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機動戦史ガンダムSEED 04話

Last-modified: 2017-09-26 (火) 21:28:29

「……『ヘリオポリス供戮蓮帖調挈遏覆ち)たわ」

 

 「――なにぃ!?」

 

 アスハ代表の口から漏れた言葉は俺にとって青天の霹靂であった。 
あの軍事防衛拠点である宇宙要塞『ヘリオポリス供戮早々に陥落した?

 

 俺は『ヘリオポリス供戮両楮戮幣霾鵑鯒称△防發び上がらせる。 

 

 確かに軍事的ハードウェアに絶対的なものなど存在しないが、代表府の総力をかけて俺達が手塩にかけて建造したものだ。
開戦序盤で、早々に陥落など先ずは有り得ないのはずなのだが……

 

 『ヘリオポリス供戮呂△蠅佞譴織灰蹈法七燭量閉タイプのものだが、
その内実は最新鋭の防御システムで固め、港宙デッキ完備であり駐留艦隊も常備できる。

 

そして、まだ実際に搭載はされていないのだが、核パルス・エンジンが搭載可能であり、
移動タイプの機動要塞の役割をも果たせるのだ。

 

 いくらとんでもない連中集まりである『ラクス軍』と云えども、短期間でこいつを制圧など考えられない。
堅牢な要塞ほど内部からの攻撃には脆いというのは戦術の常識であり、俺達もそれを踏まえた上で建設に踏み切ったのだ。

 

 イカレタ集団である『ラクシズ』の連中に出し抜かれるほどのヘマはしない自信もある。
アスハ代表は、俺にカマを掛ける為にわざと陥落したと言っているのだろうか?
一応、用心の為に俺はわざと演技を交えて疑問を述べてみる。

 

 「……ハハハッ?ご冗談でしょう?開戦の初っ端で……?」

 
 

 俺は首を竦めながら思わず言葉にする。さすがにそいつはないだろう?と
アスハ代表はどのような反応を示すのだろうか?

 
 

 俺のカマ掛けに対して、アスハ代表は沈痛な面持ちで答える。

 

 「――いいえ。先程も言ったけれども、『ヘリオポリス供戮牢挈遏ラクス軍に制圧されたわ」

 

 ……どうやら真実のようだ。あの要塞の陥落はオーブにとって痛恨の極みであろう。

 

 『ヘリオポリス供戮建設されたあの辺り一帯の宙域は、10数年前のメサイア戦没の際に、未開発宙域としてオーブ領となった。
誰もがあの宙域で何も無い筈だと断言していたのだが、あの宙域を得る前段階で俺達代表府のスタッフ達は緻密な作業の元に、
未発見の希少鉱物資源や大規模なエネルギー資源の供給源として開発に成功した。

 

 そして、僅か10数年で『オーブ』を大国への脱皮へと導いたのだ。

 

 オーブが宇宙要塞の建設や世界有数規模の機動戦力の常時設置などを可能にしたのは、全てこの辺りから賄われたものなのだ。

 

 戦後、『ラクシズ』との泥沼の抗争によって出遅れた大西洋連邦やユーラシア各諸国の地球連合強国も
涎を垂れ流しながらこの宝の宝庫を欲していたのだが、
俺達が築き上げた軍備拡張計画によって世界有数の現有戦力を保持したオーブはその圧力を撥ね退けていたのだ……

 

 ……一気に奪回せねばなるまい。今はまだ地球連合強国や他の諸国、諸勢力が静観している内に。

 

 俺達は、『ヘリオポリス供戮隆挈遒砲茲辰謄薀ス軍に対して宇宙での我が軍の優位性は一気に無くなったという訳だ。 
事態は最悪の方向に向かって走っているらしい。 俺は苦虫の入った顔で続きを促した。

 

 「……第2艦隊は?」

 

 ……緒戦で敗れたとはいえ、それは拠点の制圧のみ。周辺宙域の制圧にはまだ、時間が掛かろう。
艦隊戦に持ち込めばまだ巻き返す機会が必ずあるはず。
駐留艦隊である第2艦隊の残存兵力はこの際、最大のポイントになるはずである。

 

