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スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第15話

Last-modified: 2012-08-09 (木) 20:23:48
 

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED
 第15話「奪われた技術」

 
 

「……僕は、戦いたくなんか無かった。しかも、そこにアスランが……」
「そうでしたの。彼も貴方も良い人ですもの。それは悲しいことですわ……」
「え……?アスランを……知っているんですか?」
「はい。アスラン・ザラは、私がいずれ結婚する方ですわ。
 ……でも、それは父が勝手に決められた方。
 私は、キラ様の方が魅力的に感じますわ」
「え!?」
「フフ、冗談ですわ。……でも、素直な貴方の方が、彼よりずっとお友達になれそうに感じます。
 できればこれからも、私の、お友達になって下さいますか?」

 

 彼女の潤んだ視線が注がれる。
 鼓動の高鳴りを感じ、喉が思わず鳴りそうな乾きを感じる。

 

「……ぼ、僕で良ければ」

 

 キラは頬を赤く染めながら、彼女の申し出を受け入れた。

 
 

 ―艦長日誌―
 我々はこの数日を暗礁宙域で過ごしている。
 それもこれも新たに加わった2隻の速度が遅いためだ。
 月を目指して飛行するにも足の遅さは問題になることから、先にこの問題を解決する事にした我々は、船体の改造をしつつ体制固めを急いでいた。

 

 2隻の艦の整備はセブンの指揮のもとに大方の整備を終えたが、まだ運行出来る状態には無い。
 艦隊の指揮系統の構築も急務だった。
 新たに大佐となった私のもと、ただ3隻の艦を纏めるだけでは迅速な行動はできない。
 そこでアークエンジェルの一室を改造して設置した執務室に、新しいコンピューター制御の管制を置き、3隻の艦の艦長または副長を常駐させ参謀として作戦計画を立てる事とした。
 私はここを「作戦室」と呼び、クルーの出入りを上級士官に制限した。
 また、長らく宙に浮いていた「我々2人」のポジションを再設定し直した。
 私が大佐として艦隊全体を指揮する立場に立つとして、トゥヴォックには元々米国空軍の退役少佐というポジションを設定していたので、そのまま少佐として復隊扱いとし、彼には作戦参謀兼保安主任として私の補佐役とした。
 そして、再編で空けた部屋2つを私とトゥヴォックそれぞれに当てて自室とした。

 

 セブンが平行して進めていた新型メビウスの開発は順調に進み、大尉のメビウス・ゼロ改造仕様が一足早く完成し、続いてフラガAI搭載型メビウスは、フラガ大尉の名前を一部貰い受け「メビウス・F(FURaga AI=フライ)」とし、2機が完成した。
 6機あるうちの2機しか完成出来ていないのは、セブンの完璧主義故の妥協無き開発の結果として、当初仕様より大きくリファインされたためだ。
 これにより6機全て使える予定が、最終的には4機で残りの2機分は予備パーツ扱いとなるのは痛い。

 

 メビウス・F
 エンジン出力はゼロと共通にリファインされ、直進性に加えて垂直水平運動能力を獲得。
 また、簡易に大気圏での運動性能を獲得する可動式水平翼を装備。
 ミサイルポッドは着脱式になり、全2門の有線式ガンバレルリニアガンを搭載。
 装甲は試作の簡易ラミネートPS装甲に変更され、大幅に耐久性能が上昇。
 OSはVST製に置き換えられ、コックピット内部の操作性も従来より進化している。
 機体カラーは黒にライムグリーンのラインが入り、MSの目の様にラインがグリーンに光るその様は、ボーグの放つ光の様なので私は「ボーググリーン」と表現したが、セブンは面白くない様だ。
 PS装甲発動時はカラーがグリーンになる。

 

 新しいパイロット編成については、メビウスはフラガ大尉のゼロの指揮のもと、旧メビウス部隊の6名が交代でフライに乗る事とし、パイロットの補充に問題は無い。
 フライは新たに加わった2隻に2機ずつ編成される予定だが、現在は1隻に1機となる。
 アークエンジェルではこれまで通りにストライク/デュエル/メビウスの3機が搭載されるが、新たに開発中の機体を含めて最終的には4機体制を予定している。
 その新たな新型のパイロット候補生は選考の結果6名まで絞った。

