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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第25話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:17:09

C・E70年6月2日 09:30

――ローラシア級戦艦・『ガルバーニ』MSドック――

――ジン・ハイマニューバのコックピット――

「……計器の再チェック終了。機体のコンディション・オールグリーン……」

私は作戦開始の暇潰しに、再度の機体チェックを入念に行っていた。
もう、前日まで整備員が念入りにチェックを繰り返した上に、私自身もそれに付き合っていたのだ、

前にハサウェイとの模擬訓練?で大破した私のハイマニューバはその貴重な経験を元にして、
短い期間のうちに修復と改良を加えているのだ。

メインスラスターである『MMI-M729エンジン』を『MMI-M730試作型エンジン』に改造させ
バーニアを通常のハイマニューバより15%近くの出力増大に成功した。

更なる高機動化に合わせて加減速や旋回時に、各関節部に発生するモーメントも増大した為、
こちらも関節強度を以前に比べて約15%強化した。

はっきり言ってこいつは『ハイマニューバ』というよりも完全な別の機体へと生まれ変わってしまった。
弄りすぎて、もはや『ジン』とは言えないだろう。

整備班や開発主任はうるさく難癖を出してくれた。
こんなものを扱える人間がいるものか!と

『黙れ。私を誰だと思っているのだ?』

余りにも、外野がうるさかったので、私は一喝してブヒブヒ騒ぐ豚どもを黙らせた。
こんなもの、ハサウェイだって簡単に扱える。

私と同等の実力か、或いはそれ以上の実力を持つであろう『友』の顔を思い浮かべる。
しかも、彼は私と同じなのだからな……と

私はピクニックの準備の万全を確認して愛機から降りた。
その周りには、ズラリと整然と並んだ『ジン』の姿が目に映る。

以前の戦いと違う箇所は、その『ジン』達の左腕には、ボディーカラーと同じ鈍い光を放つ『シールド』が搭載されている事だ。

今までの『ジン』と違い防御力が格段に増大した。

機動力の低下を懸念する声もあったが、実際に模擬戦などで使用してみると、
その効果の絶大さが驚嘆され、急遽、全MSに搭載が決定されたのだった。
もちろん、私のハイマニューバにも搭載されている。

これも、『彼』の進言による一環である。

更に彼は、MSによる小隊運用方法をも伝授してくれたのだ。
3機が一つの小隊となり攻防・遠中近による攻撃方法。
今まで、独自に好き勝手に暴れていたMSパイロット達には、目から鱗が落ちる思いだったろう。

『被害は最小』、『戦果は最大』をキャッチフレーズにして、私は今回の戦いに部下のパイロット達に徹底させようとしていた。
私は、ハンドへルドPCを開き、ある項目をピックアップして呼び出す。

そこには、ハサウェイによって『向こう』のMSの編成・戦術の運用方法の一例が記載されていた。
私はその『近代MS戦術運用(マル秘)マニュアル』を読む。これで何度目になるのだろうか?

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――これは、『向こう』での戦史の戦術講座での受け売りに過ぎないが、と前置きから入り、

――前線においては、単一の機種3機で一個小隊を基本隊形として編成し、MS一個中隊(12個小隊)を
支援ポット10〜20個小隊が遠距離支援をするという構成になったという。

つまり、支援ポットの長距離砲撃で弾幕を張り、その弾幕をかいくぐってきた敵機を中・近距離において
MSが殲滅する戦術が取られたのだ。

この戦術は、ある重要拠点を攻略する作戦において奏功し、機動力を生かして艦船に対する一撃必中戦術を重視した敵MSの部隊は、
自機の10分の1以下のコストの支援ポッドにより長距離から多数が撃破され、必死に砲火をかいくぐった機も
中・近距離に重点を置かれたMS部隊のビーム兵器により数多くが宇宙の塵と消えたという。

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私は何度か同じ部分を読み、繰り返し頷いた。

「うむ……これは留意せねばならん……いかんな。このままでは我々、『ザフト』も同じ轍を踏むだろう」

いずれ、連合がMSを開発し、実用化して実戦に投入してくるのは自明の理だ。
正直、こういう『カンニングペーパー』があるのは助かるのだ。
MSは『機動歩兵』に過ぎないという事を徹底させないと――

物量で来る連合に対抗するためには、個々の自称『勇者』が好き勝手に戦っては勝てないだろう。
対MS戦術の確立を急がねば……な。

ふと、気づき苦笑する……私は本気で『ザフト』を勝利させる為に戦っているな……と
こんな気持ちになったのは初めてだ。

今、『彼』も戦う前はこんな気持ちなのだろうか?
『何のために連合と戦うのか?』と前に戯れで聞いてみたら……

『ムカツクから』

と素敵に答えてくれたものだ。

――そんなものだろうな。

と納得してしまう。
私自身も突き詰めると、理屈じゃなく腹が立ったから戦うのだ。
戦う動機など機(はた)から見ればこんなものだろう。まったく、臭う理屈など糞食らえだな。

そうしていると、『ガルバーニ』に所属しているMSパイロット達が集まってくる。
私の艦である『ガルバーニ』を含めて戦艦3隻が先鋒を任されており、そのMS隊の指揮権を私は持っている。
自機を含め、合計18機のMSが私の指揮下に入るのだ。

「クルーゼ隊長!出撃準備は整っております!出撃の号令を!」

腹の響く声でパイロットの一人が敬礼をしながら注進する。

「――うむ。作戦内容は以前、伝えた通りである。皆、新規の陣形、戦術は頭に叩き込んでおいたな?
 もはやこの期に及んで言う事はあるまい……が、決して敵を侮るな。常に慎重に行け。臆病だと馬鹿にされても最後は生き残った者が笑うのだ」

パイロット達は頷く。

「……最後に。我々は、栄えある先鋒を任された身だ。その事は自覚しておいてくれ。そして、『エンディミオン』を陥落させ祝杯をあげようではないか」

「「おおおぉぉぉぉ!!!」」

部下であるパイロット達の顔を一人一人確認する。皆、良い顔つきだ。
今まで、私はこんな事も気が付かなかったのだな……

「よし! 搭乗! 皆、生き残れよ!!」

「「はっ!!!」」

(――できるならば、一人も……死なせたくないものだな)

随分と身勝手で、虫が良すぎる願いだ。
連合軍は皆殺しにして良く、部下は殺したくないか……

私は自虐しながらハイマニューバへと乗り込んだ。
そして、計器に火が入っていていることを確認し、

『クルーゼ機、発進シークエンス……』

コックピット内でオペレーターの声が聞こえる。

私は、メインスクリーンを見据え、手は操縦桿を握りしめ、そしてスロットレバーを引く。
更に、フットレバーを踏みしめた。

MSに命が吹き込まれる。

ハイマニューバのモノアイに光が宿った。

――C・E70年6月2日 09:59――

――そうだ。

この通り、今までMSだけは、いつも私を裏切らずに必ず答えてくれた。
だから惹かれるのだろう。私は純粋にMSが好きなのだ。

そして、メインスラスターのエンジンに火が入る

ウィィィィン ウィィィィィィン ウィィィィィィン

地響きと共にバーニアが火を吐く。

――さぁ、いくぞ愛機よ。

――C・E70年6月2日 10:00――

「ラウ・ル・クルーゼ!ジン・ハイマニューバ出るぞ!!」

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