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デカルト漂流記 in Cosmic Era 71_12話

Last-modified: 2013-07-17 (水) 21:45:57
 

翌日 US艦内第4技術試験課第24会議室

 

会議室は喧騒に包まれていた。
「特別な機能は確認されなかったって…じゃああれは何なんだよ!?」「振動源になるような物も無し…馬鹿な…」「どこの変態技術者だ…面妖な…!」
喧騒の原因となっているのはモニターに映されたMSの下腕の三次元CGとそれの解説だ。
だが、そこに在る筈の装置が発見されないという事実が参加者を困惑させていた。
「…デカルト大尉が受けた攻撃は、確かに超振動兵器の類です。これは、USが被った付随被害によっても証明されています。」
R&Lの技術者が部屋の所々を指差しながら状況を説明する。彼の言うとおり、USの壁面には所々亀裂が入り、窓ガラスはその殆どが割れている。
「しかし、これらの被害から導かれる答だけでは説明不可能な現象があの時に起こっていた事をお忘れになってはなりません。これです」
言いながら、モニターの画像を切り替える。ハイネマン機が放ったビームが赤い機体に直撃する場面だ。横には何やら理解したくもなくなる長さの計算式とグラフが並んでいる。
「ハイネマン少佐のライトニングカスタムのビームライフルのビームを超振動兵器の付随効果で無効化する事は、理論上は可能です。但し、付随被害でUSはおろか周囲の艦隊まで一瞬で崩壊するでしょうが…」
続いて上空からUSを俯瞰するシミュレーション画像に切り替わる。ほんの一瞬でUSが砕け散り、次いで周囲の駆逐艦や戦艦、空母までが轟沈している。これでは防御どころの話ではない。
「しかし、これ以外に考え得る答えが無い訳ではありません。むしろ、これ以外には答えになるようなものを私は知りません。よく考えれば、ある意味それは今の私達の身近にあるものでした。」
その言葉の直後、モニターに見慣れぬモノが移し出された。
円管が幾重にも重なり、所々からコードが伸びている。隙間からはフィンのようなものが顔を覗かせ、何かの動力機関とも思えそうだ。
「これは、我々が独自に地下から掘り出し、投下・掘削ユニットから解体摘出に成功したNジャマーのコアユニットです。Nジャマーの影響で画像が乱れていますが、ご了承下さい。」
「それで?奴の能力とどんな関わりが?」
「Nジャマーは核分裂を阻害し、副次的に電波通信を妨害します。核分裂を阻害するということは、素粒子の運動を制御する事と同義です。
即ち、我々が用いるプラズマビームならば近距離限定で制御、無効化する事も可能と言えます。恐らく、Nジャマーが電波通信を阻害するのも同様の理由に拠るのでしょう」
核分裂を誘発させるものはもっぱら中性子だ。ならば、その中性子を止めてしまえば核分裂は起こり得ない。至極単純な話だ。
「ただ、この働きは中性子や電子はおろか、赤外線等の一部の電磁波にも影響する事が判っています。結果として、大気対流による熱循環の割合を引き上げ、その他の多大な影響が同時発生した結果として発生した全地球的大規模災害が…」
「エイプリルフールクライシス…」
「そういうことです。もっとも、これを散布した彼らがこれが起こると理解していたかどうかは定かではありませんが…」
会場が静まり返った。
今まで自然災害として認知されていた災害が敵対している「テロリスト」の手による人災だと民衆が知れば、プラントと関係の無いコーディネイターへの迫害はさらに加速するだろう。
「しかし、これは我々にとっては武器となり得ます。ザフトは、強奪したGシリーズの技術をベースにビーム兵器を主体とした新型MSの開発を行っていると思われます。そこで…」
モニターがまた切り替わる。映し出されたのは、ガンダムタイプのような、異様なシルエットを持つMSだった。
「デカルト大尉のX102にNジャマーを搭載、来るべき新型MSとの交戦を前提とした特殊電撃戦仕様への改装を提案します。」
「…自分の機体で宜しいのですか?02は大破状態、おまけにパイロットは片腕隻眼の負傷状態ですが?」
「改装は変形機構も含む大規模なものです、改装というより新造に近いでしょう。Nジャマーはその制御には状況に合わせた非常に高負荷の制御が不可欠です。大尉の情報処理能力はかなりのものとお聞きしていますので問題も無いかと。」
「大尉には失礼だが…だからといってこんな状態でパイロットが務まるのか?」
「心配は無用です。それに併せ、大尉にはNジャマー制御の為、機体制御兼用のニューロンアクセス型BMIシステムの施術を行い、同時に欠損した部位に軍用の義眼と義手を装着。単独でのオペレーション実行能力の付与も行う予定です。尤も、大尉が了承するならばの話ですが…」
嫌みだ。話し方に確実に嫌みが混ざっている。
"アレにやられただけで終わる気は無いのでしょう?"
脳量子波にそんな台詞が乗っかってくる。こちらの足元を見ることにも躊躇いは無しか。馬鹿にしてくれる。
「…任務完遂後への投資と考えればいい話さ。こっちは戦果を上げなきゃ捨てられる運命だ、任務遂行能力は早いとこ取り戻したい」
「…了解しました。予算は我が社から出します。こちらとしてはパフォーマンスが出来る良い機会でもありますので。では、これにて…」
会議室から参加者が続々と退出していく。ある者はせせら笑いながら、ある者はデカルトの行方を心配しながら。

 
 

「…大丈夫か、大尉?聞いたところ、改造手術さながらの内容じゃないか。」
チェスターがハイネマンを伴ってデカルトに近づいてきた。何やら、後ろのハイネマンが妙に嬉しそうだ。
「自分は、半ば傭兵のようなものです。戦果を伴って初めて見返りを受け取れる。それが生きる為に必要ならば、拒絶する訳にもいかない…」
「ま、判らなくもないかな。俺だって同じだし」
ハイネマンが茶化す。まるで新入りをいびる先輩のようだ。
「ハイネマン…お前ひょっとしてどんな改造結果になるか楽しみにしてないか?」
「わ…悪かったな…デカルト同士…」
「…否定しないのか」
「…ま、まぁ…サイボーグ仲間が増えるってことで…」
「…お前なぁ…」
そんな気まずい空気を吹き飛ばそうとしたのか、チェスターがこんな言葉を呟いた。
「…サイボーグかぁ…ドリルとか付かないのかねぇ…」
「「付かねぇよ!!」」
ふと、どうでもいい不安に駆られるデカルトだった。

 
 

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