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スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第5話

Last-modified: 2012-05-05 (土) 02:31:01

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED
 第5話「協力」

 
 

 艦長日誌補足
 施設を攻撃された連合軍は、我々の目前で三機の試作機を奪われた。
 我々はイチェブの乗っていたデュエルと、ラミアス大尉達のストライクを確保した上で近くの公園へ移動した。
 トゥヴォックとの交信を試みたが攻撃の影響か上手くリンクがとれず、仕方なく我々はキラ少年の操縦するストライクのシステムのアップグレードを試みた。
 しかし、彼が独自に組み上げたシステムは独特の構造を持ち、我々が用意してきたシステムにこの場で改修するには、長い時間が必要で現実的ではない。
 しかも、システムへのアクセスは彼と密接に結びついているため、現状では彼にセブンと共に作業させ、オプションの武器システムへのアクセスを確立させるのが精一杯だった。
 彼の驚異的な能力には驚かされたが、我々の前に問題が山積していることに変わりない。

 

「こんな感じで良いですか?」
「そうだ。それで良い。お前は優秀だな」

 

 コックピット後部から覗き込む様な体制のセブンの言葉は、丁度耳元で囁く様に聴こえ、彼は思わず頬を赤らめた。

 

「……有り難うございます。でも、ハンセンさんも凄いです。」
「私はこうした作業には慣れているからな。
 お前の様に初めて触れる物をすぐに理解出来ることは、優秀だと言って良い。
 ……お陰でOSはこの機体と一体的に動作していて、我々が作ったシステムへの改修を拒んでいるがな」
「す、すみません」

 

「気にする事は無い。私はお前の考えたこの構造に興味が有る。
 システムは論理的に正しい構造をしているほど効率的だと思っていた。
 だが、お前の考えた構造は、論理的であるより有機的…とでもいうべきか。
 まるで生命体の様にこの機体と結びつくことで性能を向上させている」
「そう、なんですか?」
「わからないのか?……まぁ、もっとも我々もMSというものの運用を理解していない。
 肉体を駆使する以上の効率を……人間が操作するロボットが達成することが可能なのか。
 それは今後のお前次第だがな」
「……」

 

 少年の表情は晴れない。
 セブンは彼の肩にそっと手を置いた。

 

「どうした……怖いのか?」
「……はい」
「そうか……お前が無理をすることはない。
 我々にはイチェブもいる。お前が一人で頑張る必要はない」
「イチェブさんも民間人ですよね?なぜ、MSを操作出来るんですか?」
「イチェブは事前に我々のシステムをテストした。
 それに、お前よりは感情をコントロールできる」
「感情をコントロール?」
「そうだ。感情をコントロールすることで、必要以上の感情が表に出る事による不安定さを低減している。
 ……のはずだが、人間とは時に脆い様だ。
 常にそうあることが正しいはずだが、私の人間性が感情を操作できなくすることもある。悩ましいな」

 

 セブンは自分で発言しながら、少し前に自己の死と向き合った事を思い出していた。
 自分には幼少の時代に同化された時点で、殆どの人間的感情は失われたと思っていた。
 その最たるものが死への恐怖だ。確かに自分1人ならば無視も出来ただろう。
 だが、現在の自分には他者との関係……特に愛する心を知ってしまった。
 そうした他者が痛む姿を想像する事すら出来る自分に、彼を諭すのは無意味に思えた。
 確かに死の恐怖は乗り越えられる壁かもしれない。
 しかし、理屈では理解できても残される痛みは大きいのだとつい最近感じておきながら、自分を棚に上げて他者を諭す傲慢さが人間性であるなど、彼女自身認めたくない気持ちもあった。
 キラ少年の方はそんな彼女の心の中の声は知る由もないが、彼なりに彼女の言葉に耳を傾け、自分の答えに置き換えて同意する。

 

 人は誰しもが機械の様に感情を制御したいと思う時があるものだが、それが上手く行かないと嘆くこともまた人間らしさだ。
 彼女はそれを弱さや愚かさだと否定したがるが、そうした一面も含めて人間は形作られる。
 どんな一面も欠かせないものであり、彼女が個性ある個人である証だ。

 

「……そうですね」
「私の作業はこれまでだ。後はお前が使い易い様に調整するといい」

 

 セブンはそう告げてストライクのコックピットを降りた。

 
 

