Top > 機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第21話
HTML convert time to 0.005 sec.


機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第21話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 19:23:10

――なるほど、ルフィもつかまる訳だ、これは……!

 デュランダル・ギルバート――今は、服従の面によってシンを倒すと言う命令を実行するマシンと化して
しまっている彼の揮うカミカミの実の能力は、決して侮る事の出来ぬものだった。
 波うちながら伸びる髪が縒り合わさり、十数本にもなる触腕となって四方八方から襲いかかってくる。
 その先端は鋭く尖り、雪面はおろか、人体などもたやすく貫きかねないだろう。また、ひとたび絡め取ら
れてしまえば、その強靭な締め付けによって動きが止められしまうに違いない。
 ゴム人間であるルフィですら、身動きがかなわぬ程だったのだ。
 悪魔の実の能力によって、髪の毛の強靭さ自体が増していると考えて良いだろう。

 また、その触腕と化した髪束の動きも俊敏で、シンにしても剃を駆使しなければ避け続けるのが難しい。
 更に性質が悪いのは。

「くっ……エクスカリバー!!」

 いい加減避けきれず、真空波を飛ばして髪束の何本かを切り飛ばすものの、そこで一旦動きが止まりこそ
すれ、切った端から髪はどんどん伸びて再生していく。
 やがて――

「しまった!!」

 ついに、髪束の一本が、シンの右足首を捕らえた。髪束は強烈に締め上げながら、月歩で宙に浮いていた
シンを強引に地面に引き摺り下ろし、更に、そこに数本の髪束が鋭く尖らせた先端を向けて襲い掛かる。

「鉄塊!!」

 とっさの鉄塊によって、致命傷は免れ得たが、トレードマークでもあるザフトレッドの制服はずたずたに
切り裂かれてしまった。更に髪束はシンの全身に纏わり付き、強烈に締め上げようとする。

「ぐっ……!!」
「おいコラしっかりしろクソ赤服!! くっそ……どうして動けねえんだよ、こんな時に!!」
「黙って見てろ、サンジ」
「ああ?! 見てろってお前、ありゃあどう見たってやべえだろうが!」
「シンはこんな事じゃくたばったりしねえよ。アイツが止めるって言ったんだ。だったら、止めるさ」

 サンジとルフィの会話は、シンの耳にも入っていた。

 ったく、言ってくれるよなあ、ウチの船長は。けど、だったらその信頼には――応えないとな。

 とは言ったものの、両面宿難を持った腕をどうにか動かそうとして見るが、髪束によって絡め取られたそ
れは、容易に動かせず、それ所か、髪束はシンの全身を大きく空中に振り上げると、そのまま城の外壁へと
思い切り強く叩き付けた。轟音が響き、壁の一部に穴が開く。

「なっ……幾ら何でもありゃあまずくねえか?」
「…………」
「まーっはっはっは!! ざまあ見ろ!! 王様である俺に逆らうからだこのカバめが!!!」

 サンジが青くなり、ルフィは黙したまま、ワポルが快哉を叫ぶ。更に、バクバクショックによって合体さ
せられたチェスマーリモと戦っていたチョッパーも、愕然とした様子でシンの方に視線を走らせた。

「さあギルバート、次はこいつらだ!! その調子で一気にたたんでしまえ!!」

 ワポルが勝ち誇り、命令を下したその時。

「嵐脚!!!」

 城壁に空いた大穴――雪煙と土ぼこりでけぶる中から、複数の真空波が飛び、髪束を悉く切り飛ばしてい
く。直後「剃!!」と言う叫びと共にシンが飛び出して来た。シンは空中で進路を変え、城壁の頂にしゃが
みこむように着地した。

「ぐっ……シ、シン……!!」

 ギルバートは、仮面に覆われた頭を両手で抱えつつ、その仮面越しにシンの姿を見据えていた。その歯は
強く食いしばられ、口元からは血さえ滲み出していた。頭を抱える両手は、仮面を掴みつぶそうとでも言う
かのように力が篭められ、その指先では、あまりの握力に爪が割れ、指先にも血が滲んでいた。