 

 アーノルド・ノイマン
 カズイ・バスカーク
 サイ・アーガイル
 トール・ケーニヒ
 フレイ・アルスター
 ムウ・ラ・フラガ

 

 順位は大方の予想に反して面白い結果となった。
 1位と2位はフラガ/ノイマンと正規兵なので順当なものとして、その他の順番は以下の通り。
 3位フレイ・アルスター、4位トール・ケーニヒ、5位カズイ・バスカークで、サイ・アーガイルは一身上の都合で棄権した。

 

 アーノルド・ノイマンに次ぐ大金星を出したフレイ・アルスターは、シミュレータの成績でも好成績を出し、体力面でも同年代の学生達のトップだった。
 これは事前にフラガ大尉の指導の元に厳しい訓練を受けて臨んでいたからだろう。
 しかし、彼女の最大の要因は父の死である事は間違いない。
 その事で彼女がコーディネイターに対する敵意を燃やすのは問題だ。
 私はそれを彼女に話すことにした。

 

 試験を終えて訓練ルームから出る手前で私は彼女を呼び止めた。
 彼女は振り向いて立ち止まる。

 

「大尉達に次ぐ3位は大活躍ね」
「有り難うございます」

 

 彼女は笑顔で答える。
 私もにこやかに話を進める。

 

「……話は、あの戦闘から数日、クライン嬢への給仕が疎かになっているそうじゃない」

 

 彼女の表情が曇る。
 あまり振れられたくない様だが続ける。

 

「キラ君が代わりに運んでいるそうだけど、誰が仕事を休んで良いと許可したのかしら」
「……許可はありません」
「そうよね。私は『あなたに』命じたはずよ」
「……はい」
「だったら、訓練を受けながらでも充分にこなせたはずよね?」
「そ、それは……」

 

 私はひと呼吸溜息をつく。

 

「私はあなたのお父さんの死を軽んじる気もないし、その憎しみを糧に頑張ってきたのも理解している。
 だけど、あなたに話したわよね。人は一人では何も出来ない……と。
 あなたが幾ら頑張った所であなた一人じゃ何も出来ないのと一緒で、この軍という組織もあなた一人で動くものじゃないのよ。
 そんな組織であなたは生きて行ける?
 憎しみで戦って、どこまであなたは戦い続けるのかしら?」
「……それでも、パパの……父の敵を討ちたいんです!
 そうでもしないと……とても気が済まなくて」
「……そう。私達が目指す所は組織としてのZAFT打倒だけど、あなたはコーディネイターが憎い。
 じゃぁ、その戦いが終わったら、あなたは一人でコーディネイターに戦いを挑むのね」
「それは!?」
「……そういう事になるのよ。だから、コーディネイターとZAFTは分ける事ね。
 じゃなければ、あなたは永遠に憎しみを抱きながら生き続ける事になるのよ。
 私は出来ればあなたにそんな生き方はして欲しくない。
 あなたのお父上もその気持ちのはずよ?」
「……」

 

 彼女は無言のまま俯いていた。
 まだ心の整理なんて付かないだろう。
 酷な事かもしれないが、感情の赴くままを許せば秩序は保たれない。

 

「……兵として生きる道を選んだのなら、与えられた命令は完璧にこなす事ね。
 軍という場所はそういう所なの。それに従えない者は必要ないわ。
 私が言いたかった事はこれだけ。理解したならしっかり仕事をすることね」
「……はい」

 

 私は彼女に下がる様命じた。
 彼女は大人しく礼をして部屋を出ていった。
 その始終を見ていたラミアス、フラガの両名は口を挟めない空気を感じて、ただ静かに私達のやりとりを聞いていた。
 私は振り向き様微笑んで、

 

「さて、戻りましょう?」

 

 ……と、二人に促した。

 

 兎に角、新型の開発はまだ時間が掛かるため、候補生達には今後訓練を受けてもらう事になる。
 ただ、この選考でフラガ大尉は新型の候補から除外することにした。
 彼には既にメビウス・ゼロがあるため、主戦部隊から外すわけにはいかないからだ。
 アーノルド・ノイマンもこの件では同じで、彼の操舵能力無しにアークエンジェルは動かない。
 2人を除いた3人が今後の新型の候補となるが、2人にも訓練を受けることは許可した。

