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ブリッジに(仮)

Last-modified: 2014-03-07 (金) 22:48:17

ブリッジに入るとキャプテンシートの中年の男が入口に振り返る

 

「新人さんか、もうすぐ宇宙に出るから自室で待機
 上がったらこっちはいいからMS隊に挨拶してきてくれ」

 

半ば門前払いのような形でブリッジの出入りの挨拶と命令への返事を済ませる
自室に戻ると部屋が揺れ始め、丁度出発の為の移動が始まったところだった
荷物と自分を壁に掛けてあるベルトで固定し待つこと数分
オペレーターのカウントダウンが艦内に響き、その後強烈に壁に押し付けられルードウィヒは宇宙に上がった

 

『艦長のエルード・ブキャナン少佐である、艦内全室に通達、ここからビッグリングまではまだ少しある
 各作業班は早いうちにミーティングを行うように、そして責任者は1時間後にブリッジに集合だ、以上』

 

かなり時間が経ったように感じたが、体が勝手に浮いてることで無事に上がれたことを確認すると
ランドは荷物をまとめて設置されたモニターのスイッチを入れる
新着メッセージからMSパイロットのミーティングの場所を確認し格納庫に向かう
丁度全員揃ったようで、階級章で見て1番偉い男が話し出す

 

「この艦のMS隊の小隊長を任されたバレオ少尉だ、全員の命を預かる者として全力を尽くす、よろしく」

 

隊長が簡潔に自己紹介を終えると、だれともなく挨拶していき顔ぶれを覚える
男ばかりで花が無いなんてことには誰もこだわらない、全員かなりの経歴を持っていて
元特殊部隊とは言え片田舎から出張ってきたランドへ視線が集まる

 

「さっきのとこで加わった、ランド曹長であります、やりがいのある仕事が…」
「俺は気にしてるけどよ、みんなは気にしてんのかな」

 

自己紹介と意気込みを語っているとランドの前でしゃがみこんでいた男がふと呟く
全員の視線がその男に集まった時、艦内に警告音が鳴りMS隊には戦闘配備が命じられた

 

「さっきも自己紹介したけど俺はピット、あんたと同じ曹長ってことで、よろしく」

 

ランドは握手を求められるが、ピットのニヤついた表情と今の状況から誤魔化すように自分の機体に向かう

 

ルードウィヒから出撃したランド達MS小隊は彼方から迫る光を注視する
母艦の姿は確認できないが向こうは3機、ランド達は6機と数の上では勝っている

 

『敵は少数だ、散開しつつ全員で集中して1機ずつ落とすぞ』
「了解、おい」
『おう?なんだよ』

 

小隊長からの通信に答えると回線を切り替えて、さっきの男に話しかける

 

「さっきのは、どういうつもりだ?態々喧嘩売ってくれたのか?」
『みんなお前が足手まといじゃないかと思ってたからな、誰かが言わないと無言でお前に押し付けただろう』
「感じ悪い野郎だな、空気読んだってか」
『上っ面はそうだけど違うよ、まだ誰も気付いてない……お前だけ言葉の色が違った、さっき嘘ついただろ』
「何だと、お前何か知ってるのか?」
『おーっとお客さんだ、集中しないと死んでしまうぞ』

 

アラートが正面からの発砲を警告する、ランドは一発ドッズライフル牽制して敵の攻撃を避けて前進する
牽制弾で囮の役が決まったランドにヴェイガンの機体が迫る
ランド機がライフルを腰にマウントし、ビームサーベルを引き抜いた瞬間
ビームの穿光が後方から頭を掠める様に、同様に前方で掌からサーベルを出したドラドの頭を撃ち抜いた

 

『1番機より各機、作戦変更だ5番機ランドがフォワード、まっすぐ押し上げてやれ』
(くそ、あんなギリギリのとこで撃ちやがって、頭部にダメージ表示されてんじゃねぇか)
『待て、全員止まれ……敵が引いてる、どうやら先頭のだけがやる気だったみたいだな』

 

結局この戦闘では目立った動きは無かったものの、あまり連帯感は期待できないことが分かった
ルードウィヒの格納庫に戻ったランドは、メカマンに頭の傷について聞かれたが特に答えなかった

 

(これ以上ここの奴らの笑いの種にされたらめんどくさそうだしな…)

 

少し不機嫌になったランドは宇宙に出てから何も口にしてないことに気づいて食堂に向かった

 

食堂で一人食事を摂っていると、対面の席にピットがプレートに食事を乗せわざと音が出るように座る

 

