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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第77話

Last-modified: 2012-09-12 (水) 22:43:36
 

後一歩という所までアークエンジェルを追い詰めたザラ隊であったが、
オーブ領海内に着水してしまったアークエンジェルを追撃する事は叶わず、
結局そのまま何も出来ずに撤退する運びとなってしまった。
不本意な理由で再び海の底へ戻ったザラ隊に、更に追い打ちを掛ける様な報告が入る。
「こんな発表!素直に信じろって言うのか!」
「足つきは既にオーブから離脱しました。なんて本気で言ってんの?
それで済むって、俺達バカにされてんのかねぇ」
特に不満の大きいイザークとディアッカが苛立たしげに吐き捨てた。
報告は、アークエンジェルについてのオーブからの発表だった。
「まぁこれくらい図太くないと、中立なんてやってられないんだろうがなぁ」
手を腰に当てて、溜息を吐くのはミゲルだ。
抑えているが、彼もアークエンジェルと因縁が深い1人だ。内心穏やかではないだろう。
アークエンジェルには領海内へ着水した後、オーブ艦隊から砲撃が行われた。
しかしその砲撃は、その濃密さに関わらず
アークエンジェルには1発も当たっていなかった。
素人目なら誤魔化せても軍人であるザラ隊の目は誤魔化せる物では無い。
その後、アークエンジェルはオーブ領海から離脱したと発表したのである。
この発表は、ザラ隊からすれば侮辱もいい所であった。
ふざけるなと怒鳴り込める証拠はMSの記録からいくらでも出来るが、
相手が国家ではそんな正当性など簡単に捩じ曲げられてしまうのが現実だった。
「こうなったらオーブに殴り込んで・・・!」
「それは許さないぞ」
物騒な事を呟いたイザークを、今まで黙っていたアスランが制する。
その迫力に思わず口を噤んだイザークの代わりに、ディアッカが口を開いた。
「だが、相手はMSも持たない腰抜け国家だぞ?
アークエンジェルがいる事は解ってるんだ。それを暴いちまえば良い」
「許可出来ないな。お前達はあの国を舐め過ぎだ。
ヘリオポリスと同じだと思ったら痛い目を見る。
俺達が乗っている機体―――あれの開発にオーブが関わっているのを忘れるな。
俺達が原因でオーブと開戦なんて笑えないだろう」
最後の一言を聞いて、ディアッカも口を噤んだ。
イージスを初め5機のGはオーブのモルゲンレーテ社が開発を担当している。
使用するのが連合の予定でも、その開発データはオーブにもあるのだ。
ディアッカが言う通りオーブはMSを所有していない。しかしそれは表面上の事だ。
強襲してみてMSと遭遇という状況も想定出来る。
それに、中立国家に宣戦布告も無しに攻め込めば
本国も巻き込んだ外交問題に発展しかねない。ヘリオポリスの時とは違うのだ。
「でも、どうするんですか?打つ手が無いとすると、
一度カーペンタリアに引き返す事に・・・」
ニコルが心配げに言う。
今自分達がオーブ領海の傍に停泊しているのも、勿論オーブは把握しているだろう。
持久戦になった場合、どうやってもこちらに勝ち目は無い。
自分達が目を離せば、その間にアークエンジェルは脱出してしまうだろう。
そんな懸念を、アスランは首を振って否定した。
「そんなつもりは無いさ。既にカーペンタリアから圧力をかけてくれる様に要請している」
「まぁ、脚付きにお姫様が乗っていたとなれば、そっちから攻めるのも面白そうだな」
「あれは驚きましたねぇ」
ミゲルとニコルのやり取りに、アスランの心臓が大きな音を立てた。
動揺を何とか内側だけで抑え、体は肩が僅かに揺れる程度で済んだ。
「・・・・・・あれは不確定情報だ。外交のカードとしては使えるかどうか」
「それより、その圧力でもどうにもならなかったらどうする!
ニコルの言う通り大人しくカーペンタリアに逃げ帰るのか!?」
ストライクから受けた屈辱が余程堪えているのか、
今すぐ借りを返さねば気が済まないとでも言いたげにイザークが声を荒げた。
「なら潜入するか?あの国に」
「!?」
「おいおいマジかよ」
アスランの大胆な提案に、流石のイザークも虚を突かれた表情になった。
「ただし数日は待つ。それでも事態が動かなければ、だ。それでいいか?」
「脚付きの動向を探るんですね」
「フン、いいだろう」
アスランの出した条件に、イザークも漸く納得した。
「案外、あの2機のパイロットの面が拝めるかもな」
「裏切り者の顔なんぞ、好き好んで見るもんでも無いだろうディアッカ」
「変な所で真面目だよなお前は」
ディアッカの言葉に、再びアスランの心臓が鳴る。キラに会えるかもしれない。
カガリの証言はあったものの、出来るならその目で確認したいという思いが
アスランの中で芽生えた。