 ソガも百戦錬磨の将のはずだ。撤退戦も率なくこなしている事だろう。ある程度の被害仕方が無い事だ。
防衛ラインを形成して、早急に戦線を構築し直ないと。

 
 

 指揮官として俺以外の別の誰かが前線へ派遣されるにしても、手持ちの戦力が無ければ何ともならないだろう。
今のオーブの財政や軍事力では素早く派遣できる増援がそれ程望めない以上、敗残兵力とは貴重なものである。
第2艦隊の残存兵力を正確に把握しておかないと。

 

 と俺が多少の希望的観測を交えながら戦略上の上奏を唱えようとした矢先に、最悪の結論が俺を待ち受けていたのだ。
現実はやはりシビアで甘くない。悲しい事だが、これが戦争なのだ。絶望が常に友だ。

 

 「……第2艦隊は、ほぼ壊滅したそうよ……」 

 

 なに!全滅だと!?

 

 「……!それでは、ソガは……?」

 

 「ええ――『ヘリオポリス供挧姫匯蔑甦鰻鸞2艦隊司令長官のソガ中将は戦死したわ……」

 

 とアスハ代表は目を閉じ、悲哀が篭った口調で事実を話してくれた。
俺は一瞬目を閉じた。そうか……

 

 「逝ったのか……ソガ……」

 

 と一言だけ口にした。

 

 『旧ウズミ派』の派閥に属していた奴と俺は当然仲が悪く、何度も衝突を繰り返した仲だ。
だが奴は、結局はアスハ代表の為に旧ウズミ派から脱閥してこちら側の人間になった。

 

 当初はソガも俺同様にオーブ社会では裏切り者と罵られていたのだが、奴はその屈辱に耐え抜き、
旧ウズミ派でありながらも新オーブ建設の為に働き功績を残してくれた。
そして、5年前に起きたオーブの内乱とも言うべき『統一戦没』にもカガリ派として参加し、俺達と共に『旧ウズミ派』の反乱軍と戦い抜いたのだ。

 

 ――その点で奴と俺は同志だったのだ。

 

 「――俺みたいな捻くれた悪人は健在で――馬鹿正直な奴ばっかが先に死ぬな……」

 

 ”そう、全くだよな”

 

俺の心の中の悪魔も同意してくれた。

 
 

 「――ミナ。サイに現在の戦況を説明してあげて」

 

 だが、その間にアスハ代表は背後に控えていたロンド・ミナに俺に戦況の説明をさせようとしていた。

 

 既にアスハ代表は、過ぎた事は過ぎた事と認識して、その過ちを教訓とする事ができるような年齢となっている。
起こってしまった過去の失態よりも、これから起きるであろう未来の事象に対して適切な行為を取る方が望ましいのだ。

 

 「――了解した」 

 

 ロンド・ミナは、俺のそんな様子を見ても眉一つ動かさずに
戦況報告を、簡単にまとめた書類を俺に渡しながら説明を始める。

 

 アスハ代表の淡々とした自然体やロンド・ミナの泰然自若とした態度。
……俺もいつまでも奴の死や多くの同志達の死に動揺してはいられないだろう。

 

 俺は一旦は、散っていったソガや多くの同志の喪に服すと、すぐさま、現実へ戻る事となった。
昔から変わらない俺のやり方だ。こうやって俺は多くの逝く人々を見送ってきたのだ。
いずれに俺も同じ『地獄』へ逝くと。それまで待っていろ。

 

 「――『ヘリオポリス供戮牢挈遏『第2艦隊』は開戦直後の『ラクス軍』の猛攻で壊滅した」

 

 ロンド・ミナは先ずは結果論を述べた。
俺は真剣な目で食い入るように書類に並んだ情報を読み取り続ける。

 

 大まかな概要は次の通りだ。

 

 第2艦隊が他の資源衛星の定期巡回寄航中に、『ラクス軍』は制圧戦がメインである精鋭の特殊部隊を『ヘリオポリス供戮愾ったらしい。

 

 らしい……という不完全な報告を見ると完全に不意打ちだったのだろう。
不可侵条約の失効間際に艦隊を予め配置していたのがミソだろう。
さもあらん。かつて地球各国や辺境地帯周辺を嵐のように荒らしまくった筋金入りのテロ連中だ。

 
 