「お前も成果上げてここに来たんだろ、Xラウンダーって奴か?」
「オレのは少し違う……持ってたって戦いに有利になるような物じゃない
 ただちょっと私生活やデスクワークに便利な、そんな感覚だ」
「それで、今は何しに来たんだ?」
「いやさっきの戦闘でフォワード買って出たろ?みんな見直してたよ」

 

もう殆ど食べ終わっているランドはスプーンを置いてピットを見る
ピットの方は会話しながらでも気にせず食べ続けていた

 

「お前がここに来た本当の理由を知りたいんだ、興味本位で」
「そうだな……一部だけバラすなら、一刻も早く戦いから逃げるために敢えて最前線に来たって感じ?」
「嘘じゃなさそうな辺り余計わからんな、改めて俺はピット・クレイトン、よろしく
 特殊部隊出身って聞いてるけど、田舎にそんなもん必要なの?」
「部隊にいたのは2年前までだ、そこから前線が嫌になってあの町に引っ越した
 まぁ結局いざこざはどこにでもあるけどさ」

 

テーブルの上で握手すると、2人で残った食事を片付けて食堂を出る
自分たちの部屋に戻る廊下で、ピットと彼の感覚について話した

 

「初見の人も医者も勘違いするけどとにかく俺はXラウンダーじゃないんだ、そうだなぁ
 食事は大体味と色が一致してる、自然環境で言えば匂いも音も色も大体一致してる
 でも人の言葉は少しだけ違う、思ったことそのままを言葉にはできない」
「イカれた新興宗教のグループならこの前潰したばかりだが、お前より簡潔に話してくれたよ」
「感覚的な問題なんだって、俺だって言葉じゃ伝えられないかも」
「わかったよ、とにかく言葉や文字に色が付いてるんだろ?
 次会うのは2時間後の待機室だから、そこでゆっくり説明してくれ」

 

ランドが部屋に戻って持ち込んだ荷物を整理すると、バッグの中にMS隊のメンバーの簡単な資料を見つけた
分厚い指示書の中に入っていた為流していたが、挨拶から戦闘までの当たりの悪さを思い出し
待機室当番までの時間を確認しタイマーをセットすると、ベッドに転がって指示書を見始めた

 

「だからさぁ、色とか音とかで分かるって言っても大体な訳よ」
「ほー、じゃあオレの手札も大体分かるだろ、なら降りるか降りないかハッキリしてくれ」
「いや、ちょっと待てよ……」

 

集められたMS隊の資料に目を通したランドは時間通り待機室当番を交代し
格納庫の中にある待機室でピットの話を聞きながらカードをやっていた
待機室には彼らとバレオの3人でいるが、バレオは無愛想なまま窓から格納庫の作業を眺めている

 

「隊長もやります?ビッグリングまでまだまだ長いし、ただ待っててもしょうがないですよ」
「結構だ、余り得意じゃないんでね」
「俺ごと敵撃とうとしたことに気を使ってるとか?」
「いや全く、ただ気分も乗らないしな」

 

窓に向かったまま答え、謝罪する気は毛頭ないらしい
資料によるとこの男、以前にも味方が乗ったMSを撃っているらしい
経緯は不明だがその件で辺境コロニーに飛ばされ、少ししてお呼びが掛かったのだ

 

「よしじゃあ乗った!2ペアだ!」
「フォーカードな、お前ホントに見えてんのか?」
「あれ、おっかしいな……次行こう次」

 

結局実の無い雑談とカードをしている内に時間は過ぎ、襲撃にも合わないまま総司令部に到着したルードウィヒ
実験兵器取り付け作業でMS隊がプロジェクトの作業班と合流する中、本部の人が格納庫に来てランドに招集をかける
ビッグリングに入っていくつもある会議室の中から場所を確認して会議室に入る
余り大きな部屋ではないがモニターがいくつもあり、そのうちいくつかには将校服の面々と
ランドが元いた基地の司令も映っていた、少しして部屋にもう一人男が入ってきてランドの横に立つと
真ん中の椅子が回転し、既に座っていた男の存在に気づく

 

「始めよう、みなさんも画面越しにまで遠慮することはありませんよ」

 

一言出すと画面の将官も座り、全員の視線が自分ともう一人の男に向く
ここまできてやっと気づいたが隣の男は同じMS隊のメンバーだった

 

目の前にいる男の胸には勲章が連なり、階級章もおよそ一般兵では間近に見れないレベルの物である

 

