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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第16話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:11:32

「ハサウェイさん……」

まだやや堅苦しさが取れていないレイの為に
俺は苦笑しながら

「レイ。まだ堅苦しいね。ハサウェイと呼び捨ててくれよ」

彼は俺のその言葉に僅かに微笑すると

「……はい、ではハサウェイ――」

レイは思い切ったように姿勢を正すと俺に向かって

「『ニュータイプ』とはどのような存在なのでしょうか?」

「いきなりどうしたんだ?」

俺は驚いた。目を丸くしてしまった。いきなり何を言い出すんだ?彼は
だがレイはそれには構わずに熱心に話し続ける。

「ギルから――デュランダル外交補佐官から聞きました。『ニュータイプ』は人類が革新した真の姿だと――
 言葉によらず全てが分かり合える『偉大な存在』だと……」

「おいおい。それでは『エスパー』だ。『ニュータイプ』なんて単に多少勘がよくなった人間に過ぎないよ」

俺はわざとおどけた振りをしながらレイを諭そうとした。幻想を抱かれても困る。
『ニュータイプ』というのはそんなに便利な存在ではない。
俺自身を見ればわかるだろう?

だが、レイは俺のその言葉を聞いていなかったようだ。
彼は話を夢中に続ける。

「……俺は『ラウ』が他人に自分を委ねる姿を今日初めて見たんですよ。そんなこと今まで一度もなかったのに……」

「そんな驚くことではないだろう? 僕はただ酔い潰れたラウをここまで運んだだけだよ」

「いいえ!! 俺とギルにあんな姿を見せたことは一度たりともありません!」

「……」

俺は答えられなかった。レイにとってこの事は余程の衝撃だったのだろうか?

「貴方だけなのです。ラウの心に入っていった人間は……『俺たち』に絶対不可能だった事を――分かり合えたのでしょう?」

レイは俺のことをを感歎と尊敬と眼差しで見つめている……よせよ。
俺は尊敬される人間ではない。どちらかと言えば軽蔑され唾棄されるべき種類の人間だ。

「言葉なんて空虚なものですよ。他人対して『愛してる』や『信じる』なんてそんなものは言葉の遊びに過ぎません……」

「……」

「ですが――『ニュータイプ』は違います!! そんな見せ掛けだらけの偽りを見抜くことができるのでしょう?」

「……全てが分かるわけでは無いよ。相手の感情がプレッシャーとして感じるんだ」

レイは完全に誤解している。『ニュータイプ』がそんな存在だったら『あっち』の世界は理想郷とやらになっているだろうな。
俺は沈鬱な気分になった。

レイが何故か『ニュータイプ』という幻想に縋り付きたい事を直感で理解(わか)ってしまったのだ。
こういう時に『能力』があるのが堪らなく鬱陶しくなる。

俺はレイの誤解を正そうとして重い口を開く。

「まて、レイ。お前は誤解しているぞ……ギルバートから聞いていると思うが……俺が異世界の人間だという事は知っているな?」

「はい。聞きました」

「……俺の世界で『ニュータイプ』と呼ばれる人々は決して幸せとは言えなかった……」

俺は『ニュータイプ』と呼ばれた人達がどのような末路を辿っていったかを話した。

相手と共感しあえる能力や先読みする力を持ちながら戦闘に利用され、
そういった能力を時の権力者によって戦争に利用され続けたこと。

戦闘能力の高さだけが利用される傾向にあったのは、
戦争故の悲しさか『オールドタイプ』の権力者が『ニュータイプ』を恐れた故だろうとも。

レイは俺のその話に顔を曇らせている。
俺は彼の気持ちを感じながら話を続ける。

「偶然か、それとも必然なのか? ラウも『ニュータイプ』能力をもっていた。その力が彼を幸せにするのだろうか?」

「……自分を理解できる人間がいるということは幸せだと思います。ラウも俺もお互いしかいませんでした」

「……そうか」

「でも、ニュータイプの力があったから――ハサウェイとラウは理解し合えたのでしょう? なら、その力があるのはラウにとって幸せなはずです」

俺は考え込んでしまう。
あの時、酒の席でラウと『人類滅亡』の話題は確かに相互理解を深める切っ掛けとなったが、
本当はあの模擬戦での命のやり取りによって互いに『感応』しあった事がお互いを理解できることに繋がったのではないだろうか?と
真実、人と人とが分かり合えるのは『心』の繋がりがあった瞬間ではないだろうか?

『言葉』だけでは人は完全にお互いを理解できないのだから。

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レイは――厚かましいとお願いと思いますが、と前置きを入れながら

「ラウ――『兄』の『友』になって頂けないでしょうか?」

思考タイムに入っていた俺はレイのその言葉に我に返った。

「ん。俺はもう『悪友』と思っているが……?」

「……『悪友』?」

レイは俺のその言葉に首を傾げて、訝しげな顔をする。
俺はその場を繕うように

「で……ギルバートはどうなんだ? あいつは前からラウの『友人』だろうが?」

「ラウとギルは世間の言葉で『友人』と言えますかどうか……?」

「なんだ?」

レイはそこで口籠る。何か深い理由があるのだろう。
後から知った事だが、彼ら『兄弟』には俺に窺い知れない深い『闇』があったのだ。

「俺は奴を腕の良いパイロットで大切な『悪友』だと思っているが……それだけでは駄目かな?」

「いいえ。ですが……貴方にもっと『期待』してはいけないでしょうか?『ニュータイプ』の貴方に」

この少年は俺にラウの事を頼みたいのだろう。
彼にとって俺は自分には不可能だった事ができる人間であり、
そして『ニュータイプ』というものに憧れを抱いてしまったかのようだ。
俺が彼の期待に十全と答えられる人間ではない……が

まぁ、子供に頼まれた事を答えてやれるのが大人だろう。
彼にとってラウの事は切実なのだ。それを俺ができると彼は信じてくれている。
俺はそのレイの期待に自分が答えられる事を祈りながら、自分の胸を大きくどん!と叩いた。

「俺にできる範囲内ならやってやるさ。『この世界』で初めて出来た大事な『悪友』だしね」

レイは俺のその言葉に表情を輝かせた。
彼の顔に年相応の子供らしい笑顔が浮かぶ。

「ハサウェイ……!! 感謝します……でもお礼といっても……俺にできる事なら何でもしますから!!」

「気張るな。子供の癖に!」

俺はレイの頭に手をのせると長めの金髪をクシャクシャとかき回した。
レイは俺のその乱暴な親愛行為?に対して本当に嬉しそうに笑いながら

「なら……俺は『ギル』や『ラウ』に誓ったように貴方を信じます!」

レイは自分にできる事は、一度信じた相手を命を賭けて信じ続けることだけだと――その『誓い』しかないのだと……

俺は笑いながら今度はレイの首に腕を回し、抱え込みこむ。

「それが生意気なんだよ!」

と俺は彼の『誓い』を受けとめていた。

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