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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第02話

Last-modified: 2011-04-05 (火) 00:40:06
 

「ラスティっ!!」

 

虚しく響く銃声と共に、絶叫が響いたのはその時だった。
刹那に撃たれたザフト兵と同じく、赤いパイロットスーツに身を包んだザフト兵が
先程とは別方向から飛び上がってくる。
先程とは違い素早くサイティングした刹那だったが、
彼の位置からではザフト兵との射線上に女性士官が被ってしまう。
「右に飛べ!」
「えっ!?」
ザフト兵が女性士官目掛けて小銃を連射する。戦友を失った怒りからか、狙いは碌に合わせられていない。
しかし、咄嗟の事に動きが鈍った女性士官を捉えるには十分だった。
「あうっ!!」
連射された銃弾の一発が女性士官の肩を貫通した。
マガジンが空になった小銃を投げ捨て、胸のナイフを抜いたザフト兵が、
倒れる彼女に更なる追撃を加える為に走り寄る。

 

「やめろ―――っ!!!」

 

怒号が響く。女性士官の危機にいち早く対応したのは、援護に付いていた刹那ではなく、
先程までハンガーの影に隠れていたキラだった。
彼はハンガーに文字通り跳び乗ると、そのままの勢いで女性士官に襲い掛かるザフト兵に蹴りを見舞う。
ザフト兵は一歩下がりナイフを構え直す。しかし、直ぐにナイフを下してしまう。
「キラっ?」
「何っ!?」
刹那はキラの身体能力に改めて驚かされる。
しかし、蹴りを辛うじて受け流したザフト兵はそれ以上の衝撃を受けていた。

 

「キラ・・・なのか」
「・・・アスランっ!?」

 

キラも目を見開き、驚きの表情を作る。
「キラ、離れろ!」
動きを止めるザフト兵の足元に、刹那は数発の銃弾を撃ち込む。
ザフト兵はそれに素早く反応、ラウンドムーバーを使って後退した。
「キラ、頃合いだ。シェルターに向かうぞ」
「待って下さい!この人、怪我してて・・・」
銃のマガジンを交換しながら刹那がキラに後退を促すが、彼は肩に被弾した女性士官を気遣っている様だ。
「だが・・・」
彼女は置いて行くしかないと続けようとした刹那の台詞を轟音が遮る。
刹那達がいるハンガーの直ぐ手前にあるハンガーから、赤いガンダムが立ち上がったのだ。
あのMSが飛び立てば、先程と同じ爆風が発生、刹那達を吹き飛ばしてしまうだろう。
「キラ、早くしろ!」
語気を強める刹那だったが、キラはそれに首を振り、女性士官を担いでコクピットに乗り込む。
間髪入れずに赤いMSが飛翔、爆風がハンガー上を襲う。
「くっ」
上半身を引込めて爆風をやり過ごした刹那は、そのまま梯子から離れ、地面に着地した。
「無茶な事は止めろキラ・ヤマト・・・」
無駄だと分かっていても、刹那の口からはキラを心配する声が漏れる。
双眸をギラリと光らせ、灰色のガンダムが立ち上がった。
目の前には先程のジンがマシンガンを構えて待ち構えている。
「駄目か」
諦めを含んだ台詞は、しかし白く変色したガンダムに打ち破られる。
斉射された弾丸を、白いガンダムは腕を顔の前でクロスさせて防御する。
容赦無い弾丸の嵐が白いガンダムを襲った。
回避は一切無し、外し様の無い距離からの斉射はしかし、白いガンダムに傷一つ付けられなかった。
ガンダムに採用された特殊装甲、PS装甲が展開されたのだ。
その結果に一瞬たじろいだジンに、白いガンダムはそのままの体勢で体当たりを掛ける。
まともな回避行動も出来ず、ジンはそのまま連れ去られていった。

 

「・・・・・・」
「うっ・・・うう・・・」
「んっ?」
静かな焦りの眼差しでそれを見送った刹那が、物資に隠れて震えている連合兵を捉える。
「・・・おい」
「ひっ!かっ勘弁してくれ!ザフトの化け物共に、生身の白兵戦で勝てる訳ないだろ!!」
腕を掴んで立ち上がらせた連合兵はすっかり怯えた様子で刹那の事を碌に見ようとしない。
「そんな事は聞いていない。余っているMSはあるか?」
「あっある訳無いだろう!?新型は全部連中が持ってちまったよ!」
「・・・MSの動作確認やなにやらで使われた物で良い」
「・・・確かこの奥のMSドックに実験用のジンが・・・」
「助かる」
それだけ聞いて刹那は連合兵に示された方向に走っていく。
「まっ待てよ!ジンって言っても、装甲も碌に付いてない実験用だぞ!」
連合兵の叫びも聞かず、刹那は一直線にMSドックに向かう。
クアンタを出す事も出来たが、あれを出してはザフト軍にも連合軍にも
更なる混乱を与える事になってしまう。

 

