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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第07話

Last-modified: 2011-04-05 (火) 12:56:47
 

「こっこんな・・・!?」

 

ナタルが作戦を考えていた頃、キラは宇宙空間に投げ出されていた。
やはり親友であったアスランが乗っていたイージスと戦闘中、アグニで穿たれた穴が崩壊により広がり、
そこからイージス共々吸い出されたのだ。
ストライクの周りは、既にヘリオポリスから出たデブリで辺りは埋め尽くされている。
イージスもそのデブリ達に紛れて何処へいったかも分からない。
眼下ではヘリオポリスが更に崩壊を早めており、そこから飛んでくる大小様々なデブリが
ストライクにぶつかってくる。
ストライクがPS装甲を持っていなければ、今頃キラもこのデブリの一部になっていただろう。
「通信も繋がらないし、どうすれば・・・」
時折計器を弄るが、通信機は云とも寸とも言わない。
崩壊していく故郷を前に、成す術が無い自分に、アスランの言葉が蘇る。

 

(『状況も分からぬナチュラルが、こんな物を作るから・・・!』)

 

アスランも、元々は戦争を嫌っていた筈だ。それがあんな風に変わっていたのは、正直ショックだった。
だが、コロニーごと母を殺された事で、彼は変わったのは事実だった。
「復讐・・・か」
変わってしまった、今は敵になってしまった親友に、自分は何が出来るのか。

 

(『お前だってコーディネーターじゃないか!』)

 

アスランの言葉が胸に突き刺さる。
人種という区切り、それは個人の良心を殺してしまう恐ろしい区切りだった。
確かに、自分はコーディネーターだ。中立でないなら、連合にいるよりザフトにいる方が自然なのだろう。
でも、自分の故郷を壊したザフトに行くなんて考えられない。
だからといって、連合に与し続ける事など、到底出来ると思わない。
キラは既に、自分がスンナリと元のオーブでの平穏な暮らしに戻れるとは思っていなかった。
軍の新型兵器を駆り、同じく新型の戦艦に乗って安全な所まで逃げるのだ。
安全な所というなら、それ相応の設備がある連合の基地に入る可能性が高い。
そこで少しでも検査されてしまえば、自分がコーディネーターだと直ぐに分かってしまうだろう。
「僕は・・・どうしたら・・・」
堪らず頭を抱える。世界を二分する戦争の両軍に挟まれ、その片方には親友もいるのだ。
今まで平穏な日常に身を置いていた16歳の少年には、あまりに酷な問題であった。

 

(「自分の中の神に従え」)

 

不意に、刹那の言葉が脳裏に過る。あの言葉の意味は今でも分からない。
しかし、キラは自身の心が落ち着いていくのを感じた。
「そうだ、ここでこうしていても始まらない!」
声を張り上げて、自分に喝を入れる。
同時に顔を叩くつもりで振った掌がヘルメットに当たり、ジーンとした痛みが体に走った。
「兎に角、アークエンジェルを見つけないと。
 この通信不全は、確かNジャマーのせいだから、距離を詰められれば」
刹那への援護、イージスとの戦闘で、ストライクのバッテリーは底を尽き掛けていた。
また敵に見つかった場合、保ってくれるとは限らない。
キラはデブリで出来たジャングルを慎重に進み始めた。

 
 

「崩壊、収まりました」
「エンジンは切ってあるな」
「はい。メインエンジン出力0」
完全にデブリの密集地帯と化したヘリオポリスの、
その中心に白い船体はピクリとも動く事無く鎮座していた。
ブリッジでは、ナタルが作戦の最終確認を行っている。
「よし・・・観測ポッド射出」
遠目ではデブリに隠れ、全く居場所の分からないアークエンジェルから、
メビウス0のガンバレルの、半分程の大きさの観測ポットが射出される。
多少の熱量は持っている観測ポッドだが、辺りには熱量を持ったデブリも多く、
それに紛れる事で発見される事は無い筈だ。
「操作に気を付けろ。それが壊れたら、換えは無いぞ」
「任せて下さい。アークエンジェルと比べたら、子供の遊びですよ」
ナタルの言に、ノイマンが意気揚々に答える。
少しでも航宙機器の操作に慣れた者をという事で、操舵手のノイマンが観測ポッドの操作に当たっていた。
CICのチャンドラが、出来るだけ辺りの航路をナビゲートしている。

