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ミネルバの(仮)

Last-modified: 2017-06-10 (土) 21:36:51

 ミネルバのメインオペレイター席に腰を下ろし、メイリン=ホークは新品の感触を
存分に味わった。何と言っても新型艦だ、過剰といえるほどに生活環境が充実している。
 メイリンは鼻歌なんぞを口ずさみながら、艦橋で微調整をこなしつつ将来設計に
思いをはせた。順風満帆と言うにふさわしい、見事な船出を飾ろうとしている。
 姉を追って訓練施設に入りザフトレッドを目指したが体力が足りずに落第。意気消沈
していたところにオペレーターとしての適正を見出され、猛勉強の末見事にミネルバの
メインオペレーターの座を手にした。

 

「戦争なんて起きないわよね、あんな大きな戦いがあったばっかなんだし」

 

 艦長のタリア=グラディスは朝から難しい顔をして嫌な予感がすると連発しているが、
大きなイベントの前には誰だって不安を感じるものだ。本人曰く「戦気を感じる」
らしいが、珍しく神経質になっている上司に返って親近感を覚えたぐらいだ。

 

「メイリン、異常は無い?」

 

 だから、朝からブリッジクルーを殆ど艦橋に缶詰にしてクロスチェックを徹底させる
艦長が、十五回目の質問をしてきても比較的鷹揚な気分で答えを返すことが出来た。

 

「はい艦長、艦内は機関部から通信網に至るまでオールグリーン、異常なしです。
第二艦橋にも連絡をとって二重に検査しましたが、不調なセンサーもありません」

 

 赤毛のツインテールを振って向き直りながら報告する声には、ひょっとしたら少し
険が篭っていたかもしれない。

 

「そう、艦内の異常ではないのかしら」
「そんなに気になる物なんですか? 艦長」

 

 メイリンの質問に、タリアは目頭を押さえながら答えた。

 

「気のせいかも知れないけれど、首の後ろに刺すような嫌な感じがあるの。
前の戦争の時にもこんな感触があったわ」
「へえ、それって何時の事です?」
「……アラスカよ」

 
 

 それきりタリアは艦長席に腰を落ち着けたまま自分の考えに没頭し始めた。
艦橋にはいちいち動き回りながら各員のディスプレイを覗き込む副長の足音だけが
聞こえてくる。
 タリアの顔に苦い表情を読み取ったメイリンは自分の無思慮を恥じて、再び
艦全体のコンディションチェックに回った。ディスプレイの中では目で追えないほどの
情報が流れ、時折それを停止させては一段深いレベルでの走査を行った。

 

 まさか……ね

 

 メイリン自身は前回の大戦には参戦していないが、その激しさだけは連日伝えられた
ニュースだけでも十分にうかがい知ることが出来た。
 何時も何時も有利な戦況だけを伝える国営放送に、マスメディアの欺瞞を知っていた
メイリンもザフトの勝利を疑わなかった。そしてアラスカ。大戦が終わったときには
戦争に参加した者の内五人に一人がプラントに帰ってこなかった。
 そんなのは御免だ。自分はこのミネルバでキャリアを積んだ後は、首都のアプリリウスで
後方の仕事に付くのだ。軍での経験を生かした仕事に就き、素敵な人と恋愛をして家庭を持ち
そして――――

 

 モニターに警告色のマークが灯った。

 

「メイリン、コンディションイエロウ発令。シンをパイロットルームに、
ルナマリアとレイも呼び戻して」

 

 タリアが即座に立ち上がって有無を言わせない口調で命令を下した。メイリンは
信じてもいない神に向かって悪態をついた。呪われようと知った事か。

 
 

 コンディションイエロウの発令から凡そ十分、ミネルバ艦橋はアーモリー・ワン側の
軍部と慌しく情報を交わしていた。必然的にメイリンの仕事は増えることになるが、
メイリンを辟易させたのは扱う情報の量ではなく、その出鱈目さだった。

 

『数十名の侵入者と格納庫で戦闘している、増援が向かった』

 

 という報告があったかと思うと、三十秒後には

 