 

 我々は新たな作戦室で会議を始めていた。
 地球連合との連絡もつかず、ヴォイジャーとの連絡も上手くいかない現状は歯痒いが、出来る事をする他に無い。

 

「……ZAFT軍はセンサー範囲から5000kmの宙域に2隻確認されている。
 長距離センサーの識別により前回我々を襲った艦隊だろう。
 想定時間で最短5時間程後に我が方へ到達すると思われる。
 暗礁宙域へ向けて先行している機影が2機、現在バスターと新型のグリーン(ゲイツ・ステルス)の熱源パターンと一致している」

 

 作戦室には私の他にトゥヴォック、アークエンジェルからはフラガ、ラミアス、バジルールの3名、そして、2隻の艦長であるグライン、ブライトマンの両名が集っていた。
 トゥヴォックがセンサー情報を説明する。
 それを感心した様に5名の連合クルーは聞いていた。

 

「……いやぁ、最新のコンピューターはこんな距離からそれだけの情報を出せるんですか。
 こりゃ裸同然じゃないか。Nジャマー形無しだなぁ」

 

 フラガ大尉の言葉に周囲の士官達も同意するように頷く。
 実際、このデータはアーチャーからのデータのため、Nジャマーの影響は受けていない。
 それどころかこれ以上の距離もハッキリと識別する程度の事は可能な性能があるが、彼らにその能力の全てを渡す程に我々もお人好しではない。
 仮に作戦室を他のクルーが利用したとしても、索敵可能限界は五千Km以内に留めている。
 それでも彼らのセンサーからすれば雲泥の差であることは言うまでもないが。
 そのお陰でバジルール少尉は勘違いし第一戦闘配備で警報を鳴らしたのだが、実際はかなりの長距離だけに警報を解除した。
 それを本人は自分のミスとして恥じているが、事前に説明しなかった我々が原因だけに彼女には悪い事をした。

 

「そうね。我々の技術をもってすれば、これくらいは出来て当たり前。
 問題は彼らをどう叩くのが最適かを、ここで皆さんには議論してもらいたい。
 私は基本的には部外者よ。解決策は自分達で出して欲しい。
 貴方達なら、彼らの立場になって考えた時にどう攻撃したら良いと考えるかしら。
 それを加味して考えて頂戴。私はその問いに答えましょう」

 

 私の提案にまずブライトマン艦長が挙手した。
 私は彼の方を向いて頷き、発言を許可する。

 

「私は現状の宙域を早期に離脱し、月への航路を進むことを提案します」
「その根拠は?」
「こちらは既に敵の動向を把握しています。
 確かにこの宙域に留まればデブリを盾に出来ますが、それは敵も同じ。
 逆にデブリへの誤爆による想定外の被害を出す危険性もあります。
 まだ距離のあるうちに先行し、母艦隊の援護を受けた方が有利に働くと考えます」
「そうね。でも、改修が不完全な為に艦の足は遅い。ナスカ級の足はドレイク級の足を越える。
 私が彼らなら、貴方達をこの宙域から追い出しさえすれば勝ち。
 何も今叩く必要は無いと考えるわ。
 それは以前フラガ大尉が話した様に、敵の引き際の良さが手掛かりじゃないかしら」

 

 ブライトマン艦長は私の返答を聞いて押し黙った。
 彼も気付いたのだ。彼らが何故あの時に叩いて来なかったのかを。
 彼に続いてグライン艦長が挙手した。

 

「では、こんなのはどうです。
 先にバーナードとローを先行させ、アークエンジェルは殿(しんがり)に付き布陣するというのは」
「それでは、折角の艦隊戦力が削がれるわ。
 もし敵の増援が先回りして待機していたら、アークエンジェルが殿に成功しても、
 ドレイク級は沈められるでしょうね。つまり、殿は賭けの要素が強いわ。
 使えなくはないけど、そのままでは危険よ」
「しかし、新しいメビウスFを投入すれば、かなりの戦力増強を期待できるのではないですか」
「お忘れの様だけど、メビウスの武装はリニアガンよ。PS装甲には効かないわ。しかもたったの2機。
 確かにやりようはあるけど、新型に慣れてもいないパイロット達が全員生還出来るかしら。
 人員の損失を覚悟したとしても、艦の生存率はアークエンジェルとのランデブーに掛かってくる。
 ザフトがこの宙域で連合艦を見逃したのは戦力として見ていなかったからよ。
 侮られていたから。でも、今はアークエンジェルがあるから警戒を強めている」