何故自分は、さっきのザフト兵を撃たなかったのか。走りながら刹那は自問自答する。
動きの止まっていたあの状態なら、容易く当てられた筈だ。
しかしそれは出来なかった。理由は分かっている。
刹那の脳量子派が、キラとザフト兵の戸惑いを感じ取ったのだ。
戦場では滅多にお目にかかる事の無い類の、結びつきが生む代物だ。
それを断ち切ってはならないと感じた刹那は、ザフト兵に銃弾を命中させる事が出来なかったのだ。
「ここか・・・」
自問自答している間に刹那が辿り着いたのは、ザフト軍が仕掛けた爆弾によって荒れ果てたMSドックだった。
至る所に吹き飛んだ内装と残っていた物言わぬ整備兵が転がっている。
その隅に、燻る炎に照らされたMSが静かに佇んでいる。
装甲の類は殆どが取り払われ、象徴とも言えるモノアイは遮光性のバイザーによって見えないものの、
その姿は間違い無くMSジンであった。
「動くか?」
刹那は白く塗装されたジンに素早く乗り込むと、次々と計器をチェックしていく。
メイン動力のスイッチをONにすると、低い振動音がコクピット内を揺らした。
「行けるな」
コクピットハッチを閉じると、ジンのオレンジ色のバイザーが光った。
刹那は手短な鉄筋を2本、ジンに握らせると、スロットルを押し込んでキラ達の元に向かった。

 
 

「滅茶苦茶だ!こんなOSで、これだけの機体を動かそうなんて!」
白いガンダムのコクピット内でキラが声を荒げた。
白いガンダムのあまりに酷い動きにOSを覗いてみたのは良いが、動作ルーチンからして出鱈目である。
「まだ開発途中なのよ。仕方ないでしょ!」
負けじと女性士官も言い返す。OSが滅茶苦茶なのは当たり前だ。
鹵獲したジンからコーディネーター用のOSをコピー、
それを模倣しながら何とかナチュラルでも扱える様にと、色々と弄っている途中であったのだから。
しかしモニターに映るジンはそんな事情を汲み取ってくれる訳も無く、
手にした重斬刀で容赦無い突きを繰り出してくる。
「この!」
ジンの突きに合わせてキラが機体を操作、白いガンダムは屈む事で重斬刀の一撃を回避する。
そのままレバーを押し込んで、ジンに体当たりをお見舞いする。
ジンは大きく吹き飛ばされ、ビルにぶつかり尻餅をついた。
「代わって下さい」
「っ!でも・・・」
「早く!」
ジンが体勢を立て直す間に、キラは操縦席に半ば強引に奪った。
備え付けのキーボードを引き出したかと思うと、凄まじいスピードキータイピングを始める。
(この子・・・!)
「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定・・・、チッ!
 なら擬似皮質の分子イオンに制御モジュールを直結!
 ニューラルリンゲージ・ネットワーク、再構築・・・えぇい!
 メタ運動関数!コリオリ偏差修正!運動ルーチン接続! システム、オンライン!ブーストラップ起動!」
キラの凄まじい早口と共に、白いガンダムが生まれ変わっていく。
その手際に、本職の筈の女性士官も目を剥いた。
その間に体勢を立て直したジンがマシンガンを構え、白いガンダムに斉射する。
しかし、今まで回避運動はおろか、防御体勢を取るのが精一杯だった筈の白いガンダムは、
まるで別人の様なステップでそれを回避した。
「これなら・・・!」
アスリートの如く動く白いガンダムにキラが希望を見出す。自分が、ヘリオポリスを守るのだ。
「武器は、イーゲルシュテルンとアーマーシュナイダー・・・これだけか!」
回避運動を取りながら、頭部をジンに向けた白いガンダムがイーゲルシュテルンを斉射する。
少しは怯むと思ったが、ジンはイーゲルシュテルンの銃口の大きさから、
MSには通用しない代物だと読んだ様で、モノアイを左腕で庇いながら怯まずマシンガンを斉射し続ける。
しかもその射撃は、既にキラの回避操作を読んでいた。
走り回る白いガンダムに、吸い込まれるように弾丸の嵐が殺到する。
「うあ、くそっ!」
如何にPS装甲と言えども、受けた実弾の衝撃までは殺せない。
激しくコクピットをシェイクされたキラは、堪らず機体を建物の影に隠した。
「初めて体感する筈の速さなのに、この対応の早さ、間違い無くエースだわ。ここは一旦後退して・・・」
「駄目です!ここにはまだ、沢山の人がいるんだ!」
「でも・・・」
女性士官とキラが問答している間も、ジンが近付いてくる様子は無い。
接近戦ではPS装甲と運動性という絶対的な差があるからだ。
しかしキラもずっと建物の影に隠れている訳にもいかない。
焦っている間に、緊迫した2機の間に大きな声が響いた。
『聞こえるか、連合のパイロット!貴様がそこから出てこないなら、こちらにも考えがあるぞ!』
ジンの外部スピーカーからの音声だ。女性士官がエースと称した、若い青年の声である。
その声に、キラは白いガンダムに建物の影からジンを覗く様操作する。
すると、地面にマシンガンの銃口を向けたジンがモニターに映る。ジンのパイロットは更に続けた。
『所謂人質って奴だ。まぁお前らにオーブの民間人が人質の価値があるかは疑問だが』
「何だって!」
その言葉に、キラは急いで銃口の先を拡大する。
「・・・そんなっ!!」
「あれは・・・」
拡大した映像に映った事態に、キラは驚愕し、女性士官は冷静に受け止める。
マシンガンの銃口の先には、逃げ遅れた民間人がいた。
「サイ、ミリアリア、トール・・・なんで」
「・・・お友達?」
しかもそれは、キラが通うガレッジのクラスメイトだった。
流石の女性士官も、キラを気遣う様に視線を向ける。
『こいつらを殺したく無かったら、大人しくその機体を明け渡せ。さもないと・・・』
  ダァンッ!!
マシンガンが火を吹く。発射された弾丸がサイ達の真横に着弾し、派手な土煙が上がる。
『次は当てるぜ』
ジンのモノアイが威嚇する様に光る。サイ達は無傷なものの、恐怖のあまり身動きが取れない様だ。