「私は……良い、構わず、やれ……!」

 ギルバートにも解ってはいた。シンは明らかに自分を必要以上に傷つけぬように戦っていたのだと。だが、
ほとんど暴走状態にある自分の能力を前に、そんな事をしていては、シンの方が危うい。だから。

「やりたまえ……私を、殺すつもりで! 君には、君にならその権利がある!!!」

 シンは、あの世界での戦いにおいて、自分に最後まで従ってくれた最後の兵の一人だった。
 クライン派の者達はおろかアスラン・ザラ、メイリン・ホーク、果てはイザーク・ジュール率いるジュー
ル隊までもが自分達に弓を引く中、レイと共に最後まで自分達の側に立ってくれていた。
 だが、そんなシンに対し、自分は何をもって報いただろうか。
 自分とレイ、タリアはまだ良かっただろう。失意の内とは言え、あの世界での最後の瞬間は、幸せだった
とは言えまいか。

 シンに代表されるような、兵達を差し置いて。そもそも、自分は彼と言う存在を利用しかしていなかった
のではないか。

 自分は政治家であり、シンは兵士であった。その関係性は、そもそもがそうしたものであろう等と言う考
えは、むしろ唾棄すべきであると、ギルバートは考えていた。
 彼は自分を信じ、自分の提示した未来像に賭けてくれた。最後の最後まで、テーブルを離れる事なくつき
あってくれた。
 自分はその信頼を裏切ったも同然なのだ。だから、シンには自分を糾弾し、殺す権利とてある筈だと。

 だが。

「ふ ざ け ん な !!!」

 帰ってきたのは、そんな罵声だった。

「俺の話聞いてなかったんすか。アンタを殺して止める? 誰がそんな事言った! 俺は、レイと約束した
んだよ、アンタを助けるって!! アンタを殺してくれなんて、レイは一言だって言ってない!!」

 そう言い切り、シンはもはやずたずたになった赤服をかなぐり捨てた。寒風が肌を刺すが、怒りに全身を滾
らせたシンには、いまやさしたる事でもなかった。

「ドルトンさんから、ヒルルクって人の事も少し聞いた。その人が、この国の病気を治そうと、人からヤブ医
者呼ばわりされて、どれだけ蔑まれても、絶対に諦めようとしなかった事も聞いた。その人がどんな死に様だっ
たかも、この耳で俺は聞いたんだ!!」
「!!……アイツ」

 城壁の上で叫ぶシンの言葉に、チョッパーの記憶が呼び覚まされる。事情を知らぬ者たちにも、それが凄絶
なものであっただろう事だけは、はっきりと伝わった。そして。

「アンタも――それを見ていた筈だ!! その眼で!! 聞いた筈だ!! その耳で!!!」
「ぐっ……く……!!!!」
「そんな男が決死の思いで『戦った』この場所で、誰が諦めてたまるもんか! 俺はもう、殺す為だけの力な
んか、欲しいとは思わない!!!」

――俺が騙されただけか。病人はいねえのか、良かった。

 心の底から安堵するあの声をどうして忘れられるだろう。良い人生だったと言い切り、自ら爆死してみせた
あの姿をどうして忘れられるだろう。
 その姿が、記憶が、ギルバートの脳裏で、シンの姿と重なった。

「行くぞおぉーーーーーっ!!!」

 ギルバートの抵抗もむなしく、城壁を蹴って宙に飛ぶシン目掛けて、重数本の髪の槍が迫る。だが。

「うおおおぉぉりゃああぁぁぁぁぁっ!!!」

 シンの体が、空中で縦に回転する。両手に握った剣と足先から真空波が乱れ撃たれ、迫る髪の槍は悉くなぎ
払われて行く。回転は次第に速度を増し、やがて。

「ス ラ ッ シ ュ エ ッ ジ !!!!」

 もはや一つの回転する刃と化したシンの体は、そのままギルバートの面前目掛けて高速で飛び込んで来た。
 咄嗟に髪の毛が分厚い壁を形成するが、それは重なるそばから切り裂かれて行く。そして。