 
 

鈍い打撃音がアークエンジェルのハンガーに響いた。ハンガー中の視線が一点に集まる。
その視線の先にいたのは、頬を殴られ、床に転がるキラの姿だった。
その彼を険しい表情で睨むのは、殴った張本人であるムウである。
「殴られた理由、分かるな」
「・・・・・・」
静かに痛む頬を擦りながら、キラはムウを見る訳でも無く俯いたまま無言。
その反応に、ムウがキラの下へ近付いて行く。
「もう一遍殴られるか!?」
「フラガ大尉・・・」
「口出すな。コイツがおかしな事をしたせいで、皆死ぬ所だったんだ!」
マリューが制止しようとするが、ムウは耳を貸さずキラの胸倉を掴んで立ち上がらせる。
「何か言ったらどうだ!」
「・・・・・・・」
尚もだんまりを決め込むキラに、今度は深く抉る様なボディブローが叩き込まれた。
「ぐっ・・・あっ!」
頬を殴られた時とは比べ物にならない痛みが全身を突き抜け、足の力が抜ける。
しかし、ムウが胸倉を掴んだままの為に倒れる事も許されない。
「これ以上だんまりなら、営倉行きにするぞ!」
痛みで鈍った頭に、耳元で怒鳴り声が炸裂する。
それで漸くムウの顔を見たキラが、初めて口を開いた。
「僕は・・・謝りませんよ。アークエンジェルを危険に晒したのは僕のミスでした。
でもアイツは・・・デュエルのパイロットは、あんな事で許せる相手じゃないんですよ!」
言い終わった瞬間、脇腹に膝が食い込んだ。
内臓が爆発するのではないかと思える程
見事な回し蹴りを食らったキラは、再度床に転がる。
「そんな勝手な私情で、艦を危険に晒すな!」
「・・・・・・」
「ちっ」
無言で見上げてくるキラに、ムウはバツの悪そうな顔でハンガーを立ち去ってしまった。
彼が出て行ったのを確認して、マリューがキラを助け起こす。
「大丈夫?キラ君」
「スイマセン・・・」
肩を借りて立ち上がったキラに、今まで黙って事態を見ていた刹那が近寄った。
「曹長・・・」
「ラミアス大尉、キラを借りたい。良いか?」
「良いですが・・・その、暴力は」
「しない」
マリューの問いに首を振り、彼女に代わってキラに肩を貸した。
そのままハンガーの隅の方へ移動し始める刹那。
その間に、マリューは唖然としていた整備士達を仕事に戻させた。
「キラ、ムウが何故お前を殴ったか分かるか?」
「・・・・・・」
キラをパイプ椅子に腰掛けさせると、刹那は何時も以上に厳しい口調で問うた。
「その調子で戦えば、お前が死ぬと思ったからだ。今回は運が良かっただけに過ぎない」
「・・・・・・」
ムウに対して以上に頑なな態度を示すキラを気にせず、刹那は続けた。
「お前は言ったな。アークエンジェルを、友達を守りたいと」
「それは今だって変っていません・・・!」
「なら何故、デュエルに無駄な時間を使った」
「それは・・・!」
追い詰められた表情で、キラは首を振る。
「アイツラは、僕達の故郷を壊したんですよ!デュエルは、シャトルを撃墜した!
そんな連中をどうして簡単に殺せるんですか!それに・・・」
「話をすり替えるな!」
鋭く張られた声に、キラは二の句を飲み込んだ。
「シャトルの件は、確かに戦時条約に反するし戦士としてももとる行為だ。だが・・・」
そこで一度言葉を切った。
キラは、民間人を乗せたシャトルがデュエルに撃墜された事に執着している。
しかし、会戦は混戦の極みに達していた為、
公式記録では誰が撃墜したのかは定かでは無いのだ。
キラ達は知る由も無い事だったが、自国民を失ったオーブが連合とザフトに抗議しても、
混戦の中の流れ弾という事で責任の所在も定かでは無い。
「あれは・・・守れなかった、俺達の責でもある」
「・・・・・・!?」
慎重に、しかしハッキリと口から出た言葉に、キラは絶句した様子で刹那を見詰める。
何故そんな惨い事を言うのかと、その瞳が訴えてくる。
その視線から目を逸らす事無く、刹那は続けた。
「混戦の中、シャトルを降下させねばならなかったのは、俺達が弱かったからだ。
投下予定座標に着く前にアークエンジェルが危険に晒された。
沈む可能性も考慮して道連れにせぬ様に投下を強行した艦長の判断に間違いは無い。
だが混戦の最中だ、流れ弾でも何でも、撃墜される事は十分に考えられた」
刹那がそこまで言った直後、パイプ椅子が倒れる音と共に、キラが勢いよく立ち上がった。
「・・・だから何なんですか!撃墜したのはデュエルです!
流れ弾でも何でも無い、殺意の籠った狙撃だったんだ!」
「キラ・・・」
「沢山の人が、何も知る間も無く死んで・・・
アイツは、それを嘲笑ったんだ!あんなのは・・・人間じゃない!」
そこまで一気に言うと、キラは荒い息を吐きながら刹那を睨み、
走ってハンガーを出て行ってしまった。
「・・・キラ、真実から目を背けてもそれはお前を離してはくれないんだぞ・・・」
「曹長」
倒れた椅子を見詰める刹那にマリューが声を掛ける。
心配そうな彼女に、何時も通りの仏頂面で応える刹那であった。