 
 

「ヘリオポリスの崩壊、収まりました」
「監視班、ここからが本番だ!ガモフにも徹底しろ」
アデスがクルーに檄を飛ばす。如何に新型艦と言えど、デブリに呑まれては身動きが取れなくなる。
こちらは、慌ててデブリの中から這い出てた所を叩けば良いだけの事なのだ。
さてどう来るか、クルーゼはニヤリと笑う。
自分の第6感に触れてくる者が2人も乗っている艦だ。何かしてくる。
クルーゼはそれを期待、いや確信していた。
「反応、依然ありません」
「もっと良く探せ!熱量を持ったデブリに紛れていても、あれだけ大きい戦艦だ。
 動きがあれば必ずこちらからも確認出来る筈だ」
デブリの海に動きは無い。ガモフからも同様の報告が上がった。ヘリオポリス崩壊から5分が経過する。
「まさか、逃げ出す事も出来ずデブリに埋もれたのかも・・・」
「有り得るな。戦艦のドックは爆破したんだ。
 クルーの殆どを失っている可能性があるあの艦が、正常な判断が出来なかった可能性もある」
オペレーターの言に、アデスも頷く。
正規クルーを大勢失い、連携が取れないならアデスの考えも的外れでは無い。
それだけ、統制の取れていない艦とは脆い物だ。
動きが無いまま更に5分が経過し、遂にアデスがデブリの海に近付く様、艦に指示を出す。
その時だ、デブリの海に、一瞬眩い光が走ったのは。
「回避機動、D372!」
逸早くその光の正体に気付いたクルーゼが命令を出す。
特殊部隊に所属する優秀なクルー達は、突然の命令にも迅速に反応した。
しかし、彼らの迅速は、光を回避するには少しばかり遅かった。
光速で伸びる光が、クルーゼの右半身を凶暴に照らしながら通過する。振動は無い。
「被害を報告せよ!ダメージコントロール!」
最初に声を上げたのはアデスだった。クルーの報告に、クルーゼは内心、今までで1番深い笑みを浮かべた。
ガモフが左舷を被弾したのだ。

 
 

「命中!敵ローラシア級被弾!」
「180度回頭!最大戦速でこの宙域より離脱する!イーゲルシュテルン起動、出来るだけデブリを砕け!」
「少し痛いが、我慢しろよ!」
ローエングリンが命中した。直撃すれば1撃で撃沈可能だったが、
直前に回避機動を取られた事でそれは叶わなかった。
しかし贅沢は言わない。チャンドラの報告が終わる前に、次の命令を出す。
命令を受けたノイマンがハンドルを大きく切ると、アークエンジェルが辺りのデブリを弾き飛ばしながら
強引に回頭を始めた。
「ストライクは?」
「たった今マジリフ機が発見、回収した模様。ただ・・・」
トノムラが答えるが歯切れが悪い。
「どうした。報告は明解にせよ」
「どうやらヘリオポリスの避難艇を抱えていた様で」
デブリの当たる衝撃が船体を揺らす中、ナタルは顔を歪める。
事が万事上手く行くとは限らない、今はストライクを回収出来ただけ良かったと思う他無いだろう。
アークエンジェルは、イーゲルシュテルンが放つ曳光弾に彩られながらデブリの海を突破した。

 
 

