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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第45話

Last-modified: 2011-12-27 (火) 01:20:24
 

刹那達は後退に成功すると1度補給する為にアークエンジェルに帰投した。
全機被弾は無いものの、後退の為に盛大に弾をばら撒いた為弾薬消費、
ストライクはバッテリー消費が激しい。攻撃に出ていて艦船が遠いザフトと違い、
守りに徹している連合は移動時間を考えずに補給を行う事が出来るという点で大いに有利だった。
「艦長、敵の展開状況は?」
『こちらの弾幕に怯んでいる様だ。破壊したドレイク級の残骸に隠れて、
 こちらの砲撃が止むのを待っている。』
『時間が経てばザフト艦隊も射程に入るからな』
刹那達がこうして短いながらも補給出来るのはそういう理由があったからだった。
補給後直ぐに出撃出来る様に、各パイロットはコクピットから降りずに待機していた。
『それなら、このまま時間を稼げば・・・!』
「いや、無理だな」
キラの希望に縋る様な言葉を刹那は否定した。
無線で繋がっていたナタルも頷いて刹那の言葉を継ぐ。
『曹長の言う通りだ。艦隊は今、稼働率90%以上で砲塔を総動員している。
 このペースだと、アークエンジェルの予定降下座標に差し掛かる前に弾薬が尽きる』
『そんな・・・』
ナタルが提示した無常な数字に、キラの暗い声が響いた。
『甘ったれるなキラ!その為の俺達だ、気合い入れろ!』
『りょっ了解』
思わぬムウからの喝がキラの声を上擦らせる。
艦船の艦載機とは、大きな目線で見れば意思を持ち、より汎用性が増した弾丸と言えるのだ。

 

「―――提督は何か策があるのか?」
『残り1分の一斉射を続けた後、アークエンジェル所属の部隊は
 残存のメビウス部隊と正面の敵を殲滅せよ、だそうだ』
ここまで追い詰められては、それしか手は無いだろう。
比較的前面で敵機を迎撃出来る最後のチャンスである。
『後、曹長』
「?」
マリューから補給完了の合図を受け、3機が順次出撃準備に入る中、
ナタルが無線越しに付け加えた。
『仲間内では構わないが、艦長に対しての口の利き方がなっていないな。
 帰ってきたら教育してやる』
「うっ・・・」
『あっはっは、アホー!』
ムウに敬語禁止令を出されていた勢いで、
ナタルにまで敬語を使っていた刹那は言葉に詰まった。
艦長とその艦の一パイロットがタメ口は流石に不味い。
余程可笑しかったのだろう、ゲラゲラと笑うムウに何も言い返す事が出来ず、
刹那はカタパルトに乗らないジンメビウスをハッチの前まで前進させた。
『やり残した事がある方が人間死なないって言いますし』
「・・・そうだな」
フォローのつもりだろうキラの言葉を有り難く受け取り、
ジンメビウスがスラスターを全開にしてアークエンジェルから飛び出した。

 
 

ドレイク級の残骸に隠れて尚、戦艦4隻による砲撃は苛烈な物だった。
うっかり身を晒したり、下手に爆発する可能性のある残骸に隠れたジンが撃破されていく。
連合も必死という事だろうが、実を言えばザフトも余裕ぶっていられる状況ではない。
正面から攻めたMS本隊の消耗率は確実に上がってきており、
この砲弾の雨を潜り抜けても敵艦隊を殲滅出来るかギリギリの数しか残っていなかった。
クルーゼは単機でも砲撃を潜り抜ける自信があったが、
本隊を守る際のミサイル迎撃で弾薬を消費してしまっている為、
後の事を考えてもあまり危険な賭けには出たくない。
「私の計算ではそろそろ、この砲撃も大人しくなると思うのだがな」
自らもドレイク級の残骸に隠れながらクルーゼは独りごちた。
それから数秒、計算通り残骸を叩く音が静かになり、周りを通って行く砲火の数が減っていく。
『隊長、砲撃が弱まりました!ですが・・・』
「代わりに、低速の物体がこちらに接近・・・か?」
『は・・・はっ、その通りであります』
残骸から恐る恐るモノアイを覗かせたジンがクルーゼに報告する。
残りのMA部隊が出てきた。これも計算通り、これがこの会戦最後の機動戦になるだろう。
「各機前には出るな。十分に引き寄せろ。
 残骸が浮遊しているこの場こそ、MSの力を存分に発揮出来る場所だからな」
運動性でMAに圧倒的優位に立つMSは、障害物のあるデブリ帯でこそ最大限に力を発揮出来る。
今本隊がいる位置は、ドレイク級3隻の残骸で丁度良い即席のデブリ帯を形成していた。
連合もそこまで馬鹿では無いだろうから、迂闊にデブリ帯に踏み入る様な事はすまい。
それでも連合MA隊と艦隊の間に距離を作る事が出来るし、
その間にもザフト艦隊はこちらに向かってきている。
アークエンジェルも未だ砲列から動いていない所を見ると時間の猶予はまだあると言えた。
進軍してくる連合MA隊を目視で確認しながら仕掛け時を考えていた時、
若い部下の声がコクピットに響いた。