『数名の賊がモビルスーツを奪い破壊活動を行っている』

 

 となっていた。数十名の賊は何処に言ったのか、と問えば

 

『わからない、格納庫近くに居た警備員の死体しか見当たらない』

 

 と返ってきた。とにかく報告の八割は『確認中』、残りの二割は『不明』であった。
 メイリンはタリアに取り次ぎながら、モビルスーツの操縦席にすし詰めにされた
テロリストを想像した。人死にがあったのに失礼ではあるが、格納庫に横たわる
死屍累累を思い描くのに抵抗があったためである。
 艦長はといえば、直通回線で『偉い人』との話中だった、頻りにコンディションを
イエロウからレッドへと移行させるようにと薦めていたが、権限と縄張りの壁に
阻まれていた。

 

「ですから、こちらからモビルスーツを派遣して少しでも安全な方策を練ることが――」
『グラディス艦長、何度も申し上げたとおりこちらの戦力で十分に対応可能だ。
先制攻撃を受けて混乱していたがすでに指揮系統は機能している』

 

 貴艦は非常事態に備えて待機せよ、とだけ言い残して通信は途絶えた。険しい顔の
タリアが通信機の端末を力任せに叩きつけ、どこかのパーツが割れる音が響く。

 

「テストステータスの機体一つ無力化できないで! 完全に非常事態じゃない!」

 

 階級を持たないとはいえザフトは厳然たる軍隊組織であり、いかなる戦力も命令が
無くては整備さえしてはいけない。

 

「縄張り争いで逐次投入の愚を――!」

 

 通信相手を呪い殺すような声でタリアは断じた、奴は無能だ。

 
 

 ザフトの構成員は役職に応じて細かく定められた私的権限と公的権限を持ち、
これが実質的な階級として上意下達の向きを決めている。タリアの持つ艦長としての
権限ではミネルバを準戦闘状態に移行させることは出来ても、勝手に戦闘させることは
出来ない。特にコロニー=プラントの中では。

 

「メイリン、シンを機体に搭乗、待機させて頂戴」
「出撃ですか? 命令は――」

 

 命令違反を気にするアーサー副長の声に落ち着きを取り戻した声で答える。

 

「じきに向こうから頭を下げてくるわ。極少人数で新型を三体も持ち去った腕、
下手をすると本艦にも伸びてくる」

 

 アーサーが普段から決して良いとは言えない顔色を更に青くして声を上げた。

 

「ええっ! それは本艦が出港する可能性もあるということですか!」
「そうよ、奪うつもりなら必ず外に母艦が待機している筈。戦闘用の武装はしていない
けれど、あの三機のポテンシャルであれば逃げ切れても不思議じゃないわ」

 

 いっそ中破したザクでも転がり込んでくれればね、とタリアは嘆じた。戦闘で損傷した
味方が艦体に接近すればミネルバは自動的に戦闘状態に移行し、モビルスーツを
発進させる権限を得る。

 

「出来るだけの備えはさせて貰いましょう。メイリン、艦内のチェックを、最悪本艦は
緊急シークエンスで発進するわ」
「モビルスーツ――インパルスの発進は如何いたしますか? 艦長」

 

 ミネルバ最大の特徴、セカンドシリーズの隠し玉であるインパルスの発進には
効率的だか何か知らないが特殊な手順を要する。メイリンとしては緊急シークエンスは
避けたかった、事故を起こせば簡単にパイロットが死ぬような発進方法なのだ。

 

「そうね、確かにインパルスの発進は他に余り例を見ないやり方だわ、危険も多い」

 

 だが『やる気』になったタリアはメイリンに更なる圧力をかけてきた。

 

「だからこの際、発進の最短記録を出しておきなさい。目標は60秒よ」

 
 

 ミスで友人が死ぬという重圧をかけられた後で、メイリンを呼び出す信号があった。
ミネルバの責任者であるタリアではなく、オペレイターに過ぎないメイリンを直接。
しかも呼び出し人は――姉。猛烈に嫌な予感がした。
 震える指で操作盤に触れる、色と髪型の違う自分が映っていた。まさかね、と
自分の危機感をメイリンは必死で否定しようとした。姉も自分も今は軍人なのだ、
よもやプライベートのような無茶はいわないだろう、と。

