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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第53話

Last-modified: 2012-02-29 (水) 17:27:45
 

茹だる様な暑さの中、刹那達は砂漠に降り立った。
レジスタンスはこちらが出てくるのを待っていた様で、
2台のハーフトラックの上に渡した布切れを日除け代わりに涼んでいた。
その中にいたズングリとした体形の中年男が刹那達に歩み寄る。
「おお、まさかちゃんと出てくるとは思わなかった。
 俺はサイーブ・アシュマン、こん中では一応リーダーをやってる」
「地球軍第八艦隊所属、ナタル・バジルールだ。
 我々もこの土地は初めてで、猫の手も借りたいというのが本音だ」
「成程、おたくも苦しい状況って事か」
たっぷりと蓄えた髭を撫でながらサイーブは連合の軍服を着た4人を品定めする様に見て行く。
その彼の目が、ムウの前で止まった。
「ん、アンタ見た事があるぜ。確かなんたらの鳥・・・」
「鷹だ、鷹!エンディミオンの鷹」
呆れた様に訂正したムウにサイーブは納得した様に手を叩くと、
大きく分厚い手をムウの前に差し出す。ムウもその手を握り返し握手した。
「そうかそうか。伝説のエースと会えるとは中々幸先が良いな」
「まぁ大したもんじゃないがね。戦意高揚の為のプロパガンダって奴さ」
「だが戦果は事実なんだろう?エースには変わりない」
部族社会とは往々にして優れた戦士は何より信頼される。
サイーブにとっては女2人や細っこい刹那よりも体格の良いエースパイロットのムウの方が
第一印象が良い様だった。

 

「そんな事はどうでも良い。敵対心が無いなら交渉がしたい。
 そちら側から会談を申し込んできたからには、何かこちらの益になりそうな物がそちらにあるのか?」
単刀直入なナタルの物言いにサイーブも真面目な顔に戻った。
「情報、なんてどうかね?艦長さん」
「程度による」
「アフメド」
今度はこちらが品定めする番だと言わんばかりのナタルにマリューは横でヒヤヒヤした顔をしている。
サイーブは後ろに控えていた少年を呼ぶと、アフメドと呼ばれた少年は数枚の写真をナタルに手渡した。
「これは?」
「アンタらを攻撃した連中さ。所謂隠し撮りって奴だ」
写真には複数の戦闘車両と軍人と思しき人間が数人映っている。
「砂漠の虎、俺達の敵でもある。連合の軍人さんなら知ってるだろ」
「アンドリュー・バルトフェルド・・・」
「早速厄介な奴に見つかったなぁ」
重ねられた写真を見て行くと、指揮官と思しき男のアップも撮られていた。
「しかしそんな相手によく盗み撮りなんて出来たな」
「砂漠の虎と言われて様が、元は宇宙にいた連中だ。
 生まれた時から砂漠にいる俺達の方が一枚上手ってだけさ」
後ろに引っ込んだアフメドが肩に下げたゴツいカメラを誇らしげに掲げてみせた。
「成程、よく分かった。で、我々に求める見返りは」
「見返りって程でもねぇさ。アンタ達は砂漠の虎を退けなきゃならない。
 俺達は奴らを追い出したい。利害の一致って奴だ。強いていえば・・・」
「戦力か」
刹那の一言にサイーブは大きく頷いた。
「俺達が持ってる戦力は戦闘車両が精々だ」
「だからさっきみたいな活躍をしてくれるMSがいれば大助かりなんだ」
サイーブの言葉を継いで現れたのは金髪の少女だ。
浅黒い肌を持つ他のレジスタンスの面々とは明らかに違う風貌に、マリューは首を傾げた。
「ああ、私の名はカガリだ。宜しく頼む」
「俺達にとっての、勝利の女神さ」
「アフメド、それは止めてくれと言っているだろう!」
元気良く食って掛かった少女と逃げるアフメド。
その光景にサイーブは何時もの事だと首を振った。
「気にせんでくれ。銃は持っててもまだ子供なんだ。
 それよりあまりここに長居するとまた攻撃されるだろうからな。
 話はこちらのキャンプで改めて行いたいが」
「その場所にこの艦を隠せるだけのスペースはあるのか?」
「まぁここよりはマシだな」
余程隠しておいた場所が悪かったのだろう、サイーブの声には呆れた色が含まれていた。
「分かった。ただ、艦に近付く事は避けて貰いたい」
「ちゃんと言い聞かせておく。心配するな」
とりあえず話も一息着いた所で、直立不動な状態であったストライクのコクピットが開いた。
丁度追いかけっこをしていて近くにいたアフメドとカガリが見上げると、
ワイヤーを使ってキラが降りてくる所だった。
「アイツがパイロットか?まだ俺達と変わらないぜ」
「アイツ・・・!」
「あ、おいっ!」
強い日差しを顔に手をかざして避けている少年は、確かにアフメドやカガリと同世代に見えた。
あんな戦い方をするパイロットだからてっきりベテランのMS乗りだと思っていたのだが。
驚くアフメドだったが、それ以上に驚いたのはカガリの様だった。
連合兵の恰好をした少年に目を見開いたと思うと止める間も無く駆け寄っていく。

