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シンとヤマトの神隠し劇場版 第01話

Last-modified: 2017-09-16 (土) 20:23:37

ゆりかごから脱出したクアットロはある目的地へ向かっていた。
そう、もう一人のスカリエッティがいる場所へ。
場所は異なるが似た雰囲気を持つ二つ目のスカリエッティアジトに着いた。
中へ入ると、ドクターがいるはずの場所へと向かう。自分が逃げ切った事を報告するために…。
いくつ目の角を曲がったときだろう。
「おやおや、そんなに急いでどこへいくつもりかな?」
声をかけられた。
「あなたは?」
新型ガジェット、ザムザザーの陰から出てきたのはブルーのスーツに身を包んだ金髪の男だった。
「名乗ってもいいんですが、スカリエッティが死んだ今、その必要はないでしょうね。」
「ドクターが?死んだ?」
クアットロは驚愕せずにはいれない。
何故?何故?何故?
そもそもこの男は一体誰?
「私が殺すよう指示した。」
同じく新型ガジェット、ゲルズゲーの陰から出てきたのは紫色の癖の強い髪をもつ男だった。
唇が青紫色でお世辞にも健康的には見えない。腕には黒猫を抱いていた。

0076年 11月01日 PM12:32
「最近、地上は事件が減ったよね?」
「表向きはな…。」
スバルにボソッと返事を返したのはレイだった。
「でも出動回数は減ってるじゃん。」
「大きな事件が前と比べると減っている、ただそれだけだ。」
レイはパスタを器用にフォークに巻き付けると口へと運ぶ。
「そっか、レイは出動回数が他の局員と比べて多いもんね…。」
恐らくはJS事件の罪の清算なのだろう。スバルと一緒に地上部隊での研修期間に入ったが、あまり局内で顔を会わすことがない。
出動回数は一番少ない局員と比べるとその三倍はこなしている。
正直、感心してしまうスバルなのであった。
とまれ、今日一日、レイの出動はないとかで、偶然休日が同じだったスバルはこうして昼食にレイを誘ったのだ。
「レイ、今日一日休みだったよね?午後も暇なんでしょ?」
「予定はないな。」
身を乗り出してくるスバルにレイは食を止めた。
「…何だ?」
スバルは満面の笑顔を浮かべた。

同刻、時空管理局本局、執務室。
「シン、ご苦労様。」
デスクワークを終えたようで、椅子から立ち上がり、体全体で伸びをするシンの背後にまわり肩を揉みほぐすフェイト。
「そんなことしなくていいですよ…。」
「そう?」
フェイトがシンの肩から手を放すと、首を鳴らすシン。
「最近はデスクワークばっかりだから、ごめんね。」
「仕事なんだから、謝るのはなしです。」
「フェイトさん、終わりました。」
ティアナが書類をフェイトに手渡す。
「うん、ティアナもご苦労様。ところで、今日はこれからなのはの所にいくんだけど二人とも行く?」
フェイトの言葉にシンとティアナは頷いた。
「行く前に、二人ともメンテナンスでデバイスを預けたでしょ?取りに行こうか。」
フェイトに連れられ二人は執務室をあとにした。

扉をノックする音がした。
「どうぞ…。」
男にしては長い藍を帯た髪、アスラン・ザラは返事をする。
「アスラン、クロスミラージュとデスティニーのメンテナンスは終わってる?」
「マリーさん、終わってますよ?二人が受け取りにこられたんですか?」
アスランはモニターを閉じ、席を立つと保管庫のパスワードをうち、クロスミラージュとデスティニーを取り出す。
アスランはデバイス開発の職につかせてもらい、現在もマリーのもとで修行中。
最初は頼まれた部品を手渡す仕事しかさせてもらえなかったが、コーディネイターとしての学習能力の高さ故か、今では発注、メンテナンスの仕事まで一任されている。
もっとも、開発にはまだ携わっていないが。
「久しぶりだな、シン。」
「アスラン。」
シンにデスティニーを渡しながらアスランが薄く微笑む。
「それから、ティアナも久しぶり…。」
「お久しぶりです。」
クロスミラージュを受け取るティアナ。
「キラは元気にしてる?」
フェイトがアスランに声をかけた。アスランは軽く会釈する。
フェイトやなのは、はやてには世話になっている。
「はい、あいつは今はもう元気でやってますよ。」
「あれ、あの人、今何やってるんですっけ?」
シンが疑問を口にした。
「キラは今、保護した身寄りのない子供たちのお世話をしてるんだよ。
確か、地上本部直轄の施設にいるんじゃないかな?
ヴィヴィオともたまにあってるみたいだよ。」
「ふ〜ん…。」
「さぁ、話し込んでないで、待ち合わせに遅れちゃうから…行こうか。」
フェイトに促され、アスランやマリーと別れ、ティアナとシンは本局をあとにした。

