Top > 機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第35話
HTML convert time to 0.004 sec.


機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第35話

Last-modified: 2012-08-07 (火) 18:05:48

アルバーナ市内、中央広場の時計台には、確かに、砲台が設置されていた。
 ミスター7、ミス・ファザーズデイと言う狙撃に長けたコンビが配されたその砲台に
は、確かに、巨大な砲弾が設置されてもいた。
 導火線によって発射が迫るなか、月歩版のフォースで駆けつけたシンと、ナミの発案
によって地上から皆の協力で一気に砲台めがけて駆け上るビビとが空中で合流、ビビの
クジャッキースラッシャーと、シンのエクスカリバーとがミスター7コンビ越しに砲台
の導火線を切り裂いた。
 にも、かかわらず。
 爆破の危機は変わらず迫り続ける。時限信管付きの砲弾は、明らかにミスター7たち
の事など、一切考慮していないに違いなかった。
 付き従う者のことなど微塵も考慮しないその態度は、ビビたちアラバスタ王家のそれ
とはまったき対極と言えた。
 だからこそなのだろう――王家親衛隊のペルーが、砲弾を携え上空へ飛び去るのを見
ながら、シンは、そう思わずにはいられなかった。
 だからこそ、彼らのような人々が、この国には存在するのだろう。王家の臣下である
ことを誇りとし、その誇りを抱いて笑って死ねるような、そんな人々が。
 そして、そうした気質は、何も彼らのみに限ったわけではないのだ。きっと。
 だからこそ、反乱軍も、王国軍も、それらに参加する者たちは皆いちように、ああし
て必死の思いで戦っているのだろう。
 それが、クロコダイルの策略によってなる、間違った対立だったとしても。
 上空で起こった爆発にすら意識を向けず、彼らはひたすらに己の信じるもののために
剣や拳をふるい続けていた。

「戦いを! やめてください!!」

 そういう、ビビの叫びも、そこには意味がない。

「もう、戦う必要なんてねえのに……」
「皆呑み込まれてるんだわ、戦いの空気に」
「なら、止めるだけだ。手当たりしだいに」

 ウソップとナミの言葉に、シンは、かすかに自嘲めいた苦笑を漏らしつつ言った。

――まるで、戦場に介入してきたあいつ等みたいだな

 そんな風に、思えたのだ。

「今出来るのは、それしかねえな」
「ああ、行くか」
サンジとゾロが踏み出すのにつきあいながら、シンはかぶりを振った。

――まあ、確かに同じと言えば同じだ。しかし、これだけは言える。今ここには、間違
いなく吹き飛ばされちゃいけない花がある。

 どこかで地響きが起こり、クロコダイルが地下から地上、はるか上空までめがけて吹
き飛ばされ、やがて地へと落ちた。

−−−−−

「しっかりしろ、コーザ!」
「おい」

 乱闘の中、地に倒れたコーザは、その手のひらに、確かにその感触を感じ取った。

「ど、どうした?」
「わかるか……戦いが終わる……!」
「え?」

−−−−−

 コーザだけではなかった。
 その時、広場にいたもの全てが、やがてそれを感じ取った。
 否、その時、アラバスタにいたものたち、そのほとんど全てがそれを感じ取った。
 舞い上がる土煙を晴らし、ぽつぽつと、ぱらぱらと、まばらに、やがて濃密に、そ
れは空から舞い落ちてくる。

「狂気が……やんだ?」
「そのようだ、な」
「ナタル少佐……」

 たしぎの背後に、いつの間にか、ナタルたちが来ていた。

「この雨は……いったい」
「まあ、間違ってもスモーカー大佐がパウダーを使ったと言うことではあるまい」
「なら」
「良いじゃないか、どうであろうが。降るべくして降り、終わるべくして終わった。
この国の混乱も、これで収まる」
「……」
ナタルの言葉に、たしぎは俯いたまま沈黙を返した。それに対し、ナタルは小さく
ため息を漏らしたが、地に倒れ気絶しているクロコダイルの方へと、その背中を押し
やった。