 少年とセブンがストライクのシステム修正にあたっていた頃、私は彼の友人達に手伝ってもらっていた。

 

「これでいいですか〜」
「えぇ、皆さん有り難う」

 

 キラ少年の友人達はこのコロニーの工科大学生で、彼らはシステム制御についての知識が有った。
 彼らの協力を得て気絶した大尉を機体から下ろした我々は、彼らに周囲にある武器の入ったコンテナ車を集めさせ、それぞれのシステムをアップグレードする作業をしてもらっていた。
 作業自体は難しくはない。
 我々の持っているロムスティックをそれぞれに接続すれば、あとは全て自動でインストールとセットアップが進む様に作られている。
 少年達はサイ・アーガイルという少年を中心に纏まっている様で、彼の指示で分担が決まるとあっという間に作業は進んだ。
 なかなかのチームだ。
 そんな中、ラミアス大尉が目を覚ました。

 

「うぅ……」
「気が付きました?キラ!!」

 

 ミリアリアという名の茶髪の少女が、彼女の目覚めに気付きキラ少年を呼ぶ。
 彼はその呼びかけに答え、ストライクのコックピットから降り始めた。

 

「うぐっ!」

 

 起き上がろうとする彼女の体に激痛が走り思わず呻く。
 そんな彼女の体をミリアリアはそっと支え優しく話しかける。

 

「あぁ、まだ動かない方が良いですよ」
「はぁぁ」

 

 彼女はそれに頷き、呼吸を整えてゆっくりと起き上がった。
 ミリアリアは自力で体を支えられるのを見て取ると、近くの荷物から水筒を取り出す。
 そこにキラ少年がやってきた。

 

「…すみませんでした。なんか僕、無茶苦茶やっちゃって」
「お水、要ります?」

 

 キラ少年は恐縮した表情で彼女の前に立った。
 ミリアリアは彼女へカップに注いだ水を差し出す。
 ラミアス大尉はそれを受け取り一口飲み、

 

「…ありがとう。」

 

 と、彼女に謝意を告げた。
 その時、後方で楽しそうな話し声が聞こえる。

 

「すっげーなぁ、ガンダムっての!」
「動く?動かないのかぁ?」
「お前ら!あんまり弄るなって!」
「なんでまた灰色になったんだ?」
「メインバッテリーが切れたんだとさ」
「へぇ〜」

 

 少年達が嬉しそうにはしゃぎながらMSを見つめていたその時、

 

「その機体から離れなさい!」
「んー?……うわぁ!?」

 

 彼女は突然立ち上がり様、胸の中にしまっていた銃を出して構えていた。
 銃口はMSに触れる少年達に向けられている。その表情は固い。

 

「何をするんです!止めて下さい!
 彼らなんですよ、気絶してる貴方を降ろしてくれたのは!…うっ」

 

 話している途中で銃口を向けられ口ごもるキラ少年。
 ラミアス大尉は周囲に睨みをきかせる。その視線は隙無く周囲に向けられている。
 その表情は当初受けた印象とは打って変わって軍人そのものだ。

 

「……助けてもらったことは感謝します。でもあれは軍の重要機密よ。
 民間人が無闇に触れていいものではないわ」
「……なんだよ。さっき操縦してたのはキラじゃんか」

 

 トール・ケーニヒ少年が仏頂面で呟いた。
 だが、その後にすぐ銃口が向けられ押し黙る。
 私達は車の陰で暫く動向を伺っていたが、見るに見かねて彼らに間の手を出すことにした。

 

「……ラミアス大尉。
 あなたをここへ運んできたのも、そして介抱したのも彼らよ」
「ジェインウェイさん!?それにハンセンさんも」
「……まずはあなたのその手に持ってるものを下ろしてくれないかしら。
 冷静に話し合えば解決出来る事よ。上手くすればあなたの得にもなる。どう?」

 

 彼女は私の提案に暫く思案してから口を開いた。
 その手の銃はそのままに。

 

「その提案を聞きましょう。内容次第で判断させて頂きます」

 

 彼女の頑固振りには驚かされるが、優等生な頑固さは嫌いじゃない。

 