 

 私の言葉にグライン艦長も降参の様だ。
 そこに、バジルール少尉が手を挙げた。

 

「大佐、発言失礼します」
「どうぞ」
「自分は大佐の意図している艦隊戦力の改修を待ちたいと思います。
 しかし、敵は容赦なく攻めてきます。
 でしたら、こちらから打って出てみてはどうでしょう。
 相手は籠城戦を決め込んでいると侮っているに違いありません。
 勿論、それなりの警戒はしていたとしても、こちらの艦隊が逃げこそすれども、
 逆に迫ってくるなどとは思っていないはずです。
 我々はそこに付け入る隙がある様に思います」
「……続けて」
「は。具体的には艦の防衛網を偽装デブリを利用して構築。
 先回りして有利な位置で待機し艦隊戦に持ち込むというものです。
 こうすればこちらの機動力不足は不問となり、位置取りとタイミングに絞る事ができます」
「……戦力は不足無い。相手への奇襲も可能。
 何より攻撃は最大の防御……私は割と好きな考え方ね。でも、その方法は長くは戦えないわ。
 相手も奇襲と判断すれば引くでしょう。でも、引かれたら増援が大挙してやってくる。
 いえ、今も向かっているかもしれない。
 だとすれば、この戦術は彼らと決戦する覚悟が必要ということよ。
 我々の準備でそれが可能かしら」

 

 バジルール少尉は私の問いかけに押し黙った。
 彼女もまた自分の戦術で可能かどうか判断しかねているのだ。
 そんな彼女の意見に援軍が現れた。ラミアス大尉だ。

 

「あの、横からよろしいですか」
「えぇ、どうぞ」
「私は少尉の意見に賛同したいと思います。理由は、決戦する必要は無いからです」
「どうするというの?」
「我々は戦闘陣形を布陣し対峙して威嚇するのみに留め、バーナードとローの2隻は戦闘に参加させずに改修を続けさせ完了させます。
 時間的には戦闘時間内での完了は無理ですが、戦闘後、数時間も待たずに完了させる事は可能だと報告が上がっているのを考慮すれば、我々は敵を排除出来ずとも撤退させられれば良いと考えます」
「その根拠は?」
「彼らの指揮官は大佐も仰る通りにとても引き際が潔いのが特徴でした。
 ここから想起されるのは、敵は戦力を温存したいと考えているということです。
 その理由は2つの方向があります。援軍を待っているか、それとも援軍が無いかです。
 現有戦力の損失を避けているのならば、我々は彼らに致命傷を与えずとも、大きな損失と感じる一定の戦果を上げれば引くと考えます」
「……良いわ。おめでとう。ラミアス大尉、いえ、ラミアス艦長。バジルール少尉と貴方は良いコンビね。
 グライン艦長とブライトマン艦長は、艦の整備に徹して出来るだけ早く完了出来る様頑張って。
 ラミアス大尉はアークエンジェル及びバーナード、ローの戦闘部隊を用いて敵軍を排除する作戦を実行して。
 戦闘部隊長はフラガ大尉にやってもらいます。良いわね」

 

 突然振られたフラガ大尉はきょとんとした顔で私を見たが、慌てて姿勢を正した。

 

「は、はい!……はは、責任重大ですねぇ」
「フフ、そう。重大よ。頼りにしているから宜しく頼むわ。
 さて、私は適宜必要に応じて行動しますが、艦隊の行動は3隻の艦長達の連携に委ねます。
 その間は私も遅れている開発のサポートに回るから宜しく。
 あと、皆さんにはコミュニケーターを配布します。
 呼び出しはこれを耳につけて手で触れ、自分の名前を言ってから相手の名前を言えば良いわ。
 ラミアスからグライン……みたいにね。では、会議終了。解散!」

 

