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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第08話

Last-modified: 2011-04-05 (火) 13:11:49
 

「本当は、分からないです。戦う理由とか。自分で決めた事なのかどうなのかも・・・」

 

刹那、ムウ、マリューとブリッジへ向かう道を歩いている最中にキラが呟く。
先程の事をずっと考えている様だ。
「まぁそんなもんさ。宇宙人を追い出すんだ!って意気込んでた奴が、
 いざ敵を撃つとビビっちまって、そのまま軍止めちまったりもするしな。
 戦う理由なんてそんな簡単に見つけて良い物でも、決めて良いもんでも無いのさ」
「ブルーコスモスが反コーディネーター思想を刷り込んだ子供を兵士にしている、なんて話もあるし、
 何が本当なんでしょうね」
「そ、そうなんですか・・・」
あまり聞きたくなかった話に、キラは複雑な表情で軍人2人を見る。そこに刹那が助け舟を出した。
「俺達はザフトを潰したい訳でも、ましてやコーディネーターを恨んでいる訳でも無い。
 生きる為に戦っているんだ。それを、忘れるな」
「そうそう、蒼き清浄なる云々言って戦ってる奴らに比べたら、
 生きる為、友達を守る為って理由で戦っている坊主の方がずっとまともだぜ」
刹那に便乗した形でムウも付け足す。それでも、キラは曖昧に頷いただけで表情は晴れなかった。
「キラ君、医務室に行く?貴方は軍人では無いんだから、無理にブリッジに行く事無いのよ?」
マリューが心配して提案するが、キラはそれには首を横に振って明確な意思を示した。
「ブリッジに行けば、今の状況が分かりますから。何も知らないのは・・・嫌なんです」
そう言った目には、現実と向き合う決意が秘められていた。
「心配すんな!お前は、間違い無く自分の意思で戦っているよ。俺が保障するぜ」
「それも勘、ですか?」
「いんや、これは確信だ」
根拠の無いムウの言葉に、マリューが怪訝そうに問う。
それに対し、ムウは得意げに自分の胸を親指で指して答えた。
片手で頭を抱えて溜息を吐くマリューが、少し老けて見えた。

 

「おっ、艦長殿の城に着いたぞ。お喋りはお終いだ」
話している間にブリッジのドアに辿り着いた一向。
その中で1番喋っていたであろうムウがワザとらしく襟を整え、周りに注意する。
マリューは最早呆れ果てている様で、突っ込みは無い。
刹那が前に出るとプシューという音を立ててドアが開いた。
「遅いですよ」
開口1番に出た言葉にキラは多少面食らう。ムウとマリューはその言葉を予想していたかの言葉を返す。
「無茶言うなよ。ハンガーが民間人でごった返してるんだから」
「彼らの事、どうするつもりなの?」
「民間人には疲弊している者も多いと聞いています。
 暫くは住居ブロックで大人しくして貰うしか無いでしょう」
今更ヘリオポリス跡に戻る訳にもいかない。
皮肉にも、ザフト軍の破壊工作によって減った正規クルーの分、住居ブロックには空きがある状態だった。
「今は兎に角、ザフトから逃げる事が先決です。
 フラガ大尉の報告ではジンはもうそれ程残っていない筈だったのですが、
 イージスが投入された所を見るに、他のGも投入されると考えて間違いないと思われます」
ナタルはブリッジに備え付けられた戦術マップの周りを歩きながら続ける。
「・・・キラ・ヤマト、イージスとの戦闘を経験しているのは君だけだ。
 奴らはどれくらいあれを使い慣らしていた?」
「えっ、それは・・・」
ナタルからの突然の問いに、キラは緊張した様子で言い淀む。そこにマリューから援護射撃が入った。
「艦長、キラ君は軍人では無いのだから、イージスの詳しい性能は分かってないわ」
「ああ、・・・ではイージスはどういった武器を使っていた?」
「えっと・・・ビームライフルと、腕からビームサーベルを出していました」
「形が変わったりはしていなかったか?」
「はい」
キラの話を聞いたナタルが、唇に指を付けて考え込む素振りを見せる。そこに刹那が割って入った。
「まだ敵が新型の装備を熟知していないと断定するのは危険だ。
 次に戦闘が起こったら全ての装備を使ってくるかもしれない」
今この瞬間も、ザフトは新型の解析を続けているだろう。
先程使ってこなかったからと言って、次に使ってこないとは限らないのだ。
「そこで頼みがある」
「なんだ」
このタイミングでの頼みに、内容をある程度予想出来たナタルは厳しい表情で刹那を見た。
「新型の性能、装備、どういった運用が想定されているか、
 それを纏めたデータをパイロット全員に閲覧させて欲しい」
「そんな事は出来ない」
予想通りの頼みに、ナタルは即答で首を横に振った。
「フラガ大尉は良いとして、君達民間人にはまだ密偵の可能性が残っている」
「ナタル!」
あまりにも直接的な物言いに、マリューが声を荒げる。ムウも溜息を吐いた。
「コソコソ疑うのは私の本分では有りません。
 確かに、彼らはジンを退け、脱出に貢献したと言えるでしょう。
 しかし、だからと言って全てを明かせる訳では有りません」
ナタルの意見は正論だった。
例え密偵では無く、唯の民間人だったとしても新型の精密なデータを見せる理由にはならない。
しかし刹那表情を変える事無く続けた。
「命に関わる事だ。彼我の戦力は歴然、これ以上戦闘ユニットが減れば、間違い無くこの艦は落ちる」
刹那の予言染みた言葉にナタルは若干不機嫌そうに眉を顰める。
そんな事は言われなくとも分かっているという目だ。