耳を突く警告音に包まれた艦内で、アデスは奥歯を噛みしめる。
まんまとやられた。敵はただの腑抜けではなかったのだ。
「アラームを切れ!我が艦が被弾した訳では無い」
ガモフが被弾した。致命傷では無かったものの、ヴェサリウスに付いて行くには暫く時間が掛かる。
「やられたな」
1人冷静に艦長席に座るクルーゼが口を開く。
「まさか、連合の艦がデブリを物ともしない砲撃能力と航行能力を持っていたとはな。
 それにあの船速・・・」
そう、驚くべきは脚付きの性能だ。
大小含めたデブリを消し飛ばし、尚照準を狂わせずに戦艦に打撃を与えた砲撃。
辺りのデブリを強引に弾き飛ばす装甲と馬力。凄まじい速さの旋回能力と船速。
どれもザフトの常識を超えている。
「MSのみが脅威だと考えていたが、あれは看過出来る物では無いぞ」
「はい、あれが量産されれば、我が軍の艦隊は確実に大打撃を蒙ります」
認識を共有した所で、クルーゼが部隊の状態を考え命令を出す。
「ヴェサリウスは脚付き追撃に移る。ガモフは船体を修復次第合流せよ」
「はっ!」
「後・・・ヘリオポリス跡から、アスラン・ザラ、他2名から連絡が入っている。ガモフが拾ってやれ」
命令を聞いたアデスが、各部署に指示を出して行く。
クルーゼがモニターを見やると、拡大表示された脚付きの後ろ姿が映っていた。
彼の第6感が、長い付き合いになりそうだと囁いた。

 
 

ヘリオポリス跡を脱出して数分、アークエンジェルのハンガーは大騒ぎになっていた。
ナタルの作戦で船体が回頭する直前、もう間に合わないというタイミングで探索に出ていた刹那のジンが
ストライクを引っ張ってきたからだ。
刹那は、旋回を始めたハッチにストライクを半ば投げ込む様に着艦させて、自身は甲板にしがみ付いた。
甲板上ではデブリの雨をまともに受ける。
閉まったハッチを見つめながら、マリューは諦めに近い表情を浮かべた。
しかし刹那のジンは、デブリの海を脱出した所で開いたハッチの中にしっかりと入ってきた。
ただ機体の損傷は酷い物だった。弾丸の様に降り注ぐデブリの雨を受けたのだ。
致命的な損傷こそ回避していたものの、装甲は穴だらけであった。
腕は殆どフレームが剥き出しの状態で、辛うじて胴体にぶら下がっているという感じだ。
何はともあれ、劇的な救出劇を演じて見せた刹那は整備士達に歓声を持って迎えられた。
「カマルさん、スイマセンでした・・・僕は」
「いいんだ。戦場での判断ミスは誰でもする。特に人間性を刺激される様な出来事が起きるとな」
機体から降りてきた刹那に、先にストライクから降りていたキラが、飲料チューブを持って駆け寄る。
どうやらアスランの事で錯乱してしまった自分を悔いている様だ。
新兵が戦場に出て、敵に旧友がいたのだ。錯乱しない方がどうかしている。
「それより、あれはどうしたんだ」
刹那がいうあれとは、ストライクが抱えていた筒状の物体だ。トノムラがナタルに報告した避難艇であった。
刹那がストライクを発見した時には既に抱えていた物だ。
「・・・スラスターが壊れていて、それで」
「お前は軍人じゃないんだ。人間として、正しいと思った事をやったならそれでいい」
オドオドしながら言うキラの肩を叩いて、刹那はマリューの所へ向かう。
後ろでは、避難艇から民間人が降り始めようとしていた。
「随分壊してしまった。すまない」
「構いません。一番大切な、パイロットがこうして無事なんですから」
情に厚いのだろう。少し涙声のマリューが目を擦る。
「やぁお疲れさん。大活躍だったじゃんかMr.色黒」
辺りの整備士達をかき分け、ムウも刹那を迎える。
「まぁこの機体の様子じゃ、当分俺と同じスクラップ仲間だな」
「あら、ジンはメビウス0と違って互換性が高い装備が多いから、修理に時間は掛かりませんよ」
相変わらずヘラヘラしているムウに、マリューが冷たく言う。
実験用に武装以外の予備パーツを積んでいたジンと違って、メビウス0はほぼムウの専用機である。
一から組み立てねばならない武装もある為、修理に時間が掛かるのだ。

 

