おうと銃口をM1に向ける。
あらかたバッテリーを放電させ尽くしたM1を蹴りつけ、自分は斜線上から逃れる。
だが―――

 

『きゃあ!!』

 

ツクヨミのM1が突如武装を撃ち抜かれ、宇宙を虚しく漂うのが見えた。
あのジャンク屋、手を抜いたのか? それとも細工を?
だが、それは違うと言う事が判った。何故なら、真犯人がこちらへ向かってきていたからだ。

 

「!?」

 

その姿は青い十枚の翼を持つMS………オーブの戦いを好き勝手広げた不殺などと言う馬鹿げた戦法を持つMSだ。
青い翼を持つMSが今度はこちらに銃口を向ける。

 

「新たな敵か!! だが!!」

 

即座にミラージュコロイドを展開しようとして―――そこで突然機器に異常が生じた。ミラージュコロイドが展開されない。
ならばと距離を離そうとして―――やはり異常が起こった。突如この機体が放電を開始し、バッテリーの容量が徐々に少なくなってきている。
神が自分の敗北を望んでいるかのような事が立て続けに起こった。
何故だ。何故―――

 

『あたれぇーーーーーーーーーー!!』

 

敵は攻撃を一斉に解き放った。回避は間に合わない。ツクヨミも攻撃できない。元々からあった左腕と連合のGから回収した右腕が吹き飛ばされる。
幸いマガクイノタチは攻撃されなかったがコレでは戦力外だ。
しかし奴はコクピットを狙わない。コレではただの棺桶だ。アイツは戦争をゲームか何かと勘違いしているのではないかと思わせるような行動だった。

 

「貴様ぁ………!!」
『ロンド!! もう止めろ!!』

 

小娘がそんな事を言う。
現実を知らないくせに、自分たちが生き残るために連合に尻尾を振っている事も知らないくせに。
奇麗事しか信じないくせに、価値の無い理念しか信じないくせに。

 

「ジャンク屋!! ツクヨミのM1を拾ってこの場から離れろ!! 幸いイズモが近くにいる、応援を頼め!!」
『アンタはどうするってのかよ!!』
「コレでは足手まとい以下だ。捨てていけ」
『馬鹿言うんじゃねえ!! 俺はな!! どんな奴だって壊されるのが一番嫌いなんだよ!!』

 

そう言ってジャンク屋の船からP02とワークスジンが出撃する。攻撃を受けながらもジンがM1を回収し、同じく攻撃を受け続けたP02が自分の元に向かう。
そしてジャンク屋の船が離れる。この場に残ったのはカガリのM1と青い翼を持ったMS………フリーダム。そしてレッドフレームと呼ばれるP02と自分の天だけだった。
その天も最早足手まとい以下。どうやらあのフリーダムのパイロットは嬲り殺しの達人らしい。

 

だが―――

 

『うおおおおお!!』

 

P02が傷つく事も恐れずに右腕をフリーダムの頭部に向けて前に突き出し、掌からかつてP01の頭部を砕いた光球が同じように放たれる。
完全な隙をついての攻撃、しかし―――

 

『びくともしねぇ!? PS装甲は伊達じゃない、ってか!?』

 

そんな通信が聞こえる。だが、P02は諦めようともしない。
こうなると、後は自分がやるしかない。
全てのバッテリーを推進に使う。幸いカガリのM1はバッテリーを粗方吸い尽くしており、敵はフリーダム一機のみ。
あれほどの攻撃の後だ。ましてやPS装甲を展開してるとなるとバッテリーの残量も少ないはず。
そして今、フリーダムはP02に目が行っている。

 

チャンスは今しかない!!

 

ギナは即座にミラージュコロイドを展開させる。
そしてフリーダムの背後に回り、P02やM1と同じようにマガクイノタチを突きつけた。

 

『そんな!?』
「放電開始!!」

 

確実にしとめるため、展開を解除させる。そしてバッテリーを放電させ、瞬く間にフェイズシフトダウンを起こす―――

 

「………?」

 

しかし、何故かフリーダムの様子が変わらない。
色も落ちないし―――何より放電していない。

 

(バッテリーを搭載していないのか!? OGエンジンでは無いだろうし………まさか核だとでも言うのか!?)