「さあ。行ってきたまえ。君の仕事だ」
「でも」
「私の隊は先に捕縛した連中の連行やら何やらで手一杯なのでな。今動けるのは、君
の隊ぐらいしかない。アレを放っておくわけには、いくまい?」
「……わかりました」

 たしぎは、いっそ沈痛な面持ちで横たわるクロコダイルに歩み寄ると、その罪状を
読み上げ、王下七武海としての特権を剥奪の上、逮捕の宣告を下した。

「何であんな落ち込んでるんですかね、たしぎさん」
「……思うところがあるのだろうさ。彼女にも」
「まあ、まじめすぎるからなあ、たしぎさん……と、そう言えば。どうするんです?
いつの間にかいなくなっちゃってますけど」
「ああ、まあ……当人があちらを選んだのなら、まあ仕方はあるまい。選択の権利と
機会は、誰にもあってしかるべきだ」
「はあ……まあ、良いですけどね。どうせ少佐の出世が遅れるだけですし」
「ふん」

 鼻を鳴らし、きびすを返したナタルには、たしぎの気持ちが決して解らないと言う
わけではなかった。
 同列であった筈の者達が、ふと目を離した隙に、自分よりもずっと遠い高みにいる、
その事が、彼女を苦しめているのだ。
 この騒動に際して、ほとんど何もできなかった事が、悔しくてならないのだ。
 だが、そう理解しつつも、ナタルはたしぎに何事かを言うつもりはなかった。
 それは、スモーカーの役割だからだ。
 そして、今のナタルには、より気になる問題があった。

――今回の一件、世界政府は完全に出し抜かれた形となったが、さて、どうやってか
たを付けるつもりだ?

−−−−−

 クロコダイルの捕縛、バロックワークス暗躍の暴露、さまざまな衝撃が、いちどき
に襲い掛かるのに対し、アラバスタの民衆は、ほぼことごとくが戸惑い、後悔にさい
なまれていた。
 そして、それをただし、再び彼らに顔を上げさせたのは、国王、コブラだった。
「立ち直ってみせよ! アラバスタ王国よ!!!」

 遠く、広場の方から響くその大音声と、それに応える歓声を耳にして、シンはよう
やくのこと、その場に腰を下ろした。
 他のメンバーは、コブラが背負っていたルフィも含めて皆すでに疲れ果てた心身を、
降りしきる雨の下に休ませていた。
 比較的ダメージの少ないシンは、彼らが倒れた後、その身を近くの軒下に運びこみ、
一人彼らを見守るように立ち続けていたのだが、ついに、その緊張を支えていた糸も
ぷつりと切れ、その場にあぐらをかいて、降り来る雨に、その身をさらした。

 ないものねだりだとは解っているけれど、やっぱり、少しだけ、思わずにはいられ
ない。
 もし仮に、あのウズミに、あの国王ほどの――いや、やはりそれは。

「言っても仕方のないこと、だよな」

 首から下げた皮袋を軽く握りしめ、相棒に、そう語りかける。
 それは、とうに過ぎ去ったことで、それらを踏まえたからこそ、今自分はここにい
る。それを、自分は理解したはずだ。だから、妹の形見は、お前のところに置いてき
たんだ。
 だから、これは言っても仕方のないこと。
 アレらは全て自分の根っこで、だからそれを忘れたりは決してしないけれど、でも、
それと、あの過去を無かったことにしたいとか、そういう考えとは、決して相容れる
ものじゃないはずだ。

 だから、デスティニー、俺はもう、あいつ等のことを恨むのはやめにするよ。これ
きりにする。アスハ親子も、アスランも、キラ・ヤマトも、ラクス・クラインも、そ
の他の連中も、全部、ひっくるめて。
 この雨で、俺の中に残っているあいつ等への感情全て、洗い流しちまおう。
 それで、良いんだよな、なあ、デスティニー。

 乾いた大地をいつくしむかのように降りしきる雨の中、シンは、改めて眠りの中へ
落ちていった。

To be continued...

】【戻る】【