 
 

オーブ領海内に招き入れられた形となったアークエンジェルは、
オーブの軍事施設が集中するオノゴロ島にある秘密ドックに収容される事になった。
「3、2、1・・・接舷完了」
「機関停止」
「了解。機関停止」
ノイマンの操艦でアークエンジェルがドック内に無事収まった。
軽い衝撃の後、慣れ親しんだ低い振動音がゆっくりと止まる。
「ふう・・・全工程終了、ですね。艦長」
「まだ先は長いと思うが・・・とりあえず、ご苦労だった」
一時的とはいえ重責から解放されたノイマンが気持ち良さそうに伸びをした。
慣れない地上航行で一番気を張っていたのは間違い無くノイマンだった。
ナタルもそれを知っているので、珍しく優しい労いの言葉を送る。
「しかし、あのお姫様本当に本物なのか?」
「そりゃそうでしょ。なんてったって護衛に就いてるのが陸軍特殊部隊の佐官だぜ?」
「俺は初めから分かってたけどな!」
作業が終了して緊張が取れたのか、チャンドラやパル、
トノムラが先程出て行ったカガリの事について話し始める。
カガリの正体を訝しんだナタルの問いに、キサカが自らの身分を明かしたのだ。
「全く・・・弛み過ぎだぞ。私はこれからウズミ・ナラ・アスハ氏に会わねばならない。
艦の事はノイマンに任せる」
「了解しました」
「オーブは強かな国だ。あまり油断するな」
彼女の言に、クルー全員が背筋を伸ばした。
それを見届け、ナタルはブリッジを出て行った。
それから一拍置いて、カズイがポツリと呟いた。
「でも・・・やっぱり降りられないんですよね?オーブ」
「んっ、上陸許可か?」
「はい。・・・その、家族とあったりとか・・・」
「作戦行動中に除隊出来ないのは承知しています。でも、半舷上陸とかで・・・」
ヘリオポリス崩壊後、脱出したオーブ国民は皆オーブ本国に保護されていた。
勿論、そこには学生組の家族も含まれている。
彼らが会いたいと思うのも、当たり前の事だった。
「うーん、可能性が0とは言えないがな」
「住んでると実感無いかもしれないけど、中々難しい国なんだよ。オーブはさ」
トノムラとパルが言う様に、秘密裏にオーブへ入った彼らに
上陸許可が下りる可能性は殆ど無い。その事実を再認識して肩を落とす学生組。
「そう落ち込むな。艦の修理にも時間が掛かるし、
何の見返りも無しにオーブが連合を招き入れる訳が無い。
どっちにしろ、オーブには暫くいる事になるだろうかな。会えるさ」
「そっそうですよね!」
「ああ」
ノイマンの一言に、沈んでいた学生組の顔が少しと明るくなった気がした。

 
 

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