 

『メイリン! 良かった、繋がった』

 

 だがそんな予想は姉の前では役に立たないと知らされる。

 

『お願い、ソードシルエットを、貸して』

 

 姉は「服貸して」と同じ容易さでそんな無理を言った。

 

「そんな! 無理に決まってるじゃない、おねえ――ルナマリア=ホーク!」
『だって、これガナーなのよ。エクスカリバーが欲しいの、ミネルバから射出して』

 

 ああ、おねえちゃん、メイリンは心の中で大げさなため息をついた。
 そんな「ズボンは暑いからスカートがいいわ」みたいな口調で無理を言わないで、
 一遍――――不幸になれ。

 

『あ、今一瞬私の事呪ったでしょう、首筋がぞくっとしたわよ!』
「そんなのお姉ちゃんに分かる訳無いじゃない」
『分かるわよ、私があんただったらここで呪うもの』

 

 てめえ、メイリンかろうじてその言葉を飲み込んだ。

 

「大体お姉ちゃんに、フライヤーを飛ばさせる権利なんて無いじゃない」
『あら、当然あるわよ、私今戦闘中だもの』

 

 ルナマリアはあっさりと指摘した。余裕綽々の表情で講釈を垂れてみせる。

#br『インパルスが来てないならミネルバは未だイエロウでしょ? 私は今戦闘の真っ最中
だからレッドで然も赤服よ、だから私にはミネルバに対して、モビルスーツは駄目でも
装備を提供してもらう権限があるの』

 

 テキストまで指定して『復習しなさい』とさえ言われた。

 
 

『もういいわ、艦長に代わって頂戴』

 

 最初にそう言え、という雑言は漏れなかったか気にしつつ通信回線を繋いだ。
メイリンの職務と権限は、艦長に伝達する情報に優先順位をつけられる事だ。
戦闘中のパイロットからの連絡を、タリアは今最も欲している筈であった。

 

「ルナマリア、現在の場所と状況は? 敵は何なの?」
『は、艦長。現在の位置はブロックNのハンガー街道であります、細かい位置は
移動中ですから申し上げられません』

 

 妹に対するものとは打って変わって毅然とした態度と表情で質問に答えた。
元々の容姿が良い為に、真面目そうな顔をすれば幾らでも真剣に見えるのだ。
ルナマリアは矢継ぎ早に繰り出される質問にてきぱきと回答し、貴重な情報をもたらした。

 

「それで、あなたは何故、ソードシルエットを要求しているの?」
『は、それにつきましては現地で確保した"ザク"が……ガナーでしたので』

 

 その瞬間ブリッジ全員を包んだ奇妙な空気を、もし音声化すればこうなる。
 あちゃーーー。

 

『スラッシュの方に乗っておりましたら、とうの昔に無力化出来ましたが』
『自分も、味方に後ろから撃破されるのは、不本意であります』

 

 ルナマリア機とのデータリンクを介してレイが通信を送ってくる。その映像に
時折ノイズが走るのは、機体のアンテナ近くに電波を乱すような存在があるからだ。
それはたとえば高速の荷電粒子――ビーム。

 

「レイ、味方はどれくらい残っているの?」

 

 艦長の質問。

 

『たった今ゲイツの部隊が全滅しました、敵はエース級ですね』
『艦長、私とレイで抑えるためにも、ソードを射出して下さい』

 

 タリアは束の間の逡巡を見せたが、直に決断するとメイリンに向かって
ソードシルエットの射出を命じた。拙速は巧遅に勝る。

 
 

「アビーさん、緊急シークエンス! フライヤー射出です、武装はソード」
『ええっ! インパルスは無しで?』

 

 第二艦橋で航法管制を請け負うアビー=ウィンザーに連絡を取る。

 

「前線のルナマリア機がエクスカリバーを欲しがって居ます――本当は
あんまりお姉ちゃんに刃物を持たせたくないんだけど」

 