「……。」
レイはスバルをただジッと見つめていた。
性格にはスバルのアイスの食べっぷりをだが。
十一月と言う時期、外は既に寒い。
しかし、こんな時期でも一般の人々は店内にしっかりと効いた暖房の中でアイスを食べるのが好きらしい。
それはいいとしよう。
だがレイとスバルはこれでアイス店、五件目。
最初の二件はレイも食べていたが、さすがに寒くなってきたので、後の三件ではホットコーヒーを頼んで体を温めている。
「私、アイス好きなんだよねぇ〜。」
「…見ればわかる。」
コーヒーをすすりながらレイ。
「あ、雪だ。」
スバルが外を眺めながら呟く用に言った。そして、緊急出動がかかったのはそんなときだった。

雪がはらはらと降るなか、燃えゆく管理局ミッドチルダ北部地方統括所。
なのはは白い吐息を苦しげに吐いていた。
(強い…。)
見慣れぬ魔導機械を航空魔導士と現地局員にまかせ、なのはは目の前の二人の少年と戦っていた。
一人はいい、まだ対等に戦える。だが、もう一人はディバインバスターが効かない。
当たったはずなのに逸れてしまうバスターとシューターを目にしたなのは焦ってしまう。
「くそっ!!何で落ちねぇんだよ!こいつは!!」
『ミョルニル』
一人の少年が持つ杖の先端の破砕球が勢いよくなのはへと発射される。
横に避けるなのは。そして、その背後から攻撃を仕掛けて来るのは鎌を持った少年だ。
「これなら!!」
限界まで引き付け、ミドルレンジでのショートバスターを放つが発射と同時に有らぬ方向へと飛んでいってしまう。
「またッ!?」
後退し、鎌による一閃を避けた。
「逃げるなよ!」
攻撃を外した少年が悪態をつく。もう一人の少年が漆黒の発射体リングを正面に展開した。
『Zorn』
瞬時に放たれるそれをなのはは余裕を持ってかわす。だが、今度は他方からの砲撃。鎌を持った少年からの砲撃だ。
『Hresvergr』
緑色の砲撃が放たれる。なのははそれを避けた筈だったが、
『Master!』
砲撃がなのはの避けた方向へと腕曲し、ラウンドシールドを展開、防御する羽目になる。

防いだあと、一息つく暇もなく、下方から放たれるコバルトブルーの砲撃を避けるなのは。
「三人目ッ!?」
なのはは驚き、三人から距離を取った。ちょうど三人が逆三角形を描く形になる。
「あれ、やるよ?」
「やりますか?」
「うっせーよ、お前ら!」
何やらぶつぶつと呟いている。瞬間、なのはの背筋に悪寒が走った。
逆三角に描かれる巨大な魔法陣。ベルカでも、ミッドでもないその奇妙な魔法陣の中心には鮮やかな黄色を帯た緑色の光が集束していくではないか。
なのはは航空魔導士たちに撤退を指示する。
とてつもなく嫌な予感がした。撃たせるな、なのはの脳から全神経に伝達が行く。
アクセルシューターを放った。
反れた!?
何故?
鎌を持った少年を狙ったわけではない。だが、何故?何故曲がる?
『Requiem』
なのはの視界を埋めつくす鮮やかな光に飲み込まれ、姿を消した。

レイとスバルが駆け付けたとき、大半のものが重傷と寒さ、そしてまだ残る炎のせいで死んでいた。
「…うっ…。」
スバルが口と鼻を塞ぎ、顔を背ける。
レイが何かを見つけた。
見慣れた色のバリアジャケット、レイジングハートの残骸。
高町なのは、かつての自分の教官にして憧れの人。スバルが悲鳴をあげた。