 

そして物理攻撃でもあるマガクイノタチが限界に達し、音を立ててひび割れた。
一方、P02の攻撃も徐々に光が弱まり、遂には右腕が砕け散って光が消える。
後には無傷のフリーダムが残るのみ。

 

『邪魔をしないでください!!』

 

そう言うと再び攻撃を放つ。瞬く間に自分もP02も胴体のみになった。

 

「馬鹿な………」
『何だ………あのMSは………』

 

自分もロウも呆気に取られる。両方とも既にバッテリーの残量は無い。

 

『ロンド………お前が理念を護ってくれればよかったのに………』

 

カガリの声が響く。いちいちうざったい。
こいつは理念があれば代用が効くとでも、機体も人の命も替えが効くとでも思っているのだろう。
理念を持っていないとは言え、かつての自分と同じように―――

 

『ゴールドフレームのパイロットさんよ、俺の悪運は宇宙一なんだぜ?』
「何をこんな時に………」
『今までアストレイを見つけたし、あんたの攻撃だって何回も跳ね除けた。今回は負けちまったがまだ生きている。だから、今回も来ると思うぜ?』

 

なんともまあ呑気な事を―――
そう言うと、通信が繋がる。断片的だが何やら声が聞こえた。

 

『………ギ……今……ら……援…を………』

 

その通信から暫くすると、突如光が放たれる。自分もP02も巻き込まれず、フリーダムはカガリのM1を引き上げる。
そして、闇の中から二隻の船のシルエットが浮かび上がった。
一隻はジャンク屋の船。そしてもう一隻、あれは………

 

「イズモか………」

 

どうやら間に合ったようだ。M1が一機こちらに向かってくる。
右肩に日輪の紋章、どうやらアレはアマテラスのM1のようだ。
そしてM1に追従しているあの紅い機体は………

 

「………P、00………?」

 

今まで誰も操る事の出来なかった機体が目の前にいる。ギナはそれを疑問に思いながら意識を失う。

 

(宇宙一の悪運、か………)

 

ロウが言った、そんな事を頭に浮かべて―――

 

「あれは………」

 

シンはロンドの言うP00………カイザー(ガンダムフェイス付)に乗って目の前のMSに目を向ける。
忘れもしない、あのMSは………

 

「あいつは………」
『シン、どうした?』

 

アイツは………父に致命傷を負わせ、母を殺した、MS!!

 

「ああああああ!!」
『シンさん!? 応答してください!!』

 

アマテラスの声が聞こえたが、そんなものなど意味は無い。

 

「オーバーエッジィッ!!」

 

自分は手にしたオーバーエッジを手に仇に飛び掛る。

 

「うおおおおおお!!」

 

それを振り下ろす。しかし、当の仇はその場から離れ、続けてこちらに向かって銃口をこちらに向ける。

 

『あれは!! シンさん、危険です!!』

 

アマテラスの助言を聞かずに突っ込む。しかし、当の敵は一斉に攻撃を放ち、カイザーに向かって攻撃してきた。
ビームの攻撃が次々とカイザーに当たる。しかし矛先は武器と手足、後は推進器でありコクピットだけは狙おうとしていない。自分の頭の中に次々と警報が響いてくる。

 

『シン、今のお前では奴には勝てん!!』
「まだまだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

咆哮を上げ、シンは仇に迫る。しかし―――

 

『もうやめてよね!! そんな変わった機体持ち出したって、核動力のフリーダムに勝てるわけ無いじゃないか!!』

 

仇………フリーダムはそう言って蹴りつける。シンはそれを受け、吹き飛ばされるしかない。

 

「くそぉっ!!」
『カガリ!! ココは逃げるよ!!』
「カガリ………カガリ=ユラ=アスハ!!」

 

そう言ってフリーダムはM1の手を………アスハの生き残りの手を引いてこの場を去る。シンはそれを追おうとしたが、ロアがそれを制した。

 

『シン、時には退くのも必要だ』
「まて………フリーダム………」
『シン!! 今のお前はアメノミハシラ軍だ!!』
「フリィィィィダムゥゥゥゥゥゥゥ!!」
『少しは物事を考えろ!! お前は妹を一人にする気か!!』
「………くそ………くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

シンはそう言うと敵を追うのを渋々と止めた。M1の誘導に従い、自分はイズモに着艦する事になった。
そして金と黒のMS………天を収容したイズモで、パイロットを引き出す作業を行っている。

 

「ちきしょう!! あの天がこんなザマになるなんて!!」
「ミナ様にどう言えばいいんだ!?」

 

整備兵の声が響く。するとコクピットが開かれ、中からパイロットが引きずり出される。
メットが外されると、そこにいたのは―――

 

「え? ロンドさん?」

 

そう、その人物は自分と共にいたロンド=サハクだった。シンはまるで自分が狐に化かされたような錯覚を覚える。

 

「坊主!! さっさとギナ様運んでくれ!!」
「え? あ、はい………」
「シンさん、こちらです」

 

そう言ってシンはアマテラスの案内を受けギナを連れて医務室へ向かう。医務室へたどり着くと、そこには包帯を巻いたアマテラスに似た女性とロンドがいた。

 

