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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第15話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:11:01

俺は帰路の車の中で呆然と自分の手の平に乗っかっている『エンブレム』を眺めていた。
あの後、俺は余りにも混乱していた為に何をして良いか分からないまま彼女によって車に乗せられてしまったのだ。

そう、彼女、『ベルトーチカ』から何一つ具体的な事は聞き出せなかったのだ。
というよりも俺自身が混乱していた所為だろう。
俺自身が何を彼女に口走っていたかもわからないのだ。

――赤い『ユニコーン』――

それは手の平にすっぽりと隠れる程の小さくて簡易なペンダントになっていた。
俺にとってこの『エンブレム』こそ永遠の憧れであり、俺がいつかは超えてみたいと願った男が自らのパーソナルマークとして愛用していたものだ。

――見るとかなりの年季が刻まれていることがわかる。
俺は古物品鑑定ができないので当てずっぽうの推測でしかないが50年〜100年くらい前のものなのだろうか?
或いはもっと年月が経ているであろう。

繋がっている黄金の鎖は鍍金ではなく本物の『純金』でできているようだし『ユニコーン』自体が金板に赤い色で塗装されている。
手入れが行き届いており、このペンダントの持ち主が如何に大切にしていたであろうことがことがわかる。
彼女も大切にしてきたものなのだろうか?

『きっと――貴方を護ってくれます――』

彼女の言葉が脳裏に甦って来た。
俺は指先で『エンブレム』の感触を確かめた。

ひんやりとした感覚が指先に感じる。
それと同時に、何か熱いものが胸の奥から湧き上がって来た。

『これは貴方が受け継ぐべきもの……『ν』の『意思』を継ぐ者は――』

俺はベルトーチカの言葉を反芻しながら呟いた。

「『ν』を継ぐのは『Ξ』……か」

人類の革新を信じた伝説の『ニュータイプ戦士』
人類を粛清しようとした『赤い彗星』

その名前の大きさに俺は大きく溜息を吐いた。
俺には二律相反するものが心に宿っているのだ。

ここ数週間、平和で穏やかな日々を享受している内に俺の中で『戦い』は他人事のように遠いモノとなっていた。
しかし今日、MSに乗った事により確かに血が沸き立った。
その事で自分は所詮は『戦士』なのだと実感することとなった……

俺の『ガンダム』は『ニュータイプ戦士』が最後に搭乗したとされる機体『ν』の『意思』を継ぐという意味でこの名前を与えられていたのだ。

ならばこの『エンブレム』も必然的に俺が受け継ぐべきものなのだろうか……?

数奇な運命を経て俺は『ここ』に居る。
赤い『ユニコーン』は『運命」とやらに導かれて俺の元に還るのも必然と言うわけなのだろうか?

『運命』に導かれるようにして『意思』とは必然的にそれに相応しい者に受け継がれていくものなのか……?
それは傲慢のような気もするし、俺は運命に導かれた勇者なんて上等なものじゃないと思う。

これは何か仕組まれたものなのだろうか?
あれやこれやと疑問は生まれていく。

――そして『彼女』は『ベルトーチカ』は一体、何者なのだろうか――?
そう、疑問は尽きない……が俺は既に『戦場』に戻る事を決意していた。

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ギルバートの邸宅に到着した俺達に屋敷の執事ヴァーンズさんが出迎えに出てくれた。

「これはハサウェイ様……それにラウ様も……」

「ヴァーンズさん、申し訳ないのですが、寝室の用意をしていただけませんか? こいつを放り込んでおきたいんです。お願いします」

「おお! もちろん! ラウ様の『お部屋』も当然このお屋敷にございます! しかし……本当にお珍しいことで……」

ヴァーンズ執事もギルバートと親交の深いラウの普段のライフスタイルを熟知しているはずだ。
彼のこの酔態の姿に意外の念を禁じえないのだろう。

「ラウ……?」

屋敷の奥の方で少年の声が聞こえてきた。
ヴァーンズ執事が慌てて声のほう向かって話し掛ける。

「おお、坊ちゃま……まだお休みではなかったのですか?」

「ヴァーンズ……? 物音が聞こえて目が覚めたんだ。こんな時間に誰か来たのか?」

金髪を揺らしながら夜着姿のレイが奥の方から現れてきた。
シンプルな白いパジャマにナイトガウンを纏った姿だ。
彼は俺とその肩に担いでいるラウの方に気が付くと慌てて、

