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プロローグ「願いの行方は…」

Last-modified: 2013-12-18 (水) 08:07:51
 

「では最後の質問を…あなたの望む未来とは?」
「…スペースノイドとアースノイドが共に理解をし、
互いを尊重し、手を取り合いより良き世界を育む事です。
私はそうなるように願っています。」

 

昼間だと言うのにカーテンが閉めきられ、
窓には板が無数に打ち付けられている部屋の中で
グレイのスーツとライトブルーのシャツを羽織い、
黄色いネクタイをしめている男は両膝に両肘に当てて、
向かいのソファに座る端整な顔をした男性の言葉に耳を傾けている。
テーブルにはボイスレコーダーが置かれており
残りのバッテリーはあと僅か。
この取材がかなりの長時間であった事が伺えた。

 

「…ありがとうございました。
あなたのような方とお話できて、良い体験になりました。」
「こちらこそありがとう…えぇっと……」

 

インタビューを行っていた男が静かに立ち上がり、
開いたスーツのボタンを締めると、向かいに座る男に握手を求めた。
男もそれに応じ、スッと立ち上がると
彼の名前を発しようとするものの思い出せず、
目の前のテーブルに置かれた名刺を見やる。

 

「フリージャーナリストのカイ・シデンです。
ジョージ・グレンさん。どうかお気をつけて…あなたの周りは敵だらけだ。」

 

彼の言葉に反応するように微笑むような表情で答えるカイ・シデン。
インタビュー取材を受けていた男はジョージ・グレン元連邦軍大佐。
カイ・シデンは固く握った手を離し彼の身を案じる言葉を投げかけた。

 

「お心遣いありがとう。
カイさん。あなたの記事が良い記事になる事を願っているよ。
またお会いできる日を楽しみにしている。」

 

カイは彼の見送りを受けながら、
暗く閉ざされたその異常とも言える部屋を後にした。

 

しかしジョージ・グレンは再び彼に取材を受ける事はなかった。
この数日後、彼は帰らぬ人となった。

 
 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 
 

彼の生まれ故郷であるサイド1アプリリウス市では彼を見送ろうと多くの人々が葬儀に参列していた。アプリリウス市のアルバート市長を始め、人々はジョージ・グレンの功績を称え彼との別れを惜しんだのだ。

 

数日後、アルバート市長はコーディネイターへの民衆からの差別や
弾圧を訴える為に中立国家オーブを始め、
地球を行脚し演説を行った。
しかし、オーブ以外ではコーディネイターに対する目は冷ややかだった。
時に罵声が飛び、
暴徒により演説が中止となるなど厳しい現実を突きつけられた。

 

連邦政府も同様だった。
胎児期における遺伝子操作は重大な違法行為であり、
世論と共に連邦政府はコーディネイターを簡単に容認する事をしなかった。

 

翌年、弾圧や差別に耐えかね、
政府からも見捨てられたアプリリウス市を含めた、
コーディネイターが住む120基余りのコロニーの市長や住民達は
一つの国家としての自治独立要求を声高に訴えた。

 

中立国オーブは彼らの独立を認めるように連邦政府に働きかけるが、
政府は独立に対して強い反対の意思を示したのだった。

 

彼らの住むコロニー群は各サイドでもっとも経済面に影響を与え、
尚且つ農業用プラントやコロニーから良質な穀物、野菜、家畜を産出していた。
いわば連邦政府にとって経済の中枢とも言えるコロニーだった。
それはコーディネイターという基盤があってこそであり、
コロニーだけで自活が出来るという事が明らかになれば、他のコロニーに住む者達の連邦政府へ脱却の足掛かりとなる原因になると危惧していたからに他ならなかった。

 
 

コーディネイター達による自治独立を要求するデモ活動が盛んになり、
まもなくして驚愕の事件が起きる。
サイド1・42バンチの農業用コロニー
ユニウスセブンへ連邦軍内部の強硬派による核攻撃が行われたのである。

 

後に『血のバレンタイン』と呼ばれる悲劇だった。

 
 

連邦の強硬派の独断行動に焦り、
世論からの糾弾を恐れ保守に凝り固まった連邦政府は、
すぐさまコーディネイターの過激派テロリストによる自作自演と発表した。

 

この発表に憤慨したアプリリウス市アルバート市長は
連邦首都ダカールに飛び立った。
しかし、彼の抗議が認められる事もなく発表は覆らなかった。

 

悲劇はユニウスセブンだけにとどまらなかった。
ダカールからの帰路に発ったアルバート市長を乗せたシャトルが、
大気圏突入と共に爆発事故を起こし、市長を含めた乗員、乗客が死亡した。

 

この報を受けたコーディネイターはすぐさまこれを暗殺だと主張
ダカールに集まり大規模な暴動が起こす。

 

この暴動の鎮圧に向かったのは
強硬派が差し向けた連邦軍警察だった。
この暴動でおよそ50人のコーディネイターが死亡。
200人が逮捕されるという大きな事件に発展してしまった。

 

再三の弾圧や差別による過酷な仕打ちによって、
コーディネイターの住むコロニー群の市長達は民衆を味方につけ、
120基からなるコロニー群を一つにまとめた国家、
『プラント』と名付け独立を宣言。
プラントは独立に際して独自政府を設立。
最高評議会議長としてアルバート市長の後任である、
アプリリウス市長のパトリック・ザラがその席に座った。
さらに一年戦争の生き残りでプラント出身である連邦軍人達や
士官学校生を集め、軍事組織『Z.A.F.T.』(ザフト)を設立。
それと同時に連邦政府、及び連邦軍に対して宣戦布告したのである。

 
 

ザフト軍はその類稀なる順応性と頭脳、
身体能力を武器に一年戦争以降、
軍縮を行っていた連邦軍を圧倒して行く。
そして、ザフトの地球降下を簡単に許すと
オーストラリア北部と西部、東ヨーロッパ地区、
アメリカ西海岸地区をザフト軍に制圧されてしまう。

 

この混乱に乗じて地球に息を潜めていたジオン残党も
各地で頻繁にゲリラ作戦を展開。
横腹を突かれた連邦軍はザフトのみならず
ジオン残党にまで硝酸を舐める事になった。

 

連邦政府内部ではプラントの独立や
ジオン残党の蜂起を抑えきれなかった保守派や穏健派は
その立場を弱くし、強硬派が連邦政府を掌握する事になった。

 

そして、プラントとの対立以前にジオン残党軍との小競り合いが続く連邦政府は、
反スペースノイド派のアースノイド至上主義組織『ティターンズ』を結成。

 

連邦を掌握したティターンズのジャミトフ・ハイマン中将は、瞬く間に勢力を拡大し、
各地で劣勢だった戦局を立て直していった。

 

ティターンズ派が占める強硬派体制となった連邦政府は更なる反発を生まない為に、
プラントを含めたスペースノイドを押さえつける政策を打ち出して行った。
これにより連邦軍とプラント、スペースノイドとの間に大きな溝がさらに深まって行くのだった。

 
 
 
 

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