 私は会議を終了して自室へ戻った。
 新しく設けられた私の個室はまだ何も無い。
 シャトルでレプリケートした愛用の珈琲カップとポットくらいしか無いが、
 それだけでも「有る」ことに安心している自分がいる。
 その時、唐突に部屋の呼び鈴が鳴った。

 

「どなた?」
「バジルールです」

 

 ドア越しに彼女の声がする。
 私は入室を許可すると、彼女がドアを開けて入ってきた。
 彼女の隣にはサイ・アーガイルの姿があった。

 

「あらあら、珍しい組み合わせね。どうしたのかしら。えーと……」

 

 私の部屋は殺風景な程にベッド以外は机と椅子くらいで、もう1人分の椅子しかない。
 元々4人部屋のベッドを撤去して利用しているためだが、2人を立たせておくのも忍びないため、私はベッドの上に座り、2人に椅子を勧めた。
 彼女は恐縮して立ったままで良いと言ったが、それでは落ち着かない。

 

「良いのよ。今はオフ扱いなのだから、ただのおばさんよ。ほらほら」
「は、はい。……すみません。では、お言葉に甘えて」

 

 2人は椅子に腰掛けた。

 

「さて、どんなご用件?」
「はい、サイ・アーガイルのことですが、彼に上級士官への道を歩ませたいと考えていまして」
「上級士官へ……?それは、彼が望んでいるのかしら」
「はい。勝手な判断でご迷惑かもしれませんが、彼が友人を思い新型へ志願したと聞いて、アーガイルはパイロットより人を纏める方が合っていると思いまして」

 

 彼女の申し出の後、サイ・アーガイルが私に宜しくお願いしますと挨拶をした。
 確かに彼は一身上の都合ということで試験を棄権していたが、まさかこんな理由だったとは。
 とはいえ、私は本来の地球連合の大佐ではない。
 私が何かを言える立場ではないが、確かに彼女の判断通り、彼にはパイロットよりそちらの方向の方が向いているだろう。
 だが、それでも問題点はある。

 

「……あなたはオーブの人間で、本来は連合の士官になるべき立場に無いわ。
 それでも目指すというなら、あなたは外人部隊扱いになるわけだけど、覚悟はあるのかしら。
 尤も、私も門外漢がブランクを開けての大佐だから、人の事なんて言えたものじゃないけど、この艦で上級職を目指す試験を受けることは可能だと思うわ」

 

 彼は私の言葉に、怯む事無く私の目を見て答えた。

 

「大佐、覚悟は有ります。是非とも宜しくお願いします!」
「私も彼の試験のサポートはするつもりです」

 

 彼は威勢良く私へ決意を語る。その声は部屋の外へも響くくらいだ。
 バジルール少尉も彼に協力するということだが、何があったのだろう。
 サイ・アーガイルはフレイ・アルスターと仲が良かったはずだが。……いや、そういう事ではないと思うが。

 

「……そう。なら構わないわ。連合の基準に適合する兵が上を目指す事を阻む理由は無いし、キラ君の様な特例は別として、あなたがこの艦で不足する上級士官への道を目指すというなら、私としては有り難い話ね。
 でも、それは正規兵になるということなのだから、体力面も相応に要求されるわよ?」
「頑張ります!」
「分かったわ。私も試験官としての対応は取れると思うから、暇を見てやって行きましょう。
 でも、まずは下のクラスをクリアすることが先ね。そうだ、他の志願者にも門戸は開けましょう。
 あなた以外のパイロット候補生も一緒に勉強出来た方が、あなたも張り合い有るでしょ?フフ、頑張って」

 

 私は彼らが帰った後、しばし休憩した後にハンガーへと足を運んだ。
 私のすべき仕事は、現在進行中の計画を少しでも早く終了させることだ。

 
 