PM13:22
「地上は久しぶりですね。フェイトさん…。」
フェイトを挟んで左右にシンとティアナ。転送ポートからでたところでティアナが深呼吸しながら言った。
そうだね、とティアナに習いフェイトも深呼吸。地上の空気を目一杯吸う。
「昼はどうするんですか?」
シンが言うとフェイトは腕時計を見る。
「まだ待ち合わせまで時間あるから食べてから行こうか?久しぶりにキラにも会ってきたいしね。」
「でも、キラって児童保護施設にいるんですよね?それとお昼と何の関係…。」
「そこの施設には食堂もあるからね。せっかく来たんだし、顔を合わせとくのも悪くないでしょ?」
フェイトの言葉になるほどと頷く二人だった。

「なのはさん!!なのはさん!!なのはさぁん!!!」
「落ち着けスバル。それより周囲を警戒しろ。」
横たわるなのはの口元に耳を傾けるレイ。
「まだ息はある…。」
冷静に事態に対処するレイの発言で幾分かスバルも落ち着きを取り戻した。
「スバル、お前は救援を呼べ。俺は他の生存者を見てくる。」
「うん!」
「頼んだぞ…。」
スバルはすぐに救援を呼ぶため、通信回戦を繋ぐ。もうもうと立ち込める黒煙が青空を染めあげていた。

時空管理局地上本部直轄児童保護施設。
「あれ、フェイトちゃん?」
名前を呼ばれて振り向いたフェイトの視界、一番最初に飛込んで来たのははやての姿だった。
「はやて、久しぶりだね!」
シンとティアナが敬礼する。
「シンもティアナもそんなにかしこまらんで楽にしてええよ。」
二人が敬礼をやめるのを見届けてから
「ところではやては、なんでここに?」
とフェイト。
「予定よりも地上本部のお偉い方との会談が早く終わってな。昼食がてらキラくんの様子を見に来たんよ。」
「はやては一人で来たの?」
はやてを加え、四人は歩き出す。
「リインと一緒や。シグナムとヴィータ、ザフィーラは手があかんくてな。」
「そのリインは何処にいるんですか?
姿が見えないようですけど…。」
辺りをキョロキョロと見回しながらシンが聞く。
「それがな…。」
はやては苦笑した。

「やめてくださいですぅ〜!」
声。
「皆、リインお姉さん痛がってるからやめてあげようね…、ってちょっと、駄目だよ、着せかえ人形じゃないんだから!」
はやてに案内されるうち、段々と近くに聞こえてくる声。

「うわぁ〜ん、キラが怒ったぁ〜。」
「うわぁ〜ん…。」
「怒ってないから、ねっ?ラクスもミーアもリインさんを放してあげて…。」
ピンク色の髪をした双子の少女はリインを掴んでいた手を話す。
「ありがとうございます、キラさん。」
もみくちゃにされ、ボロボロになったリインは服を整える。
「じゃあ、キラ、絵本を読んでくれますか?」
「読んでくれる?」
「それはいいけど、ラクスもミーアも、お昼寝の時間だよ?
ニコル、ヨウラン、ヴィーノ、メイリンとルナマリアはもう準備すませちゃってるから、二人も準備しないと…」
三日月が二つ連なった髪止めをしているのがラクス、星型の髪止めをしているのがミーア。
大きな瞳でキラを見上げていたが、絵本を読んでくれないのだと思い込んでうつ向いてしまう。
「そうだね、じゃあ皆がいい子にお昼寝出来たら午後の勉強はなしにして読んであげる。」
キラがそう告げると、既に準備をしていた五人は布団の中で寝る体勢をとった。
ラクスとミーアも自分でしっかりと準備をして布団に潜り込んだ。
15分ほどたってからキラとリインが部屋から出ていくとにやにやと笑っているシンとティアナ、それから苦笑いのはやてとフェイトが待っていた。
食堂。
「大変そうやなぁ、キラくん。」
「大変ですね…。」
丼を片手にキラが言う。
「ていうか、あの子供たちの名前…かなり聞き覚えあるんですけど…キラさんがつけたんですか?」
シンがナイフで肉を切り分けながら聞いた。
「違うけど…僕も最初びっくりしたよ…。」
そう言って、今度はスープに手を伸ばすキラ。
「あんまり急いで食べると体に悪いよ?」
フェイトがもりもりと食べ続けるキラを心配そうに見る。
「食べられるときに食べとかないと身が持たないですから…。
あ、皆さんはゆっくり食べててください。せっかく来てくれたんですし…。」
キラはからになった食器をまとめた。