 通信に一瞬の間が空いた、アビーはきっと天を仰いでいるのだろう。

 

『まさかフライヤーシステムの実戦初使用が宅急便代わりとは、ね』

 

 緊急シークエンスが開始された。数々の確認過程を殆ど飛ばし、速さだけを
追求した手順で最短時間での射出を目指す。無駄口を叩いているように聞こえる
二人であったが、その視線は致命的な障害を探すべくモニター上を動き回り、
その手は目視が困難なほどの速さでコンソールを操作していた。

 

「緊急速度でフライヤーをデッキに移動」
『進路良し、カタパルト問題なし』
「フライヤーの定着と同時にゲート開放」
『了解、定着まで3、2、1、ゲート開放開始しました』

 

 阿吽の呼吸をで発進準備を整えていく。メイリンは艦長席のに向かって
確認の視線を送った、白服のタリアが毅然としてうなずく。

 

「シルエットフライヤー、発進どうぞ!」

 

 緊急シークエンス開始からわずか三十秒、シルエットフライヤーがその身に
長大な二本の銘刀"エクスカリバー"を抱えて、女神の腕の中から飛び立った。
 ミネルバの初実戦、それは前線の士官へと装備を届けること。ひょっとしたら
これからこき使われるかもしれないという碌でもない予感を感じながらも、
メイリンは高揚を隠せなかった。
 そして緊急コール、先程は余裕の表情でタリアを突っぱねていた『偉い人』が
苦虫を噛み潰したような表情で画面に映し出されていた。
 ――遅かったわね、この穀潰し。
 メイリンの目には応対するタリアがそんな笑みを浮かべているように見えた。

 
 

 ミネルバからフライヤーが射出されたことを確認したルナマリアは、ハンガーの影から
ザクの体を半分だけ出すと"オルトロス"高エネルギー長射程ビーム砲を発射した、
最低出力で連射効率を上昇させ至近弾を狙う。
 かすった――白いザクファントムに。

 

『ルナマリア、撃つな! 大人しくソードの到着を待て!』

 

 僚機――ザクファントムのレイから慌てて通信が入る。平謝りしながら、ルナマリアは
思い切ってガナーウィザードを排除した。役に立たない重りを背負っていても意味が無い。
 大出力のビーム砲と其処にエネルギーを供給していたバッテリーがまとめて排除され、
ルナマリア機は73トンの身軽な素体のみとなって走った。

 

「てえぇぇーーーーい!」

 

 左肩から伸びるアームが支える盾から戦斧を取り出してビームの刃を発生させ、
巨大な狼――ガイアに向かって振り下ろす、今しがたレイ機が投擲した戦斧を
弾いたばかりであったガイアはバランスを崩し、回避もままならない筈であった。

 

「――ッ! 躱すですって!?」

 

 猫科の猛獣のごとき異常な反応、胴体に打ち込まれる筈であったトマホークは
身を捻って曲芸的な着地を遂げたガイアに躱されていた。
 本気で打ち込みを行ったザクがたたらを踏みかける、OSが補正できない崩れに
凡百のパイロットであれば慌てて体勢を立て直そうとしただろう。
 ――ルナマリアは平凡なパイロットではなかった。むしろそのままザクを
倒れこませるようにスピンさせると、自分に向かって迫っているはずのガイアに
向かって再び戦斧の一撃を放つ。
 激突、ルナマリア会心の一撃はザクを噛み殺そうとしていた狼の牙――頭部の
ビームサーベルとぶつかり合い、その片方をへし折った。
 ガイアは弾き飛ばされ、ザクは地面に転がる。

 
 

「――よしッ!」
『ルナマリア、右だ!』

 

 心中でガッツポーズをとるルナマリアの耳に、レイからの警告が届く。
まずい、カオスが構えたビームライフルの銃口がルナマリア機のコックピットを
狙っていた。
 ルナマリアはザクを立ち上がらせる愚を犯すことなく、地上を二転三転させて
ビームの火線を外して行った。
 流石に人間が転がるようには行かない、ごつごつした武装が地面に引っかかりながら
回るので、ルナマリアはミキサーの中に放り込まれたように激しいGに襲われた。
 レイの掩護によってカオスからの射撃が途切れた間に機体を立ち上がらせると、
覆いかぶさってくるように突進してきたガイアを闘牛士宜しく躱す。