 敵艦隊はミラージュコロイドを形勢して艦隊そのものを隠密行動としている。戦術としては上手い手だ。
敵が予め流した――要塞の制圧の急報と同時に第2艦隊は慌てて帰還しようとする。

 

 そして、その背後を隠れた敵艦隊は慌て秩序と余裕を失った第2艦隊を急襲する。単純だが隙を突いた完璧な攻撃だ。
逆に単純だからこそ、戦巧者のソガが簡単に引っ掛かったのだろう。

 

 敵の艦隊指揮官は相当な奴だな。ラクシズの連中にこれほどの戦いの駆け引きを心得た練達者がいただろうか?
俺は一人だけ思い浮かべるが……あの狡猾な男ならば……

 

 何にせよ情報が少なすぎる上に、この混乱だ。
情報の信頼性は極端に低い。改めて情報収集の為に現場で直接に情報を集めなければならないだろう。

 

 『彼を知り己を知れば百戦危うからず。彼を知らずして己を知れば一勝一敗。
  彼を知らず己を知らざれば戦うごとに必ず危うし』

 

 俺の座右の銘だ。そしてもう一つ。

 

 『謀(はかりごと)多ければ勝ち。謀(はかりごと)少なければ負ける』

 

 勝利する為にはあらゆる手を打ち、労力を決して惜しまない。
あらゆる謀略や調略を駆使して戦場外での状況を整え、戦いは戦場に到達する前に決する。
普通に考えれば何とない常識であり、定番でもある。

 

 だが、これが分からない輩が世間には数多い。
それで俺のような存在が必要とされ、出し抜かれる事となるのだ。

 

 ――頑強な要塞ほど内部に入られれば脆いもの。戦術の定石だ。
 だが、おかしいぞ?何故これほどあっさりと要塞内の侵入を許したのだ?

 
 

 近代歴史上の過去に『ターミナル』と呼ばれるテログループや『クライン派』と呼ばれる『ラクス教』の前身に当たる組織が、
オーブは無論のこと地球連合各国やプラントで内部手引きをするという恐るべきテロ行為の例があった事によって、
地球連合及び我がオーブなど各国では要塞など重要な軍事拠点及び政府施設は
全てが全自動のパスワード及び遺伝子レベルの照合などでセキュリティが大幅にガードされる事となったのだ。

 

 『ラクシズ』の手によって国家間の軍事的ソフトウェアに於ける、人間の相互信頼というものが全く意味のないものにされてしまったのだ。

 

 何時、誰がどうのような状況で裏切るかがわからなくなった。その事は軍事機密などの戦略上での重要項目が人を介しては全くの信用を得る事ができなくなり、
冷徹な判断が出来る機械による厳重な管理体制へと移行される事となった。

 

 そして、防御システム全般が声紋チェック等など、あらゆるチェック項目は人間を介さない全く融通の利かないメカによる管理システムとなってしまった。

 

 ハッカーによる対策セキュリティーも現在では比較にならないほど高くなり、『スーパー・コーディネイタ―』という
いかがわしい連中の能力もこのような『ITセキュリティー技術』の未曾有の発達の前に敗れ去った。

 

 これから幾らでも発展するメカニズム社会の前には、人間が遺伝子を弄るくらいではもう対処不能に成りつつあるのだ。

 

 ――これは『ラクス・クライン』がもたらした人類最大の汚点の一つだろう。 

 

 これが現在の時代の流れだ。従って、内部手引きによってあっさりと要塞内に侵入される理由が見つからない。

 

 それともう一つ、駐留艦隊の定期巡回のコースを敵が何故、どのようにして知ったかだ?
これらは毎回コースのパターンを変えてるはずなんだが……?