「休んでよろしい、連邦軍諜報統括部長のセッツァだ
 ランド曹長とジェノ曹長か…ここまで調子はどうだったかな?」
「ハッ!一度ヴェイガンと交戦しましたが、特に問題はありませんでした」
「同じく、順調であります」

 

ランドの横に立った男もまた資料の中に居た男、ジェノと言う男は今まで志願して前線を渡り歩いていた
いくつかの部隊を回り、連邦軍特殊機動部隊「ドッズ・ダイバー」に来た所を声が掛かったのだ
この特殊部隊はランドが少し前まで所属していた、最前線での活動を目的としたチームで
実行された作戦はどれも危険で、それに伴う人の出入りが中々な頻度で起こっていた

 

「そうか……まぁいい、お前たちはこのプロジェクトへの参加とは別の目的で来てもらった
 わかってると思うが地球に潜伏したヴェイガンやテロ組織へ兵器を与えてる輩がいてな……」
(こいつも俺と同じか、っていうか2人しかいないのか)
「……と、言うわけでドッズドーザーでも長生きしている君たちに声が掛かったってことだ」

 

副司令の話を聞きながらランドは考えるが、出てくる疑問は悉く副司令が説明してくれた
どうやらモニターに映ってるのは地球上の基地の司令官で、ヴェイガン絡みの事件が起きた地域の指揮官だった
本部直轄の諜報部はある程度情報を掴んでいたようで
地球に潜り込んだヴェイガンを支援する部隊の捜索・撃破を望んだが、それが敵にバレないよう
新兵器の実験部隊を並行させることで、情報を最低限で秘匿し敵の誘引と調査を進めていた

 

「今回で3度目だ、新型MS、戦術兵器の開発、2度とも実在の計画に付随させたのだが
 眼前の敵は倒せてもその元までは特定できなかった。そのせいで宇宙ではこちらの防御に終りが見えん
 いい加減に奴らの拠点の一つでも見つけねば、いつまでも受け身になってしまう
 艦長のブキャナン少佐にも話は通してある、敵の痕跡を見つけたら可能な限り追跡してくれ、以上だ」

 

2人でサッっと敬礼して廊下に出ると、ランドは同じ立場の人間がいると知り少し安心するが
本部から艦に戻る途中、一緒に呼ばれていたジェノが突っかかってきた

 

「よぉランド、噂の腰抜けが仲間だったんだなぁ感激だよ」
「どっかであったっけ?それとも…」
「ドロップアウトした奴は、田舎に籠って実戦を忘れたような奴は足手まといなんだ」

 

廊下で突っかかられたと思うと今度は胸倉をつかまれる、ジェノは作戦の仲間がランドだと知って怒っていた
資料によると2年前ランドが転戦に次ぐ転戦に嫌気が差して転属願いを出したのは
ジェノがドッズドーザーにスカウトされた直後の事で
MS戦を勝ち残ってスカウトされたジェノの自負と責任感が『前線嫌い』というランドの姿勢を許せなかったのだ

 

「下らない事でカッカするなよ、お前もさっさと終わらせたいだろ?」
「貴様のような無責任な奴と一緒なんてな、手を抜くようなら俺が殺してやるから」
「安心しろ、手を抜いてあいつらとやり合えるなんて思っちゃいない」

 

ジェノは口から声というより怒りの音を出してサッサと廊下を歩いていった
服装を整えながらランドはこの作戦の先行きにため息を吐いた
少しして後、ルードウィヒに戻ると格納庫では作業を終えたパイロットメカニックが騒いでいた

 

「おうお前何してたんだよ!カッコよく改修作業終わった祝いだ祝い!」

 

酒でも飲んでるのかと思ったが、よく見たらいつもの食時プレートでただ騒いで食べてるだけである
パイロットは小隊6人の内隊長のとランドとジェノを抜いた3人
ピットと少し前戦闘が始まる直前に自己紹介を聞いただけのヘンゾとダニエルだった

 

「隊長はどこ行ったんだよ」
「気が乗らないんだと、仕方ないからヘンゾとダニエルだけでも呼んだのさ」

 

MSの足元には酒も無いのに盛り上がってバカ話をする作業員達で詰め詰めだった
艦の改修が終わってもう出る時間も近いので、ランドは絡まれないようにそそくさと自室に戻る
ベッドに転がって資料を開くと同時にオペレータの艦内放送が始まり、ルードウィヒはビッグリングを出た
予定通りならまずは衛星軌道で新兵器の実験テスト、これを成功させなければ元も子もない
目標ポイントまでそう遠くはないらしく、部屋のモニターに配信された新しい待機室のシフトに変化は無かった

 
 

 
 

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