「見た所、貴女が一人で頑張った所で何を出来るかしら。
 ここにいる軍人は貴女だけ。
 私達2人は軍の招聘で来た民間人で、その子達は学生さん。
 そしてここはオーブのコロニー。
 あの子達を見て分かると思うけど、とても屈強な軍人には見えない。
 貴女がその銃で撃ち殺してしまうのも一つの手だけど、そうすればどんな人でも抵抗するでしょう。
 そして、そうなれば貴女も無傷ではいられない。
 幸い、学生さんは工科大生で、私達も技術者よ。
 しかも、貴女を介抱して協力もしてくれている。
 なら……このまま一蓮托生も選択肢に入らないかしら?」

 

 私は彼女の目をしっかりと見据えた。
 彼女は私の言葉に応じたのかゆっくりと銃を下ろした。

 

「……良いでしょう。
 その代わりあなた方は軍の機密に触れる以上、身辺の自由は制限されます」
「私達は構わないわ。どの道このままでは死を待つだけ。
 それに貴女に言われるまでもなく、私達の自由は既に軍の招聘を受けた時点で制限されているんじゃなくて?
 勿論学生さん達は別だけど。
 どう、皆さんは彼女の言う事が聞けるかしら?」

 

 私は周囲の少年達に聞こえる様、最後の呼びかけは大きな声で聞かせた。
 彼らはそれを聞いて全員がコクコクと首を縦に振った。

 

「どう?」

 

 彼女は溜息を吐いて苦笑いを浮かべると、ベンチに座り込んだ。
 私達は彼女に歩み寄り、同じベンチに腰掛けた。
 もう威嚇する意志は無い様だ。

 

「貴女も無茶をするわね」

 

 私は思わず笑った。
 私の唐突な笑いに彼女も拍子抜けしたのか微笑んだ。

 

「……それを仰るなら貴女も充分無茶ですよ。
 銃口を向けている相手にあれだけ堂々と。
 でも、失礼しました。確かにあなた方は私達が御呼びしたお客様でしたわね」
「あら、軍人としては立派よ。
 でもそうね。時と場合によるんじゃないかしら。
 何かの行動をするのなら、相手をよく見てからでも遅くはないと思う。
 言葉や行動は起こしてしまったら最後、取り返しはつかないものよ」
「……すみません」
「良いのよ。それより、これからどうしたものかしら。
 集められるものはこちらで集めました。
 システムのアップグレードも貴女が気を失っている間に済ませたわ」

 

 私の話を聞いて彼女は目を丸くしていた。

 

「え、そんなことまで為さってたんですか!?……あ、有り難うございます。
 しかし、アップグレードって、何をされたんですか」

 

 彼女の疑問にはセブンが答えた。

 

「主に我々のシステムとの互換性を保持させるための仕組みとスリム化だ。
 お前達のシステムはとても非効率な構造をしている。
 その為に無駄なエネルギーを消費するのだ。
 我々のシステムはそうした非効率を全て排除する。
 これによりバッテリーの効率は50%改善した」
「ご、50%!?そ、そんなにですか!?」
「そうだ。機体の構造設計自体を見直せばまだまだ改善の余地はあるが、ソフトウェアではこれが限界だろう」

 

 彼女は暫くあんぐりと口を開けたまま微動だにしなかったが、正気を取り戻して尋ねる。

 

「そ、その他には何かなさったんですか」
「我々は彼らの協力のもと、奪われた機体に対してトラップを発動させた。
 システムの設計上のガードに過ぎないため、どの程度の役に立つかは分からないが、
 少なくとも彼らが我々の意図に反して複製するなどの行為は不可能に近い。
 それまでの間に我々と遭遇する事があれば、奪還する機会も作れるだろう」

 

 彼女の説明を静かに聞いている彼女に私も畳み掛ける。

 

「我が社の技術には絶対の自信があります。そして、彼らは皆工科大生。
 こんな状況だけど、私達はまんざら運が悪いとも言えないわ。
 システムのコントロールも失っていないし、何より私達は生きている」
「私達は生きている。運も悪くない。……確かに。
 でも、……ジェインウェイさん、あなた方は一体何をしたのですか。
 システムのコントロールを失っていないって、コピーをガードしても、それだけじゃ問題の解決にはならないんですよ」
「……そうねぇ。でも、無いよりマシじゃないかしら。
 貴女が言う通りこれらは軍の重要機密。
 こんな事もあろうかと、念には念を入れて予め作っておきましたの。
 ……泥棒にはお仕置きが必要でしょう?」
「え?」