 

「要するにMr.色黒は、唯でさえ少ない戦闘ユニットを疑って運用すれば全滅は確実、
 って言いたいんじゃない?」
険悪な雰囲気が漂い始める両者に、ムウが割って入る。
キラもマリューも、彼の補足で漸く刹那の言葉の真意が分かった様だ。
元々多くを説明しない性分の刹那である、老熟の域に至ってもその癖は抜けていなかった。
「・・・話は分かる。しかし、ならそちらも我々の信頼に値する何かを示す必要があるのではないか?」
「ぼっ僕は・・・」
「君はいい」
裏切るなんてしない、と続けようとしたキラの発言は、ナタルにピシャリと遮られる。
キラ・ヤマトには友人がいる。気持ちの良いやり方では無いが、いざとなれば彼らを人質にすれば良いのだ。
問題は・・・
「カマル・マジリフ、貴方は何か、を示す事は出来ますか?」
ナタルの真剣な眼差しが刹那に突き刺さる。その目には、軍人としての矜持が感じられた。
「無い」
呆気無い刹那の答えに、ナタル以外の全員が拍子抜けした。ナタルは表情を全く動かさない。
「なら・・・」
「だが、」
刹那が続ける言葉が、ナタルを遮った。
「トール・ケーニッヒに、キラの友人に約束した。必ず死なせないと」
「大した間柄でも無い相手との間の口約束で、貴方を信頼しろと?」
「俺は、誰も裏切らない。もし裏切ったとしても、この世界に帰る場所など無いからだ」
今度は、刹那の赤銅色の眼差しがナタルに突き刺さる。
ハッキリと言い放った言葉に含まれた微かな哀愁は、誰にも気付かれる事無く霧散した。

 