「キラ!?」
ハンガーに一際大きな声が響く。声の方向を見ると、キラが見覚えのある人物達に囲まれていた。
良く見れば、それはシェルターに逃げ込んでいたサイ達であった。
キラが回収した避難艇に乗っていたのである。
「あの子達・・・」
マリューが心配そうに彼らを見やる。
これ以上自分達連合と、彼ら子供達は関わるべきでは無い、というのがマリューの本音だった。
「取り敢えずザフト艦とは距離を取れたと思ったら・・・一難去ってまた一難だな。
 艦長の頭を抱えている姿が目に浮かぶよ」
ムウの言に刹那も内心で合意する。軍艦にとって、民間人はイレギュラーな存在である。
1人や2人なら兎も角、避難艇には百名を越える民間人が乗船していた。
これをどう扱うのかは、あの堅物そうな艦長に任せるしかないだろう。
『第一種警戒態勢を解除。以後は第二種警戒態勢に移行。
 士官、民間人パイロットはブリッジに至急集合されたし。繰り返す・・・』
トノムラの声がハンガーに響き渡る。どうやら一時的でもザフト艦を引き離した様だ。
「ブリッジに集合、つまり作戦会議か」
ムウは天を仰いで呟くと、登場した時と同じ様に整備士達を掻き分けてキラがいる場所へ向かう。
「友達と再会出来た所を可哀相だけど、彼もパイロットだものね・・・」
キラ達が互いの無事を確かめ合っている所に顔を出す。
キラ以外の者は連合の制服を着たムウに明ら様な警戒心を示す。
「そう怖がんないでくれよ。・・・キラ、悪いがブリッジに付いて来てくれるか?」
ばつが悪そうに頭を掻いてから、キラを呼ぶ。ブリッジという言葉に敏感に反応したのはサイだった。
「ブリッジって・・・キラは民間人ですよ?なんでそんな」
「あー・・・それはなぁ・・・」
「それは、キラ自身が選んだ道だからだ」
言い淀むムウに後ろから援護射撃が入った。色黒の青年が前に出る。
「カマルさん!?」
「彼はストライクのパイロットで、イージスと交戦した唯一の人間でもある。これからの戦いに必要になる」
トールが刹那の偽名を呼ぶ。刹那はそれに視線を向けて応えると、真剣な表情で彼らに語りかけた。
ムウが冷や冷やしながらこちらを見ているが、敢えて無視する。
「選んだって・・・アンタ達が強要したんじゃ無いのか?」
刹那を知らないサイが、疑う様に刹那とムウを睨み付ける。
「確かに、状況がそういう方向にキラを誘導した部分がある事は事実だ。だが、最終的には彼が決めた事だ」
「そんな屁理屈っ!」
「止めろよサイ」
「でも!」
食って掛かるサイをトールが止めるが、彼は納得しない。当然だ。
刹那が何を言った所で、それは大人の理屈にしかならない。
「キラは・・・」
「えっ?」
「キラはどうなの?」
今まで黙っていたミリアリアが、心配そうにキラに問いかける。
その目は、刹那の言葉を否定して欲しいという目だった。
「僕は・・・」
下を向き、言い淀む。こうなる事は、予測出来た事だ。助けた人々の中に知り合いがいるなんて事は。
軍艦に連れて来たのがキラな以上、理不尽でも何でも、そこには責任が生じる。彼らを守る責任だ。
「・・・・・・」
「どうなのよキラ・・・!」
黙ってしまったキラに焦れたフレイ・アルスターが言い寄るが、刹那がそれを手で制した。
これはキラ自身で答えを出さないといけない。更に時間が経過する。
ムウが、心臓が止まるんじゃないかと思う程の時間が経過したその時、キラが口を開いた。

 

「僕は・・・、僕はみんなを守る。僕に、その力があるんなら」
「・・・本当に、それは本心で言ってるのか?」

 

睨むサイに、キラは黙って頷いた。
「なら、俺に口出し出来る事じゃないな」
意外にあっさりサイ引き下がると、それだけで全体の空気が軟化した。
どうやらこのグループのリーダーは彼の様だ。
「よし、じゃあブリッジに行くか。君達は係りの連中に従ってくれよ」
心臓が動き出したムウが、ホッとした様子でキラをブリッジへと促す。
刹那もそれに続こうとするが、トールに呼び止められた。
「あの・・・キラの事、宜しくお願いします」
「ああ、絶対に死なせない」
短い、しかしキッパリした物言いにトールは安心した顔をすると、
頭を下げてミリアリアの所に戻って行った。

 
 

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