 

『隊長、ご無事ですか?』
「ああ、他は中々手痛くやられたがな」
連合MA隊から目を離さず、接近してきたイージス他ザラ隊をモニターで確認する。
奇襲を指示してはいたが、本隊がこうも釘付けにされては単独での攻撃続行は厳しい。
アスランの本隊に合流しようという選択は正しいだろう。
「ニコルはどうした?」
『一時帰投させました。パイロットに怪我はありませんが、
バッテリー残量に不安があったので』
「そうか、ザラ隊には奇襲任務の任を解き本隊と合流、
 向かってくるMA隊の迎撃に参加して貰う」
『了解。・・・隊長、向かってくるMA隊の中には、
恐らくアークエンジェルの部隊も含むと思われます』
「根拠は?」
『先程交戦しました』
アスランの報告に、クルーゼは感心した様に頷いた。
「君達が何を手こずっているのかと思ったが、成程彼らも出ていたか」
ストライクは連合にとってアークエンジェルと並んで護衛目標だと思っていたが、
それを使ってくるとは。ある程度なら持ち堪える戦艦と違って、少しの間違いで撃破されるのがMSである。
それを投入するとは、余程追い詰められての事か。
「なら一層君達には頑張って貰わなくてはな」
『はっ!バスターは敵機が射程に入り次第狙撃開始。他は残骸の影で待機だ』
アスランは部下に素早く指示を出すと、
索敵に秀でたイージスをバスターの観測手とする為、頭部を残骸から露出させた。
その横でバスターが連結した狙撃砲を残骸の上に固定して狙撃体勢を整える。
『敵MA隊、後10秒で射程内に入ります』
アスランが秒読みを開始した。周りのジンも弾倉を新しい物に交換する。
『3、2・・・!?砲撃来ます!』
秒読みが終わる直前、アスランが全隊に警告を飛ばした。
迫るビームに反応出来た者は僅か、次の瞬間には、
その極太の光柱は残骸を易々と貫通しジン1機を破壊した。

 

『これは・・・!』
「ストライクの武装だな」
残骸を挟んで尚、1撃でMSを破壊する威力、しかし艦砲射撃にしては精度が高過ぎる。
ヘリオポリスに大穴を開けた巨砲、それの砲門を向けられた経験がある身として、クルーゼは断定した。
『でもよ、射程は純粋な砲撃機のバスターの方が長いんだぜ?何で・・・』
『向こうにも観測手がいるんだろうな』
そう、換装でどの戦闘距離にも対応出来るとはいえ、ストライク自体は汎用機である。
純粋に砲撃に特化して作られたバスターに射程で敵う筈が無い。
砲自体の射程は兎も角、機体の方で目標を認識、
照準を合わせるという事は出来ない筈なのだ。
「ふん、厄介だな。各機散開しつつ前進!敵の砲門は所詮1つだ臆するな!」
このまま隠れていても狙い撃ちにされるだけだと判断したクルーゼは、
直ぐ各機に散開命令を出した。彼方より発射された巨砲の2射目が、
先程までジンが隠れていた残骸を穿った。やはり動く標的には当てられない様だ。
多少予定は狂ったが、敵MA部隊と第八艦隊との距離は十分離せたといえるだろう。
「この華々しい戦場も終幕と言った所か。最後まで楽しませて貰うとしよう」
そう言って唇の端を釣り上げると、シグーに残骸を蹴らせてスラスターを吹かした。