 

「・・・投降するしか・・・」
「駄目よ!これは連合軍の新兵器、最後の希望なのよ!」
キラの弱気な言葉に、女性士官は声を荒げる。
「それが、何だって言うんですか!こうなったのは貴方達のせいもあるでしょう!?
 ・・・戦争なんか外で勝手にやってればいいんですよ!」
「・・・っ!」
キラの正論に、女性士官は言葉に詰まった。中立国で兵器を開発するのは違法行為だ。
例え国同士の間で取引が成立していても、一介の民間人にとってはそれが変わる事の無い正論である。
しかし、正論が通らない状況などいくらでもある。今もその状況なのだ。女性士官は心を鬼にする。
「じゃあ、この機体が奪われた結果出る死者に、君はどう顔向けするのかしら!?
 御免なさいでは済まないのよ!」
「うっ、・・・僕は・・・」
年端も行かない少年に、無茶な事を言っているのは分かっていた。
しかし、最後の一機であるこの機体を奪われるのだけは、どうしても避けなければならない。
罪悪感に駆られながらも、女性士官は黙ってしまったキラに、更に続ける。
「ザフトが力を増せば、地球は増々奴らの占領下になって行くでしょうね。
 オーブ本国も、どうなるか分からないわよ」
「でも・・・友達が・・・」
大人の理不尽な理論に、キラはレバーを握り締めるばかりで言い返す事が出来ない。
そうしている間にも、時間は刻々と過ぎていく。
『・・・・・・良く分かったよ。やっぱりお前らに、オーブ国民は人質の価値が無いって事に』
「あっ!」
ジンが大袈裟に腕を振り被り、マシンガンを構え直す。
銃口の先には、恐怖に顔を引き攣らせたサイ達がいる。
『恨むなら、薄情なあいつらを恨みな』
「やめろぉっ!!」
キラの絶叫と共に白いガンダムが建物から飛び出す。
しかし、ジンは既に射撃体勢にあり、この距離からでは間に合わない。
女性士官が罪悪感からか、モニターから目を逸らした。

 

引き金が引かれ、弾丸が生身の人体を粉砕する、そう思われた、その時だった。
上空から雷の様に降ってきた鉄筋が、ジンの右手を砕き、マシンガンを地面に叩き落としたのだ。

 

『何っ!?』
「うおおおおおおおおおっ!!」
予想外の事態に、ジンの動きが一瞬止まる。
その隙に、走り出していた白いガンダムが、アーマーシュナイダーを引き抜きジンに肉薄した。
『ちぃっ!』
ジンが残った左手で負けじと重斬刀を振るう。
動揺したとはいえ、実戦経験を積んだエースパイロットである。
素人のキラが操るアーマーシュナイダーより先に、重斬刀が白い機体を捉える、その筈だった。
しかし、振るおうとした重斬刀は、白いガンダムを捉える前に、
左腕の肘から先ごとごっそり無くなっていた。
『なっ!?』
ジンのパイロットの表情が凍り付く。
先程の鉄筋と同様に落下してきた白いジンが、交差際に手にした鉄筋を一閃、
一瞬でジンの左腕を斬り落としたのだ。
『今だキラ!』
「わああああっ!」
無防備になったジンに、アーマーシュナイダーが突き刺さる。
2本目が首に突き刺さった所で、ジンは完全に停止した。
それから一拍置いて、コクピットから緑のパイロットスーツがラウンドムーバ―で脱出する。
「!?ジンから離れて!」
「えっ!?」
「早くっ!!」
それに気付いた女性士官が咄嗟に叫ぶ。しかし時既に遅く、ジンの自爆システムが作動。
ヘリオポリスに、一際大きな爆発が上がった。

 
 

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