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機動戦史ガンダムSEED 01話

Last-modified: 2016-07-03 (日) 00:02:49

C・E83 6月14日 オーブ近辺の諸島の島のある島の一つ。

 

――アーガイル開発事業所――

 

 古びたプレハブ三階建ての3階事務所の一番奥の部屋には、
『所長室』と小さな手書きの札が下がっている。

 

 その部屋は乱雑としており、本棚には膨大な資料や書類の束、
本は、薄っぺらな三文文庫小説から分厚い高度な学芸書まで幅広く雑多に並んでいる。
床の周りには資料が山積みとなり床の埃をも隠していた。

 

 その中央の乱雑としてデスクに一人の男が、ノートパソコンを広げながら格闘している。
画面には開発事業資料や土地売買、海底通路の開発、地熱発電の更なる新型の効率法など、
専門分野の人間が目を通さないとわからないものばかりである。

 

 男は作業に一段落が着いたのか、大きく伸びをした。そしてデスクに飾ってある3つのスタンドを眺めた。

 

 一つは中央に赤い髪の少女とその隣に立つまだ少年の頃の自分の写真。
もう、一枚はへリオポリス・カレッジの友人達との集合写真。
そして最後の一枚は自分が、かつて活躍した代表首長府のスタッフの集合写真。

 

 最後の写真の日付けは5年前のものとなっていた。
自分を挟んで中央には金髪のまだ少女の面影を残した女性と、
反対側の女性の隣を、背の高い黒髪で長髪の偉丈夫が立っている。

 

 男は最初の一枚目の写真が飾ってあったスタンドを手に取る。
自分がまだ何者であるかを知らなかった時代――その自分の隣にいた少女は、今はもういない。

 
 

 男はかけている眼鏡を手弄り、元の位置を直すと、
目を細めながらその写真を眺めていた。

 

 もう、思い出になってしまった少女。
昔は苦い思い出だったが、今はもうセピア色の思い出と化してしまった。

 

 もう、一枚の10数年前の集合写真の撮影場所であるヘリオポリスは、
かつてL3に存在したオーブの資源衛星(コロニー)で、自分達が通った工業カレッジがあった場所だ。

 

 あの頃は自分達には無限の未来があると信じていた。

 

 その写真に写っている人物の幾人かはあの戦いで鬼籍に入り、
自分は何の因果か生き残りオーブで生きる事となった。
もう何人かは遥か宇宙のプラントで栄華を謳歌している事だろう。

 

 そして最後の一枚の写真。

 

 オーブ連合首長国代表首長府の主力スタッフの集合写真。
何の因果か、自分が代表首長府の首席補佐官として代表首長を補佐していたのだ。
重要な政策、軍務、全てをこなしていたとはまるで夢のようだ。

 

 男は10年前の軌跡に思いを馳せていた。

 
 

 10年前――オーブ連合首長国オロファト――

 

「私の元から皆、離れてゆく……」

 

 金髪の女性はそう呟きながら、代表首長府の裏庭の大きな一本杉のの寄りかかったまま、夕日を眺めていた。
メサイア戦役と呼ばれる戦いから半年。
オーブは戦後の軋轢を残しながらゆっくりと復興へと向かってつつあった。

 

 その間、多くの政務をこなしながら、女性は自分はわき目も振らずに働いていたと思う。

 

 その間にも地球圏の情勢も大きく変わり、自分の弟とその恋人はプラントへと向かい、その後の連絡は今日までない。
もしかして、一生を共にしてくれるかもしれないと思った男も、新しい恋人と共にプラントへと帰還した。
自分とオーブとどちらを選ぶのか?と聞かれれば『オーブ』と答えるしかないのだ。

 

 自分にはオーブを捨てる事はできない。

 

 仕方がない事なのだ。これが私の選んだ道なのだ、と女性は納得しているが、
自分が急速に孤独になったと気が付いたのは今日のことだ。

 

 共に戦った仲間達は皆、自分の側から離れていった。
もしかしたら、自分だけが彼らを仲間と思っていただけなのかもしれない。

 

 去っていく者を敢えて追わなかった。
女性艦長も恋人と共に去り、砂漠の虎と謳われた男も、歌姫のいるプラントへと去った。

 

 孤独になった自分だけが、オーブに残ったのだ。

 
 

 溜息を吐いていると前方から誰かが近づいて来た。
またあの口うるさい乳母だろうか?

 

 「何の用?」

 

 「おっと!ご挨拶ですな」

 

 それは自分が想像していた乳母の声でなく男の声だった。

 

 「あいも変わらずご機嫌斜めですな。少しは息抜きしてはどうです?仕事のしすぎですよ」

 

 「……息抜きしてる。そうは見えないか?」

 

 「全然」

 

 「フフッ……はっきりいってくれるわね」

 

 「お、女言葉になりましたな。やっと年齢相応の女性らしい話し方をマスターしましたか?」

 

 「私は女――」

 

 「そいつは、なにより」

 

 女性は、ふと気が付いたように独り言を呟いた。

 

 「――そうね。まだ貴方がいたのよね」

 

 誰もが自分の元を去ったけど。

 

 「ん?」

 

 男の方は気が付かない振りをした。男も女性が何を考えていたか十分に承知しているのだ。

 
 

 「……そういえば貴方とも妙な縁で私に付き合う事になったわね。あの頃からの付き合いになるのかしら……?」

 

 「代表は私の事などこれっぽっちの目に入ってなかったでしょうに――」

 

 「あの頃はね……強烈なのが多くいたし、それに私の目も節穴だったわ――」

 

 男との会話は女性にとって大きな息抜きとなった。

 

 激務をこなせたのは、自分一人の仕業ではなく目の前の優秀なスタッフのお陰だと気が付いたのも最近だ。
男は大きく背伸びをすると女性に向かって、

 

 「休憩はそろそろ終わりです。さて、いきましょうか代表閣下?」

 

 「ええ。首席補佐官殿」

 

 女性が先頭に立ち、一歩下がった位置から男は付いて来る。
これが代表首長府の日常の光景になりつつあった。

 
 

続く

 
 

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