 
 

「あっ、当たった・・・」
ランチャーパックを装着したストライクの中で、キラが半信半疑と言った様子で呟いた。
ストライク側ではまだ敵を捉えていない状態であったにも関わらず、
刹那の指示で敵機が潜んでいると思われる位置にアグニを発射した所、
MSの物と思われる爆発を確認出来たのだ。
『どうなってやがるんだ?当てずっぽうじゃねぇだろ?』
『・・・いや、勘だ。キラ、次はこの座標を』
ムウがたまげたとばかりに言うが、刹那は大して喜ぶ様子も無く言う。
リンクしたデータがストライクに送信され、モニターに表示される。
しかし2射目は外れた様だった。
MSの爆発の代わりに、いくつものスラスター光が瞬きこちらに接近してくる。
『散開してきた。キラ、換装だ』
「分かりました」
キラはストライクからアグニをパージすると、
メビウス0がワイヤーで牽引していたエールパックと
ビームライフル、シールドを装備した。パージしたアグニは艦隊の方向に流し、
艦隊直衛に残ったメビウス部隊が回収する手筈になっている。
『しかし、持ってきて正解だったろ?』
「はい」
ランチャーでの砲撃を思い付いたのはムウだった。
刹那とキラが出撃した後に閃いた様で、ナタルにどやされたのは記憶に新しい。
『バスターの砲撃が来るぞ!距離があるからってボケッとするなよ!』
ムウの警告が合図となり、各機が戦闘機動に入る。
「っ、またか!」
バスターの砲撃が暗闇を切り裂いたのを皮切りに両軍がぶつかり合う。

 

そんな中で、エールを装備して身軽になったストライクに
立ちはだかったのは先程と同様にデュエルASだった。
シヴァとミサイルで牽制射を放ちながら接近してくる。
それらを躱して、左肩に残してあったランチャーのガンランチャーを応射した。
デュエルASもそれを躱し尚接近してくる。
「この・・・!」
先程とは違い冷静になったキラはストライクに後退を指示した。
格闘戦ではこちらが不利な事は嫌という程分かっている。
相変わらずのノイズで相手の動きは読めないが、
射撃戦の方が対等に渡り合える可能性はある。
それに機動性ならストライクに分がある筈だ。
「機動戦に持ち込めば!」
前方に引っ張られる様なGに耐えながら、左肩のバルカンでデュエルASに弾幕を張る。
バルカンといっても、対艦用の120mm弾を使った弾幕は強烈だ。
それを嫌がって回避するデュエルASに空かさずビームライフルを撃ち込むと、
躱しきれないデュエルASはシールドでそれを防いだ。
「いける・・・!」
自分の放ったビームをデュエルASが躱せなかった事に、キラは確かな手応えを感じた。
距離を保てば自分でもこのパイロットとやり合える。
そう確信したキラは、ガンランチャーとバルカン、
ビームライフルを織り交ぜた射撃戦を積極的に展開していった。

 

しかしキラは忘れていた。この戦闘は、これまでと比較にならない多対多だという事を。
その様な戦闘の場合、目の前の敵以外にも気を張っていなければならないのだが、
戦闘経験が浅く、デュエルASとの戦闘に集中し過ぎていたキラは
知らず知らずの内に周りへ隙を与えていた。
その隙を突こうとストライクにバルルスビーム砲の照準を合わせる敵機が1機。
今まさに引き金を引こうとしたジンを、左方から強烈な衝撃が襲った。
「2機」
バルルスを構えたジンに体当たりを掛けたジンメビウスが、
体当たりの勢いで深々と突き刺した重斬刀を引き抜く。
そのまま留まる事無く、機能が停止したジンを蹴って降り注ぐ鉄の雨を回避した。
先程から執拗に刹那を狙うハイマニューバに刹那は舌打ちする。
刹那はハイマニューバを相手にしながらジンを2機撃破したが、
それはハイマニューバも同じでメビウスを何機も墜としている。
手練れのシグーがいる以上ハイマニューバにばかり構っていられない刹那だが、
容易く撃破させてくれる相手でも無かった。ならば―――