 

 ラミアス大尉は複雑な表情で私達を見ていた。
 だが、現段階ではこれで充分だろう。
 彼女が我々を少なくとも敵とみなさなければ良いのだから。
 思わぬ展開になったが、標(しるべ)さえ間違えなければゴールへは向かえるだろう。
 問題はゴールした後であって、ここではない。

 
 

 その頃、宇宙空間では2機の機体が交戦していた。
 宙空を縫う様に飛ぶ連合のエースのみが乗るモビルアーマー「メビウス・ゼロ」。
 それを追うのはZAFTの高機動MS「シグー」。
 この2機に乗るパイロットは、知る人ぞ知るエースの中でもトップと呼ぶに相応しい腕を持つ、一流のパイロット達だ。

 

「……くそっ!ラウ・ル・クルーゼかっ!」
「……お前はいつでも邪魔だな、ムウ・ラ・フラガ。
 尤も、お前にも私が御同様かな?」

 

 コックピット内部ではアラームが鳴り続けていた。
 MAの持ち味である機動性の高さも、高機動のシグーの前には霞む。
 しかし、彼が生き残っているのはそれだけの理由ではない。
 ゼロには唯一連合がZAFTより高性能と言える武装が装備されていた。
 機体後部に装着された4基の有線式自由照準リニアガン「ガンバレル」がそれだ。
 この兵器は彼の脳波とリンクして照準を定めるオールレンジ攻撃が可能だ。
 しかし、その為には特殊な空間認識能力が要求されるため、誰もがこの兵器を扱えるわけではない。
 そうした意味では兵器としてガラクタ同然とも言える汎用性の無さだ。
 だが、それ故にこの兵器は連合で開発されたのだろう。
 効率と合理性を優先するZAFTでは採用されないアイディアであるからこそ、完成した際の優位が確立される可能性も高いのだ。

 

 ゼロ単体の機動力は通常のメビウスに劣る。
 それは4基のガンバレルの推力もエンジン出力に含まれるためだ。
 メインエンジンのみになった場合の機動性の低さは本機の無視出来ない弱点だ。
 しかし、4基のガンバレルが自由に照準を付けられる事で、その弱点を補う様に計られている。
 MS開発で大きく遅れをとる連合にとって、これはMSとの性能差を手っ取り早く埋める手段だ。

 

 彼の命令でこの時もその攻撃能力が発揮されるはずだった。
 だが、彼が相手にするパイロットは他のパイロットとはひと味違った。
 4基のリニアガンが機体から放され、後方を追うシグーを狙う。

 

「大人しくここで沈んでくれると良いんだがな」

 

 シグーのパイロット、ラウ・ル・クルーゼは不敵な笑みを浮かべる。
 彼はその攻撃を「まるで分かっていた」かのごとく躱し、躱し様牽制射撃を加えると、そのまま加速を付けてコロニーポート内部へ侵入する。

 

「えぇい、ヘリオポリスの中にっ!」

 

 ゼロにのるムウ・ラ・フラガもまた、それを追って内部へと突入した。

 
 

「……こちらX-105ストライク。
 地球軍、応答願います。地球軍、応答願います!」

 

 キラ少年には歩きながら通信を任せ、私達はトレーラーの中で話していた。
 トレーラーの通信設備はX-105との交信が可能になっていることもあるが、これから我々が拾い集めた装備を宇宙艦に届けることになったのだ。
 そもそも我々はここから出ようにもその手段が無い。
 特に大尉や少年達は我々と違い転送による救出は望めない。
 ……勿論、それは私の決断次第だが。
 脱出方法は幾つかあるが、この場で選択し得る手段はただ一つ。彼らの新造艦のみだ。
 彼らが建造した新型宇宙艦にMSを届け、それらを月の連合軍に運ぶのが大尉の任務。
 それまでの間は我々は彼女の任務に従い、行動を共にしなければならない。
 幸い我々に不安は無い。最悪な状況には変わりないが何か攻撃が有ったとしても、こちらにはフル装備のデュエルがある。
 我々の防衛はイチェブに任せた。

 