 

「お前・・・!」
「?」
カガリが刹那達にも聞こえる様な大声でキラを呼ぶが、彼の反応は鈍い。
カガリはその反応が不服なのか、ヅカヅカと歩み寄って肩を掴んだ。
「何でお前があれに乗ってるんだ!」
「君は、ヘリオポリスに居た・・・!」
キラも彼女を思い出した様だが、カガリにとってそんな事はどうでも良い。
「そんな事はどうでも良い!何でオーブ人のお前があれに乗っているんだ!」
カガリはキラの襟首を掴むと、女性とは思えない力で締め上げてくる。
「・・・あれは、僕の機体だ・・・。君に、何も・・・言われる筋合いは無いっ!」
「お前っ!」
締め上げられながらもカガリを睨みつけながら言うキラに、彼女は拳を振り上げた。
しかしその拳は振り下ろされる事無く終わった。
「キサカ!?」
「カガリ、連合軍との交渉をご破算にするつもりか?」
今まで沈黙を守っていた巨躯の大男が、何時の間にか移動してきて背後からカガリの腕を掴んだ。
その体躯とは正反対な物静かな顔を睨むカガリだったが、
その背後に見えるナタル達連合軍人の姿を認めると大人しくキラを掴む手を離した。
「済まない。カッとなって・・・」
「このパイロットとの間に何があったのか知らないが、
 何にでも直ぐカッとなるのはお前の悪い癖だ」
「・・・・・・」
「それと」
カガリに手を離されて尻餅を着いていたキラをキサカが指差す。
「謝るのは俺じゃない。彼だ」
「あっ、ああ」
まるで叱られた子供の様にキラを助け起こすカガリ。
ふら付きながらも立ち上がったキラの服から砂を払ってやる。
「悪かった」
「・・・・・・」
俯いて目を合わせようとしないキラをカガリは不服そうに睨む。
また飛び掛かるんじゃないかとキサカが心配したのと同時に後ろから鋭い声が飛んできた。
「何をしている!」
「済まない、知り合いと間違えた様だ。もう敵意は無い」
「わっ悪かった」
鬼の形相を見せるナタルにキサカが弁明し、カガリが頭を下げる。
溜息を吐くナタルに、他の連合サイドの人間とサイーブも合流した。
「おいおいキラ、女の子にのされるなんて情けないぜ」
「すいません・・・」
「ほれ、肩貸してやるから、とりあえず涼しい所行こうぜ」
ムウはさっさとキラに肩を貸すと、
刹那にナタル達を頼むと言い残してアークエンジェルへ向かっていった。
「こちらの不手際だ。申し訳無い」
「今後はこういう事の無い様、気を付けて頂きたい」
レジスタンスの代表として頭を下げるサイーブにナタルは不機嫌な表情なままだ。
「艦長、この子も反省している様だし、とりあえずそのキャンプに移動しましょう」
「・・・仕方ない」
マリューの意見に不承不承といった様子で合意するナタル。
実際、ここに留まっていても仕方が無い。
キャンプまでレジスタンスが先導する為、ナタル達はアークエンジェルに戻る事となった。
主を失ったストライクには刹那が乗り込み、アークエンジェルに収容する為に歩き出す。

 

「カガリ様、危なかったですよ」
「んっ?」
巨人の後ろ姿を見送りながら、他のレジスタンスのメンバーには聞こえない様に
キサカがカガリに話し掛ける。
「今ストライクに乗った青年、銃こそ抜いていませんでしたが、
 先程パイロットに殴り掛かった貴方を狙っていました。
 殴ってたら撃たれてたかもしれません」
「そっそれは」
「かなりの手練れです。以後気を付けて下さい」
「あっ、ああ」
脅しの様なキサカの言葉にカガリはブルリと身震いをさせた。

 
 