 

「仕方ない・・・!」

 

刹那の瞳が虹彩を帯びる。それは刹那が純粋種としての力を使用した事を示していた。
ハイマニューバのパイロットの姿形がはっきり認識出来る程
脳量子波で感知出来る精度が洗練され、ミゲルという個人の情報までもが流れ込んでくる。
「くっ!」
刹那が純粋種の力を使わない事には理由があった。必要以上に強力な力は注目を集め、
別の世界の第三者という刹那の立ち位置を揺るがす可能性がある。
しかしそれは半分建前の様な物だ。実際は、戦闘に不必要な情報まで入って来るこの力は
お節介な刹那に多大な心労を強要する物だからだった。
ハイマニューバがグレネードとガトリング砲を織り交ぜた
牽制射を行いながらランダムな機動でジンメビウスに接近する。
実戦で鍛え上げられた鮮やかな機動、
しかし力を使う今の刹那にとってそれは予定された動きに過ぎない。
刹那は一見見当違いな位置に3発の榴弾を撃ち込んだ。
しかしそれは、ミゲルにとっては恐ろしい軌道を描いていた。

 

「なんだと!?」
1発目の榴弾が、フェイントを入れようとした位置で爆発する。
直撃を避けようと回避した先で、2発目の榴弾が右足を、3発目の榴弾が左腕を直撃する。
狙い澄ました射撃では無い。無造作な、牽制するように撃った榴弾が、
何かの間違いの様にハイマニューバを破壊した。
「この俺が・・・!」
ミゲルは混乱の坩堝にいた。
機体の破損に、コクピットの中が赤い光と警告音で満たされる。
熟練したミゲルにとって、そんな事はパニックになる様な事では無い。
しかし、あんな無造作な、しかも弾速の遅い榴弾を使った射撃にやられるのは予想外だ。
ミゲルが動けないでいる間に、榴弾による爆煙を破って
アーマーシュナイダーがハイマニューバの右肩に突き刺さる。
続いてそこから繋がるワイヤーの先から、重斬刀を構えたジンメビウスが
モノアイを閃光の如く光らせながら躍り出る。
「この野郎!」
ワイヤーを巻き取りながら接近するそれに、ミゲルは残った有りっ丈の弾丸を撃ち込んだ。
ワイヤーで繋がった事で動きを制限された今なら当たる筈である。
しかしそれは、これもまた何かの間違いの様にジンメビウスを素通りしていく。
実際には銃口の動きが「予め」分かった上で刹那が躱しているのだが、
それが自然過ぎる為ミゲルには弾がジンメビウスを素通りしている様に見えるのだ。
あるいは、第三者から見ればなんて下手な射撃だと思われるかもしれない。
「ここまでかよ」
諦念にかられたミゲルがそう呟いた。もうどうしようも無い。
こんな一瞬の出来事では機体状況を把握しているアスランもミゲルの危機を察知出来まい。
死の直前にあるという情景のスローモーション。
その視界の中で、ジンメビウスが繰り出す重斬刀が迫る。
ああ、俺はこの鉄塊に押し潰されて死ぬのかとぼんやり考えた刹那、
重斬刀の軌道が僅かに変わり、一瞬遅れてコクピットを激震が襲った。

 

動きを止めたハイマニューバにトドメを刺すべく、コクピット目掛けて重斬刀を振るう。
しかし、脳裏の浮かんだビジョンが刹那を思い留まらせ、
振るった重斬刀は残った右腕と左足を切断するに終わった。
戦闘不能に陥ったハイマニューバをザフト艦隊の方へ蹴り飛ばし、
刹那はクルーゼの下へ機体を動かす。
「これだから・・・!」
苛立った様に声を荒げた刹那はヘルメット越しに額を押さえ、
自分を思い留まらせたミゲル・アイマンに良く似た少年の幻影を振り払った。
既に瞳の虹彩は消え、ハイマニューバ撃破も一瞬の出来事だった為に混戦の中で注目する者はいない。
ムウやクルーゼ以外に、刹那の変化を察する者はいなかった。

 
 

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