「ノアさん……? それにラウ……! どうしたんですか?! ラウの具合が悪くなったんですか!?」

彼の顔色は青ざめている。
今にもラウが瀕死でどうにかなりそうかと思っているかのようだ。

図太いこいつが、そう簡単にくたばる訳が無いだろう。
恐らく、戦艦の主砲の直撃を受け、搭乗しているMSが完全に爆散しても死ぬことはないだろう。

「単に酔いつぶれてるだけだよ。浴びるように飲みまくってたからね」

俺は笑いながらレイに説明した。
馬鹿話に盛り上がりお互い飲みまくっていたが自分より倍近く飲んだラウの方が先に潰れた……と
レイは俺の話に唖然としていたが気を取り直したかのように

「あの……ノアさんはラウ……『兄』とは知り合いだったんですか?」

「今日、知り合ったんだよ。それで意気投合してね」

苦笑しながら今日のことを説明した。MSの模擬戦から始まって一連の話を簡潔に彼に説明した。
無論、MS模擬戦とは建前でお互い相手を殺そうとして本気になり、互いのMSが中破したことや互いがニュータイプの感応をしあった事は伏せておいた。

いつでも互いを何の躊躇いも無く殺せる事が確認でき、自分らが似たもの同士の『性格破綻者』ということが分かったこと。
それも相互理解の切っ掛けにもなったことなど。

その事でに妙に馬が合い『人類滅亡』が共通の話題となって『世界絶滅論』や『人類抹殺論』で盛り上った事などレイには言わないでおく。

彼は不承不承のようだが一応は納得の姿勢をみせてくれた。
そして、俺と執事のヴァーンズさんは、幸せそうに寝こけてる『仮面アザラシ』を寝室に放り込む為に行動を開始したのだった。

俺はラウを寝室に放り込むと、ヴァーンズさんはコーヒーでもどうでしょうか?と勧めるのでコーヒーでも飲んで一服する為に居間に向かっていった。

居間にはヴァーンズさんが先に来てコーヒーを淹れる準備をしてくれていた。

そしてレイがソファーに座り佇んでいた。
彼は俺が居間に入ってくる事に気が付くとこちらに近づいてきた。

「あの……ラウは?」

「ベットに放り込んできた。今も爆睡しているよ」

彼は困惑の表情をしながら

「俺……『兄』のあんな姿を見たの初めてなんです……」

普段は大人びた端正な顔立ちが幼く見えた。
そして年齢相応の表情を見せてくれる。

君は自分の『兄上』に幻想を持ちすぎている。こいつがそんな大層な玉か?

俺はレイがブラコンで『兄』をそんなに『絶対視』しているのかと思い、突っ込んでやろうかと悪戯心を出したが……
あんまりにもレイの方が真剣なので止めておいた。

「あんなに『隙』だらけのラウ……こんなこと今まで一度もなかったのに……」

「あいつも一応は軍人なんだ。命を張っていると、たまには羽目を外したくなるものだよ」

「いえ。そんなはずは……」

俺は敢えて軽い口調で真剣すぎるレイの態度を解き解そうとした。
だが彼は思慮深い表情を見せながら深く考え込んでいるようだ。

ヴァーンズさんは控えめにレイを促す。

「坊ちゃま……そろそろお休みになりませんと……」

この屋敷の執事でありレイの事をギルバートから全面的に任されている親愛と責任感からの心からの忠言だろう。

「ヴァーンズ。俺はもう少しこの人と話がしたい」

レイはやや強い口調でヴァーンズさんの言葉を遮った。
彼もいつもは素直であろうレイのその意外な言葉の強さに些か驚いている。

「坊ちゃま……わかりました……それではハサウェイ様……御用がありましたらいつでもお呼び下さいませ」

彼は一礼すると俺とレイに熱いコーヒーを淹れてくれると彼は居間から出て行った。
レイが俺に自分に聞かれたくない話をしたいことを察したのだろう。
執事の鏡だ。良くわきまえている。

そしてここに残っているのは俺とレイだけとなった。

フカフカのソファー深く腰を沈ませながら暫くコーヒーを啜る時間がこの場を支配した。
よい豆を使っているな……と感じる。悪食の自分にはもったいない。

俺はレイを促してみた。何か俺に話したいことがあるのではないか?と
レイは姿勢を正すと俺に向かって

「……ノアさん」

と呼びかけてきた。

「僕のことはハサウェイでいいよ」

堅苦しいのは無しにしようと
レイの緊張をなんとか解くように話しかけた。

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