「キラさん、あの双子どうやって見分けてるんですか?」
ティアナはサラダをつつきながらキラへと視線を向ける。
「それやったら私も見分けられるよ?」
「うん、私も…。」
はやてとフェイトが自信ありげに胸を張った。
「どうやってですか?」
不思議そうにティアナがキラから二人へと視線をうつす。
「髪止めや、ティアナ。」
「ラクスって子が三日月が二つ連なったようなデザインの髪止めつけてて、ミーアって子が星型をつけてるよね?」
「そうだったんですか?」
「なんだよ、ティア、気付いてなかったのか?」
四人で会話をしているとリインが割って入った。
「でも、髪止めを入れ換えちゃったら、どうやって見分けるですか?」
静まりかえる一同。
「見分ける方法は実は3つあるんだ。」
キラが沈黙を破って口を開いた。
「一つ目は僕がパッと見て名前を間違えないように工夫した髪止め。
二つ目は言葉使い。
ラクスは言葉が丁寧なんだ。ミーアは元気がいいというか、子供らしい…まぁそんな感じ…。
3つ目は性格…かな。」
「へぇ〜、よく見てますね。」
感心するティアナ。
「半年も付き合えばそれなりにね…。」
キラは笑って答える。
「ところで皆、今日は何でここに?」
キラは紅茶に砂糖を入れながら、忙しいはずの五人に視線を走らす。
「特にこれといった用はないけど、久しぶりに会っておこう思うて皆きたんや。」
「……そっか、わざわざありがとう。」
それから三十分ほど会話を楽しんだところでお開きとなり、キラは子供のいる部屋へと戻っていった。
「そういや、フリーダムはどうなったんだ?派手に壊れてたみたいだけど…。」
施設の出口へと向かう途中、シンが疑問を口にした。
キラがフリーダムに限界を越えた出力で砲撃させた際、耐えきれず爆発、破損した。
「フリーダムははやてが修理に出したんだよね?」
フェイトは隣を歩くはやてを見た。
「うん…。ちゃんと直ったよ。」
はやては声の調子をおとしてそう言う。
「そっか。」
施設内から出た直後、フェイトとはやてに緊急通信が入った。
通信の相手はスバルだった。

病院。
「……。」
顔を両手で覆ったままスバルは処置室の前にあるベンチで座っていた。
隣ではレイが空間モニターを開き、キーを叩いている。
「レイ、スバル!」
「フェイトさん!」
フェイトを先頭にはやて、シン、ティアナが走ってきた。
「なのはは?」
レイが視線で場所を示す。
赤いランプが点灯している部屋。
時計の秒を刻む音が嫌に大きく聞こえた。

「なのはが…一体誰に?」
沈黙を破り、フェイトが呟いた。それは、はやてもシンもティアナも気になっていたようだ。
「破損したレイジングハートから出来る限りデータを吸い出してみました。
恐らく、高町一尉を撃墜したのはこの三人でしょう。」
ノイズ混じりのモニターに写っているのは男三人が描く魔法陣。
見慣れぬ方式だった。発生する方陣は戦闘機人のISが発動する際に発生するものに酷似していた。
「それと…。」
レイがキーを数回叩く。表示されたのは魔法データに関するものだった。
「ミョルニル、フレスベルグ、ツォーンこれらは魔力による殺傷攻撃。」
「そうやね…。でもそれが?」
とはやて。
「それにしても、なのはさんの攻撃…おかしくない?」
モニターを見ていたティアナが言う。
「ホントだ、なんか、砲撃が逸れてる。なのはがコントロールしてる訳でもないだろうし…何で…。」
考え込むフェイト。
「曲がる理由は分かりませんが、高町一尉が戦っているとき、かなり高濃度のAMFが展開されているようです。」
レイが告げた。
「でも、魔力消費が激しいんだからそんなことをしたら敵にとっちゃ自殺行為にならないか?」
シンの言葉に頷く一同。いくら考えても、答えはでない。
「まぁ、今は…」
はやてが視線をあげ、正面の部屋をみる。
「なのはちゃんの無事を祈ろう。」
緊急処置室の赤いランプはそれから二時間ともりつづけた。