   ど  ん っ

 剣を振り下ろした形で、シンがギルバートの直前に着地した。と、同時に、硬い金属音と共に、ギルバート
の仮面に、ひびが入り、真っ二つに割れて雪面へと、落ちた。

「あ……ああ……シン」
「お久しぶりです……ギルバートさん」

 ギルバートは、ゆっくりと雪面に膝をついた。荒れ狂っていた髪の毛は全て動きを止め、元の長さへと戻っ
ていった。

−−−−−

 シンとギルバートの戦いが決着した後――事態は、一気に急転して行った。
 チェスマーリモは、ランブルボールによる七段変形を駆使するチョッパーによって撃破され、ワポルはシン
やチョッパーの戦いに周囲が気を取られている隙を狙い、城内へ侵入、ルフィもそれを追って行った。
 シンは、膝をついて落涙するギルバートの側で、その肩に手を掛けていた。と、その両肩に、ふわりと、厚
手のコートが掛けられた。見上げれば、そこには。

「あ……グラディス艦長?!!」
「風邪を引くわよ……久しぶりね、シン」
「タリア……無事だったか」
「ええ」

 微笑んで、タリアもギルバートのすぐ脇に膝を下ろした。

「お疲れ様、ギル」
「私は……私の、して来た事は」
「償いなら、これからすれば良いわ。私も手伝うから。そうでしょう、シン?」
「そうですよ。レイだって、何時か元気になる筈だ。そうしたら、三人で頑張れば良いじゃないですか」
「だが……」
「少なくとも、俺はアンタを怨んだ事なんかありませんよ。アンタは、俺が欲しかった力をくれた。ディステニー
を、俺に預けてくれた。世界から戦争を無くしたいって言うアンタの言葉が、俺には嬉しかった。だから」

 言って、シンは城を見上げた。ドクロの旗が、尖塔の頂上でたなびいていた。
 突如、その隣の尖塔の壁が吹き飛ばされた。恐らく、ルフィとワポルが戦っているのだろう。

「ゴムゴムのボーガン!!」

 やがて、ルフィの叫びと共に、その尖塔の頂上から、ワポルが顔を出した。たなびくドクロに見下ろされ、ワ
ポルの顔が恐怖に染まるのが、見て取れた。

「何の覚悟もねえヤツが、人のドクロに手ぇ出すな!!!」

 拳を打ち合わせて宣告するルフィの姿を見て取り、シンは剃によってその近くにまで飛んだ。

「ルフィ!!」
「ん? 何だシン」
「悪ぃ……俺にも、やらせてくれ」
「な……え? え? えぇぇぇぇええ?!」

 シンの言葉に、一瞬の間を置いてから、ルフィは満面の笑みを見せた。

「よおし、来い、シン!!」
「おお!!」

 ルフィの腕が、シンを掴んで後方へと伸びて行く。シンもそれに合わせて剃を繰り返し、ルフィの腕を限界ま
で引っ張る。

「「ゴム……ゴム……ゴム……ゴム……!!」」
「おいっ、ちょっと待てっ!! おま、お前等に地位と勲章をやろう!!」

 シンとルフィの意図を察し、懐柔の言葉を吐くワポルだったが、二人はそんな物は微塵も意に介さない。
 そんな様子を見上げつつ、チョッパーが、ぽつりともらした。

「ドクトリーヌ……ドラム王国が……!!」
「この国は、ドクロに敗けたのさ……ヒッヒッヒ」
「終るんですね……」
「ああ……終えるんだ。彼等が……!」

 やがて、かつてない程の距離まで、ルフィの腕がシンを掴んだまま遥か後方へと伸ばされ、そして。

「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」
「ああああああ!! じゃ、じゃあ副王様の座をぉぉっ!!!」

 最後の命乞いも虚しく――引き伸ばされたゴムの腕が、剃の加速も加えつつ一気に収縮し、インパクトの直前、
かなう限り最大硬度の鉄塊で全身を硬化させたシンの体が、剃をも凌駕する速度で、ワポル目掛けて叩きつけら
れた。

「ゴ ム ゴ ム の ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !!!!」
「タ ン ホ イ ザ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !!!!」

   ど   ん  っ !!!!

 ワポルは悲鳴すら挙げる暇もなく、遥か空の彼方へと、吹き飛ばされて行った。

To be continued...

】【戻る】【