 

 ルナマリアは敵機のパイロットに強力な重圧を感じていた。如何にセカンドシリーズ
とはいっても、自分とレイの乗るザク二機を相手に、テストステータスのままで
十全に張り合っている。VPSさえ展開させずに戦闘を続ける敵に、ルナマリアは
痛く矜持を傷つけられていた。

 

「ザフトレッドが舐められたまま、逃がすわけにはいかないわよ」

 

 灰色の獣が左右に飛び跳ねながら接近してきた。トマホークは先程転がった際に
盾諸共外れて仕舞っている。ルナマリアは軽くバックステップを踏ませて間合いを
取ると、腰にマウントされていた手榴弾を放った。

 

 成人男性ぐらいの重量がある手榴弾は、地面に着くか否かというタイミングで信管を
作動させた。内部の炸薬によってかなりの範囲に破片と爆風を撒き散らす。

 

「――! あの異常な反応、一体何者?」

 

 ルナマリアは相手パイロットに対する疑いをいっそう強くする。絶妙なタイミングで
投擲した手榴弾はOSの緊急回避も間に合わないぐらい炸裂までの時間を短くしていた
にも関わらず、ガイアは機敏な動きで攻撃範囲から退いて見せたのだ。
 エース級パイロットのように先読みの結果回避できたという動きではなかった、
嘘臭いまでの反応速度。ルナマリアの脳裏にエクステンデッドという単語が浮かぶ。

 

「ま、今考えても仕方のないことよね」
『ルナマリア、ソードが届くぞ。早めに受け取れ』

 

 カオスと対峙しつつモニターを見る余裕の或るレイが、ルナマリアに告げる。
ルナマリアはレイに掩護を頼みつつ、シルエットフライヤーとの交差地点を模索した。
 飛行する無人機など眼前の二機にとっては的も同然だろう。

 
 

「とは言ったものの、簡単には受け取らせてはくれないわよね」

 

 画面に映るガイアからの殺気をひしひしと感じつつ、ソードを受け取る瞬間を探る。
エクスカリバーをザクの手に握れば、地母神の名を冠したこのMSに対して優位に立てる。
しかし不用意に無人機と接触すれば、一瞬の内にガイアの顎は喉笛を噛み千切るであろう。
 操縦席のモニターに、フライヤーとのデータリンクが繋がれた事を示すマークが灯った。
これで無人機を或る程度は操作しつつ、格納した装備を投下させる事が出来る。
 ルナマリアは、自機を危険にさらす事も止むを得ない、そう判断した。

 

「レイ! カオスの方を――」
『任せろ!!』

 

 以心伝心――訓練所以来の付き合いは伊達ではない、レイ機は猛然とビームライフルを
連射してカオスの動きを封じ込めた。遮蔽物の多い場所でプラント内部であるため出力は
最低に抑えねばならないが、その分連射性を高めた射撃は損害に繋がらないまでもカオスの
機動を完璧に封じ込めた。ルナマリアにとっては貴重な時間が出来る。

 

「いくわよ、間に合って――頂戴!」

 

 ルナマリアは手榴弾で一瞬だけガイアとの間合いを離すと、手元に操作盤を引き寄せて
フライヤーに指示を送った。わずか4秒足らずの早業。MSキャリアーが行き来できる
大道路沿いにフライヤーを呼び出し、道路沿いに超低空で飛行させた。
 タイミングが勝負だ。もはやモニターで無人機の細かい位置まで確認する余裕が無い。
ルナマリアは殆ど勘で、武器を受け取りに道路へと飛び出すタイミングを計らなければ
ならなかった。
 半秒早ければ無防備な内に獣に食い殺され、逆に半秒遅ければフライヤーはは飛び去り
矢張り自分は死ぬ。

 

「――――今よ!」

 

 そしてルナマリアは飛び出した。フライヤーは――遠い。後を追って灰色の狼が路地から
飛び出す。遮蔽物は無く、武装は尽きた。ガイアが頭部のビームサーベルに火を入れる。

 

 ――四分の一秒、遅い!!