無言の空間でナタルと刹那の睨み合いが暫く続く。
「・・・いいでしょう。奪取されたGの詳細データは、ラミアス大尉から受け取って下さい」
「おおっ!」
「では、直ぐにでも」
先に折れたのはナタルの方だった。ムウとマリューが喜びの表情を作る。
「有難う」
出された許可に、刹那は微笑んで礼を言った。
そのあまりにも自然な表情に、やはりナタル以外の全員が目を丸くした。
「かっ、勘違いするな。
 信義や約束を理由として持ち出す様な古風な男が、密偵である確率は低い、と考えた結論だ」
赤面しながら視線を泳がせるナタルが、負けず嫌いな言葉を重ねる。
「但し、怪しい行動を取った、又は痕跡があった場合相応の対応を取るのでそのつもりで」
「分かっている」
頷く刹那に満足したのか、ナタルは端末を操作して主モニター上部にある副モニターに航宙地図を映す。
「コホンッ・・・では、本題に入りましょう。我々が取るべきルートですが、今の所2つ存在します」
更に端末を操作すると、赤く点滅するアークエンジェルの座標から2本の矢印が伸びた。
「地球へ一直線に向かうコースと、アルテミスを経由して地球に向かうルートです」
「でも・・・」
「はい。当艦は物資を十分に積み込む余裕の無かったのに加え、
 民間人を多数保護しているので物資、主に食料が足りません」
「地球へ直行、って訳には行かないって事か」
マリューの懸念にナタルが頷き、ムウが結論を述べた。
「・・・しかしアルテミスは安全とは言い難いのではないか?」
「えっ、連合軍の基地なんですよね?」
刹那の問いに、キラが首を傾げる。
「ああ、色黒の誰かさんとは違って、民間人の貴方には縁遠い話ね。
 連合には複数の国家が所属しているわ。
 で、アークエンジェルは大西洋連合の主導で開発されたの」
「そしてアルテミスはユーラシア連合の基地だ」
マリューとムウが説明するが、キラは増々首を傾げる。
「つまり、連合とて一枚岩では無い。大西洋連合主導のアークエンジェルに対し、
 ユーラシア連合所属のアルテミスが不愉快な行動を起こす可能性があるという事だ」
「この艦には船籍番号が無いしなぁ。こそこそ隠れている様な連中が、何もしてこないなんて考えられん」
「警戒が必要という事だ。特に俺と、お前は」
補足で説明を加えるナタルに同意するムウ。刹那がキラに対しても警告する。
「だが、他に手は有りません。これ程頑強な基地も他に有りませんから」
選択肢は無く、ユーラシア連合アルテミス基地へ向かう事を決定。その場は解散となった。

 
 

最大戦速でアークエンジェルを追撃するヴェサリウス、
そのブリッジでパイロットへのミーティングが行われていた。
「どうだ?このデータを見た率直な意見を聞きたい」
「フン、脚付きだろうと腕付きだろうと、連合如きの戦艦がMSを落とせる訳が無い」
「そうそう、それに何だよこれ?この新型、てんで成っちゃいない。
 まぁ、それを仕留められないアスランもアスランだけど」
「本人が居ないからって・・・言い過ぎですよ」
ガモフが回収した、アスランが持ち帰ったデータを見ているのはザフト軍MSパイロットである
イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、ニコル・アマルフィである。
それぞれ連合軍新型MS、ディエル、バスター、ブリッツを奪取した者達だ。
「しかし、この機体はどう思うかな?」
クルーゼが端末を操作すると、画面に白いジンが映し出される。
白いジンは出撃直後の攻撃に反応、直ぐ様ミゲルのジンASを撃破し、
瞬く間にマシューのジンを落としている。
映像には無いものの、この後オロールのジンを追撃、撃破したのもこのジンであるらしい。
3機のジンを接近戦のみで撃破した事も脅威だが、それ以上にあの黄昏の魔弾こと
ミゲル・アイマンが瞬殺された事が3人にはショックだった。
彼は部隊内でもクルーゼに次ぐ腕を持つパイロットであり、
模擬戦でも3人とアスランを加えてやっと勝てる程の技量を持っている。
「この機体・・・いや、パイロットに勝てると思うかね?」
クルーゼの問いに、3人の若者は先程とは一転押し黙ってしまう。
当然だろう。こんな一方的な戦闘は士官学校でも見た事が無いのだ。
しかし、暫く経った後にニコルが黙って挙手をした。
「何かなニコル」
ニコルは部隊最年少の隊員である。
若いというより幼い、あどけなさが残る15歳の少年は部隊内からは弟分として可愛がられている。
しかしいざ戦闘になれば、他のパイロットには無い冷静な視点で戦場を見渡す事の出来る
優秀なパイロットでもあった。
「アークエンジェルがアルテミスに進路を取ると聞きましたが、それは確かですか?」
「ああ、地球への航路を途中で大きく変えている、間違いない」
アデスの答えに大きく頷くと、ニコルは真剣な表情でクルーゼに向けて口を開いた。
「アークエンジェルがアルテミスに到達するまでに、少なくとも2回は戦闘の機会があると考えます」
「その根拠は?」
「1つは、アルテミスへの航路変更で大きくコースを変更しているので、
 ヴェサリウスならそのロス分で追い付く事が出来る筈です。
 2つには、あの様なエンジンを痛める発進を行ったんです、
 アルテミスまで最大戦速が持つとは思えません。どこかで休ませねばならない筈です」
「結構だ。考えを聞こう」
クルーゼの問いにスラスラと答えるニコルに、2人の同僚は目を丸くしている。
不逞の兄が、出来の良い弟を見る目であるとアデスは内心で思う。
「はい。このジンはアークエンジェル最大の戦力であると考えます。
ですので、初めの1回をこのジンに攻撃を集中、撃破に使うのが戦術的には正しいと・・・」