「ジェインウェイさん達が装備を粗方集めていて下さったのは本当に助かりました。
 しかも、アップグレード作業まで」
「これが私達の仕事です。
 失礼ですが……X105の調整時にこちらでデータベースをチェックさせてもらいました。
 勿論、守秘義務は守らせて頂きます。
 まぁ、どの道同じですから、一を知ろうと百を知ろうと一緒です」
「場合によっては、あなた方は軍の厳しい監視下に置かれる可能性もあるんですよ?」
「既にハルバートン閣下に要請された時点で、我々には相当の監視が入っているものと理解しています。
 我々が敵に与しないように……と。
 でしたら、こちらから積極的に誠意をお見せした方が良いかと判断しました。
 ご不満かしら?」
「いいえ。そう仰って頂けると、正直私も有り難いです」

 

 彼女の表情は先程と比較すると和らいだ。必死だったのだろう。
 まだ非常時には変わりないが、一人で背負っているという気負いも無い分、気分的にも気が楽になったのかもしれない。
 私は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「フフ、もっとも、私達もボランティアではありません。
 それ相応の対価はキッチリと社の方へ入れて頂く所存ですわ」
「まぁ、商売がお上手ですこと」

 

 彼女が笑いかけたその時、上方で爆発音がした。
 車内にまで聞こえる程だ。唯事では無いだろう。
 大尉はブレーキを踏んでトレーラーを止めると慌てて外へ出た。
 私達もそれに続く。
 見上げるとコロニーの軸となるコアより爆煙が吹き出しており、多数の瓦礫が上空を舞散っている。
 それらはコロニー内の大気と人工重力が作用しているのだろう。軸を中心に拡散している。
 落下物の被害も甚大だが……もはやその程度で済まされるのかすらわからない。
 そして、その空を2機の機体が飛んでいるのが見えた。

 

「メビウス!それにシグー!?」

 

 ラミアス大尉が表情を曇らせた。
 私も状況が変わった事を理解し、セブンにイチェブへ動く様伝えさせる。

 

 (セブンよりイチェブ、敵襲はわかるな?……我々に抵抗する者には、無意味だと悟らせろ)
 (デュエルよりイチェブ、了解)

 

 デュエルがビームライフルを構える。
 シグーに乗るクルーゼは2機のMSの姿を見て色めき立った。
 この2機の内の1機はミゲルの報告にあった機体だろう。
 彼にとってはどちらであろうと同じ事だ。全て破壊するのだから。

 

「ほぉ……あれか」
「残りの機体か!?」

 

 フラガの目にもそれらが認められた。
 しかし、こちらは手負いで追われる状況。対応出来る余力がなかった。
 彼は既にポート内部での戦闘で全てのガンバレルを失い、ゼロ単体での飛行を迫られている身だ。
 それに対して無傷のシグーは武装の無いストライク目掛けて発砲する。
 しかし、その攻撃はストライクの間に飛び入ったデュエルのシールドにより弾かれた。

 

「な……」

 

 しかも、その跳躍しざまにライフルをシグーへ向けて射撃。
 その射撃は全て無駄無く命中し、シグーの右手と左肩を破壊。
 続けざまに左足の付け根に向けてグレネードを発射し破壊したのだ。

 

「……んだと!?ぐぅ、この私がこんな物に。ぇえい!」

 

 クルーゼはコックピット全体に響き渡るアラート音を半ば無視してシステムを再構築し、緊急用のプログラムに書き換える。
 それでも全ての制御は思う様にはいかない。

 

「私はここで落ちるわけにはいかんのだよ。ッチィ!」
「……抵抗は、無意味だ」

 

 イチェブは強い思念を込めて敵機へ己の言葉を送信した。

 

「ん、戦闘中にメッセージ通信だと!?……な……」

 

 それを見たクルーゼは何故かその言葉が脳深くから発せられ、奇妙な恐怖感が彼の中に湧き起こるのを感じていた。
 それは動物が本能的に感じる危機感の様なものなのだろうか。
 彼自身感じた事も無い感情を、困惑しつつも押さえ切れないことに苛立つ。

 

「……こ、この私が怯えている……だと!?」

 

 その時、彼の視界に一筋の光が走った。
 我々も唐突に生じた爆発音の方に目を向けると、小高い丘の地面を破壊され、そこから一隻の艦艇が目前を横切る様に飛翔したのだ。
 私の横に立つラミアス大尉が呟く。

 

「……アークエンジェル」

 

 彼らの新造艦の名だ。

 

 -つづく-

 
 

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