 暗礁宙域を先行するバスターとゲイツ・ステルスは探索を続けていた。
 アスランは前回の戦闘後、あえて大きく距離を置く方針を採った。
 それは敵側を油断させる意味合いもあるが、評議会が要請していた「ラクス・クライン捜索」の為であった。
 そもそもアスランは彼女の婚約者という立場も有り、あの時点で戦闘を継続し続けるわけにも行かない政治的な事情があった。
 故に彼は足付きの戦力を削る程度に留め、自陣営の戦力の温存と捜索の両立を計る。
 見失った暗礁宙域では自軍の艦艇の残骸らしきものは確認出来た。
 幾つかの遺体も回収するに至ったが、肝心のラクスクラインの消息は不明だ。
 ただ、不幸中の幸いかどうかは分からないが、残骸には脱出艇の残骸は含まれていなかったことから、彼女が何らかの形で生存している可能性はあると言えた。
 バスターが接触回線で話しかけた。

 

『ったく、アスランも厄介な立場だな。
 お姫様探しもしなきゃいけないし、足付きも追わなきゃいけない。
 俺ならお姫様探しは後回しにするけどな』
「ディアッカ、……イザークが聞いたら激怒しますよ。彼は彼女の大ファンなんですから……。
 でも、そうですね。あの状況で足付きを逃がすのは僕もどうかと思います。
 ただ、戦果を上げていることも事実。婚約者という建前も入れれば絶妙な采配と言えるでしょう」
『……お前は相変わらず頭が切れるな。
 まぁ、お偉方を納得させるには損害ゼロで船1隻撃沈は十分戦果だよなぁ。
 しかも悲劇のヒロイン探しも両立だ。……あの小賢しさは一体なんなんだ。
 あいつってあんなにセコセコ動くキャラだったか』

 

 ニコルは彼に問われて、しばし脳内にあるアスランの記憶を引き出した。
 彼は確かに優しいし優秀で手先も器用ときているが、性格的には優柔不断で決断力は無い方かもしれない。
 しかし、人前での立ち居振る舞いはさすがの秀才だけに隙無く動けるし、戦闘においても身のこなしは一流だと言える。
 彼は命じられる事に忠実であり、あまり自分を全面に出す様な人間ではない。
 だが、ディアッカの言う通り彼は変わった。その変わり方は豹変と言っても良い。

 

「……元々は彼も次をリードする指導者の息子。相応の能力が有って然るべき。
 これまでが羊の皮を被っていただけなのかもしれませんよ。
 でも、貴方の言う通り、彼に似合わずあまりに手堅い。
 ……フフ、正直、そうした役割は僕の役目だと思ってました」
『はは、言えてるな。でも、お前、そんなことを考えて動いてたのかよ。怖いねぇ』
「そうですか?……そうかもしれませんね。
(……ですが、彼がそう動くなら、もう僕が気を使う必要はなさそうだ)」

 

 ニコルは心の中でそう呟きながら思わず笑った。
 自分が背伸びをしなくて良いということは、正直言えば気楽な事だ。
 これまで「このメンバー」の中で、彼は最年少でありながら「最大の気配り」を強いられてきた。
 リーダーとされたアスランは優柔不断、イザークは癇癪持ちで、ディアッカは無関心、そして兄貴分として纏めてくれていたミゲルは戦死し、何もしなかったら勝手に啀み合いが生じて、バラバラになりがちなこのチームを支えてきたのはニコルだった。
 ただ、今回のアスランの変化はアスランだけに限らなかった。
 これまで無関心だったディアッカは、以前と違い前面に出てくる気配もあるし、イザークは以前より落ち着き(?)を見せてきている。
 そして自分自身、アスランの変化を切っ掛けに負担が軽くなったことは間違いない。
 それがこれまで被ってきた自分自身の「殻」を破る結果となるのであれば、ニコル自身楽しみな面も感じていた。
 その時、センサーに一つの機影らしき物が観測された。

 

「センサーに反応、識別は……連合のメビウス!?
 ……でもエンジンの出力が少し違う。新型でしょうか」

 

 ニコルがセンサー情報をディアッカに転送する。
 彼もその情報を見てみるが、確かにデータベースにあるどのメビウスにも該当しない。
 この期に及んで連合が新型のメビウスを開発したというのだろうか。

 

