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一条祭_オムニバス-01

Last-modified: 2007-11-11 (日) 20:55:13

1

ミ「……どうしてこうなっちゃったんだろうね、私達」

一つのシーツに包まり、隣に寝ているシンを見つめながら呟くミーア。

シ「……多分、寂しいからだろ。俺達が」
シ「誰もわかってくれない気持ちを抱えてる同士だから……」
ミ「寂しい者同士の、傷の舐め合いってこと?」
シ「かもな」

歯に衣着せぬ物言いにも否定しないシンに寄り添い、その肩に顔を預けるミーア。

ミ「……でも、私はそれでもいい」
ミ「だって、少なくても今は隣に私をわかってくれる人がいるんだもの」
ミ「私は、それだけでいい……」

そう呟きながら、ミーアはまるでその温もりを確かめるようにさらにシンに寄り添う。

ミ「シン、あったかい……」
シ「……俺があったかいんじゃないよ」
ミ「え……?」
シ「ミーアが俺をあたためてくれるんだ」

年に似合わない気取ったシンのセリフに、クスリと笑うミーア。

ミ「クスッ……ちょっとカッコつけすぎじゃない?」
シ「こんな時ぐらい、カッコつけさせてくれよ」
ミ「ダメ。私といる時はシンはシンのままでいて」
ミ「私が『ラクス』じゃなくて『ミーア』でいられるように……」
シ「ミーア……」
ミ「私、わかるの。シンは皆が言うような怖い人じゃなくて、本当はすごく優しい人なんだって」
ミ「ただ、優しいから苦しいことも辛いことも忘れられない……忘れちゃいけないって思ってる」
ミ「優しすぎるから……全部、自分で背負おうとしてる」
シ「……」
「ホント……優しすぎるよ、シンは。見てるこっちが辛くなるぐらい」
「だから、せめて私の前では本当のシンでいて。ね?」
シ「っ……ミーア」

ミーアの言葉に、思わず涙ぐみそうになるシン。
涙を見せまいとミーアにしがみつき、その胸に顔を埋める。

ミ「ちょ、シ、シン?」
シ「……やっぱりミーアはあったかいや……」

ミーアのぬくもりを感じ、それまでの気負ったものではない声で呟くシン。

シ「俺……いや、僕がミーアを守るよ……」
シ「ぼく……が……守る……から……」
ミ「シン?」
シ「……」

ミーアの胸に抱かれ、いつしか眠りについているシン。

ミ「シン……」

年相応の少年らしい寝顔のシンに微笑み、シンの身体をそっと抱きしめるミーア。
今、この瞬間だけは戦争も孤独も無い、あたたかく優しい世界に二人はいたのだった……。

2

ミーアと一夜を過ごし、彼女と別れるとシンは待機室に入った。
室内には既にレイがいる。
昨夜は部屋に戻らなかったシンは、奇妙な後ろめたさを感じつつも
レイに声をかける機会を伺っていたが、先に声をかけたのはレイのほうだった。

レ「……昨夜は彼女と一緒だったのか?」
シ「!!」

単刀直入なレイの言葉に、驚きを隠し切れないシン。

シ「レ、レイ……!」
レ「一緒だったんだな」
シ「あ……お、俺……っ」
レ「別に責めるつもりは無い。ただ確認しているだけだ」

短くレイがそう言うと、今度はシンが口を開く。

シ「……何でわかったんだ?」
レ「お前は考えていることが顔に出すぎる」

咄嗟に自分の顔に手をやるシンを見ても、レイは表情を崩さず言葉を続ける。

レ「今のお前からは、あたたかく穏やかなものを感じる」
シ「そう……なのか?」
レ「ああ。これまでのお前からは感じられなかったものだ」
シ「……」

何と答えていいのかわからないシンは、ただ沈黙を守るしかなかった。

レ「お前は言うなれば研ぎ澄まされた抜き身の剣だ。敵を断つことには優れているが、その分、脆い」
シ「……」
レ「剣には鞘が必要だ。これまでは俺がその役目をしてきたが……お前は見つけたんだな、自分自身の鞘を」

シンを見つめ、ほんの少しだけレイが微笑む。
その微笑が、シンにはたまらなく嬉しかった。

シ「あ、ああ!」
レ「だが、剣は切れ味が鈍っては意味が無い。わかるな?」
シ「もちろんだ」

力強く答えるシンの声には、これまでにない決意が溢れている。

シ「俺達は議長の目指す、平和な世界を切り開くための剣だ」
シ「そのためには、どんな敵とでも戦う……それが例え『本物のラクス・クライン』でも、だ」
シ「そうだろ、レイ?」
レ「そうだ」

迷いの無いシンの言葉に、レイはシンを頼もしげに見やる。

レ「どうやら俺の取り越し苦労だったようだな。彼女と共にあることでお前が弱くなってはとも思ったが……」
レ「お前は守るべきもののためになら、どこまでも強くなれる男だ」
シ「レイ……」

レイに認められた嬉しさに笑みを浮かべるシン。
その時、アラームが鳴り響く。

レ「行くぞ、シン」
シ「ああ!」

部屋を飛び出し、MSデッキに向かうシンとレイ。

シ(ラクス・クライン……)
シ(例え本物だろうが、議長の理想を……そしてミーアの妨げになるのなら、俺はそれを討つ!)

この戦いで、全ての決着をつける。
その決意に、シンの瞳は炎よりもなお熱い紅の輝きを放っていた。

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