 

「ふざけるな!」

 

少年の声が画面を思い切り叩いた大きい音にかき消される。
その音の大きさに、他のブリッジクルーも思わず振り返る。
「貴様!裏切り者が乗るジンを、新型に乗った俺達が、その上3人がかりか?腰抜けめ!」
「イザーク!」
拳を画面に叩き付けたイザークが、そのままブリッジを出て行ってしまう。
アデスが呼び止めるものの聞く耳持たずだ。
「ああ、俺が行きますよ。アイツ、今気が立ってるもんで」
左手で頭を掻きながら溜息を吐く色黒の少年が、イザークの後を追おうとして足を止めた。
「・・・まぁ確かに、合理的だよ、ニコルの案は。でも、確かにイザークの言う事も分かるぜ。
 たかが裏切り者1人に、俺達赤服が3人がかり・・・プライド無いのかよ、お前には」
「っ・・・」
皮肉屋なディアッカに釘を刺される。ニコルにもプライドが無い訳では無い。
しかし、仲間を多く失い、先輩の顔に泥を塗った今回の敵には絶対に負ける訳にはいかないのだ。
「困ったものだな、イザークの癇癪も」
「全くです。若いっていうのも考えものですよ。アスランがいれば・・・」
アスランはイザークの扱いに慣れている。彼がいれば、イザークはまだこの場に留まっていただろう。
「まぁいい。ニコル、君の意見は参考にさせてもらう。次の出撃、抜かるなよ」
「はい」
力無く答え、ブリッジから退場していくニコルを見送るとアデスが心配そうに口を開いた。
「次の戦闘はアスランもミゲルも欠けた戦闘になるでしょう。あの3人で、大丈夫でしょうか?」
「ミゲルはあのジンに強い執着心を抱いている様だ。
 アスランも、あの白い新型に対して躊躇があるらしいからな。
 初戦は不安定要素を排除したものだと考えれば良い。それでも死ぬ様なら、それまでの者達という事だ」
パイロット達には開示しなかったが、クルーゼに届いた戦闘データには音声も含まれている。
戦場では、強すぎる感情は物事を良い方向に運ぶ事など万に一つ無い。
「彼らがどれだけ早く出撃出来るかは、ヴェサリウスを操艦する貴様に掛かっている。任せたぞ」
「はっ!」
アデスの敬礼に、ブリッジクルーの士気が上がるのが伝わってくる。
これなら予想より早く交戦距離まで追い付けるだろう。
クルーゼはニヤリと笑うと、ニコルと同じ様にブリッジから退場していった。

 
 

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