『……どうだろう。近づいてみないとわからねぇ。
 幸い、向こうさんとの距離もあるし、メビウスのセンサーエリアは狭い。
 もしかしたら、お姫様を撃沈した奴らの仲間……なんてこともな』
「連合がこの宙域に来る理由はなんでしょう。ここはZAFTの領域です。
 クライン嬢の慰霊団を撃墜するメリットも無ければ、そもそもここまでやってくる事自体が困難なはずです」
『と、すれば、この宙域にいる連合といや……足付きか』
「はい。……どうします?
 罠の可能性もありますし、単なる哨戒として出ているだけかもしれません。
 しかし、新型が来ているということは、連合の援軍が待機している可能性も」

 

 ディアッカは周囲のセンサー情報を見ながら自身でも思案してみるが、
先の戦闘で目立った損傷もしていないはずの足付きが潜んでいるとも思えなかった。
それでも、実際にデータは出てきている。

「……罠を張る程向こうが余裕だとは思えねぇ。
 でも、もしそうなら理由は分かる。この宙域なら身を隠し易い。
 仮に何かトラブルが有ったとしたなら、どこかに潜んで修理に励んでいるって寸法だろう。
 てっきりあの遅いドレイク級引っさげて進んでいると思っていたが、
見つからなかった理由はこういう事か。」
「……何かを待つために待機しているのか、それとも修理の為かは定かじゃないですが、この場を選ぶ理由は仰る通り一つ……動きたくないからでしょう。
 動きたくない相手ならば包囲殲滅が常套。
 ディアッカ、貴方が艦へ繋げてくれませんか。
 僕はこのままステルスで潜行してみようと思います」
『……おい、大丈夫か。まぁ、わかった。無理するなよ』
「はい」

 

 バスターが離脱する。
 ニコルは彼の離脱後岩陰に隠れ、ミラージュコロイドを起動しエンジンを停止した。

 
 

 アークエンジェル艦橋では敵側のセンサー反応が消えた事に驚いていた。

 

「バスターが後退、グリーンが消失しました!」
「何、よく確認したのか!」

 

 CICからのセンサー情報の報告に、思わずバジルール少尉の声が上ずる。

 

「センサー情報は宙域ポイント351マーク12より離脱後消失とあります」
「……どういうことだ」

 

 突然消失した機体。
 詳細は先行させたメビウスとの通信を待つ他無いが、通信をすればこちらの居場所がバレる危険性もある。
 しかし、こうした行動に対しても抜かりは無かった。

 

「先行するフラガ大尉に繋げ」
「はい」

 

 予めフラガ大尉には敵側へ接近する前に遠回りに飛行させ、領域の幾つかのポイントに中継アンテナを散布した。
 このお陰で直接の通信を辿られずにアークエンジェルとの通信を確立させていた。
 そして、その通信も独自の新しい暗号化を施している徹底振りである。

 

「こちらアークエンジェル、バジルール少尉です。
 大尉、敵グリーンの消失を確認しました。何かわかりませんか」
『……こちらフラガ。敵さんはこちらでも確認出来ていない。
 どうなっているんだ。とりあえず哨戒行動の真似をしているが』

 

 フラガの方でもサッパリ状況はつかめていなかった。
 その時、ラミアスが通信に加わった。

 

「……あまり考えたくはないけど、ミラージュコロイドの可能性を考える必要があるわね」
『何だそりゃ?』
「最新の光学遮蔽技術よ。ブリッツに搭載していたの。
 もしかしたら、ブリッツを使っているのかもしれない。
 センサーを赤外線反応に切り替えてみて。
 たぶん、かなり極小の噴出反応を検出出来ると思うわ」
『わかった。やってみる』
「詳しい情報はそちらに転送するわ。これからは根比べ……というべきかしら」
『……?、まぁ、了解』

 

 フラガとの通信が切れた。
 バジルール少尉はモニターにブリッツの情報を引き出していた。

 

「艦長、ブリッツが……というよりは、ブリッツの……情報が漏れたと考えられているのですね」
「……えぇ。大佐もさすがね。センサーラインの強化はこのためだったのね。
 あれ程のシステムが無ければ、我々は今頃蜂の巣よ」
「スクリーンに表示します」

 

 少尉が大型スクリーンにセンサー情報を表示した。

 

「こちらがまだ情報で上を行っていると信じたいですね」
「えぇ」

 

 2人の視線は、消失したポイントから僅かにそれた宙域に新たに現れた反応へ注がれていた。

 
 

 ―つづく―

 
 

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