先導するレジスタンスのハーフトラックを追う為、アークエンジェルが浮上する。
艦の発する微振動を感じながら、刹那はハンガーに戻したストライクから降りた。
「手間掛けたな。坊主ならまた医務室行きだ。
まぁ症状は軽い様だからすぐ出てこれるだろうが」
「フラガ大尉、俺がストライクを動かした事は・・・」
「ああ、言ったらアイツ怒るだろうからな。運搬用ハンガーで運んだ事にしとくよ」
「済まない」
ストライクに固執しているキラが、刹那が乗ったと知ればショックを受けてしまうだろう。
ムウもそこら辺は分かっている様で、口裏を合わせてくれる事になった。
キラは軽い脱水症状を起こしていただけだった為、半日安静にしていれば回復するという。
「曹長、ストライクの状態は?」
何時ものツナギに着替えたマリューが肩を回しながら歩いてくる。
どうやら彼女にとって肩パットの入った軍服は肩が凝るらしい。
「コクピットが汚れている。整備士には悪いが、綺麗にしてやってくれ」
「・・・分かりました」
「アイツヘルメットも被らないで出撃したからな。まぁ当然か」
刹那の説明を理解したマリューが溜息を吐き、ムウも予想していたとばかりに首を振る。
「本当は坊主にやらせたい事だけどよ。熱いから時間が経つと臭いがキツイしな」
「具体的な説明は結構です」
ムウがう〜んと唸りながら言うが、そんな説明は誰も求めていないとばかりに
マリューはストライクの方に歩いて行ってしまった。
コクピットの掃除をさせられる哀れな整備士は誰になるのだろう。

 

「ところでよ。坊主にいきなり掴みかかったあの嬢ちゃんは何だったんだろうな」
「彼女は・・・」
刹那は彼女に見覚えがあった。ヘリオポリスの一件でキラと行動を共にしていた民間人だ。
シェルター兼脱出艇に避難させて以来の再会となるが、
ナタルやムウの後ろに控えていた刹那に彼女は気付かなかったらしい。
しかし、ヘリオポリスで出会った彼女が何故ここにいるのか。
元々レジスタンスの一員としてヘリオポリスに来ていたのだろうか。
いや、あの一件自体はアフリカの解放と関係無い。ならば―――
「ん、知り合いなのか?」
「いや」
言葉を濁す刹那にムウが問うが、刹那は首を横に振って否定した。
沈黙は金という言葉がある。分からない事が多い今は黙っているのが懸命だろう。
「まぁ連中のキャンプとやらに着けば分かるかもな。
 到着は夜になるって話だし、俺は新しい愛機の調整でも手伝おうかね」
「待ってくれ」
両手を頭の後ろに回したムウが刹那に背を向けてスカイグラスパーのある方に向かう。
その背中を刹那は呼び止めた。
「ん?」
「俺も2号機の調整をしたい。ただ、戦闘機の調整の仕方はよく分からない」
「仕方ねぇなぁ」
面倒臭そうに頭を掻いたムウだが、そこは戦友思いの男である。
ムウも協力してまず2号機の調整をする事になった。

 
 

医務室のベット、キラは夢にうなされて目を覚ました。
しかし以前の様な急激な目覚めでは無い。ゆっくり、静かにその目は開かれた。
「フ・・・レイ?」
「あ、キラ起きたのね」
視界に映るのは、キラの手を握る赤毛の少女の姿だった。
夢にうなされて跳び起きなかったのは、その手の温もりがあったからかも知れない。
「どうして・・・?」
キラが再び医務室で横になった時フレイはいなかった。
状況が呑み込めないキラは戸惑いがちに聞いてみる。
「どうしてって・・・サイが、キラの事看ていてくれって言うから・・・」
「サイか・・・」
「?」
「何でも無い、有難う」
自発的では無いにしろ、フレイが横にいてくれる事は嬉しかった。
彼女の存在を感じていれば、自分は戦える。
「僕はもう大丈夫だから、サイの所に戻りなよ」
「あ、ああそう?」
やはりサイといる方が好きなのか、キラの言葉に笑顔を見せるフレイ。
キラに飲み物を渡すと、いそいそと医務室を出て行った。

 

「良かったのかい?もう少し甘えてれば良かったのに」
「いえ、そんな事・・・」
出来る訳が無い。中尉が冷やかす様に言うが、キラは続く言葉を呑み込んで首を振った。
フレイはサイといた方が幸せなのだ。
自分が彼女にしてやれる事は、一緒にいる事じゃない。
フレイを襲う敵を滅ぼし、彼女を守る事だ。フレイが握ってくれていた掌を見詰める。
まだ彼女の手の温もりが感じられる気がした。

 
 

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