 

 俺がこの疑問に対して首を傾げていると……ロンド・ミナの報告は現在の戦況状況に移っていた。

 

 流石と言えば流石だが、『ヘリオポリス供戮攻撃を受けた報告が入るや否や、
アスハ代表や総合作戦本部長を兼ねる首席補佐官殿は第3機動艦隊をすかさず戦線へ投入したそうだ。

 

だが、『鋼のミナ様』も緒戦でヘリオポリス兇搬2艦隊が壊滅するとは予測が付かずに戦線へそのまま導入したらしい。

 

 そして結果として……

 
 

「――現在、『第3艦隊』が防衛ラインを展開している。
 だが序盤の大敗が尾を引いてほぼ半数が壊滅……現在、防戦一方だ」

 

――やはり、戦いを制すのは兵の士気がモノをいう。

 

到着と同時に最前線となった宙域で、第3艦隊は敵に制圧された『ヘリオポリス供戮
敵機動艦隊の挟み撃ちを同時に受け緒戦で痛撃のダメージを艦隊に与えられたと言うのだ。

 

 敵側に取って理想の挟撃体制に物の見事に嵌ったわけだ。
ここで第3艦隊が壊滅し、宙域を抜かれてしまえば、もうお仕舞いだ。 

 

 ……アスハ代表は淡々と語る。

 

 ここでオーブの宙域を完全に制圧されれば、地球本土までほぼ一直線の航路でラクス軍は到達するであろう。
ここから地球連合と協定した宙域を荒らされれば、オーブ本国に席を置く連合強国を含めた各国の首脳部直属の補佐官や外交官も黙ってはいまい。
一気に全面戦争に突入し、世界規模の大大戦が再び勃発する事となろう。

 

 今は、まだオーブVSプラントという対立の枠で収まっているのだ。これ以上戦火を広げる事は望ましくない。
何としても、ラクス軍に対して絶対防衛ラインを形成し、そこから一歩たりとも地球本土直通の宙域を抜かさせる訳にはいかないのだ。

 

 「――はっきり言って国家存亡の危機ね」

 

 と強い口調でキッパリと断言する。そこには微塵も不安や躊躇いなど存在しない。 
全然、絶望してないところが流石というか……このお嬢さんは。
その点、俺はこのお嬢さんを頼もしく思う。よくここまで成長してくれたと。

 

 そして、彼女は説明はもう終わりとばかりに、

 

「さぁ、時間が無いわ。今から貴方には『ラクス軍』迎撃の総司令官として出てもらうわよ――代表府に連絡を!」

 

 と言い放ち、ロンド・ミナや後ろの黒服連中にも指示をてきぱきと与える。
その光景を眩しいそうに見ながら俺は、……む?そう言えば……?
何か重要な事を俺は忘れてはいないだろうか?と思った。

 
 

 そうだ。俺は一番の懸案を代表に聞いていなかった事を思い出した。
慌てて俺はその重要な疑問点を代表に問い質す。

 

 「ちょっーと待った!!戦力は?」

 

 そう、俺が預かるべき手持ちの現有戦力が存在しないのだ。

 

 「――今ある本国の主力部隊は、地球連合強国の抑えの為に動かせないでしょうが?」

 

 戦力がゼロでは、いくら天才の俺でも『ラクス軍』と戦うのは無理なのだ。
徒手空拳で頭のイカレタ連中と戦うほど俺は無謀ではないのだから。
現有戦力第2艦隊は壊滅。第3艦隊もほぼ半数がやられている。手持ちの戦力はゼロ……いや、待てよ。
確かに、一応の戦力はオーブにはまだ存在する。それは本国駐留の『第1機動艦隊』だ

 

 本国にある第1艦隊はオーブの要というべき存在である。
この主力戦力は代表府直属でありロンド・ミナの直接指揮の元にあるのだ。

 

 こいつを動かしたら一大事だ。本国が空っぽになるのは言うまでも無く、
虎視眈々とオーブを狙う外来勢力が付け入る隙に成りかねない。

 

 「その点は問題ないわ」

 

 俺の絶望的な問いに対して、アスハ代表は明るく答えた。

 

 「え……?」

 

俺のその疑問符に対してアスハ代表は、

 

 「――新型のKS型機動戦闘艦の4番艦である通称『クサナギ検戞宗
  これを旗艦とした艦隊とMS部隊のフルセットを付けて『第4機動艦隊』を貴方に進呈するから」

 

 と彼女はあっさりと俺の懸念と疑問に答えてくれました。

 

「――『クサナギ検戞どこからそんなものを……?」

 

 代表はその問いには答えず、俺が怯む位に澄み切った瞳を向けて、

 

「――現在のオーブが持ち得る最強の機動戦力――これを貴方に託すわ」

 

と、そう力強い声で話を締め括った。

 
 

続く

 
 

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