「シン、アマテラス、ギナは無事か?」
「ミナ様、意識が無い事以外問題はありません」

 

そう言ってシンの代わりにアマテラスが答える。ココに来てようやくシンにも事情が飲み込めてきた。

 

「つまり貴女とこの人は双子の姉弟で………二人ともロンドさん、なんですか?」
「そうだ、私はロンド=ミナ=サハク。彼はロンド=ギナ=サハク。私たちは双子の姉弟だ」

 

そう言ってもう一人のロンド―――ミナはギナを見据えて言う。しかし、一方でミナは怪訝そうな表情をした。

 

「しかし、ザフトやアスハの兵共にギナを倒せるほどのパイロットがいるのか? 天まで大破させるとなったら限られてくるぞ」
「………フリーダム」

 

ミナの疑問に答える。するとミナも呆然とこちらを見返してきた。

 

「なんだと?」
「恐らくフリーダムと言う機体です………俺とマユの両親の仇………アイツ、俺を………」
『落ち着けシン』

 

ロアの声が響く。するとシンはもう一つ、気になった事を言う。

 

「それと奴、妙な事を言ってました」
「妙な事?」
「奴はこういってました。『核動力のフリーダムに勝てるわけ無い』って………」

 

その言葉を聞いた瞬間、その場にいた誰もが驚愕の表情をした。ミナは表情こそ判らないが驚いている事に変わりは無い。

 

「核動力、だと!?」
「はい。そう言ってました」
「妙な話だな。NJ(ニュートロンジャマー)があるのだぞ?」

 

ミナの声は皆の心を代弁していた。NJと言うのは、シーゲル=クラインによって打ち込まれた核分裂を抑える装置の事で、地球上に深刻なエネルギー不足問題を生んでいる諸悪の根源。
それによってエイプリルフールクライシスでは、あの『血のバレンタイン』以上の死者を作り出してしまっているのだ。故にナチュラルはおろかコーディネーターですらシーゲルを恨んでいる者も少なくない。
かく言うアマテラスとツクヨミ、この場にはいないカグツチと言う男性も昔からスラムの出身者とは言え、その事件で家族同然だった仲間を喪っている。
大体NJはザフトが核攻撃の報復の為に打ち込んだ物。そしてオーブや連合はザフトより技術が劣っており、だからこそ誰もが同じ事を思ったのだ。
そんなものがあるわけが無い、と。

 

「ふむ………」

 

それがあれば、エネルギー問題が解決する。だが、それは禁断の兵器を復活させると言う意味も表す。

 

「まさかとは思いますが………ウズミ様はフリーダムの件を知ってたのでは?」
「え?」
「私がモルゲンレーテに向かった際、ある話があったそうです。機体の整備を断固として断った機体があると言う話が。しかもその決定はウズミ様の権限だとか」

 

アマテラスがそんな事を言う。ならばあの件は理念を護るだけではなく、フリーダムの事を隠蔽するために行われたとでも言うのか?

 

「まあ、今はアメノミハシラへ向かう。休め、いいな?」
『了解しました』

 

アマテラスとツクヨミが同時に頷き、シンもそれに続く。
そしてシンの部屋にたどり着いたとき、シンはベッドに倒れこんだ。

 
 

翌日、アメノミハシラ軍旗艦・イズモにて―――

 

「シン、演習を開始する」
「頑張れよ、シン=アスカ二等兵」
「は、はい!!」

 

ギナと二十代前半の茶髪を持った男―――カグツチがそう言うとシンはファイター・ロアになって後に続く。
シンはアメノミハシラ軍に入り(マユには整備兵として入ったと説明した)、ロンド直属の兵団に加わる事になった。
何でもP00を操れる人材であると言うのが理由らしい。それにイズモの人員はサハクの私兵で構成されているとか。
フリーダムとの戦いで大破した天も修復が完了し、現在は天を改良しているとの事。
アレからギナもまた若干性格が丸くなり、残虐な雰囲気は影を潜めた。
当然自分たちはアメノミハシラでの生活に慣れていった。
自分も新しい友人が出来て、非番の日はアメノミハシラの居住ブロックを散策している。
マユはミナ達に懐き、明るい笑顔を取り戻していた。
それだけでも自分はアメノミハシラ軍に入った事に感謝していた。

 

『シン、今日はデブリの中に隠した砲台を破壊する演習を行う。準備はいいか?』
「はい!! シン=アスカ、カイザー、行きます!!」

 

イズモから紅い機体、カイザーが出撃し、星の海を進む。
そしてシンは反応があったデブリ……… そこに隠してあった砲台目掛けてオーバービームライフルを撃ち放った。

 

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