 

 ルナマリアの背骨を氷の如き悪寒が駆け巡った。このままでは武器を手にする直前、
ガイアの牙がコックピットを貫く。

 
 

「――――ッ!」

 

 ルナマリアが大きなダメージ――或いは死を覚悟した瞬間、緑の影が横合いから
ガイアに向かってぶつかった。ザクウォーリアの突撃。半秒の一秒の余裕が生まれる。

 

「誰だか知らないけど、助かったわ!」 

 

 赤いザクは無人機ら放出された二本の鋼剣"エクスカリバー"レーザー対艦刀を受け取る。

 

「だから――後は任せなさい!」

 

 マニューバをフルマニュアルに切り替え二振りの長剣を連結、頭上で過剰に回転させて
"決め"のポーズを取らせる。本来これを振ることは無い筈のザクには入力されていない筈の
モーションであったが、かなりの重量を持つ対大型構造物用ソードをいとも軽々と振るう。
ルナマリアの技量のたまものである。

 

「さあ、幾らでも来なさい。三枚におろしてあげるわ!」

 

 エクスカリバーを両手に構えたザクに、ガイアは迂闊に突進する様な事は無かった。
割り込んでくれた緑のザクはガイアに片腕を吹き飛ばされ、ハンガーに埋もれていた。
パイロットの生死は不明、コックピットに直撃弾は無いから、後で会うことがあれば
お礼を言っておこう。
 そっちからやってこないならこっちから。ルナマリアの駆る赤い巨人が、伝承に謳われた
武器を手に地母神に迫る。

 
 

「受け渡しはちゃんと出来た様だな、ルナマリア」

 

 スラッシュウィザードを背負った白いザクファントム、そのコックピットで
金髪の青年は母艦に向かって帰還するシルエットフライヤーの姿を確認した。

 

「これでガイアとは五分以上……ならば」

 

 レイは射撃のモードを掩護から撃破を目的としたものに切り替える。これによって
発射されるビームは太く破壊力のあるものとなり、変わりに貫通力を失って周囲への
被害を少なく出来る。

 

「俺がカオスに負ける要素は――無い!」

 

 そしてカオスのコックピットへと向けて、直撃を狙った射撃を開始した。
その時カオスは密かに背面のポッドを切り離し、レイ機の背後から白い機体を狙っていた。
レイはそれに気付いたが、全く慌てる事無く牽制を続ける。なぜなら――

 

「任せたぞ、シン――」
『――――応!』

 

 ――なぜならレイの僚機、戦闘機コアスプレンダーが機首の機銃でポッドを掃射し、
照準を散らすと分かっていたからだ。
 ビームは逸れてハンガーの残骸を一つ、直撃した。ポッドがカオスに回収される。
 ――ようやく真打登場か。
 レイはザクとカオスの上を通り過ぎる四つの影を見送った。それらは戦闘を続ける
モビルスーツの頭上で機動を交わし、合体。一機のモビルスーツとして
カオスとガイアを見下ろした。

 

 フォースインパルスガンダム――ザフトセカンドシリーズの隠し玉。
 それに乗るパイロット、シン=アスカはビームライフルをカオスに向けながら、
戦場となったハンガーブロックの惨状を目の当たりにした。
 怒りに燃える瞳の真紅が、一層その深みを増す。

 

「こんな――こんな事を!」

 

 フラッシュバック――焼ける大地、砕ける人間、冷えてゆく腕、残されたもの。
 シンは思い出す、シンは忘れない、シンは許さない。家族を奪うものを。

 

 怒りが、喉を突き破って吼えた。

 

「また戦争がしたいって言うのかよ! あんたたちはーー!」

 
 

首脳会談編 新人スレ旧まとめ 「こっちの情報に無い――新型だと!?」(仮)?

 

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