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ドムトルーパー開発秘話

Last-modified: 2013-12-23 (月) 20:36:12

広がる閃光。望みも果たせず、唯一の肉親にも裏切られた。
そしてその愛しく憎い妹が今、私から妹を奪った男と共に立ちはだかり、目前に迫りつつある。
間に合わない。間に合うはずもない。彼らのMSも、このアプサラスも満身創痍。死に向かって最期の一歩を踏み出すのみ。
収束しつつあるメガ粒子の光が葬送の花束だ。
ああ、何も生み出すことは無かった。何も手にすることは無かった。
そして、拳が振り上げられ…
無性に悲しかった。無性に可笑しかった。
最期の瞬間にアイナの顔がハッキリと見えた。以前に写真で見た連邦の男と抱き合い、決別の涙を流し、射るような眼差しで
こちらを見ている。
不思議と笑みがこぼれた。ああ。そうか…私…は…

インターフォンが耳障りな音を立てて鳴り、私は束の間の微睡みから現実へと引き戻された。
…現実…?
さて、今私が生きていると感じているこれは現実なのだろうか。この冗談のような世界は。

工廠への入り口へ向かうと、兵が無言のまま敬礼で迎える。見慣れた光景だ。
…彼らの制服が「ザフト」と呼ばれる勢力のものでなければ。

私。ギニアス・サハリンは、あの瞬間まさに死んだ。
荒れ狂うメガ粒子砲の光の奔流。その死のオーロラを突き破り、巨大な拳が私を…
最後に耳朶を打つアイナの絶叫。
そうだ。死んだ…はずなのだ。
だが結果はどうだ。次に気付くと星の海を漂っていた。なるほどこれが私の世界か。
誰にも救ってもらえず、誰も救おうとしなかった私には、この凍てついた無限の輝きの中で永遠に漂うのがお似合いなのかもしれない。
圧壊したはずのコクピットは未だ原形を留め、しかし機体コンディションは記憶にあるまま。冷却装置は狙撃兵のビームに貫かれ、
主武装のメガ粒子砲は崩壊。辛うじて三基あるジェネレータは健在だが、飛行のためのミノフスキークラフトは損壊。今はこうして
私の棺として漂うのみ。
そういえばアイナはあの時「鉄の子宮」と悲しげに吐き捨てていた。確かに私には似合いだ。

…そして、ふと視界の隅に映るものがあった。
やがてそれは見慣れぬ形のMSとなり、私は何処かへ曳航されていった。

その後のことはまさしく夢物語のようだ。
コーディネイター、ナチュラル、プラント、ザフト、地球連合。
私を救った者たちにとり、私と私のアプサラスは非常に興味深いものとして映ったようだ。
不思議と混乱はなかった。
私自身が既に狂っていたのだから、今更夢物語の一つや二つ、どうと言うことはない。
問われるままに語り、乞われるままに教えた。
興味深いことに、彼らの次期主力機と目されるMSには聞き慣れたザク、グフ、ドムと言った名が、私の知るそれらと同じ
コンセプトと共に冠されていた。

私を回収したのは、彼らの中でもかなり特殊な勢力であるらしい。
ジオン公国の宇宙要塞・ソロモンよりもはるかに小規模ではあるが、艦船のドックや補給施設。果てはMSの生産ラインまで備えた、
小惑星を利用した基地。そこに彼らは身を潜めていたのだ。

私がここに来てどれほどの月日が流れたろうか。周辺が慌ただしくなり、経験から私は戦争の匂いを嗅ぎ分けていた。
とりわけ彼らの頭目である若い女性…余程のカリスマを持つ存在らしい…は危険な存在だった。
常に微笑みを浮かべる彼女の考えは、まったく読み取れない。
だが、私は彼女と契約をした。世界がどうなろうと知ったことではない。私は既に死んだ身だ。
…いや、私は本能的に悟っていた。
先に挙げた、彼らの次期生産機には、私と同様の知識を持つ者が関わっている。
ならば…ならば私はもう一度会えるかもしれないのだ。
彼女はこの世界で巨大な影響力を持つ人間。裏で手を回してこれだけの施設を維持管理し、戦闘艦を、最新機材のMSを用意できるのだ。
異世界からやってきた人間を捜し出すことすら可能かもしれない。
私があの状況下でこうしてここにいるということは…きっと、アイナも…

アイナは私を憎んでいるだろう。それも良い。私は狂人なのだから。私は彼女の夢も未来も踏み躙ったのだから。
それでも…狂った私の望みはただひとつ。一目でも良い。彼女に憎まれても良い。
この期に及んで。あれだけのことをしておきながら。私はアイナに、もう一度会いたいと願っている。
そのために私は乞われるまま、アイナの望まぬ殺戮のための機械を。MSを造る。
私の造ったMSが何百人、何千人の罪無き人を殺戮しようが構わぬ。私はとうに狂い、私のたったひとつの望みはそれよりも重いのだ。
そうだ。工廠の技術陣が頭を抱える問題を一つ解決する簡単な方法があった。
確かアプサラスに搭載されているジェネレータは…

追記。
型式番号ZGMF-XX09T。通称ドムトルーパーは、計画していたオーバースペックともとれる重武装と高機動を得るためには従来の
駆動方式では出力不足を来しており、基本設計と実験機以降、その開発は滞っていた。
CE73年。試験的な少数生産に入る直前、機体と設計図、技術者が消失。
直後、ザフトによる「オペレーション・フューリー」の最中に3機のドムトルーパーが戦場に現れたが、その性能は凄まじく、
並み居るセカンドステージMSでも歯が立たない状態であった。
3機のドムトルーパーの駆動方式は未だ明らかではない…

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